YAMAHA Pacifica主要グレード比較|結局どれを買う?講師が本音で解説

YAMAHA Pacificaで迷ったら、予算が許すなら612がおすすめです。
112との価格差はパーツだけではなく、実際に触れるとネックをはじめ楽器そのものの仕上がりに大きな差があるからです。
一方、筆者が今自腹で選ぶならStandard Plusです。
どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。
これまでスクール備品の112、生徒さん所有の612、楽器店勤務時には611を弾き、Standard Plusも楽器店で試奏してきました。
その経験から見ると、Pacificaは単純に「初心者向け」で括れるシリーズではありません。
実際、生徒さんでも最初にPacificaを選び、後から別のメインギターを買ったあとも手放さず使い続けている人がいます。
特定の弾き方を要求しないからこそ、経験を重ねても役割がなくなりにくいギターです。
この記事では112からProfessionalまでの仕様差を押さえながら、実際に触って分かった違いも交えて「どの価格差なら払う価値があるのか」まで掘り下げます。



パシフィカってどんなギター?

Pacificaを一言で表すなら、筆者は「大衆車みたいなギター」だと考えています。
Fenderには、ストラトキャスターやテレキャスターでしか得にくい瑞々しいサウンドがあります。Ibanez AZなら、多彩なサウンドバリエーションと大胆なボディ加工によって、モダンな演奏へ明確に振った設計が特徴です。
Pacificaは、それらと比べると強烈な方向性を持っていません。
しかし、この「普通」こそPacificaの強みです。
クリーンから深めの歪みまで対応しやすく、コード、カッティング、リードと弾き方が変わっても大きな苦手を作らない。特定のジャンルへ寄せないことで、一本のギターが担当できる範囲を広げています。
車でいえば、トヨタのアクアやホンダのフィット、日産ノートのような存在です。
スポーツカーや本格的なクロスカントリー車のような際立った趣味性はありません。しかし毎日使う道具として見ると、扱いやすさの中にメーカーの技術が詰め込まれています。
Pacificaも同じで、強烈な個性を買うというより、幅広い場面で困らないことに価値があるギターです。
「初心者向け」だけではPacificaを説明できない
Pacificaは最初の一本としてよく選ばれていますし、筆者も選択肢に入れていいと考えています。
ただし、その理由を「初心者向けのギターだから」と考えると、このシリーズの価値を半分しか見ていません。
ギターを始めたばかりの時期は、自分が数年後にどんな演奏を好んでいるのか分かりません。
ロックが弾きたくて始めても、その後カッティングに興味を持つことがあります。バッキング中心だった人がバンドでリードを担当することもあれば、エフェクターを使い始めて求める音が変わることもあります。
そんな変化に対応しやすいことが、Pacificaを最初の一本として選ぶ大きな理由です。
実際、レッスンでも112から612あたりのPacificaを使っている人を複数見てきました。
最初はPacifica一本だった人が、演奏を続けるうちに好みが明確になり、その後もっと趣味性の強いメインギターを購入するケースもあります。
それでもPacificaを弾かなくなるとは限りません。
新しいメインギターが苦手とする曲で使ったり、違うチューニング用にしたりと、サブギターへ役割を変えて残ることがあります。
だからPacificaは「上手くなるまで使うギター」ではありません。
最初の一本として買っても、次の一本を手に入れたあとまで支えてくれるギターです。
初心者だけでなく中上級者にも使いやすい
この汎用性は、演奏経験が増えた途端に価値を失うものでもありません。
むしろバンドや宅録で求められる音色が増えるほど、「これ一本を持っていけば幅広く対応できる」という使いやすさには意味が出てきます。
特に611・612以上になると、単に安価なギターを卒業するまでの中継地点として見る必要はありません。
612ならSeymour Duncanピックアップを使った馴染みのあるロックサウンド、Standard Plusならクリアで分離感の高いモダンなサウンドと、価格帯が上がるにつれて方向性も明確になります。
つまりPacificaシリーズは、
「初心者だからどれを買うか」ではなく、「自分がどこまでの完成度と、どんな音を必要としているか」でグレードを選ぶギターです。
次から各モデルの違いを見ていきますが、価格だけで上下を決めると選択を間違えます。112と612では楽器そのものの仕上がりに差があり、612とStandard Plusではサウンドの方向性まで変わるからです。
主要グレード:スペック比較

