スラッシュの音作り|現行モデルで作る初期ガンズ風サウンド【GX-1設定あり】

80年代後半、ハードロックは巨大な商業シーンになっていました。
ギターの世界では、エディ・ヴァン・ヘイレンの登場以降、スーパーストラト、フロイドローズ、ハイゲイン、高速テクニックがギターヒーローの王道になっていきます。
https://gainfomation.net/evh-sound-make/
そこに現れたのがガンズ・アンド・ローゼズでした。
根っこにあるのは70年代のクラシックロック。
そこにパンクの荒々しさと危うさが加わる。
そしてスラッシュが手にしていたのは、最先端のスーパーストラトではなく、レスポールとマーシャルでした。
プレイの軸も、ペンタトニック、チョーキング、ビブラート、泣きのフレーズ、ワウといった、昔ながらのロックギターのボキャブラリーです。
ハイテク化していく80年代のギターに逆行するようなスタイルで、スラッシュはスターになりました。
※とは言え、70年代のギターと比べればしっかりハイテクなんですけどね。
速く弾くことだけがギターヒーローの条件ではない。
ペンタトニックをどう歌わせるか。チョーキングやビブラートでどれだけ感情を出せるか。そんなロックギターの原始的なカッコよさを、改めて証明したギタリストです。
どうも、新潟市江南区でギター講師をしている吉田です。
先日、Amazon Prime Videoで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を見ていたら、エンディングで突然流れてきたのが「Sweet Child O’ Mine」。
あのイントロが鳴った瞬間「ガンズめちゃくちゃカッコいいな」となりまして、見終わったあと、そのままギターを持ってイントロを練習してしまいました。
案外影響されやすいっていう。
改めて弾いてみると、スラッシュの音作りは面白い。
レスポールとマーシャルという王道の組み合わせですが、太いマーシャルサウンドを作れば完成、というわけではありません。
リアとフロントのピックアップを使い分け、ノブを絞って甘くしたフロントの音をブースターで持ち上げ、必要なところだけワウやディレイを加える。
機材そのものより、音をどう切り替えて使うかにスラッシュらしさがあります。
そこで今回は、1987年の『Appetite for Destruction』周辺をイメージしながら、今普通に買える機材で初期スラッシュらしい音を作るアイデアを紹介します。
本人と同じヴィンテージのレスポールやマーシャルを揃えるのではなく、音を構成している要素を分解して、現行機材へ置き換えていきます。



スラッシュ風の音は「土台」と「仕上げ」に分けて考える

スラッシュの初期の音作りは案外シンプルです。
モダンなハイゲインや複雑なエフェクトを重ねるのではなく、ハムバッカーとマーシャル系の歪みを土台にして、必要な場面だけワウやブーストを足します。
土台の3要素
- ハムバッカーのギター
- マーシャル系の歪み
- ピックアップの使い分け
仕上げの3要素
- ブースト
- ワウ
- ディレイ
土台の中で最も重要なのはマーシャル系の歪みです。
狙うのはモダンなハイゲインではなく、中域が太く、ピッキングの強弱で歪み方が変わるクラシックなマーシャルの音です。
ゲインを上げすぎると、弾き方のニュアンスが拾えず、かえってワイルドさが損なわれます。
仕上げの3要素は、主にソロや特定のフレーズで足すものです。バッキングの間は、土台だけで音が成立している状態を目指します。
ギターはレスポールでなくていい
2ハムバッカーのギターなら、スラッシュ風の音はかなり作りやすいです。レスポール型である必要もありません。
※もちろんレスポールがあれば、それに越したことは無いのですが。
レスポールが有利なのは、この後で書くピックアップの使い分けだけで、音作りがほぼ仕上がる点です。1Volume・1Toneのギターでも、イコライザーを1台足せば同じような使い方ができます。
レスポールはスラッシュを象徴する重要な要素ですが、この記事で再現したいのは形ではなく、ハムバッカーの太さとピックアップを使い分けられる構造です。
※もちろんレスポールの方が音の再現度も上がること請け合いです。
ピックはTortex Standard 1.14mm
ピックはDunlop Tortex Standardの1.0mm~1.14mmを推します。
厚めでしなりが少ないピックの方が、ピッキングの芯と単音の太さが出るからです。
リフのアタックが立ち、ハムバッカーとマーシャル系の歪みとの相性も良くなります。
本人も愛用歴のあるピックである上に入手性も高いのでとりあえずコレって感じで良さそうです。
他の選択肢なら国産ピックのマスターエイトジャパンのD-801 ティアドロップの1.0mmも近い感触で高品質なのでおススメです。
国産の代替候補
Tortex 1.0〜1.14mmに近い方向で選びやすい国産ピック。厚めのティアドロップが好みならこちらも候補です。
サウンドハウスで見るマーシャル系の歪みをペダルで作る

