ピック選びに、自分なりの答えを持っていますか?

楽器屋のピックコーナーに立ったとき、何を基準に選んでいますか。

なんとなく見慣れたブランド。
なんとなく使っていた厚さ。
なんとなく手に取った色。

——そうやって選んでいる方は、実は少なくありません。ギター歴に関係なく。

どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。

ピック選びに正解はない、とよく言われます。

それは本当です。

ただ、「なぜ自分にそれが合うのか」を説明できるかどうかは、別の話だと思っています。

素材・厚さ・形状——この3つの軸を整理すれば、選び方の根拠は自分で組み立てられます。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
ピックって正直どれも同じじゃないの?そんなに変わる?
アド・リブ代
アド・リブ代
なんとなく使い続けてたの、自分だけじゃなかったんだって少し安心したかな。
モダン・テク子
モダン・テク子
音より先に、弾き心地が変わる。それがピックの本質だ。

ピック選びに「なんとなく」が多い理由

断言しておきます。ピック選びに「なんとなく」が多いのは、あなたの感性が未熟だからではありません。ピックという道具の構造上、理由があります。

まず、ピックの違いは弾いた瞬間にしかわかりません。

見た目では、0.6mmと0.73mmの差は区別がつきません。

素材の違いも、手に持っただけではほぼわかりません。

つまり、試奏という行為なしに「事前に正解を選ぶ」ことが構造的に難しい道具なのです。

次に、ギターを始めるとき、ピックの選び方を誰かに教わる機会がほぼありません。

弦の張り方、チューニング、コードの押さえ方——これらは教えてもらえます。
でも「なぜこのピックを選ぶのか」を体系的に教わる場は、実は少ない。

感覚と習慣で使い続けて、気づけば「なんとなくこれ」が定着します。

「なんとなく」には理由があった。それがわかれば、次は根拠を持って選び直せます。

素材が音を決める——セルロイド・ナイロン・デルリン・ウルテムの実際の違い

ピックの素材は、音の「質感」に直接影響します。EQで言えば、プリセットを変えるような話です。

セルロイド

クラシックな素材です。1950〜60年代のヴィンテージピックの多くはこれでした。アタックがマイルドで、丸みのある音が出やすいのが特徴です。弦への引っかかりが少なく、ストロークがスムーズに流れます。ジャズやフォーク的なニュアンスが欲しいときに向いています。

素材として柔らかく摩耗が早いため、温度・湿度による変形リスクもあります。長期保存には向きません。

ナイロン

よりしなりやすい素材です。弦に当たった瞬間にピック自体が負ける分、アタックが他の素材に比べてやや遅めになる傾向があります。同じ厚みで比べてもダイナミクスレンジは狭く、強弱の表現という点では不利です。

筆者の感覚では、他の素材より軽量な印象もあります。重心が低く、柔らかくまとまったサウンドが出やすい。音を「鳴らしきる」より「包み込む」ような弾き心地です。

デルリン(Tortex含む)

現在もっとも広く流通している素材のひとつです。定番のDunlop Tortexはデルリンの表面に加工を施したもので、グリップ感と均一な硬さが特徴です。アタックが明瞭で音の粒立ちが揃いやすく、摩耗にも強い。ロック・ポップ系のリズムプレイとの相性が良く、「まず何か一枚」という場面で頻繁に名前が挙がるのは、この扱いやすさによるものです。

ウルテム(Ultem)

ポリエーテルイミド系樹脂で、硬度が高い素材です。デルリンに比べて柔らかく温かいサウンドが出やすく、人の爪や、現在では商業利用できなくなった鼈甲に似たサウンドとも称されます。

触感はやや硬質ですが、弦との接点がしっかりするぶん独特の鳴り感があります。使い込むほどに自分の弾き方に馴染んでいく感覚があり、一度ハマると手放せなくなるプレイヤーが多い素材です。