Pacificaは見た目が似ているため、価格差をピックアップやペグなどの搭載パーツだけで判断しがちです。
もちろんパーツの違いも重要ですが、実際に112・611・612・Standard Plusを触った経験では、それだけを見てグレードを決めるのはおすすめしません。
特に注目したいのは、ネックを含めた仕上げ、ピックアップ構成、ブリッジ、そしてサウンドの方向性です。
まずは主要モデルの違いを一覧で確認します。
| モデル名 | PAC112 (100シリーズ) | PAC612 (600シリーズ) | PAC611 (600シリーズ) | PACS+12 (Standard Plus) | PACP 12 (Professional) |
|---|---|---|---|---|---|
| 特徴 | コストを抑えたエントリー機 | 高級パーツ採用の圧倒的コスパ機 | P-90搭載の個性派 | 新世代のモダントーン | I.R.A.処理済みの日本製最高峰 |
| 生産国 | 中国等 | インドネシア等 | インドネシア等 | インドネシアの自社工場 | 日本 (Made in Japan) |
| ボディ | アルダー | アルダー (FMトップあり) | アルダー (FMトップあり) | アルダー (チェンバード加工) | アルダー (チェンバード加工) |
| 指板 | ローズ / メイプル | ローズウッド | ローズウッド | ローズ / メイプル | ローズ / メイプル (コンパウンドR) |
| PU | YAMAHAオリジナル (SSH) | Seymour Duncan SSL-1 & Custom 5 (SSH) | Seymour Duncan SP90-1 & Custom 5 (SH) | Rupert Neve共同開発 Reflectone (SSH) | Rupert Neve共同開発 Reflectone (SSH) |
| フレット | ニッケル | ニッケル | ニッケル | ステンレス | ステンレス |
| ペグ | ダイキャスト | Grover ロッキング | Grover ロッキング | Gotoh ロッキング | Gotoh ロッキング |
| ブリッジ | ビンテージ・トレモロ | Wilkinson VS50-6 | トレモロ(VFM) / ハードテイル(HFM) | Gotoh 510T FE-1 (2点支持) | Gotoh 510T FE-1 (2点支持) |
スペック表を見ると、価格が上がるにつれてパーツが豪華になっているように見えます。
しかし、実際のモデル選びではもう一段踏み込んで考えたいところです。
112から612へ上げたときは、搭載パーツだけでなく楽器そのものの仕上がりに差を感じます。特にネックは演奏中ずっと手が触れる場所なので、筆者ならピックアップ以上に重視します。
一方、612からStandard Plusへの価格差は「もっと豪華な612」と考えると分かりにくくなります。
612はミッドに力強さがあり、Seymour Duncanらしい馴染みのあるロックサウンドが魅力です。対してStandard Plusは音の分離が良く、高域までクリアなモダンサウンドへ方向性が変わります。
つまり、
112→612は完成度の差を重視し、612→Standard Plusは完成度に加えて欲しいサウンドまで考える。
この見方をすると、単純な予算順よりモデルを選びやすくなります。
迷ったらこの3本
Pacificaのおすすめ3モデル
予算優先ならPAC112、完成度と価格のバランスならPAC612、
演奏性とモダンなサウンドまで求めるならStandard Plusです。
PAC112
PAC612
Standard Plus
マニアックな解説:
モデルごとに違う「コイルタップ」の挙動
パシフィカの多くには、トーンポットを引き上げることでハムバッカーをシングルコイルのように鳴らす「コイルタップ機能」が備わっています。
しかし、一見同じように見える機能でも、モデルによって出力されるコイルの組み合わせが緻密に計算されているのはご存知でしょうか?
PAC112 / PAC612 (SSH配列)

