エレキかアコギか、迷ったら? ―「迷うならエレキ」と言い切る理由と、目的別の選び方

1本目のギターを買おうとして検索すると、たいてい「まずはアコギから」と書いてあります。
指の皮が厚くなる、握力がつく、アコギが弾ければエレキは楽になる。
それを読んで、なんとなくアコギに傾きかけていませんか。
どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。
先に結論を書きます。迷っているなら、エレキから始めてください。アコギが正解という空気は確かにありますが、筆者は逆の立場です。楽器店の店頭でも教室でも、1本目を決めきれないまま何ヶ月も過ぎていく人を何人も見てきました。この記事では、エレキを勧める理由を4つ、それでもアコギにしかない強みを1つ、そして自分がどちらを買うべきかを見分ける3つの基準を書きます。



迷っているなら、エレキから始めていい

エレキかアコギか。この問いに対する筆者の答えは、はっきりエレキです。
理由をひとことで言うと、アコギはエレキの代わりになりませんが、エレキはアコギの代わりに(ある程度)なるからです。
守備範囲が違います。
迷っている人、つまり「やりたいことがまだ固まっていない人」ほど、守備範囲の広い方を選んだほうが後悔が少ない。
「アコギが正解」という空気は、たぶん昔からの慣習です。
アンプもシールドもいらず、買ってすぐ音が出る。
フォークソング全盛期からの流れもある。ただ、それは「アコギが初心者に向いている」という話とは別物です。
「アコギから始めるべき」は本当か?定番アドバイスを検証

よく言われるのは、この2つです。
- アコギは弦が硬いから、握力と指の皮が鍛えられる
- アコギを弾けるようになれば、エレキは簡単に感じる
どちらも、事実としては間違っていません。
アコギで半年みっちり練習した人がエレキを持つと、たいてい「軽い」「押さえやすい」と言います。筋力面の下地ができるのは本当です。
ただ、これは「アコギで始める理由」としては弱いというのが筆者の考えです。
なぜなら、その理屈は「先に苦しいほうをやっておけば、後が楽になる」と言っているだけだからです。
これからランニングを始める人に、脚が鍛えられるからという理由で重い靴をすすめるようなもの。
筋トレとしては正しくても、続くかどうかの話が抜けています。
ギターをやめる人の理由で、いちばん多いのは何か。
教室と店頭で見てきた限り、技術の壁より前に来るのは、指先の痛さです。
押さえても音が鳴らない、鳴らないから面白くない、面白くないから触らなくなる。
この順番でギターはクローゼットへ吸い込まれていくのです。
指の皮は、続けた人にだけ育ちます。
育つ前に離脱してしまえば意味がない。
だから、アコギから始めること自体を否定はしません。
すでにアコギを弾きたい理由がある人は、迷わずアコギでいい。
ただ、「鍛えられるから」を根拠にアコギを選ぶのは、順番が逆だと思っています。
筆者がエレキをすすめる4つの理由
1. アコギでできることは、エレキでもだいたいできる

コードをジャカジャカ鳴らす。
アルペジオで弾き語る。
ソロを弾く。
これらはエレキでも全部できます。
歪ませなければ、エレキのクリーンサウンドで弾き語りをしても違和感はありません。
逆はどうか。
アコギでハードロックのリフを弾く、歪んだリードギターを弾く、これは無茶です。
そもそも生のアコギはエフェクターに繋げませんし、ピックアップ付きのエレアコを歪ませることは技術的には可能ですが、出てくるのは「歪んだアコギの音」であってエレキの音ではありません。
しかもハウリングを起こしやすく、実用は簡単ではない。
つまり、エレキを選んだ場合の「やりたいことが変わったときの取りこぼし」が小さい。
1本目にどちらを買うかで悩んでいる時点で、あなたのやりたいことはまだ確定していません。
確定していない人が、先に選択肢を狭める必要はない。
2. 弦の張力が低く、指が痛くなりにくい

エレキの弦は、アコギの弦より細く、張力(テンション)が低い傾向にあります。
同じ力で押さえたときに、弦が指に食い込む感覚がまるで違う。
【プチ解説】張力(テンション)って何?
弦を張ったときの「張りの強さ」のこと。
張力が高いほど、弦を押さえるのに力がいります。
アコギの標準的な弦は、エレキの標準的な弦よりも太く、強く張られています。
これは根性論では埋まらない差です。
指先の痛みは、続けるかどうかを左右する最大の障害物です。
ここを物理的に下げられるなら、下げておいたほうがいい。
Fコードが押さえられない、Cコードが鳴らない。
この手の壁の何割かは、技術ではなく押弦の重さの問題です。
ただし、原因が張力だけということもありません。
指を置く位置、手首の角度、余計な力み、このあたりが同時に絡んでいることのほうが多い。
エレキにすれば全部解決する、という話ではないのは正直に書いておきます(このあたりは「Fコードで挫折した人へ」「Cコードが鳴らない」で詳しく書いています)。

