ギターの音作り「クリーン」の種類を知る|キラキラ系・太い系・歪む直前

「クリーン」という言葉の解像度を上げれば、あなたのギターはもっと歌い出す。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
ギターを弾いていて、「クリーントーンがなんかショボい」「プロみたいな透明感が出ない」と悩んだことはありませんか?
アンプのゲインを下げて、なんとなくリバーブをかけてみたけれど、どうもCDで聴くような音にならない。音が細くて、バンドの中で埋もれてしまう。
それはもしかすると、あなたが目指している「クリーン」と、機材が出している「クリーン」の種類がズレているからかもしれません。
結論から言うと、「クリーン」には明確に異なる3つの種類が存在します。
それぞれに特化したアンプ設定やエフェクターの使い分けがあり、これを知らずに機材をいじっても迷宮入りするだけです。
今回はギター歴18年、数多の機材で音作りを研究してきた現役講師の視点で、この「3つの白」をロジカルに解剖していきます。
この記事を読めば、あなたが目指すべき音が明確になり、機材選びや音作りの迷いが晴れるはずです。



1. クリスタルクリーン|無機質で美しい「透明な氷」

まず一つ目は、「歪み成分(倍音)」を極限まで排除した、硬質で透明度の高いサウンドです。
80年代のポップスやフュージョン、最近のボカロ曲やアニソンのバッキングでよく聴かれる音ですね。
代表機材:Roland JC-120
日本のスタジオやライブハウスに必ずある「ジャズコーラス(JC-120)」がこの音の基準(リファレンス)です。
真空管を使わないソリッドステート(トランジスタ)回路のため、信号の増幅過程で余計な倍音が付加されにくく、入力された信号をそのまま大きくしたような「フラットでハイファイ」な特性を持っています。
音響的特徴と作り方
特徴: 音の立ち上がり(トランジェント)が非常に速く、高域の煌めきが目立ちます。
メリット: エフェクターの乗りが良い。特にコーラスや空間系をかけた時の広がりは絶品です。
デメリット: 単体だと音が硬く、冷たい印象になりがち。ピッキングのアラも目立ちます。
【おすすめの音作り】
コンプレッサーで音の粒を揃え、コーラスで横の広がりを出し、ディレイで奥行きを作るのが鉄板です。
カッティングやアルペジオで「キラキラさせたい」なら、まずはこの方向性を目指しましょう。
コンプレッサー
コーラス
CE-5

透き通る様なコーラスサウンドもBOSSの得意技。
ゆっくり深く揺らし、低域の揺れを少しカットして程よくミックスする事で美しいクリスタルトーンを目指せます。
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DC-2W

揺れないコーラス、ディメンション。
4つのボタンの操作のみで奥行きのあるサウンドを作れます。
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ディレイ
DD-8

原音をそのまま返してくれるスタンダードモードがおすすめ。
オクターブ上の音を返すシマー、逆再生で返すリバースも試す価値あり。
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2. ファットクリーン|芳醇な倍音を纏う「シルクの白」

二つ目は、聴感上は歪んでいないけれど、音に太さと艶(つや)があるサウンドです。
ジャズ、ネオソウル、ジョン・メイヤーのようなスタイルで求められるのがこのタイプです。
代表機材:Fender Twin Reverb
大出力の真空管アンプ、特に「Fender Twin Reverb」のようなヘッドルーム(余裕)の広いアンプで作られます。
真空管アンプは、完全にクリーンな状態でも、回路を通るだけで「サチュレーション(微細な倍音歪み)」が付加されます。これが音に温かみと太さを与える正体です。
音響的特徴と作り方
特徴: 中低域(ローミッド)がふくよかで、高域は耳に痛くない程度に丸まっています。
メリット: 音に存在感があり、単音弾きでも説得力が出る。歌モノのバックでも馴染みやすい。
デメリット: アンプの音量が大きくないと本領を発揮しにくい(デジタルシミュレーターなら解決可能)。
【おすすめの音作り】
アンプのボリュームを上げて「真空管が仕事をしている状態」を作ります。歪む一歩手前で止めるのがコツです。
エフェクターで補正するなら、クリーンブースターを通してプリアンプ的な倍音を足すのが効果的です。
JC-120などに対して真空管入りのエフェクターをかますのも有効です。
ブースター
EP booster