タップスイッチをONにすると、リアハムバッカーの「ブリッジ側のコイル」のみがONになります。ブリッジに近いため、よりエッジの効いた鋭いシングルコイルサウンドが特徴です。
また、タップOFFの状態でセレクターを「センターとリアの間(ハーフトーン)」にすると、自動的に「センターPU + タップされたリアPU」の組み合わせになり、王道のチャキッとしたカッティング向きのハーフトーンが得られます。
PAC611 (SH配列)

フロントにP-90タイプを積んだこのモデルは、タップをONにするとリアハムバッカーの「ネック側のコイル」のみがONになります。
ブリッジ側コイルを鳴らすよりも少しふくよかな音になり、フロントのP-90との切り替えやミックス時に音のバランスが取りやすいよう設計されています。
Standard Plus / Professional (SSH配列)

最新モデルは下位のSSHモデルと若干違う点があります。タップOFF時の「センターとリアの間(ハーフトーン)」を選択した際、旧モデルのように自動タップされず、「センターPU + リアハムバッカー(ノンタップ)」の組み合わせになります。
これにより、シングルコイルの抜け感にハムバッカーの分厚いローミッドが加わった、よりモダンで力強いミックストーンを出力できるようになっています。
ピックアップの特性に応じて細かく仕様を調整してくるあたりは、YAMAHAの徹底したこだわりを感じる部分ですね。


価格を抑えるなら112系。ただし現行品は実物を確認したい

Pacifica 112には「安いのによくできている」という評価があります。
筆者自身、約10年前ならこの評価にかなり納得していました。
当時所属していたギタースクールには備品として112があり、レッスンでも実際に使用していました。低価格ながら扱いやすく、幅広い演奏に対応できるよくできたギターという印象でした。
ところが近年、店頭で現行の112を触った際には印象が変わりました。
特に気になったのがネックです。
筆者が確認した個体では、昔触っていた112と比べてネック表面の仕上げが粗く感じられました。価格を考慮しても、左手が常に触れる場所だけに見過ごしにくい部分です。

確かに612まで上げればSeymour Duncanのピックアップやロックペグなど、分かりやすいパーツ差があります。
それでも筆者が112と612の差で重視するのはネックです。
ピックアップやペグは後から交換できます。しかしネックはギター本体の弾き心地を大きく左右し、演奏している間は左手がほぼ触れ続けます。
だから予算に余裕があるなら、筆者は112より612をおすすめします。
高価なパーツが付いているからではなく、長く触り続ける楽器として、価格差を払う意味を感じる部分が多いからです。
ただし、112そのものを候補から外す必要はありません。
購入予算を抑えることが最優先なら、SSH構成で幅広い演奏に対応できる112の立ち位置には今でも意味があります。
その場合は、過去から積み重なった「Pacifica 112は作りがいい」という評判だけで決めず、できれば店頭で実物を触ることをおすすめします。
特にネックの表面やフレット周辺を確認し、握ったときに仕上げの粗さが気にならない個体を選びたいところです。
今筆者が買うなら中古を狙います。
予算優先ならこれ
YAMAHA Pacifica 112

価格を抑えてPacificaを選びたい人向け。
幅広く使える入門モデルですが、現行品はできれば実物を確認して選ぶのがおすすめです。
212系は見た目に価値を感じるなら選ぶ
212系は112系を土台に、外観の違いへ魅力を感じる人が選ぶモデルです。
筆者自身は、メイプル材を使ったラミネートによる装飾へ価格差ほどの価値を感じていません。
そのため性能や演奏性を理由にグレードを上げるのであれば、筆者なら112で予算を抑えるか、さらに予算を用意して611・612を検討します。
逆に、212の外観そのものが気に入ったなら話は別です。
ギターは手で触れる道具であると同時に、何年も目にするものでもあります。見た目を理由に212を選ぶなら、その価格差には本人にとって明確な意味があります。
212は112より上だから選ぶモデルではなく、その外観が欲しい人が選ぶモデルです。
311|P90+ハムバッカーを手頃に使いたい人向け
311はフロントにP90タイプ、リアにハムバッカーを搭載したモデルです。
112系のSSHとは違ったキャラクターがあり、最初からP90の音が欲しい人には選ぶ理由があります。
ただ、筆者自身なら311は選びません。
このピックアップ構成に魅力を感じるなら、さらに予算を上げて611まで検討したくなるからです。反対に価格を抑えることが優先なら、幅広く対応できる112系を選びます。
311が中途半端なギターという意味ではありません。
「P90を使いたい。ただし611までの予算は出さない」という条件が揃ったときに、311を選ぶ理由が明確になります。
価格表を上から眺めて「112より上だから311」と選ぶより、P90を使う目的があるかどうかで判断したいモデルです。
611|邦楽ロックやアニメ系なら612より面白い

