YAMAHA PAC611レビュー|612との違いとバンドで光る理由

バンドで弾くなら、612より611を推します。
どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。
【一言で言うと】 611は万能の612とは別物。バンドで抜ける個性派。
【こんな人におすすめ】
- 612と611のどちらを買うか、最後まで天秤にかけている人
- 弾き語りや宅録より、バンドの中で音を前に出したい人
- フロントP90×リアハムという変則的な構成に惹かれている人
【こんな人にはおすすめできない】
- 1本で出せる音色の「数」と万能さを最優先する人。それなら素直に612です。
【この記事でわかること】
- 611と612の、グレード差ではなく「キャラの違い」
- フロントP90・リアハム・ミックスの各ポジションの音と使い分け
- VFM(トレモロ)とHFM(ハードテイル)のどちらを選ぶべきか
- 611の弱点と、その付き合い方
- あなたの用途なら611か612か
結論から書きます。611は万能の612とは別物の、個性が立った2ピックアップモデルです。
バンドで個性を打ち出したいなら611がおすすめです。
アームも使うならVFM、アームは要らずサステイン、チューニングの安定を優先するならHFM。
音色の数と万能性が最優先なら612です。
はじめに立場をはっきりさせます。
筆者がPAC611VFMに触れたのは、以前勤めていた楽器店でのことです。中古買取の査定と、買取後の調整という場面で、6年ほど前(2020年頃)に複数の個体を繰り返し弾きました。
アンプはMarshall DSL。仕事柄、状態の違う何本もの個体を触っています。
一方、ハードテイル仕様のHFMは弾いたことがありません。HFMについては公式スペックとハードテイルという構造から読み取れる範囲で書き、弾いた体感としては断定しません。



PAC611は「個性が立った2ピックアップ機」|万能の612とのキャラの違い

611と612の差は、上位・下位という縦の関係ではありません。狙っている方向が横にずれています。
611のピックアップ構成は、フロントがSeymour DuncanのSP90-1、リアがCustom 5です。つまりP90シングルとハムバッカーの2基。
スイッチは3ウェイで、プッシュプルのコイルタップが付きます。
612はここが違います。リアにCustom 5を積むのは同じですが、ミドルとフロントにシングルを加えたHSS構成で、5ウェイスイッチ。ハーフトーンを含めて出せる音の数が多く、ハムキャンセルする中間ポジション、コイルタップも付いています。
ここから言えることは一つです。612は1本で守備範囲を広げる万能機、611は2基だからこそポジションごとの差が際立つ個性派。
出せる音の数と使いやすさなら612、個性の強さなら611です。
P90×ハムバッカーの音|ポジションごとのキャラ差が「大きい」理由
611のキャラ差の大きさには、スペック表だけでは見えにくい理由があります。
ピックアップが2基しかないということは、フロントとリアの距離が物理的に大きく開いているということです。
間にミドルを挟む3基構成と比べて、両端の性格が極端に出せます。
フロントのP90は、ハムバッカーほどの太さは無く、シングルほど線が細くもない、独特の中域を持っています。
エッジが立っているのに芯が太い。この帯域が、バンドの中でギターが埋もれる原因になりやすいゾーンを、ちょうど突き抜けてくれます。
リアのCustom 5は出力の高いハムバッカーで、歪ませたときのガッツが持ち味です。
フロントの抜けとリアの押し出し、この二つの性格が遠く離れているからこそ、ポジションを切り替えた瞬間に「別のギターになった」と感じます。
バンドで抜けるのは、この振れ幅の大きさそのものです。多くの音色をなめらかに並べる612より、振り切った2つを持つ611のほうが、アンサンブルの中では存在感を出しやすいです。