厚さは「好み」ではなく「弾き方」で決まる

ピックの厚さは、よく「好みで選んでいい」と言われます。半分は正しく、半分は思考停止だと思っています。

厚さが音と弾き心地に与える影響を、もう少し具体的に整理します。

薄い(〜0.60mm)

薄いピックの最大のメリットは、振り抜きのしやすさと音量の安定感です。ピック自体がしなるため、弦に引っかかりにくく、ストロークが流れるように抜けていきます。

ただし、出せる音量の上限が低い。握り方や振り方を変えても、ダイナミクスの幅がどうしても狭くなります。音量を揃えるのは得意ですが、強弱をつけて表現する用途には向きません。

アタック感は軽やかで硬質な印象があり、アコギのストロークとの相性は抜群です。

中間(0.75mm〜0.88mm)

薄いピックほどではありませんが、振り抜きやすさと音量の安定感は十分にあります。薄いピックより広いダイナミックレンジを持ちながら、扱いやすさのバランスが取れている厚さです。

アコギからエレキまで、この厚さ帯に愛用者がもっとも多い理由はそこにあります。「汎用性が高い」と言われるのは感覚的な話ではなく、この特性によるものです。

厚い(1.0mm〜)

厚いピックの最大の強みは、ダイナミックレンジの広さです。握りの強さ、振り抜きの速さ、弦への当てる角度——これらを変えることで、音量と音色を幅広くコントロールできます。

ひとつ整理しておくと、薄いピックで出せる音量は、厚いピックでも出せます。ところが逆は成立しません。厚いピックが持つ音量の上限には、薄いピックは届かない。その意味で、表現の幅という観点からは、1.0mm前後が真のオールラウンダーと言えます。

アタック感は太めで存在感があり、音に芯が出る印象です。「もっと表現力が欲しい」と感じている方は、まず1.0mm付近を試してみてください。

モダン・テク子
モダン・テク子
薄いピックで出せる音は、厚いピックでも出せる。逆は無理。

厚さの考え方

コードストロークが中心なら薄め〜中間、単音リードや表現の幅を広げたいなら1.0mm前後が出発点になります。どちらもやりたい場合は、「まず1.0mmを手元に置いて、薄いものと比較する」という順番が、違いを体感しやすいです。

形状の選択は、自分がどう弾きたいかの宣言

ピックの形状は、音そのものより「弾きやすさ」と「ピッキングポイントのコントロール」に影響します。

ティアドロップ(標準型)

もっとも流通している形です。先端の角度が緩やかで、弦への当たり面が広い。ストローク時に安定感があり、ピックの回転や持ち替えを意識しなくて済みます。いわゆる「普通のピック」の形状はこれです。

ジャズ型(小型)

先端が小さく、尖っています。ピッキングポイントが絞られるため、速い単音フレーズやアルペジオでコントロール精度が上がります。一方、面積が小さいため最初は「どこを持てばいいか」が安定しにくい。ジャズ・フュージョン系プレイヤーに愛用者が多いですが、ジャンルを問わず単音プレイに特化するなら有力な選択肢です。

三角形(トライアングル型)


3辺それぞれを使える設計で、摩耗しても使用面を変えられます。面積が広いぶんグリップが安定しやすく、ティアドロップより持ち替えのロスが少ない。筆者がトライアングル型に落ち着いているのも、この安定感と汎用性によるところが大きいです。

形状に関して言えば、「自分の弾き方が今どこにあるか」で選ぶべきものです。コードが中心なら標準型かトライアングル、単音精度を上げたいならジャズ型を試すと、選択の根拠が立ちます。

講師として気づいた「ピック迷子」が共通して持つ誤解

ピックに関して、多くのプレイヤーが持ちやすい誤解がいくつかあります。

誤解①「小さいピックのほうがコントロールしやすい」

筆者自身が長い間そう思っていました。JAZZ IIIを使い続けていたのは、「指のサイズに対して面積が小さいほうが、余計なズレが起きにくい」という考えからです。確かに単音系のフレーズでは無類の弾きやすさがあります。