マーシャルのアンプがない場合、マーシャル系のペダルを「エフェクター」ではなく「アンプの代わり」として置きます。
候補は3機種です。手軽さならST-2、1台で歪みとブーストを揃えたいならJB-2、アンプらしい反応まで作り込みたいならLion ’68です。
つなぎ方は機種で変わります。ST-2とJB-2は歪みペダルなので、クリーンに設定したアンプの前に置きます。ライン録りでオーディオインターフェースに入れるなら、後ろにアンプとキャビネットのシミュレーターが要ります。Lion ’68はキャビネットのシミュレーションを積んでいるので、そのままオーディオインターフェースに送れます。
BOSS ST-2 Power Stack
マーシャルのスタックアンプらしい、太い中域を持った英国系の歪みがシンプルな操作で出せます。SOUNDのツマミ1つで、歪みの量と音のキャラクターが一緒に変わる作りです。機材構成を複雑にしたくない人の最初の1台として選びやすい機種です。
気になる点は、単体ではブーストできないことです。バッキングからソロに移るときに押し出しを足す手段がないため、ソロ用に別の1台が要ります。後で書くGE-7と組み合わせる前提で考えてください。
まず試す設定
SOUNDは11時前後、BASSとTREBLEは12時、LEVELはオフ時と同じ音量になる位置。
BOSS JB-2 Angry Driver
マーシャル系のキャラクターを持つAngry Charlie側と、BD-2系のBOSS側を1台に積んだ機種です。MODEをB>Jにすると、BOSS側がAngry Charlie側の前に入り、Angry Charlieを前から押すブーストとして使えます。価格に対してできることが多く、コストパフォーマンスは3機種の中で一番です。
注意したいのは、本体のスイッチが1つしかないことです。本体スイッチは全体のON/OFFなので、ソロでBOSS側だけを足すには、REMOTE端子に外部フットスイッチをつなぎます。B>Jモードなら、外部フットスイッチでBOSS側だけをON/OFFできます。組み方は後の「フットスイッチ1台でまとめる」で書きます。
気になる点は音のキャラクターです。アンプを鳴らした感触というより、歪みエフェクターの音に寄っています。スラッシュ風の土台に求めるアンプらしさという物差しで見ると、Lion ’68よりもう一歩届きません。
まず試す設定
MODEはB>J。Angry Charlie側はDRIVE11時前後、TONE12時、LEVELはオフ時と同じ音量。BOSS側はDRIVE9時前後と低めにして、LEVELを1時前後まで上げる。
Universal Audio UAFX Lion ’68 Super Lead Amp
ヴィンテージのマーシャルを本格的に狙うならこの機種です。弾いた瞬間の実機感は3機種の中で抜けています。ピッキングを強くすれば歪みが増え、弱くすれば落ち着く反応まで含めて、アンプを鳴らしている感触があります。
気になる点は価格です。ST-2やJB-2と比べるとかなり高額で、スラッシュっぽい音を気軽に楽しみたいという目的には予算が重い機種です。
まず試す設定:
歪みの量は12時前後から始めて、ピッキングの強弱で歪みが変わる範囲に収める。上げすぎるとスラッシュ風から外れます。
手軽に始める
シンプルな操作で英国系スタックの太い中域を作りやすい。ソロ用ブーストはGE-7などを別に足す構成向き。
1台でブーストまで
Angry Charlie側を土台にし、BOSS側を前段ブーストとして使える。ペダル枚数を増やしすぎたくない人向け。
アンプらしさ重視
ピッキングへの反応まで含めて、ヴィンテージ・マーシャル系を本格的に作り込みたい場合の候補。
マーシャルのアンプが使える場合

リハーサルスタジオなどでマーシャルのアンプが使えるなら、歪みはアンプに任せます。ソロ用には、ブースターを1台前に置けば十分です。
一例がMXR Distortion+です。
本人も使用していましたからね。
ゲインを抑えてレベルを上げ、マーシャルをもう一段押す使い方をします。DOD 250やROSS Distortionなど近い系譜のモデルもありますが、今の入手性ではDistortion+が選びやすいです。
勿論他のオーバードライブやブースターでも良いんですけどこの手のアメリカンディストーションならではの質感まで求めるならdistortion+って感じです。
ゲインを上げてしまうと過度に色がついてしまうので控えめに、9時辺りから色が付きすぎない程度で調整していきましょう。
アウトプットはマックスで、過剰なら少しずつ減らしていきます。
アンプの音が主役で、ブースターはアウトプットレベルを上げて使う事でソロでしっかり前に出る事が出来ます。
マーシャルを前から押す
マーシャルの歪みを主役にして、ソロで一段押し出すためのブースト役。
DISTORTIONは控えめ、OUTPUTを高めにして前段からアンプを押す使い方がおすすめです。

