安いから、間違いないから、時間を無駄にしないから。そうやって選んだ機材は確かに正解だったのに、どこか満たされない。そんな感覚に覚えはありませんか。

どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。

このブログはコスパとタイパの話を散々してきました。
ただ、筆者がKEMPERからBOSSマルチに乗り換えて本当に手に入れたのは、効率ではなく心の軽さでした。

機材選びの正解は、コスパとタイパ、そして心の豊かさを測る第三の物差し「メンタルパフォーマンス」の交差点にあります。
今日はその話をします。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
メンタルパフォーマンスって何?また新しい横文字が出てきたじゃん!横文字反対!
アド・リブ代
アド・リブ代
スペックは文句なしなのに、なぜか気分が上がらない機材ってあるわよね
モダン・テク子
モダン・テク子
効率の物差しだけじゃ、自分だけの正解には届かない。そういう話だ

コスパとタイパは「合理」の物差しである

コスパは費用対効果。
払ったお金に対して、どれだけの性能や体験が返ってくるか。

タイパは時間対効果。
かけた時間に対して、どれだけの結果が返ってくるか。

どちらも「投入した資源に対する見返りの効率」を測る物差しです。

コスパという言葉の正体は、以前この記事で掘り下げました。

エレキギターにおける“コスパが高い”って何なのか考えてみたこれからギターを始めたい人も すでにある程度慣れてる人も 上級者も ギターを買おうとなった時は なるべくコスパの高いものを選...

あのときの結論は「コスパの感じ方は人それぞれの主観で決まる」でした。
それでも、コスパが効率を測る道具であることに変わりはありません。

そして、効率の物差しは強い。

パシフィカを選べば価格を超える作りが手に入り、BOSSのマルチを選べば音作りの遠回りが減ります。

筆者がこの2つを勧め続けてきたのは、効率の物差しで測ったとき、外れを引く確率が極めて低いからです。

ここまでは何も間違っていません。

問題は、この物差しでは測れないものが機材選びにはある、ということです。

メンタルパフォーマンスという第三の物差し

コスパ、タイパに続く言葉として、「メンタルパフォーマンス」という考え方が語られ始めています。

略すならメンパ。
かけたお金や時間に対して、どれだけ心の豊かさが返ってくるかを測る物差しです。

コスパとタイパが「効率」を測るのに対し、メンパは「充足」を測ります。

効率は数値化できるので、他人と共有できます。

充足は数値化できないので、自分にしか測れません。この違いが決定的です。

食事に置き換えると分かりやすいと思います。

完全栄養食だけで生きるのは、コスパもタイパも最強です。
それでも多くの人がそうしないのは、好物を食べる楽しみが消えた瞬間、食事が作業に変わるからです。

機材選びでも、同じことが起きかねない。という事です。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
でもそれって、結局は「気の持ちよう」って話じゃないの?

気の持ちようで済むなら、この記事を書きません。
教室で見ていると、機材への気持ちの差は、練習量という行動の差になってはっきり表れます。

「間違いない」と言われた機材を買ったのに、数ヶ月でケースから出さなくなる人がいます。

スペックに不満はない。
値段にも不満はない。
それでも、その機材を手に取る理由が「正解だから」しかないと、手が伸びなくなっていきます。
頭では正解と言っているのに、心が動いていない状態です。

逆もあります。
効率で言えば遠回りな、手のかかる古めのギターを選んだ人が、毎日ケースを開けている。
構えるたびに気分が上がるから、練習が作業になりません。
上達という結果だけ見れば、後者の方が速いことは言うまでもないでしょう。

筆者はメンパに救われたのに、コスパで語っていた

筆者は8年使ったKEMPERを手放し、BOSSのGT-1000COREに乗り換えました。

経緯はこの記事に書いています。

GT-1000COREレビュー| Kemperから乗り換えて実感した魅力8年間使い込んだKEMPERからGT-1000COREに完全移行した理由とは?軽量・高速起動・柔軟な音作り…。実際に使って感じたメリットと注意点を正直レビュー!...

あの記事で挙げた理由は「軽い」「起動が速い」「日本語サポートが安心」。

総重量15kg前後が1kg以下になり、起動2分が10秒になる。

どれも事実で、どれもコスパとタイパの言葉です。

ただ、いま読み返すと、あの言葉選びは半分逃げでした。

本当に大きかったのは、KEMPERに抱えていた違和感から解放されたことです。

起動を待つ2分の間に「今日はいいか」と気持ちが冷めていく感覚。
英語マニュアルを解読し、膨大なプリセットの海で音を探すうちに、練習時間が溶けていく罪悪感。
音には満足しているのに、機材に触るまでの心のハードルがずっと高かった。

GT-1000COREに切り替えた日、音を出す前の段階で心が軽くなったのを覚えています。

長年使い込んできたGTシリーズの操作感に「帰ってきた」という安心感もありました。
あれは効率の話ではなく、感情の話です。

それなのに記事では、数字で説明できる理由を並べました。
その方が説得力があると考えたからです。

本当は「好き」で選んだのに、人に説明するときだけ「コスパがいいから」と言い換えた経験はないですか?

