ストラトとレスポールの音の違いを、木材とピックアップだけで語っていませんか。

どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。

ボディ材が、ピックアップが、と音を決める要因の話はいたるところで語られています。
ところが、それらと同等かそれ以上に音を左右しているのに、ほとんど話題に上がらない部分があります。

ネックとボディの接合方式、ネックジョイントです。

結論から言うと、ネックジョイントは音の立ち上がりとサステインを左右します。

セットネックはサステインが伸び、ボルトオンは立ち上がりが鋭く、スルーネックはさらに伸びる。

この傾向を頭に入れると、ストラトとレスポールがなぜあれほど別物なのか、輪郭が一段クリアに見えてきます。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
ネックジョイントって、ネックのくっつけ方の話でしょ?接着剤かネジかで音まで変わるわけ?
アド・リブ代
アド・リブ代
ストラトとレスポールが別物なのは体で分かるけど、その理由をジョイントで考えたことはなかったわね
モダン・テク子
モダン・テク子
接合方式は振動の伝わり方そのものだ。立ち上がりとサステイン、音の時間軸を分ける分岐点になる

ストラトとレスポールを比べるのが、そもそも無茶

「ストラトとレスポール、どっちが良い音?」という問いは定番ですが、この二本を音の要素で比較するのは、実はかなり無茶なことです。

並べてみると、違う部分が多すぎるのです。

  • 木材構成:アルダーボディ vs マホガニーにメイプルトップ
  • ピックアップ:シングルコイル vs ハムバッカー
  • スケール長:648mm vs 628mm
  • ブリッジ:シンクロナイズドトレモロ vs チューンオーマチック+テールピース
  • ヘッド:角度なしの片側6連ペグ vs 角度付きの3対3
  • ネックジョイント:ボルトオン vs セットネック

これだけ変数が違うと、二本の音の差のどこまでが木材由来で、どこからがピックアップ由来なのか、切り分けようがありません。

それなのに「レスポールが太いのはマホガニーだから」と一部分だけを取り出して語られがちです。

だから筆者は、この二本については「ストラトはこういう楽器、レスポールはこういう楽器」という概要の比較にとどめておく方が確度が高いと考えています。

では、ジョイントの影響を知りたければどうするか。

他の条件を揃えて比べるしかありません。
先日、同型の3シングルとSSHを並べて弾き比べた話を書きましたが、あれと同じ発想です。

ストラトからSSHに乗り換えた筆者が3Sのストラトを諦めきれない理由ストラトとSSHの違いを、3シングルとSSH(パシフィカ)の両方を使ってきた視点で解説します。SSHでリアの弱点は補えても、シングルの旨みは戻りにくい。その背景にあるポット抵抗値という構造的な理由と、300k・二段ポットという現実的な解決策まで踏み込みます。...

条件の揃った比較対象、PRSのCustomとCE

この「条件を揃えた比較」にうってつけの二本が、PRSのラインナップにあります。Custom 24とCE 24です。

ボディシェイプ、25インチのスケール、2ハムのレイアウト、ブリッジ、設計思想。主要な条件がほぼ共通で、大きな違いがネックジョイントです。Customはセットネック、CEはボルトオン。

厳密に書いておくと、ネック材も異なります(Customはマホガニー系、CEはメイプル)。なので完全にジョイントだけを切り分けた比較にはなりません。

それでも、ストラトとレスポールの比較とは桁違いに条件が揃っています。

同じメーカーが同じ思想で作った、ジョイント違いの兄弟です。
なお細部の仕様は年式で変わるので、購入を検討する際は公式サイトで最新情報を確認してください。

試せる環境があって、ジョイント方式の違いが気になってきたら、購入を検討するフリをして二本を弾き比べてみてほしいのです。
同じフレーズを、同じアンプ、同じセッティングで。

単音をポーンと伸ばしたときの減衰の仕方と、カッティングしたときの音の切れ方。
この二つに耳を向けると、ジョイントの個性が輪郭を持って聴こえてくるはずです。

どちらも凄く良い楽器なので弾き比べているうちにフリではなくなって、本当に検討が始まってしまうのがこの遊びの唯一のリスクですが…

ジョイント方式別・音の個性

本題です。3方式の傾向を整理します。

方式構造立ち上がりサステイン代表例
セットネック接着剤で接合丸め長いGibson系、PRS Custom
ボルトオンネジで接合鋭い短めFender系、PRS CE
スルーネックネック材がボディ末端まで貫通丸め最も長いハイエンド系、メタル系

セットネックは、接着剤でネックとボディを固定して一体の木塊に近づける工法です。
振動のロスが少なく、サステインがよく伸びます。

ここで面白いのは、サステインの長さがそのまま「キレの出しにくさ」につながる点です。

サステインが長いということは、アタックから音が減衰しにくいということ。

アタック音とその後の音量差が小さくなるので、音がスパッと切れる感じは出しにくくなります。

伸びやかさと引き換えに、歯切れを少し手放している構造です。

ボルトオンは、ネジによる接合です。
接着ほどの一体感はない分、アタックの立ち上がりがはっきり出て、減衰は早め。
音の輪郭とキレが出しやすい構造です。

スルーネックは、ネック材がボディの末端まで貫通していて、弦振動の通り道に接合部そのものが存在しません。
結果、サステインは3つの接合方式の中で最長になります。

そして、この特性はそのままGibson系のウォームで伸びやかな性格、Fender系の歯切れよくパーカッシブな性格と重なります。

木材とピックアップの違いばかりが語られる二大巨頭ですが、その足元でジョイントも同じ方向にキャラクターを押し出している。

そう捉えると、あの二つの世界の違いが立体的に見えてきます。

以前、ピックアップだけで音は決まらないという記事の中で、ジョイントの話に数行だけ触れました。今回はそこの全容です。

エレキギターはピックアップで音が決まるって本当?そんなわけない。ピックアップで音が決まるって本当? 「ギターの音はピックアップで決まる」 確かに、ピックアップはギターの音に影響を与える重要な要...