611と612で迷った場合、汎用性を優先するなら筆者は612を選びます。
しかし、普段からクランチ以上のゲインで弾くことが多く、少し派手で押し出しのある音が好きなら611がおすすめです。
それはフロントのP90が、612とは違ったキャラクターを持っているからです。
筆者は楽器店勤務時に611を弾く機会がありましたが、612よりも少し大味で、音のキャラクターが前へ出てくる印象があります。
繊細なニュアンスを幅広く拾うというより、ギター側から「こう鳴る」という色を足してくれる感覚です。
そのため、邦楽ロックやアニメ系の楽曲との相性が良く、クランチから歪ませたサウンドを中心に使う人なら611の個性を活かしやすいです。
反対にクリーンから歪みまで一台で幅広く対応したいなら612を選びます。

611と612はどちらが上という関係ではありません。
612の万能性を少し削ってでも、611のキャラクターが欲しいか。
ここが選択の分かれ目です。
PAC611|P90の個性を選ぶ
PAC612|迷ったらこちら
612|迷ったらこれ。ロックギターとして完成度が高い

Pacificaシリーズの中から幅広い人へ一本すすめるなら、筆者は612を選びます。
理由は、Pacificaらしい扱いやすさを残しながら、楽器として長く使えるだけの仕上がりとパーツが揃っているからです。
実際に生徒さんが所有している612を弾いてきましたが、Seymour Duncanのピックアップによるサウンドには良い意味での「お馴染み感」があります。
奇をてらった音ではありません。
ミッドに力があり、クランチからしっかり歪ませた音まで作りやすい。古き良きロックギターの延長線上にあるサウンドです。
さらにSSHなので、リアハムバッカーだけに用途を限定されません。
クリーンやカッティングからロック系のリードまで一本で対応しやすく、「今日は何を弾くか分からない」という場面でも持ち出しやすいギターです。
612で評価したいのは高級パーツだけではない
612を見ると、Seymour Duncanのピックアップやロックペグなどに目が行きます。
もちろん、それらも112系との価格差を作っている要素です。
しかし実際に弾き比べた経験では、筆者が612をすすめる理由はパーツのブランド名だけではありません。
特に差を感じるのがネックです。
112系で気になった表面の粗さが612では目立たず、演奏中に左手の動きを邪魔しないだけの仕上がりがあります。
ギターではピックアップ交換が定番の改造として扱われますが、弾き心地を作るネックはそう簡単に交換する部分ではありません。
だから112と612の価格差を見るなら、
「Duncanが載っているから高い」
だけではなく、
「長く触り続ける楽器そのものへ、どこまでお金を払うか」
で考えた方がいいです。
その意味では、これから何年も使う一本を探していて予算を用意できるなら、112より612を選ぶ価値は十分にあります。
612にも気になるところはある
一方で、612を万能な優等生として終わらせるつもりはありません。
筆者がまず気になるのは重量です。
これまで触れた612では重さを感じる個体が多く、座って短時間弾くだけなら問題にならなくても、立って長時間演奏すると負担になりやすい印象があります。
ライブで長く立奏する人なら、購入時に重量を確認したいところです。
もうひとつはロックペグです。
612にはGrover製のロックペグが採用されていますが、筆者は操作性ではGOTOH製のロックペグを好みます。
これはGroverの品質が低いという話ではなく、弦交換を含めた扱いやすさでGOTOHの方が使いやすいという評価です。
実際、上位のStandard PlusではGOTOH製ロックペグが採用されており、このあたりも筆者がStandard Plusに魅力を感じるポイントです。
612はStandard Plusが登場した今でも買う価値がある?
あります。
Standard Plusを実際に弾くと、仕上げや演奏性では明確に上だと感じました。それでも612には、Standard Plusとは違う音の魅力があります。
612はミッドの押し出しが強く、Seymour Duncanを使った馴染みのあるロックサウンドです。
Standard Plusはもっとクリアで、各弦の分離がよく、高域の煌びやかさも目立ちます。
つまりStandard Plusの登場によって612が古くなったわけではありません。
ロックギターらしい力強さが欲しいなら612。よりクリアな音と演奏性を求めるならStandard Plus。
価格差だけでなく、このサウンドの違いまで含めて選ぶのがおすすめです。
5年使われたPAC612を見て分かったこと
生徒さんが教室へ入る以前から約5年間使用しているPAC612を、筆者も継続的に見る機会があります。
その個体では、ネックや電装系に大きな問題は出ていません。フレットも消耗はあるものの、擦り合わせで対応できる範囲でした。ジャックのナットを増し締めした程度です。
もちろん一個体の観察なので「すべての612が何年持つ」とまでは言えません。
それでも、長く使う一本として612をすすめるとき、単なるスペック表ではなく実際に使われてきた個体を見た経験が根拠になっています。
迷ったらこれ
YAMAHA Pacifica 612