太くてウォームなブースター。ローミッドがトゥーマッチな場合は内部のディップスイッチで調整可能。
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ディレイ
トレモロ/リバーブ
strymon FLINT V2

極上のトレモロとリバーブを装備した究極の雰囲気職人。ツマミもシンプルながらウォームでムーディなサウンドに特化しているため音作りしやすい。
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3. エッジ・オブ・ブレイクアップ|感情に呼応する「歪み直前」

最後は、玄人が最も好む「クリーンと歪みの境界線」にあるサウンドです。
これを「クリーン」と呼ぶか「クランチ」と呼ぶかは議論が分かれますが、ブルースやクラシックロックにおいては、これが最高の実用的なクリーントーンとされます。
代表機材:Fender Bassman / VOX AC30
出力が低めの真空管アンプや、VOX AC30のようなクラスA動作(に近い挙動)をするアンプが得意とする領域です。
入力信号の強さに敏感に反応するため、「サグ(Sag)」と呼ばれる独特のコンプレッション感(弾いた瞬間に音が少し潰れてから伸びる感覚)を伴います。
音響的特徴と作り方
特徴: 優しく弾けばクリーン、強く弾けば「ジャリッ」と歪む。ダイナミクスレンジが広い。
メリット: ギターのボリューム操作やピッキングニュアンスだけで、楽曲の静と動を表現できる。
デメリット: コントロールが難しく、下手さが露呈しやすい(ごまかしが効かない)。
【おすすめの音作り】
アンプのゲインを「強く弾いた時だけ歪む」位置に設定します。
トランスペアレント系のオーバードライブをゲイン低めでかけっぱなしにするのも有効です。
オーバードライブ
タイプ別:理想のクリーンを作るためのレシピ

あなたが目指すべきクリーンはどれでしたか?
タイプ別に必要な要素とおすすめの機材をまとめました。
| タイプ | 目指す音像 | キーワード | おすすめエフェクター | 相性の良いジャンル |
| クリスタル | 硬質、透明、煌びやか | トランジスタ、ハイファイ | コンプレッサー、コーラス | ファンク、ポップス、アニソン |
| ファット | 太い、温かい、リッチ | ヘッドルーム、サチュレーション | クリーンブースター、リバーブ | ジャズ、ネオソウル、歌モノ |
| ブレイクアップ | 艶やか、反応が良い | サグ感、タッチレスポンス | ローゲインOD、真空管プリアンプ | ブルース、ロック、ソロギター |
マルチエフェクターでの再現テクニック
GT-1000やHelixなどのマルチエフェクターを使う場合、アンプモデルの選び方で勝負が決まります。
クリスタル: 「JC-120」や「Full Range」モデルを選択。キャビネットシミュレーターのマイキングを少し離すと空気感が出ます。
ファット: 「Twin Reverb」タイプを選択。ゲインを上げていき、ギリギリ歪まない辺りに調整します。
ブレイクアップ: 「Tweed」や「VOX AC30」タイプを選択。ギターのボリュームを8くらいにしてクリーンになるように設定し、フルテンで歪むように調整します。
以上ご参考までに。



まとめ:「クリーン」の定義を決めれば、音作りは加速する
「綺麗な音が出ない」と悩む前に、自分が求めているのが「氷のような透明感」なのか、「絹のような滑らかさ」なのか、あるいは「ガラスが割れるような緊張感」なのかを定義してみてください。
JC-120系(クリスタル): コンプとコーラスで磨き上げる「人工美」のクリーン。
Twin系(ファット): ヘッドルームの余裕が生む「リッチ」なクリーン。
Tweed/VOX系(ブレイクアップ): 右手の感情に追従する「有機的」なクリーン。
目指すゴールが決まれば、必要な機材も、アンプのツマミの位置も自ずと決まってきます。
あなたのギターが奏でる「白」が、より鮮やかに響くことを願っています。








