毎日、ギターに向かっている。
コードも覚えたし、スケールもひと通り押さえた。
フレーズも何度も弾いている。けれど、なぜか上手くならない。
「何かが違う」と感じているのに、どう直せばいいかわからない。
そんな壁にぶつかっている独学ギタリストは、少なくないはずだ。
上達しない理由は、才能のなさでも、努力不足でもない。
多くの場合、問題は練習法の中身にある。
ただ繰り返すだけの練習は、時として逆効果になる。
それどころか、身体やメンタルに悪影響を与えることさえある。
この記事では、反復練習の落とし穴と、そこから抜け出すためのアプローチを紹介する。
ポイントは、「どう練習するか」だ。
反復練習は“やり方次第”で成長を止めてしまう
「100回繰り返せば指が覚える」
この考え方は、間違いではない。ただし条件がある。
正しいフォーム・正しい音・正しい意識で弾けていることが前提だ。
逆に言えば、フォームが崩れたまま、音が汚れたままの反復は、
その“間違った状態”を脳と筋肉に刻み込んでしまう。
練習すればするほど、ヘンなクセが取れなくなる。
それが無自覚で進行するところが、反復練習の怖いところだ。
ギタリストにも“オーバーユース”は起きる
ギターはスポーツほど激しい動きを伴わないが、微細な反復動作が積み重なる楽器だ。
その結果として起きるのが、腱鞘炎、ばね指、首や肩の慢性痛といった障害である。
とくに独学者は、自分のフォームを客観視しにくい。
気づかぬうちに無理な力の入れ方や角度を固定してしまい、
そのまま毎日何時間も練習することで、身体に静かにダメージが蓄積していく。
「手が痛いけど、もっと練習すれば慣れるだろう」
――それ、実は“逆”だ。
練習をやめるタイミングを誤れば、ギターそのものを諦めざるを得なくなる。
時間を空けて繰り返す方が定着しやすい
ずっと弾き続けるよりも、「弾いて→数時間空けて→また弾く」の方が、記憶の定着には効果的だ。
これは“分散学習”と呼ばれる脳科学に基づいた学習法。
時間を空けることで、短期記憶が長期記憶に変わりやすくなる。
しかも、少しずつ変化を加えて繰り返すことで、「これは前とちょっと違うぞ」と脳が再び注目してくれる。
同じフレーズでも、
テンポを変える
違うポジションで弾く
リズムだけアレンジしてみる
といった微細なバリエーションを与えるだけで、脳の反応はガラリと変わる。
また、スマホを長時間触りがちな人も
練習→スマホダラダラ→練習というようにあらかじめスケジューリングしておくことで上達する上にコンテンツも消費できる。
これはなかなかいいのでは?
情報が多すぎると、脳は処理できない
誰かに教わる場合でも、一度に5つも6つも直されると、頭が真っ白になる。
フィードバックは、一度にひとつだけでいい。
「今日はリズムだけ意識しよう」
「フォームはそのままで、音の粒だけ揃えよう」
そんなふうに、課題を一つに絞って深く掘る方が、結果的に早く上達する。
独学でもこれは応用できる。
「今の演奏で気になったのはどこか?」
「この音をどうすればもっと綺麗に出せるか?」
自分に問いを投げることで、フィードバックを内製化できる。
初心者を脱したら、分割練習から“ランダム練習”へ
「コード練習10分→スケール練習10分→リズム練習10分」
こうした分割練習は、初期の段階では有効だ。
ただし、それだけでは実戦では通用しない。
実際の演奏は、
コードチェンジとフレーズの切り替え
表現とリズムの同時処理
即興的な判断と反応
こうした複合的な状況が常に起きる。
だからこそ、早い段階でランダムかつ複合的な練習に移行するべきだ。
曲の中でコードから単音へ切り替える。
突然テンポが揺れる。
どんなときでも自然に対応できる“瞬発力”こそが、実践的な演奏力になる。
同じフレーズを、違う方法で繰り返すと“血肉”になる
ただ反復するのではなく、視点を変えて繰り返すと、フレーズは本当に身体に染み込んでいく。
例えば:
ライブで使うことを前提にアレンジしてみる
楽器仲間に教えてみる
TAB譜や五線譜に書き出してみる
他の楽器で同じフレーズを弾いてみる
同じ内容でも、視点・目的・表現が変わるだけで、脳の記憶のされ方がまったく違ってくる。
「似てるけど違う経験」の積み重ねが、最も強い学びにつながる。
模倣は大切だが抽象化して再構築することがもっと大切
動画やライブ映像で上手なギタリストの動きを真似る。
これは、気づきを得るうえで有効な手段だ。
だが、動作を真似るだけでは、音は再現できない。
たとえ同じフォームで弾いたとしても、
力の入れ具合
ピックの角度
弦のアタックの仕方
指先や爪の触れ方
こうしたニュアンスまでは、見ただけでは再現できない。
それに、人の体はそれぞれ違う。
骨格、筋肉、関節の可動域――すべて個体差がある。
誰かのフォームを完コピすることは、場合によっては怪我のもとにもなる。
結局のところ、ミュージシャンは“耳”で弾くべきだ。
「どうすればこの音になるのか?」
「どう弦にアプローチすれば倍音が出るのか?」
その答えは、見て学ぶのではなく、聴いて考え、試して探すものである。
模倣は出発点。
そこから抽象化し、自分の身体と感覚に落とし込んでこそ、“自分の音”が育つ。
練習は、量ではなく設計で決まる
ここまで挙げてきたように、
ギターの練習で結果を出すには、反復の量ではなく、練習の設計と視点の持ち方が重要だ。
正しいフォームと脱力を前提に
負荷を一か所に集中させず
時間を空けて定着を促し
課題は一つに絞り
ランダムで複合的な演奏力を鍛え
同じ内容を違う角度から何度も扱い
模倣から自分なりの再構築へ向かう
これが、独学でも“報われる練習”を実現する道筋である。
練習、ちょっとだけ見直してみよう
毎日ギターを触って、ちゃんと時間をかけてるのにうまくならない。
そんなときって、つい自分を責めたくなる。
でも、大抵の場合はやり方の問題だったりする。
少しだけ視点を変えて、練習の組み立て方や、繰り返し方、取り組み方を見直してみると、
「あれ、なんか前より音が安定してるかも」とか、「いつの間にか指がスムーズに動くようになってきた」なんてことが、割とあっさり起きたりする。
全部を一気に変える必要はない。
今日の練習の中で、どれかひとつだけでも取り入れてみるところから始めれば、それで十分だと思う。
自信に合った練習方法を考え、試行錯誤する事で少しずつ変わっていけるはずだ。
ギタリストも筋トレせよ!|演奏力・ライブ・メンタル全方位で向上!
ギターをいくら練習しても上手くならない?そんなこと気にするな!
ギターの習得に実はそこまで重要じゃないこと5選 挫折者を救いたい。