一本で幅広く使えて、ロックギターらしい力強さも欲しいなら本命。
予算を用意できるなら、筆者は112より612をおすすめします。
Standard Plus|筆者が今買うならこのモデル

現在のPacificaシリーズから筆者が自腹で一本選ぶなら、Standard Plusです。
612より高価だからではありません。
実際に試奏して最も印象に残ったのが、弾き方を規定されない演奏性と、各弦がきれいに分離するクリアなサウンドだったからです。
612も十分に弾きやすいギターですが、Standard Plusを持った直後に感じた演奏性の差はかなり大きなものでした。
ネックを握ったときの感触から各部の仕上げまで整っていて、ギター側の癖に自分の弾き方を合わせる必要が少ない。速いフレーズでもコードでも、右手と左手の入力に素直についてきます。
「このギターならこう弾きたい」という強烈な個性より、弾き手がやろうとしたことを邪魔しない方向へ作り込まれたギターです。
筆者ならこれ
YAMAHA Pacifica Standard Plus

筆者が現在自腹で一本選ぶならこのモデル。
高い演奏性と、各弦がきれいに分離するクリアなモダンサウンドが魅力です。
612より上質。でも612の上位互換ではない
仕上げや演奏性だけを比べれば、筆者はStandard Plusを612より明確に高く評価します。
しかし、Standard Plusは612の単純な上位互換ではありません。
Standard PlusにReflectoneはコードを弾いたときの各弦の輪郭が分かれ、クリーン〜クランチやカッティングでは、この分離感がそのまま強みになります。
ただし、強い歪みなら話は別です。分離の良い音は、裏返せば音が塊になりにくい音でもあります。アンプへ挿して深く歪ませたときのミッドの押し出しは、612の方が素直にロックらしい音へ届きます。
強めの歪みが主体なら612。クリーン〜オーバードライブ、カッティング、ネオソウルや現代的なR&Bまで重視するならStandard Plusです。
Standard Plusに払う価格差は「612より良い音」に対するものではなく、より高い演奏性と仕上げ、そしてクリアでモダンな方向性に対するものです。

