「ダイナコンプからの卒業」は、ギタリストとしての耳が一段階レベルアップした証拠です。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。新潟の冬は鉛色の空が続きますが、ペダルボードの中だけは極上のトーンで彩りたいものですね。
「コンプを使うと音がペシャンコになる」「ダイナコンプの“パコパコ感”は好きだけど、もう少しナチュラルに艶を出したい」
そんな悩みを抱えていませんか? それはあなたが**「エフェクトとしてのコンプ」から「整音(トリートメント)としてのコンプ」**を求め始めているサインです。
結論から言うと、スタジオクオリティの「正解」を知りたければ、UAFX 1176 か UAFX LA-2A を導入するのが最短ルートです。
なぜなら、これらは世界中のレコーディングスタジオで「通すだけで音が良くなる」と証明された回路そのものだからです。今回はその工学的・音楽的な違いを深掘りします。
UAFX 1176 Studio Compressor|攻撃的な「FET」のレスポンス

UAFX 1176は、スタジオの名機「UREI 1176」を再現したペダルです。このコンプレッサーの心臓部はFET(Field Effect Transistor)という素子で構成されています。
瞬間的なピークを叩く「超高速アタック」
1176の最大の特徴は、工学的に見ても異常なほど速いアタックタイム(反応速度)です。実機では20マイクロ秒(0.00002秒)というスピードで動作します。
これにより、ピッキングした瞬間の鋭いピーク(トランジェント)を逃さず抑え込むことができます。
カッティング: 音の粒が均一になり、「チャキッ」としたリズムの壁を作れる。
スラップ/速弾き: 音の暴れをねじ伏せ、ミスのないタイトな演奏に聴こえさせる。
「ALL Buttons In」モードによる倍音付加
有名な「全押しモード」も再現されています。これはレシオボタンを全て押すことで回路のバイアスが崩れ、過激な倍音歪み(サチュレーション)が発生する現象です。
単なる音量圧縮ではなく、コンプ自体が一種の「歪みエフェクター」のように機能し、ロックなパンチ力を生み出します。Led Zeppelinのような「歪んでいないのに太くて荒い音」の正体はこれです。
UAFX Teletronix LA-2A|音楽的な「オプティカル」の包容力

対するLA-2Aは、T4オプティカル・セル(光学式)というアナログパーツを用いたコンプレッサーです。
光の減衰が生む「非線形な挙動」
仕組みはシンプルで、「入力信号が強くなると内部でパネルが光り、その光をセンサーが感知して音量を下げる」というもの。この「光ってから消えるまで」のタイムラグが、独特のスローなアタックとリリースを生みます。
工学的には「反応が遅い」と言えますが、音楽的にはこれが**「自然なコンプレッション」**として聴覚に作用します。
エンベロープの保持: ピッキングの初期衝動(アタック)を潰さず、サスティン部分だけを自然に持ち上げる。
周波数依存性: 高域よりも低域〜中域に対して反応しやすく、音が太くリッチに聴こえる。
ツマミが少ないのは「正解」が決まっているから
LA-2Aには基本的に「Peak Reduction(潰し具合)」と「Gain(音量)」しかありません。これは「決定回避の法則」という心理学的なメリットに繋がります。
「細かい設定ができない」のではなく、「音楽的に破綻しない設定に固定されている」ため、プレイヤーは迷わず演奏に集中できるのです。
スペックと使い所の比較

「どっちを買えばいいか分からない」という迷える子羊のために、特性を整理しました。
| 特徴 | UAFX 1176 (FET) | UAFX LA-2A (Optical) |
| 音の質感 | 硬質・タイト・攻撃的 | 軟質・ウォーム・自然的 |
| アタック | 超高速 (トランジェントを制御) | 低速 (アタックを逃してサスティンを稼ぐ) |
| 倍音成分 | ジャリッとしたエッジ感 | ふくよかな中低域の厚み |
| 操作性 | INPUTで潰し具合を決める (ややコツが必要) | ノブを上げるだけ (誰でも良い音) |
| 推奨ジャンル | ファンク、ロック、メタル、フュージョン | バラード、ブルース、ジャズ、ネオソウル |
| 役割 | 前に飛び出す「攻め」の音 | アンサンブルに馴染む「守り」の音 |
「コンプは下手になる」という都市伝説へのアンサー
よく「コンプを使うとダイナミクスが失われて下手になる」と言う人がいますが、これは工学的な誤解です。
正しくは、コンプレッサーは**「聴感上の情報量を増やす装置」**です。
S/N比と詳細度: 小さな音(ゴーストノートや指板の擦れる音)を持ち上げることで、演奏のニュアンスが聴こえやすくなります。
プレイの安定化: プロのテイクが上手く聴こえるのは、右手のタッチコントロールが完璧だからですが、コンプはその「理想的な波形」に近づける補助輪ではなくブースターとして機能します。
下手隠しではなく、「自分の意図したニュアンスを、リスナーの耳に確実に届けるための翻訳機」と捉えてください。
両方欲しい? それなら「UAFX MAX」という選択肢

「1176のパンチも欲しいし、LA-2Aの艶も欲しい。選べない!」
そんな選択のパラドックスに陥っているあなたには、UAFX MAX Preamp & Dual Compressor が最適解です。
このペダルは、内部で1176とLA-2A(+ Dyna Comp)を2台同時に使用できます。
しかも、UA 610 チューブプリアンプの回路までエミュレートしているため、通すだけで真空管特有の偶数次倍音が付与され、ライン録音でも音が細くなりません。
直列接続(Series): 1176でピークを叩いてから、LA-2Aで滑らかにする(スタジオの定石テクニック)。
並列接続(Parallel): 原音の芯を残しつつ、コンプ音をブレンドする。
これ一台あれば、今後コンプレッサー探しの旅に出る必要はなくなるでしょう。
よくある質問(あなたはどっち派?)
最後に、具体的なアーティストや楽曲イメージで選んでみましょう。
Q. どっちが自分のスタイルに合う?
UAFX 1176:
Cory Wongのようなキレッキレのカッティング、Van Halenのようなリフ、B’zのような松本孝弘的粘りのあるリード。UAFX LA-2A:
John Mayerのような甘いクリーン、Larry Carltonのような歌うリード、宇多田ヒカルのバックで鳴っているような空間系と馴染む音。
まとめ
結局のところ、コンプレッサー選びは「音のダイナミクスをどうデザインしたいか」に尽きます。
音を「点」で捉え、リズムを強調したいなら 1176。
音を「線」で捉え、メロディを歌わせたいなら LA-2A。
全部入りでスタジオ環境を足元に再現したいなら MAX。
「たかがコンプ、されどコンプ」。この1台を通すだけで、アンプからの出音がプロのCDのような質感に変わる体験を、ぜひ味わってみてください。あなたのギターライフが、より洗練されたものになりますように。

UAFX Teletronix LA-2A Studio Compressor

UAFX MAX Preamp and Dual Compressor
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