コイルタップとミックスポジションの実力

611は2基構成ですが、使える音は3つどころではありません。コイルタップでリアハムをシングル化できるため、歪みの押し出しと、シャキッとしたシングルの両方をリア側で持てます。
ここで611と612の差が、もう一段はっきり出ます。
コイルタップはハムバッカーの片側のコイルだけを生かす仕組みですが、どちらのコイルを残すかが両者で逆になります。
612がブリッジ側のコイルを残すのに対し、611はネック側のコイルを残します。
この違いは音にそのまま出ます。
音を拾う位置がネック寄りになる611のタップは、ややふくよかな方向です。
ブリッジ側を残す612のタップは、硬く鋭い音になります。
実戦で効いてくるのはここからです。
コイルタップは構造上、フルハムよりパワーが落ちます。
612のタップは高域が多く低域が少ないぶん、バンドの中では線が細くなりやすく、使いどころを選びます。
一方の611のタップは低域が残る分パワー感が保たれ、そのまま実戦に投入できる場面が多いです。
とはいえその差は僅かですが。
恐らく612はフロントとセンターのシングルコイルに合わせたコイルタップ
611はフロントのP90に合わせたコイルタップに調整されているのでしょう。
コイルタップ一つを取っても、611はよりパワーに振り切ったモデルだと言えます。
ミックスポジション
また、注目してほしいのはミックスポジション、フロントP90とリアを混ぜた音です。ここに612では出せないサウンドで、コードストロークやカッティング、アルペジオで映えるレンジの広い音が出せます。
バッキングではミックスポジション、リードやソロは太さが欲しければフロントのP90、更にゲインや押し出し感が欲しければリアハムという使い分けも出来ます。
コイルタップも含めてサウンドをコントロールするのが楽しい一本です。
トレモロ(VFM)とハードテイル(HFM)

611には、Wilkinson VS-50ヴィブラートを積んだVFMと、ハードテイルのHFMがあります。
VFMはフローティング設定にすればアームでの音程変化が使えます。
引き換えに、フローティング構造は弦振動の一部をブリッジ側の可動に逃がすため、ハードテイルほどサステインを稼ぐ設計ではありません。
チューニングの安定も、セッティングの追い込みしだいという面があります。
HFMはハードテイルで、Graph TechのString Saverサドルとヤマハオリジナルのプレートを組み合わせ、ロングサステインとチューニング安定を狙った設計です。
弦の振動を逃がす可動部がない分、サステインの伸びとピッチの安定では理にかなっています。代わりにアームは使えません。
つまり、アームを使う表現が一つでも欲しいならVFM。
アームを使わず、伸びと安定を優先するならHFM。
アームが使えないことは欠点ではなく、サステインと安定との引き換えと考えるとどちらにも魅力があると言えます。

611の弱点

611の気になる点を一つに絞るなら、フロントP90のノイズです。
P90はシングルコイル系でありつつもボビンが大きく巻き数も多い為、通常のシングルコイルよりもノイズが乗りやすい構造的な弱点があります。
クリーンや軽いクランチではほとんど問題になりませんが、ゲインを上げると、また蛍光灯や電源環境の悪い場所では、フロント選択時のノイズが目立ってしまいます。
付き合い方は3つあります。
・ノイズゲートを使用したり、電源とシールドの環境を整えてノイズを軽減する。
・ハイゲインの音はリアのハム中心で作ると割り切る。
・むしろファズなどで激しく歪ませてノイジーなサウンドを作る。
ノイズを制御する方向性とノイズは出るものとしてプランニングしていく方向とで分かれるわけですが、ノイズを制御する場合ノイズゲートを使用するとサステインが縮んだり表現力が損なわれる場合があるため注意が必要です。
「音色の数では612に軍配が上がる」こと
「HFMはアームが使えない」ことは、弱点ではなく向き不向きの話。
前者は万能性を取るか個性を取るかの選択、後者はサステインとの引き換え。
弱点と呼べるのは、フロントP90のノイズだけかなと。
用途別の結論|あなたは611を選ぶべきか、612にすべきか
ここまでをふまえて、用途別に1択で切ります。
音色の引き出しの数、ハーフトーンの豊富さ、1本での万能性を最優先するなら612です。
611は、ポジションごとの個性、バンドでの抜け、パワーを期待するなら611です。
611を選ぶと決めたら、次の分岐はアームです。
アーム表現も使うならVFM。
新品の流通が安定していて、楽器店スタッフが選ぶ賞も受けた、入手のしやすい主軸モデルです。
アームは要らず、ガッツとロングサステイン、チューニングの安定を最優先するならHFM。
ただし新品の玉数はアームモデルに比べて少ない様です。
そういう意味では611HFMは最も個性的なパシフィカと言っても過言ではありません。
まとめ
- 611は612の下位機ではなく、狙いの違う別物
- 2ピックアップゆえのポジション間の振れ幅の大きさが、バンドでの抜けの正体
- カッティングはミックス、ソロはフロントとリアの往復という3手
- アームを使うならVFM、使わず伸びと安定を取るならHFM(新品在庫は要確認)
- 唯一の本物の弱点はフロントP90のノイズ。リア主体の音作りでほぼ封じられる
あなたの軸が「個性とバンドでの抜け」なら、迷わず611を、用途に合うブリッジ仕様で選んでください。



