09-42で弾いても感じたクリアさ
筆者が試奏したStandard Plusには09-42ゲージの弦が張られていました。
この条件でも音のクリアさと高域の煌びやかさはかなり印象的でした。
一方、普段10-46を使う立場からすると、弦を太くしたときにもう少しハリのある方向へ変化する余地も感じます。
実際に10-46へ交換した状態を試したわけではないため、ここは試奏時点での印象に留まります。ただ、少なくとも09-42を張った状態で「軽い音だから物足りない」という評価にはなりませんでした。
弦のゲージまで含めて自分のセッティングへ追い込めば、まだ違う表情が出てきそうなギターです。
アーミングするならStandard Plusを選ぶ理由が増える
トレモロを積極的に使う人なら、筆者はさらにStandard Plusを選びやすくなります。
612からブリッジ周辺の仕様が変わり、アーム操作はStandard Plusの方がスムーズです。
大きく動かす使い方だけでなく、コードや伸ばした音へ軽く揺れを加える場面でも扱いやすさを感じました。
さらにロックペグもGOTOH製です。
612のGrover製ロックペグも必要な機能は果たしますが、筆者自身は弦交換時の操作を含めてGOTOHの方が使いやすいと感じています。
こうした一つひとつの違いは、スペック表では小さく見えます。
しかしネック、ブリッジ、ペグと演奏中に直接関わる部分の使いやすさが積み重なると、楽器全体の印象はかなり変わります。
強烈な個性が欲しいなら別のギターでもいい
Standard Plusを高く評価している一方で、誰にでもすすめるつもりはありません。
むしろ、この価格帯まで来ると「Pacificaである必要があるか」まで考えた方がいいです。
Fenderらしいクラシカルな音が欲しい。P90の荒々しさが欲しい。ギターそのものから強烈なキャラクターを感じたい。
そうした要求がはっきりしているなら、Standard Plusの癖の少なさは物足りなく映ることがあります。
筆者がStandard Plusを選ぶのは、その逆です。
特定のジャンルへ寄せるより、自分の弾き方や機材によって音を作りたい。その土台になるギターには、余計な癖より高い演奏性と素直な出音を求めます。
弾き手の個性をギター側から決めてほしくない人にとって、Standard Plusはかなり魅力的な選択です。
そして、この完成度が現在の価格帯で手に入るなら、筆者は安いと評価します。
【理想とロマンの究極系】 Professional (PACP 12)

Standard Plusのモダンなスペックをベースに、国産(Made in Japan)の丁寧なモノづくりを注入。
ローポジションからハイポジションにかけて指板のカーブが平らになる「コンパウンド・ラジアス指板」を採用し、極限まで弦高を下げたテクニカルなセットアップにも対応します。
さらに、YAMAHA独自の「I.R.A.処理(Initial Response Acceleration)」を施すことで、新品の状態から何年も弾き込まれたような豊かなレゾナンスを生み出します。
Professionalは日本製、I.R.A.処理、コンパウンドラディアス指板を採用した最上位モデルです。
ただ、ここは価格だけでおすすめしにくいグレードでもあります。
特にI.R.A.処理へどこまで価値を感じるかは、スペック表を読んでも答えが出ません。Standard Plus自体の完成度が高いため、価格差を納得できるか実物で確認する意味があります。
国産、コンパウンドラディアス、I.R.A.まで含めて欲しいならProfessional。試奏できず、コストとのバランスも重視するならStandard Plusに留める。この選び方が現実的です。
まさに「パシフィカの究極系」です。
Standard Plusとの価格差
Professionalは日本製、I.R.A.処理、コンパウンドラディアス指板を採用した最上位モデルです。
ただ、ここは価格だけでおすすめしにくいグレードでもあります。
特にI.R.A.処理へどこまで価値を感じるかは、スペック表を読んでも答えが出ません。
Standard Plus自体の完成度が高いため、約倍の価格差を納得できるか実物で確認する意味があります。
国産、コンパウンドラディアス、I.R.A.まで含めて魅力を感じればProfessional。
試奏できず、コストとのバランスも重視するならStandard Plusに留める。
という選び方が現実的です。
最上位モデル
YAMAHA Pacifica Professional

Pacificaシリーズの最上位に位置する日本製モデル。
価格よりも仕上げや演奏性、完成度を優先して選びたい人向けです。



Pacificaを買わない方がいい人もいる
ここまでPacificaの各モデルを見てきましたが、予算に合うPacificaを探せば誰にでも正解になるわけではありません。
Pacificaの長所である「幅広く使えること」は、裏返せば特定の方向へ強烈に振ったギターではないということでもあります。
欲しい音や弾き方がすでにはっきりしているなら、別のギターを選んだ方が近道になることがあります。
Fenderを選んだ方がいい人|クラシカルな音が欲しい