ただ、気づくのに時間がかかったことがあります。カッティングやストロークなど、動きの大きい奏法では、小ささが逆に裏目に出ます。打点がシビアになり、弦と接触した瞬間のわずかなズレの影響が大きくなる。「コントロールしやすいはず」のピックが、特定の奏法ではむしろコントロールしにくい道具になっていました。

今はトライアングル型の1.0mm前後が最もバランスが良いと感じています——というのが筆者の現在地です。

誤解②「音さえ変わればいい」

ピックを変えたとき、もっとも大きく変わるのは実は「弾いた音」より「弾いている感覚」のほうです。

以前、Tortex Standard .73mmを使っていた生徒から「もっとキレのある音を出したい」と相談を受けました。そこでmaster8 JapanのINFINIX TRIANGLE 1.0mmを試してもらいました。硬質な素材、先端が尖ったシェイプ、1.0mmという厚み、指に接する面積の広いトライアングルのサイズ感——それまで使っていたピックとはあらゆる面で個性が異なる1枚です。

弾いてもらうと、サウンドはたしかにソリッドなキレが出ました。ただ、その生徒が一番驚いていたのはそこではありませんでした。「弾き心地が全然違う」という感覚——つまり、弾いている本人にしか伝わらない部分での変化が、音の変化より大きかったのです。

ピックを変えることで「自分がどれだけ弾きやすく、サウンドをコントロールできているか」が変わります。これは音を聴いているだけではわかりません。

モダン・テク子
モダン・テク子
音が変わるより、手が変わる感覚のほうが先に来る。

誤解③「プロと同じピックを使えば近い音が出る」

あるアーティストが使っているから、という理由でピックを選ぶケースは多いです。

参考にすること自体は悪くありません。ただ、同じピックを使っても、手の大きさ・ピッキングの角度・力の入れ方が違えば音は別物になります。

「同じピックで同じ音になる」という前提だけは、いったん脇に置いておくほうがいいでしょう。

とりあえず試すべき1枚はどれか

論理を整理したところで、筆者が実際に使っているピックを紹介します。あくまで「根拠のある選択肢」として参考にしてください。

筆者がトライアングル1.0mmを軸に推薦する理由は、厚さと形状の組み合わせにあります。

まず厚さ。1.0mmはストローク・カッティング・単音弾き、どのスタイルにも対応できるダイナミックレンジを持っています。厚さのセクションで触れたように、薄いピックで出せる音量は1.0mmでも出せますが、逆は成立しません。表現の幅という観点で、1.0mmは最初から上限を広く持てる選択です。

次に形状。トライアングル型は指と接する面積が広く、グリップが安定しやすいです。ティアドロップより持ち替えのロスが少なく、奏法を切り替えながら弾く場面でも持ち位置がブレにくい。

「トライアングルはアコギやベース向き」というイメージを持っている方もいますが、筆者の考えは少し違います。ストローク・カッティング・単音とさまざまな奏法が求められるエレキギターこそ、この形状の安定感が活きます。むしろエレキとの相性も良いと感じています。

素材は耐久性なども考慮したいところですが、弾きやすさで言うと個人の感覚に左右される部分が大きいので、おしなべてこれが良いです!と断言はしません。

トライアングル 1.0mm前後

表現の幅を求めるなら、まずここから入ることをおすすめします。

Dunlop Tortex Triangle 1.0mm

サウンドハウスで在庫をチェック

ピック選びの基準点として最初に手に取るなら、これをおすすめします。

サウンド・演奏性ともにこれといった欠点がなく、全体のバランスが優れています。

定番品のため、どの楽器店でも手に入る。
「いつものピックがいつでも買える」という安心感は、長く使い続けるうえで意外と重要な要素です。

他のピックと比較するときのベンチマークとしても使いやすい一枚です。

master8 Japan INFINIX TRIANGLE 1.0mm

筆者が現在もっとも使用しているピックです。

Tortexと同じトライアングル1.0mmですが、全体の仕上げと先端の鋭角さが異なります。

弦離れが良く、スピード感のある単音弾きがしやすい印象です。

サウンドはエッジが立っていてクリア。
Tortex同様オールラウンドに使えますが、音の輪郭をもう一段はっきりさせたい場面での存在感が特に際立ちます。

INFINIXって何?