ネジの締め具合でも、表情が変わる

ボルトオンには、もう一つ面白い定説があります。

ネジの締め具合でキャラクターが変わるという話です。
強めに締めるとタイトでモダンに、わずかに緩めるとクラシカルな鳴りに寄る、と言われています。

理屈で考えると、これも一体感の話です。

トルクによってネックとボディの密着度が変わり、アタック感とサステインのバランスがわずかに動く。
ジョイントが音の時間軸を握っている証拠のような現象です。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
え、ネジ回すだけで音が変わるの?無料のカスタムじゃん。今夜さっそく回してみよ

と、なりそうなところに水を差しますが、安易に回すのはやめてください。

トルク管理を誤るとネックの密着不良や、最悪ネジ穴の破損につながります。
ジョイントは楽器の生命線です。
定説として知っておくにとどめて、気になる場合は楽器店やリペアマンに相談してください。

なお現代のボルトオンは、ヒールカットや接合部を球面で仕上げる加工など、ジョイント形状そのものの進化も進んでいます。

演奏性の面でも、ジョイントは各メーカーの腕の見せ所になっているのです。

時代はボルトオンに傾いている

現在の市場を見渡すと、ボルトオンのギターが割合としてかなり多くなっている印象があります。

Fenderが事業を拡大し続けていることに加え、プレイスタイルのトレンドも影響しています。

カッティングやネオソウルなど、キレとアタック感を求めるスタイルが主流になり、サステインは本体で稼ぐのではなくリバーブやディレイで演出する。
そんな音作りの流れが、立ち上がりに強いボルトオンと噛み合っています。

製造面でも差があります。

ボルトオンは工程がシンプルで量産に向く一方、セットネックは接着と乾燥に手間と時間がかかります。
作られる数が絞られ、価格も上がりやすい。セットネックのギターがじわじわ高騰している背景には、この構造があります。

セットネック劣勢の流れは、音の優劣ではなく、時代の要請と製造コストの帰結です。

それでも、セットネックの伸びは凄まじい

ここまで書いた上で、筆者の実感を残しておきます。

ボルトオンに慣れ切った耳で久々にセットネックのギターを弾くと、毎回その音の伸びに驚かされます。

ポーンと弾いた一音が、減衰を忘れたようにそこに残り続ける。
リバーブで演出した残響とは別物の、木の塊が鳴り続けている感触です。

効率と流行の物差しで選べば、いまはボルトオンに寄ります。
それが間違いだとは思いません。
筆者もボルトオンのギターを気に入って使っています。

ただ、あの伸びに心が動いたなら、話は別です。トレンドの逆張りでも懐古趣味でもなく、あなたの心が求める音がそこにあるなら、それがあなたの正解です。

機材選びの正解はコスパ・タイパ・メンパの交差点にある、という話を以前書きました。
セットネックは、その交差点がトレンドの外側にある人を静かに待っている楽器だと思います。

実はボルトオンよりセットネックの方が気が合う。
そんな人、案外多いんじゃないかなーと思ったりします。

モダン・テク子
モダン・テク子
トレンドは効率に流れているな。でも楽器との相性は効率では測れない。サステインに心が動いたなら、それを選ぶ事に間違いはない。

よくある質問(Q&A)

Q1:ネックジョイントだけで音が決まるんですか?

A:決まりません。木材、ピックアップ、弦、そして何より弾き手と、音を作る要素は多岐にわたります。

ジョイントはその中の一つで、ここで書いたのはあくまで傾向です。個体差もあります。それでも「立ち上がりとサステイン」という時間軸に絞って聴くと、ジョイントの影響は比較的聴き取りやすい部類だと感じています。

Q2:自分のギターのネジを緩めて、音の変化を試してもいいですか?

A:おすすめしません。

トルクを誤ると密着不良やネジ穴の損傷につながり、得られるかもしれない音の変化に対してリスクが釣り合いません。ジョイントの調整はリペアマンの領域です。

Q3:手頃な価格でセットネックを体験できるモデルはありますか?

A:PRSならSEシリーズ、他にはEpiphoneのレスポール系、GretschのElectromaticあたりが定番です。

仕様と価格は変動するので最新情報の確認をお願いしたいところですが、何より、まずは試奏であの伸びを体感してみてください。

まとめ|音の時間軸はジョイントが握っている

  • ストラトとレスポールは変数が違いすぎて、部分比較は無茶。概要の比較にとどめるのが確度が高い
  • 条件の揃った比較ならPRSのCustomとCE。大きな違いはセットネックかボルトオンか
  • セットネックはサステイン、ボルトオンは立ち上がり、スルーネックは最長のサステインが持ち味
  • ネジの締め具合でも表情が変わると言われるが、実践は自己責任。基本はリペアマンへ
  • ボルトオン優勢は時代の要請。それでもセットネックの伸びに心が動くなら、それがあなたの正解

次に楽器店へ行ったら、スペック表の木材とピックアップの欄だけでなく、ジョイント方式にも目を向けてみてください。音の時間軸という、新しい視点が見つかるはずです。

https://gainfomation.net/tone_is_pickup/

https://gainfomation.net/ssh-500k-or-250k/

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吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。
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