ストラトからSSHに乗り換えた筆者が3Sのストラトを諦めきれない理由

「SSHならストラトの弱点を克服できる!」
そう信じてストラトからSSHに乗り換えた私が、3シングルのストラトを弾くたびに思うことがあります。
どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。
結論から先に。
SSHにすればリアの甲高さや使いにくさは確かに補えます。
ただし、ストラトのフロントとセンターが持つあの太さと甘さは、SSHレイアウトでは同じように得ることは出来ません。
両取りは、思っているほど簡単ではないのです。
理由はピックアップの良し悪しではなく、回路の抵抗値にあります。



「SSHならストラトの弱点を両取りできる」は本当か
ストラト所有者なら一度は考えます。ストラトのリアは甲高くて使いどころに困る。
だったらそこをハムバッカーに変えれば、シングルの良さを残したままハイゲインも手に入るのではないか、と。
理屈としては正しく見えます。実際、リアの一発はハムに置き換わるので、歪ませたときの密度や太さは段違いに改善します。
メタルもハードロックも、ストラトのリアでは厳しかった領域に手が届きますし、そういう仕様のギターは沢山あります。
ただ、ここに落とし穴があります。
リアをハムにした瞬間、フロントとセンターのシングルの鳴り方まで変わってしまうのです。
理由は後半で詳しく分解しますが、ひとことで言えば、ハムを載せるためにボリュームポットの抵抗値を変える必要があり、その影響がシングル側にも及ぶからです。
私はこれを、理屈ではなく耳で実感しました。
今使っているSAITOのS-622はSSH仕様です。
購入を検討する時に、同じ型の3シングルモデルと並べて弾き比べました。
フロントとセンターは、3シングルのほうが明らかに豊かでした。
それでも私は利便性をとってSSHを選びました。
そして3シングルのストラトを弾くたびに、シングルを主役にするならやっぱり3Sだな、と思い知らされています。
ストラトのスペシャリテ
SSHの話に入る前に、3シングルのストラトが何を得意にしているかを押さえておきます。ここが曖昧だと、SSHで何を失うのかも見えません。
ストラトの真骨頂は、まずフロントピックアップです。あの太く豊潤なトーンは、クリーンからクランチ、オーバードライブ、そしてファズまで、歪みの浅い領域で圧倒的な表現力を発揮します。
ジャズっぽいクリーンも、粘るブルースのリードも、フロント一発で成立します。
そしてハーフトーン。
フロントとセンター、センターとリアを混ぜた中間ポジションは、レンジが広く、独特のシャリッとした抜けを持ちます。カッティングの輪郭、アルペジオのきらめき。ここはストラトにしか出せない領域で、他のレイアウトでは代わりが効きません。
裏を返せば、ストラトはモダンなハイゲインが苦手です。
リアの一発で歪ませると、線が細く甲高くなりがちで、ザクザクした重さが出にくい。
ここが、多くの人がリアを持て余す理由です。
つまりストラトは、クリーンからファズまでの世界では王様で、ハイゲインの世界では分が悪い。
この得意と不得意がはっきりしているからこそ、SSHという発想が生まれます。
SSH(パシフィカ等)が解決すること・しないこと
モダンな汎用モデルの代表格がパシフィカです。SSH仕様で、5WAYセレクター、トーンポットにはリアのコイルタップが付いています。
まず、解決することから。リアがハムバッカーなので、ストラトが苦手としていたハイゲインに正面から対応できます。さらにコイルタップでハムバッカーの片側コイルだけをオンにでき、疑似的にシングルコイルのようなサウンドも出せます。
フロントとセンターを混ぜたハーフトーンも、ちゃんと作れます。
仕様だけ見れば、ストラトの弱点を埋めつつ、シングルの守備範囲まで取り込んだ万能機に見えます。