なりません。
楽器は苦行の道具ではないので、痛くない環境(アコギに比べて、ではありますが)から入って、必要になったら重い弦に上げればいい。
順番の問題です。
3. 生音が小さく、賃貸でも練習しやすい

エレキは、アンプに繋がなければ話し声くらいの音量しか出ません。夜でも弾けます。
集合住宅なら、この差は決定的です。
アコギは胴を共鳴させる楽器なので、ストロークすればそれなりの音量になります。
壁の薄い部屋で夜10時にジャカジャカ弾くのは、正直きつい。
エレキの練習環境は、ヘッドホンを挿せる小型のアンプかマルチエフェクターがあれば整います。
ヘッドホンアンプなら数千円、マルチエフェクターでも1万円台から。
しかもヘッドホンで聴く音は生音よりずっと良い。
「良い音で弾ける」ことは、それ自体が練習のモチベーションになります。
なお、本体の価格帯そのものは入門機ならエレキもアコギも大差ありません。
差が出るのはこのアンプ代の分だけです。
1万円前後の上乗せで夜も弾ける環境が手に入る、と考えれば高くはないはずです。
4. 重いけれど頑丈で、雑な扱いに強い

エレキ(ソリッドボディ、つまり中身の詰まった木の板から削り出したタイプ)は、アコギより重い傾向にあります。肩は疲れます。
その代わり頑丈です。
アコギは薄い板を貼り合わせた中空の箱なので、ぶつけると割れることがあるし、湿度の変化にも敏感。
エレキは多少ぶつけても打痕が残る程度で済むことが多い。
始めたばかりの頃は、置き方も片付け方も雑になりがちです。
壁に立てかけて倒す、ケースに入れずに部屋に転がしておく。
そういう扱いに耐えてくれるのは、地味ですがありがたいポイントです。
高価な置物として飾るより、日用品に近い感覚ですぐ手の届く場所に置いておけるほうが、手に取る回数は増えるでしょう。
公平に:アコギにしかない強み=「ギター筋」は育つ

ここまでエレキ寄りに書いてきましたが、アコギにしかない長所もはっきりあります。
やることが明確、これです。
アコギは基本的にコードプレイが中心になります。
コードを押さえて、右手でリズムを刻む。
しかも弦の抵抗があるぶん、指の形が甘いまま押さえても音が鳴ってくれません。
この繰り返しを毎日やっていると、運指と指の形が確実に固まってきます。
左手の型ができる、いわば「ギター筋」が育つ。
一方、エレキは何でもできてしまう分、初心者だとやることが絞られない。
音作りをいじって1時間、そのあと有名なリフを触ってみて、ソロも少しなぞって、気づけばコードは何も進んでいない。
これは教室でも実際によく見る光景です。
制限があることは、初期段階では長所として働きます。
「弾き語りがやりたい」と決まっている人にとって、アコギの制限は迷いを消してくれる装置です。

結局どっち?目的別・3つの判断基準
ここからが本題です。あなたが答えを出すための基準を3つ出します。
① 見た目、どっちが好みか

軽く見られがちですが、継続にはかなり効果的。
部屋に置いてあるギターを見て「かっこいい」と思えるかどうかは、手に取る回数に直結します。
黒いストラトを見て「これが弾きたい」と思うなら、それだけでエレキを選ぶ理由になります。
木目のアコギを抱えて歌っている姿に憧れるなら、それはアコギを選ぶ理由として十分。
スペック表の比較より、こちらのほうが確実に練習量を左右します(予算やサイズまで含めた選び方は「初めてのギター、どう選ぶ?」にまとめています)。
② アコギの生音を出せる環境か

アコギはそこそこ音量が出ます。
実家の一軒家で、隣が離れているなら問題ありません。
壁の薄いアパートで、夜しか練習時間がないなら、アコギを選んだ時点で練習量が削られます。
音量を気にして右手を小さく振り続けると、ストロークそのものが縮こまってしまう、という副作用もあります。
③ コードをジャカジャカ弾きたいだけか、色々やってみたいのか

