「最近ギターを弾いても、全然うまくなってる気がしない」
「なんとなく気が乗らなくて、数日間ギターから離れてしまった」
そんな気持ち、誰しも一度は味わう。
むしろギターを“真剣に取り組もうとしている人ほど”、この“停滞感”に直面しやすい。
では、プロとして活躍したあのギターのレジェンドたちは、どうだったのか?
彼らもまた、順風満帆に見えるキャリアの中で、何度も壁にぶつかっていた。
■ 伝説のギタリストたちにも「停滞の時期」があった
◉ B.B.キング|“ポップすぎるブルース”と揶揄されても、己を貫いた
ブルースの象徴ともいえるB.B.キング。
彼の代表曲「The Thrill Is Gone」に代表される泣きのギターは、今も多くのギタリストに影響を与えている。
だが、そんな彼もキャリア初期は決して順調ではなかった。
ファーストシングルが大きなヒットにはならず、本格的に売れ始めるまで時間がかかった
出演先のクラブが火事になった際、30ドルもする愛器「ルシール」を命がけで取りに戻った
地元メンフィスで人気があっても、エルヴィスやハウリン・ウルフと比べて「自分は大スターじゃない」と感じていた
「ブルースにしてはポップすぎる」と、伝統的なブルースファンから批判された
それでもB.B.キングは、「自分が鳴らしたい音」を貫いた。
商業的な評価や同業者からの視線に揺さぶられながらも、彼が築いたスタイルは、
のちのロック、ソウル、ジャズにも大きな影響を与えることになる。
教訓:評価されない時期があっても、自分の“信じた音”を出し続けた人が、やがて評価される。
◉ ゲイリー・ムーア|バンド解散、契約トラブル、迷走──それでもギターを手放さなかった
圧倒的な速弾きと、泣きのトーン。
HR/HMとブルース、どちらでも圧倒的な存在感を放っていたゲイリー・ムーア。
しかし彼のキャリアは、挫折と軌道修正の連続だった。
初のリーダーバンド「ゲイリー・ムーア・バンド」は、デビューアルバムが不発に終わり自然消滅
キング・クリムゾン風と称されたスキッド・ロウ脱退後、G-Forceでも思うような成果は得られず
他アーティストのレコーディング参加が原因で、所属レーベルから活動制限を受ける事態に
日本で人気があったにもかかわらず、ライブアルバムが日本でリリースされない不遇も経験
メンバー脱退・ドラマーの交代・エレクトリックドラム導入など、人間関係の混乱にも悩まされた
最後に挑んだスリーピースバンド「Scars」は、怪我や体調不良で活動停止
何度も状況が崩れ、方向性を見失いそうになりながらも、
彼はギターそのものを手放すことはなかった。
結果として、彼のブルース転向以降のプレイは「Still Got The Blues」など、
より感情的で、多くの人の心を打つギターへと進化していった。
☑ 教訓:環境やタイミングに恵まれなくても、プレイヤーとして進化する道は残されている。
◉ ジミ・ヘンドリックス|“革命児”と呼ばれた男も、孤独の中で模索していた
「ギターという楽器の概念を変えた」とまで言われるジミ・ヘンドリックス。
彼のプレイは、今なお「最も影響を与えたギタリスト」のひとりとして評価されている。
しかし、彼の人生は成功とは裏腹に、非常に不安定で孤独なものだった。
貧困と家庭の不和に苦しんだ少年時代
軍を除隊後、音楽で生きるためにセッションミュージシャンとしてくすぶっていた時期が長かった
ようやくブレイクした「ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」も、わずか数年で解散
新たに模索していた音楽スタイルやアルバムは、彼の死によって未完成のまま終わった
一部の人からは「奇抜」「やりすぎ」「理解できない」と言われ、
精神的にも疲弊していたと言われている。
☑ 教訓:世界を変えるほどの才能でも、「自分の音」に悩み、「方向性」に迷うことがある。
彼らはなぜ、それでもギターを弾き続けたのか?
どのエピソードも共通しているのは──
外的要因(売上・批評・メンバー脱退・契約など)によって停滞を経験していたということ。
そしてもうひとつ共通しているのは、
その後も“ギターを持ち続けた”という事実である。
音楽と向き合う環境は、プロでも不安定だ。
だからこそ、趣味としてギターを弾いているあなたが「続けられない」と感じるのは、自然なこと。
誰かと比べたり、完璧を求めたりすることで停滞を感じたときこそ、彼らのエピソードを思い出してほしい。
「やめなかった人」にしか見えない景色がある
B.B.キングは、「ポップすぎる」と言われながらブルースを鳴らし続けた
ゲイリー・ムーアは、バンド解散とトラブルの連続でも音を磨き続けた
ジミ・ヘンドリックスは、不安と混乱の中で、新たな音楽を模索し続けた
どのギタリストも、ギターとの関係性に悩み、苦しみながらも、
それでもギターを手放さなかった。
あなたが今、少しギターから距離を取っていたとしても大丈夫。
続けることがすべてではない。だが──
再び弾きたくなった時、弾けるようにしておくこと
それが、あなたの停滞を「経験」に変える第一歩になる。