MASTER8 JAPANが独自開発した次世代素材です。
柔軟性・形状記憶性・耐摩耗性に優れており、長時間弾いてもピックが削れにくく、最初のニュアンスを保ったままプレイし続けられます。
ピックノイズが少なく弦への吸い付きが良いのも特徴で、鼈甲に近い感触と指への密着性の高さから、使い込むほどに手に馴染む素材です。

Tortexをベンチマークに使いながら「もう少しエッジが欲しい」と感じたとき、次に試してほしい一枚です。

HISTORY HP1GPH HARD

 

 

 

筆者が「隠れた名品」と思っているピックです。

弦に引っかけたときの粘り感と、滑り止めの安定感が独特で、ほかのピックにはない中毒性があります。

弦との摩擦がわずかにある分、一瞬の溜めが生じる感覚があります。
スローテンポな曲の中ではこの摩擦がプラスに働いてコントロール感が増すと感じる人も居るのではないでしょうか。

Tortexを基準に使いながら、このピックを試してみると、自分がピックに何を求めているかが見えてきます。

トライアングル 0.73mm〜0.88mm

1.0mmは少し硬く感じる、もう少し楽に弾きたいという方はこちらから。

Dunlop Tortex Triangle 0.73mm

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1.0mmより指への負担が少なく、長時間弾いても疲れにくいです。

ただ、楽に振り抜ける分、ピッキングが雑になりやすい側面もあります。
素材の曲げへの耐性はしっかりしているので、ハードなピッキングにも耐えてくれます。

Dunlop Tortex Flex Triangle 0.73mm

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通常のTortex .73mmより柔軟性が高く、ウォームなトーンが出やすいのが特徴。

薄くした分の音の太さを補いたい場合に向いています。「0.73mmだと音が細い気がする」と感じる方に試してほしい一枚です。

ARIAくまモンピック

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キャラクターもので弾きやすいピックはほとんどないのが正直なところですが、このピックは形と厚みのバランスが良く、摩耗でプリントが削れるといったこともありません。

筆者はハードな曲、特にドロップチューニングを使う場面でよく使っています。
話の種にもなるので、レパートリーとして1枚持っておく価値はあります。

注意点があるとすればセルロイド製のため強度はなく、摩耗や反りなどが起こりやすい事です。
もし試して気に入ったら他のピックよりも余分に買い込むことをおススメします。

まとめ

「なんとなく」から「なぜ」に変えることが、今回の目的でした。素材・厚さ・形状のそれぞれに論理があります。自分の弾き方を言語化できれば、選択は自分で絞れます。

自分なりの答えを持ってピックコーナーへ——それだけで、選び方が変わります。

また、人の感覚はとても鋭敏なのでその日のコンディションや取り組んでいる曲、練度によってしっくりくるものがコロコロ変わったりします。

1種類に絞るのではなく、いくつかのレパートリーを持っておくのは決して悪いことではないので、気になったピックはどんどん試してみてください。


この記事のポイント

  • ピック選びは素材・厚さ・形状の3軸で整理できる
  • 厚さは好みではなく弾き方で決まる。1.0mm前後が表現の幅では最も広い
  • 小さいピックが必ずしもコントロールしやすいわけではない
  • 音より先に「弾き心地」が変わる——それがピック交換の本質
  • まず1枚ベンチマークを決めて、そこから比較していく
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吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。
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