やりたいことが「弾き語り」で固まっているならアコギ。
ソロも弾きたい、バンドもやってみたい、まだ決まっていない、のどれかならエレキです。


「アコギがいいけど音量が出せない」→ サイレントギターという手

「アコギの音が弾きたいのに、家で音を出せない」という人には、サイレントギターという選択肢があります。
ヤマハのSLGシリーズが代表格で、アコギのような木の箱のボディを持ちません。輪郭だけを残したフレーム構造なので、生音は「パシャパシャ」という程度しか出ません。ダメ押しでブリッジの際にティッシュやスポンジを詰めればもっと消音できるので指弾きなら深夜でも練習しても問題にならないでしょう。
その代わり、アコギらしい見た目の満足感はほぼ諦めることになります。
抱えた感触も、木の箱を抱えている感覚とは別物です。
音はヘッドホンを挿せば本格的に鳴ります。
ピックアップとリバーブが内蔵されていて、宅録や配信でもそのまま使えるレベル。
YAMAHA SLG200S|スチール弦のサイレントギター
普通のアコギに近い弦の感触で選ぶならこれ。生音を大幅に抑えながら、ヘッドホンでは本格的なアコースティックサウンドを楽しめます。
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ナイロン弦を使いたいなら
ただし、これが有効なのは「アコギの音が弾きたい」と決まっている人だけです。
「歪ませたりバンドもやったり、色々試したい」という気持ちが残っているなら、素直にエレキ+ヘッドホン環境のほうが対応力は上です。
サイレントギターは万能な代用品ではなく、「アコギを弾きたいのに生音を出せない人」への、かなり限定的な回答だと考えてください。
「基本アコギ、たまにエレキも」→ Fender アコースタソニック

ある程度の音が出せる環境はクリアしている、アコギがメインではあるんだけどたまにはエレキも弾きたい。
そういう人には、Fender アコースタソニックがあります。
1本でアコギとエレキ、両方のサウンドを出せるモデルです。
見た目はアコギとエレキの中間で、かなり個性的なデザイン。
ホールがあるので生音もそこそこ出ますが、普通のアコギよりは控えめです。
正直に書くと、純粋なアコギのサウンドとは少し違います。
「アコギの音が完璧に出る万能機」を期待すると、ガッカリします。
あくまで、アコギ寄りの音とエレキの音を1本で行き来できる楽器だと考えてください。
出荷時はアコギ弦が張られていますが、エレキ弦を張ることもできます。
張力がキツいと感じたら、この手が使えるのは大きい。
King Gnuの常田大希さんがライブやテレビ出演で使っていることで知られる1本でもあります。
入門しやすいのは、2025年に出た廉価版の「Standard」シリーズ。
テレキャスターとジャズマスターの2シェイプ展開で、実売はおおむね10万円弱です(価格は変動するので、購入前に最新の実売価格を確認してください)。
一般的な入門ギターよりは予算が上がりますが、「2本買い分けるほどではない」という人には個性的で面白い1本目になります。

Fender Acoustasonic|アコギとエレキを1本で
基本はアコギ。でも、ときどきエレキの音も使いたい。そんな人向けのハイブリッドギターです。まず見るなら価格を抑えたStandardシリーズから。
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まとめ:迷っている時間があるなら、1本買って弾き始めよう
最後にもう一度。
迷っているならエレキです。
守備範囲が広く、指が痛くなりにくく、家で音を出しやすい。
ただ、これは「アコギが劣っている」という話ではありません。
弾き語りをやると決まっているなら、アコギのほうが迷いなく進めます。
どちらを選んでも上達はできます。
いちばん良くないのは、比較記事を読み続けて3ヶ月が経つことです。
その3ヶ月があれば、コードはいくつか押さえられるようになっているでしょう。
この記事のポイント
- 迷っているならエレキ。やりたいことが未確定な人ほど守備範囲の広い方が有利
- 「アコギで指が鍛えられる」は事実だが、始める理由としては弱い
- エレキの利点は張力の低さ・生音の小ささ・頑丈さの3点
- アコギの利点は「やることが明確」で運指の型が固まりやすいこと
- 音量が出せないならサイレントギター、両方欲しいならアコースタソニック
判断基準は3つだけです。
見た目の好み、音を出せる環境、やりたいこと。
今日中に決めて、早速1本手に入れてください。
上達を決めるのは、どちらを選んだかではなく、いつ始めたかです。
もし「実物を触ってから決めたい」「自分の場合はどっちなのか、その場で聞きたい」ということであれば、楽器店で相談、もしくはギター教室でエレキとアコギの両方を弾き比べてもらうこともできます。
ギターを買わずに、とりあえずギター教室で週一回備品を借りて練習する。という方法もあります。
詳しくは別記事で紹介しています。
あなたの目的と好みに合わせた選択ができる事を願っています。

