ストラトキャスターらしい音そのものに憧れているなら、筆者は最初からFenderを検討します。
Pacificaもストラト系に近いシェイプを持ち、SSHモデルなら似た用途で使えます。しかし実際に弾くと、Fenderにはグレードを問わず独特の瑞々しさがあります。
この部分は、単純なパーツ構成では置き換えられません。
「同じ価格ならPacificaの方がパーツが豪華」という比較だけでFenderを候補から外すと、後から本当に欲しかった音へ戻ることになります。
ヴィンテージ寄りの音やクラシカルなスタイルに惹かれているなら、Pacificaのコストパフォーマンスより、その憧れを優先した方がいいです。
Ibanez AZを選んだ方がいい人|音色数と演奏性をもっと攻めたい

同じSSHという見た目でも、Ibanez AZとPacificaでは狙っている方向が違います。
AZの特徴は、多彩なスイッチングによって一台から取り出せる音色の幅が広いことです。
さらにボディの削り方も大胆で、テクニカルな演奏を含めた現代的なプレイアビリティへ強く振っています。
Pacificaにも高い汎用性がありますが、楽器そのものへ多彩なサウンドバリエーションや攻めた演奏性を求めるなら、AZの方が目的に合います。
一方でPacificaは、AZほどモダンギターとしての主張が強くありません。
外観も比較的すっきりしていて、ジャンルを限定する雰囲気が薄い。ここもPacificaらしさです。

