ギターを趣味で弾いていると、「歪みペダル沼」にハマる瞬間がある。
その中でも定番中の定番──“ビッグマフ”シリーズに手を出す人は多いはず。
でも実際に使ってみると、「音がでかすぎる」「抜けが悪い」「扱いにくい」なんて声もよく聞く。
そんな中、異色の存在として注目されているのが今回紹介するOP AMP BIG MUFF Piだ。
ビッグマフとは?
「ビッグマフって名前は聞いたことあるけど、実際どんなエフェクター?」
という人も多いはず。
ビッグマフ(BIG MUFF)は、ELECTRO-HARMONIX社が1969年に開発したファズ/ディストーション系エフェクターで、
長年にわたり数多くのギタリストに愛され続けている名機だ。
■ ビッグマフの特徴
轟音ファズと滑らかなサステインが共存する独特のサウンド
分厚く伸びる音で、パワーコードからソロまで使える
中高域が控えめで“引っ込む”音が特徴(モデルにより差あり)
特に90年代のオルタナ系やシューゲイザー系サウンドでは、
「ビッグマフがないと始まらない」とまで言われることもある。

■ 代表的な使用ギタリスト
David Gilmour(Pink Floyd)
Billy Corgan(Smashing Pumpkins)
J Mascis(Dinosaur Jr.)
The Edge(U2)
Dan Auerbach(The Black Keys)
モデルによってサウンド傾向が異なるため、マニアの中では“どのマフか”が非常に重要な話題になる。
今回紹介するOP AMP BIG MUFFは、そんなビッグマフの中でもかなり異端な位置づけにあるモデルだ。
ビッグマフなのに“オペアンプ”?その時点で異端
OP AMP BIG MUFFは、通常のビッグマフとは違ってトランジスタではなくオペアンプ(OP AMP)で歪ませている。
ファズエフェクターの中でもかなり珍しい特徴。
この“違い”が、音のキャラクターや弾き心地にも大きな影響を与えている。
例えるなら、BOSSのディストーションを踏んでいるような、パリッとした立ち上がりの良さがある。
「ビッグマフ=粘っこい」「ちょっと引っ込む」みたいな印象を持っていた人には、良い意味で裏切られる一台だ。
弾いてみると分かる、“扱いやすさ”の正体
ビッグマフって実は玄人向けの側面がある。
音は気持ちいいけど、場面を選ぶし、バンドの中では埋もれがち。
その点、このOP AMP BIG MUFFは明らかに“扱いやすさ重視”の設計になっている。
スムーズなレスポンスと明瞭な輪郭
オペアンプならではの素直なゲイン感とクリアな分離感が特徴。
ファズというよりは、ファズライクなディストーションという印象。
ギター側のボリュームへの追従も良好で、クランチからヘヴィな壁音まで幅広くコントロール可能。
“抜けの良いディストーションが欲しいけど、ビッグマフの風味も欲しい”なんてわがままにも応えてくれる。
トーンバイパスでオーガニックに変化
OP AMP BIG MUFFの最大のギミックとも言えるのが、トーンバイパススイッチだ。
これをオンにすると、トーン回路がバイパスされ、よりストレートでオーガニックな音になる。
・中域の押し出しが強くなる
・倍音が素直に伸びる
・抜けがグッと良くなる
結果的に「シンプルなセッティングでも気持ち良く鳴る」という、初心者にとってもありがたい仕様になる。
“癖の少なさ”は魅力でもあり、物足りなさでもある?
ビッグマフシリーズに期待する“暴れ馬感”は控えめ。
これは良くも悪くも「万人向けの味付け」と言えるだろう。
たとえば、トーンベンダーのようなクセ強サウンドが好きな人には少し物足りなく感じるかもしれない。
でも逆に言えば、「初めてのビッグマフ」としては理想的なバランス。
ファズっぽい音で、でも暴れすぎず、バンドにも馴染む──
このポジションって実はかなり希少だ。
他モデルとの比較|“あのマフ”たちと比べてどうなの?
ビッグマフとひと口に言っても、その系譜は非常に多彩。
ここでは特に人気の高い3モデル──アメリカン、ロシアン、ラムズヘッドとOP AMP BIG MUFFを比較してみる。
モデル名 | 特徴 | 音の傾向 | 向いている使い方 |
---|---|---|---|
アメリカン | スタンダード | 高域が鋭く、派手で暴れる | ソロやリードで存在感を出したい |
ロシアン | 太くてダーク | 中低域が豊かで図太い | パワーコードや轟音バッキング向き |
ラムズヘッド | ヴィンテージ | 滑らかで奥行きのあるトーン | 奥行きのあるオルタナ・シューゲイザー |
OP AMP | オペアンプ駆動 | 素直で明瞭、BOSS的タッチ感 | 歪みとのハイブリッド用途に最適 |
OP AMPは「癖を抑えたビッグマフ」
他のビッグマフが“キャラの強さ”を前面に出しているのに対し、OP AMPは“誰でも扱いやすい設計”が際立っている。
アメリカン:ド派手だけどピーキー
ロシアン:太いけど抜けにくい
ラムズヘッド:繊細だけどレンジ狭め
OP AMP:中庸で万能、でもビッグマフの風味はある
要するに、OP AMPは「はじめてのビッグマフ」としても、「バンドで埋もれない歪み」が欲しい人にもぴったりの選択肢だ。
OP AMP BIG MUFFは“理想の入り口”
✔ ビッグマフだけど素直で扱いやすい
✔ オペアンプによるレスポンスの良さが◎
✔ トーンバイパスで音が前に出る
✔ 初心者でも気軽に扱える“優等生ファズ”
極端な個性はないけれど、その分クセがなく、どんなセッティングにも柔軟に対応できる。
「エグすぎないマフが欲しい」「歪みペダルを増やしたいけど迷ってる」──
そんな人にはぜひ試してほしい一台。
どこか“地味だけど信頼できる相棒”のような存在感。
一台持っていて損はない。