メンパの正体は、数字にならない「納得感」

メンパの正体を筆者なりに言葉にすると、「数字にならない納得感」です。

起動10秒という数字そのものではなく、「5分だけ弾こうかな」と思える気軽さ。

憧れのギタリストと同じモデルを構えて、鏡の前で少しニヤけてしまう感覚。

スペック表のどこにも載らないのに、ギターを手に取る回数を確実に変えるもの。

それがメンパです。

以前、高いギターは挫折率を下げるという趣旨の記事を書きました。

「高いギターを買えば上手くなるのか?ギター上達と機材のリアル」「上手くなるには良い道具を使うべきだ」──ギターをやっていると、そんな話を耳にすることがある。確かに、高級なギターやアンプは魅力的だし、...

理由として弾きやすさや「高いから辞められない」という覚悟を挙げましたが、根っこにあるのは「そのギターを構える喜び」です。
あれもメンパの話だったのかなと、改めて整理できます。

一方で、注意も必要です。

メンパは高い機材を買うための言い訳ではありません。

憧れだけで身の丈を大きく超えた機材を買い、支払いのプレッシャーで気分が沈むなら、それは心の豊かさがマイナスに振れた買い物です。

生活を壊す選択は、メンパの物差しでも不正解です。

正解は、コスパ・タイパ・メンパの交差点にある

三本の物差しのどれか一本に全振りすると、選択はどこかで歪みます。

コスパ全振りは、愛着の湧かない「正解」を積み上げて、手が伸びなくなる。

タイパ全振りは、遠回りの中にしかない発見と楽しみを切り捨てる。

メンパ全振りは、財布と生活を壊して、結局は心まで削る。

教室で機材相談を受けてきて、うまくいかなかった話は大体この三つのどれかに当てはまります。

だから筆者は、機材選びの正解は三本の物差しが交わる交差点にあると考えています。

GT-1000COREはその実例でした。KEMPERより安く手に入り(コスパ)、起動10秒で音がすぐ決まり(タイパ)、長年連れ添ったBOSSの操作感に戻る安心感がある(メンパ)。

三本が一点で噛み合ったから、乗り換えから数年経っても後悔がありません。

そして、あなたの交差点は筆者の交差点とは別の場所にあります。

コスパとタイパの二軸で測るなら、パシフィカとBOSSマルチは今でも最有力です。

そこにあなたのメンパが噛み合うかどうかは、店頭で触れた時のあなたの気分が教えてくれます。

モダン・テク子
モダン・テク子
効率は他人でも測れる。納得は自分にしか測れない。だから最後の一票は、自分の心で入れるしかないんだ
アド・リブ代
アド・リブ代
あなたにもそんなエモい事が言える感性があるのね…

よくある質問(Q&A)

Q1:結局、最初はパシフィカとBOSSマルチを勧めるんですよね?

A:勧めます。

判断材料が少ない段階では、効率の物差しで外れを引かない選択が最優先だからです。

ただし、店頭で構えて心が動かないなら、候補から外して構いません。
その「なんか違う感」は、メンパの計測結果です。

Q2:メンパはどうやって測ればいいですか?

A:筆者が機材相談で使う質問は2つです。

「その機材が部屋にある生活を想像して、気分が上がるか」
「1ヶ月後もケースから出している自分が想像できるか」

両方にイエスと即答できるなら、メンパは合格点です。

まとめ|機材選びの物差しは三本持つ

  • コスパは費用対効果、タイパは時間対効果。どちらも「効率」の物差し
  • メンパは、かけたお金と時間に対して返ってくる「心の豊かさ」の物差し
  • 効率だけで選んだ機材は、愛着が湧かず手が伸びなくなるのが教室での観察事実
  • メンパは高額機材の言い訳ではなく、生活を壊す買い物はメンパでも不正解
  • 機材選びの正解は、コスパ・タイパ・メンパの三本が交わる交差点

次に機材を選ぶとき、スペック表と価格、そして「これで気分が上がるか」という三本目の物差しを当ててみてください。

ストラトからSSHに乗り換えた筆者が3Sのストラトを諦めきれない理由ストラトとSSHの違いを、3シングルとSSH(パシフィカ)の両方を使ってきた視点で解説します。SSHでリアの弱点は補えても、シングルの旨みは戻りにくい。その背景にあるポット抵抗値という構造的な理由と、300k・二段ポットという現実的な解決策まで踏み込みます。...
HISTORYのコスパは冷静に考えてヤバい|暴力的なスケールメリット 「国産ギターは高い」という新常識を、 全国180店舗の“暴力的なスケールメリット”が破壊する。 どうも、7丁目ギター教室新潟江南...
YAMAHA Pacifica 買うならどれ?|グレード別比較ガイドヤマハ パシフィカは各グレードで思想が違う。612が正解の人とStandard Plusでないと意味がない人がいます。価格差を実用上の差として翻訳し、用途別に判断軸を提示します。...
ABOUT ME
吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。
サウンドハウス