強いこだわりがまだない人ほどPacificaは選びやすい

FenderにはFenderの音があり、AZにはモダンギターとしての明確な方向性があります。
Pacificaは良くも悪くも、その主張が強くありません。
だから「絶対にこの音が欲しい」という人より、いろいろな音楽を弾きながら自分の好みを探したい人に向いています。
これは最初の一本を探している人だけの話ではありません。
すでに個性的なメインギターを持っていて、そこから外れた曲を担当できるサブギターを探している人にも同じことが言えます。
最初にPacificaを買った生徒さんが、後から別のメインギターを手に入れてもPacificaを残しているのは、この性格が大きいのでしょう。
欲しい個性が決まっているなら、その個性を持つギターを買う。まだ決まっていない、あるいは一台で広く対応したいならPacificaを選ぶ。
この基準なら、「Pacificaはコスパがいいから」という理由だけで他ブランドと迷う必要がなくなります。
Pacificaが大衆車のようなギターだというのは、ここにもつながります。
強烈な趣味性を持ったギターを後から手に入れても、実用車には実用車の仕事が残ります。
Pacificaは主役にもなれるし、主役を降りてからも使い道がある。
この普通さこそ、Pacificaシリーズの大きな個性です。
よくある質問
Q. PAC112とPAC612で迷っています。価格差の価値はありますか?
A.予算を用意できるなら、筆者は612をおすすめします。
Seymour Duncanのピックアップやロックペグなどのパーツ差もありますが、実際に触って大きな差を感じるのはネックを含めた楽器そのものの仕上がりです。
特にネックは演奏中ずっと左手が触れる場所です。ピックアップのように気軽に交換する部分でもないため、長く使うならここへ予算をかける意味があります。
一方、購入費用を抑えることが最優先なら112にも役割があります。
「初心者だから112」ではなく、予算を抑えるなら112、長く使う一本として完成度を求めるなら612と考えると選びやすいです。
Q.611と612ならどちらがおすすめですか?
A.迷っている段階なら612がおすすめです。
SSH構成でクリーンから歪みまで対応しやすく、611より使うジャンルを限定されにくいからです。
611を選ぶ理由になるのはフロントのP90です。
邦楽ロックやアニメ系の楽曲をよく弾き、クランチ以上のゲインを多用するなら、611の少し派手で押し出しのあるキャラクターが活きます。
汎用性なら612、P90のキャラクターまで含めて欲しいなら611という選び方です。
Q.612とStandard Plusならどちらを選ぶ?
A.ロックらしい力強さを求めるなら612、クリアなサウンドと演奏性を優先するならStandard Plusです。
実際に両方を弾いた印象では、612はミッドの存在感が強く、Seymour Duncanによる馴染みのあるロックサウンドが魅力です。
Standard Plusは各弦の分離が良く、高域も煌びやかです。ネックを含めた仕上げや弾きやすさについても、筆者はStandard Plusを上に評価します。
ただし、これは単純な上位互換ではありません。
Standard Plusの方が高価でも、欲しい音が612にあるなら612を選んだ方が満足できます。
筆者自身が現在一本買うならStandard Plusを選びます。
Q.初めてのギターに612を選ぶのは高すぎますか?
A.予算に無理がなければ、最初から612を選んでも問題ありません。
初心者だから安いギターから始めなければならない、という理由はないからです。
むしろギターを続ける前提なら、ネックの仕上げやパーツまで含めて長く使える612を最初から選ぶことで、早い段階での買い替えを避けられます。
ただし、ギター以外にもアンプやケーブルなどを一式揃える必要があります。
612を買った結果、アンプなど必要な機材へ予算を回せなくなるなら、112を選んで演奏環境全体を揃える方が合理的です。
Q.Pacificaは中級者以上になったら物足りなくなりますか?
A.演奏歴だけを理由に買い替える必要はありません。
実際にレッスンでも、Pacificaから別のメインギターへ移ったあと、Pacificaをサブとして使い続けている人がいます。
上達すると「もっと高いギターが必要になる」というより、自分が欲しい音や弾き心地が具体的になります。
そこでFenderのようなクラシカルな音が欲しくなればFenderを買えばいいし、よりモダンな演奏性が欲しくなればIbanez AZなども候補になります。
Pacificaはその後も、幅広い曲を担当できる一本として役割を残しやすいギターです。
Q.Pacificaをライブで使っても問題ありませんか?
A.問題ありません。
特に611・612以上なら、ライブだからという理由だけで別のギターを用意する必要はありません。
むしろ612はクリーンから歪みまで対応しやすいため、一回のライブで音色の違う曲を何曲も演奏する場合に使いやすいギターです。
ただし612については、筆者が触った個体では重さを感じるものが多くありました。
長時間立って演奏するなら、音やスペックだけでなく実際の個体重量も確認することをおすすめします。
この記事のポイント
- 予算を抑えるなら112、長く使う完成度まで求めるなら612
- 611はP90のキャラクター、612はSSHによる汎用性
- クリアなモダンサウンドと演奏性を重視するならStandard Plus
- FenderやIbanez AZほど強い方向性を持たないことがPacificaの強み
- 最初の一本からサブギターまで役割を失いにくい「大衆車」のようなシリーズ
Pacificaは、強烈な個性で選ばれるギターではありません。
しかし、そこがこのシリーズの面白いところです。
最初は何を弾きたいのか定まっていなくても使える。演奏を続けて好みが変わっても対応できる。そして趣味性の強いメインギターを手に入れたあとも、サブギターとして仕事が残ります。
だから「初心者だからPacificaを買う」という選び方では、少しもったいないです。
予算を抑えるなら112。ロックを中心に長く使える一本なら612。P90のキャラクターが欲しいなら611。演奏性とクリアなサウンドまで求めるならStandard Plus。
自分が何にお金を払いたいのかが決まれば、選ぶべきPacificaも決まります。
筆者自身なら現在はStandard Plusを選びますが、幅広い人へすすめやすい価格と完成度のバランスでは612が依然として強いモデルです。
まずは気になるモデルを実際に触ってみてください。特に112と612で迷っているなら、スペック表を見比べるだけでなくネックの仕上がりを自分の手で比べると、価格差の意味がかなり分かりやすくなります。
3問でチェック
あなたに合うPacificaはどれ?
ここまで読んでも決めきれない人向けに、
重視したいポイントから候補を絞ってみます。
まず、価格をできるだけ抑えることを優先したい?
P90らしい個性的な音や、少し派手なロックサウンドに惹かれる?
最後に、どちらの方向性に魅力を感じる?
診断結果



























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