ここが核心です。コイルタップは「シングルのような音」であって、ストラト本来のシングルそのものではありません。
そしてもっと根の深い問題が、フロントとセンターのシングルにあります。
SSHのフロントとセンターは、3シングルのストラトと同じピックアップを積んでいても、同じようには鳴りません。
私が弾き比べで感じた「3Sのほうが豊か」という差は、気のせいでも個体差でもなく、回路の構造から生まれる差です。
リアにハムを載せた代償が、シングル側に回ってくる。これがSSHの悩ましい所です。
250kと500k、ポット抵抗値のジレンマ
なぜシングルが痩せて聞こえるのか。原因はピックアップではなく、ボリュームポットの抵抗値です。
ハムバッカーには500kΩのポットを合わせるのがセオリーです。
一方、シングルコイルには250kΩを合わせるのが定番です。
ここで思い出してください。
SSHはリアにハムバッカ―を載せています。
この場合、どちらのポットを使用すればいいのでしょうか?
実は、多くのSSHレイアウトのギターには500kのポットが採用されています。
ポットの抵抗値は、ピックアップで拾った音の低い帯域がどれだけ残るかを左右します。
抵抗値が高くなるにつれて低域が削られ、高域が際立ちます。
抵抗値が高い500kでは、250kに比べて低域が控えめでより高域が抜ける傾向にあります。
結果として全体がスッキリし、明るく感じられます。
ハムバッカーは元々こもりやすいので、500kでバランスが取れる。理にかなっています。
しかし問題は、その500kでシングルも鳴らすことになる点です。
本来250kで高域を落ち着かせるべきシングルを500kで鳴らすと、高域が必要以上に通り、低域由来の太さや甘さが痩せて聞こえます。
普段250kのストラトに慣れた耳には、「ペラい」「旨みが足りない」と感じられることがあります。

ここがSSHの構造的なジレンマです。リアの使いにくさを直そうとすると、ポットが500kになり、今度はシングルの持ち味が削られる。
かといって250kのまま使用するとリアハムバッカーの重心が低域側に寄って高域の抜けが悪くなってしまう。
結局リアをハムバッカーにしても使いにくいままになる。
ストラトのフロントとセンターは好きだがリアが使いにくい、という人がSSHに乗り換えても、その願いが丸ごと叶うわけではないのです。
メーカーはどう解決したか:Fender Am Pro II HSSの“二段ポット”
近年はフェンダー自身も、さまざまなグレードでSSHをラインナップしています。
当然このポット抵抗値の問題と向き合っていて、その答えが市販モデルの中に入っています。
手元にAmerican Professional II Stratocaster HSSのパーツ表があります。
ボリュームの部品を見ると、ただのポットではありません。
「DUAL 500K/250K」と記された二段構造のポットが使われています。
↓まさかのPLAYTECHからミリ規格がリリースされてました。
仕組みはシンプルで、ハムを選んだときは500k、シングルを選んだときは250kと、ポジションに応じて抵抗値を切り替えるのです。
シングルとハムで抵抗値を分ける、まさに二者の良いとこ取りを狙った作戦です。
ただし、このモデルは抵抗値を切り分けるために、DISCRETE/COM仕様の特殊な5WAYスイッチを使い、配線も通常より複雑になっています。
つまり、後から普通のSSHを二段化しようとしても、ポットを差し替えるだけでは済まないということです。スイッチや追加の配線まで踏み込む手術になります。
↓こちらもPLAYTECH
そこで、もっと手軽な妥協案があります。
250kと500kの中間をとった、300kのポットを使う手です。
リアのハムはやや太く軟らかいキャラクターになりますが、その代わりシングルの豊潤さもいくらか戻ってきます。
SSHを弾いていて「ちょっと味が薄すぎる」「深みが足りない」と感じるなら、300kへの交換は有効です。
全体の低い帯域をほんの少し足してやれるので、落ち着いた“オトナなSSH”に寄せられます。
ただしリアの抜け感は500kの方が上なので、ここはトレードオフです。
ポット交換だけで完結するので、二段ポット化に比べれば敷居はぐっと低い。
まず試して見たい一手としてはこちらが現実的です。
用途別・あなたが選ぶべき1本
ここまでを踏まえると、選び方は驚くほどシンプルになります。
クリーンからファズまで、シングルの音を主役にしたいなら、素直に3シングルのストラトです。 フロントの太さとハーフトーンの妙は、ここでしか手に入りません。リアの一発を捨てる覚悟さえあれば、後悔は少ないはずです。
1本でハイゲインまで賄いたい、ジャンルを横断したいなら、SSHです。 シングルの旨みは多少譲ることになりますが、その代わりに得られる汎用性は本物です。最初の相棒として、長く付き合える性格を持っています。
すでにSSHを持っていて、シングルが物足りないと感じているなら、300kポットへの交換です。 二段ポット化より手軽に、痩せた帯域をいくらか取り戻せます。
まとめ
- ストラトらしいシングルが欲しいなら、結局は3シングルのストラト
- SSHはリアの弱点を補うが、500kポットの都合でシングルの旨みはスポイルされる
- それでもSSHの汎用性は大きな魅力
- フェンダーの答えは、配線が複雑になる二段ポット
- 手軽に整えるなら、300kポットへの交換
迷ったら、まず自分の理想とするバランスを考えてみてください。
勿論シングルのポテンシャルを引き出すために250kを試してみるのも良いと思います。
筆者も300kや250kには興味があるので、試してみようと思っています。






