ソロの表情はワウで決まる|Dunlop Cry Baby 95Q

ワウはスラッシュのリードを象徴する要素です。フロントピックアップの太い音にワウをかけると、あの強烈な存在感が出ます。
普通のCry Babyでも再現はできますが、95Qを推します。側面のBOOSTスイッチをオンにしておけば、ワウを踏み込んだ瞬間に、設定したブーストも同時にかかるからです。ソロの頭で1回踏むだけで、音色の変化とブーストが揃います。
気になる点は、足を離すとOFFになることです。ワウを使わない区間でもブーストを保ちたい場面では、95Qのブーストは使えません。ソロ全体の押し出しはJB-2のBOSS側やGE-7に任せ、95Qはワウを踏む区間だけのものと割り切ると使い方が固まります。
まず試す設定
BOOSTはオン、ブースト量は控えめから。ワウを踏んだ瞬間に音が飛び出しすぎない位置で止める。
ワウ+ブースト
スイッチレスで踏み込むだけでON。BOOSTを有効にすれば、ワウを踏む動作と同時に押し出しも足せます。
ディレイはソロに薄く足す|BOSS DD-3T

ディレイもスラッシュを象徴するエフェクトのひとつです。
スラッシュは長年BOSS DD-3系のデジタルディレイをライブ機材に取り入れており、ギターテックのAce Bergmanによれば、同系統のディレイを『Appetite for Destruction』の頃から使用してきたとのこと。
ただし、常にディレイをかけっぱなしにしているわけではありません。ライブでも使用する場所は限られており、基本となるレスポールとマーシャルの音を前に出したうえで、ソロや特定のフレーズに奥行きを加えるために使っています。
なお、『Appetite for Destruction』のスタジオ録音で聴けるディレイが、すべてDD-3によるものというわけではありません。Guitar Worldの機材解説によると、「Welcome to the Jungle」のイントロでは、プロデューサーのMike ClinkがRoland SRV-2000をデジタルディレイとして使ったそうです。本来はラックタイプのリバーブですが、隠しモードにアクセスするとディレイが使えるんだとか。
つまりDD-3Tは、当時の録音機材を完全再現するためではなく、スラッシュが後に長く使ってきたシンプルなデジタルディレイを、現行機種で再現する選択肢として考えてください。
まず試す設定
- MODE:800ms
- E.LEVEL:9〜10時
- F.BACK:9〜10時
- D.TIME:10時前後
ソロの奥行き
薄いソロ用ディレイからタップテンポまで扱いやすい定番。DD-3系のシンプルなデジタルディレイを現行機で組む選択肢です。
狙うのは、ディレイそのものを目立たせることではありません。単音を弾いたときに少し後ろへ音が残り、ソロが乾きすぎなくなる程度から始めます。
一方、「Welcome to the Jungle」のイントロのようにディレイそのものがフレーズの一部になっている場面では、TIMEやFEEDBACK、LEVELを増やして別設定を作った方が再現しやすくなります。
リア=バッキング、フロント=ソロに割り当てる

ここがこの記事で一番伝えたい部分です。
スラッシュ風の音を少ない操作で切り替えるなら、ピックアップの切り替えを「音色の変更」ではなく「バッキングとソロの切り替えスイッチ」として使うのがおすすめです。
- バッキング・リフ:リアピックアップ。Volume10、Tone10でフル
- ソロ:フロントピックアップ。Volumeは8前後、Toneは6前後から探る
「Welcome to the Jungle」のようなリフはリアで、アタックと輪郭を最大限残します。フロントは少し絞って、丸く甘い音にしておきます。レスポールはリアとフロントにそれぞれVolumeとToneがあるので、この2つの設定を事前に作っておけます。トグルスイッチを倒すだけで、バッキング用とソロ用の音色が呼び出せます。
ここにブーストを足すと、フロントの甘い音にブーストの抜けが乗り、スラッシュらしいリードトーンになります。
同じハムバッカーとマーシャルの組み合わせでも、エディ・ヴァン・ヘイレン風の音を作るときとは考え方が逆になります。エディ風は、一つの基本音をギターのVolumeで連続的に変化させて作ります。今回の組み方は、完成形を2つ用意しておき、ピックアップで切り替えます。

1Volume・1Toneの2ハムならGE-7で埋める
今の2ハムバッカーのギターは、VolumeとToneが1つずつの仕様も多いです。この場合、リアとフロントで別々のTone設定を保持できません。
そこで、ソロ用のフロントの音をBOSS GE-7で作ります。バッキングはリアのVolume・Toneフル、ソロはフロントに切り替えてGE-7をオン、という流れです。
類似のイコライザーでも可能ですがGE-7はスイッチノイズの影響が極めて軽微なので当ブログではこちらを勧めています。
まず試す設定
- 3.2kHzと6.4kHzを少し下げて高域を抑える
- 800Hzと1.6kHzを少し上げて中域を前に出す
- LEVELを少し上げて、後ろの歪みペダルを前から押す
これで、レスポールのフロントでToneを少し絞ったような甘い音に近づきます。LEVELを上げればST-2を前から押せるので、ソロの密度も上がり、単体でブーストできないST-2の穴も埋まります。音量の上がり方は、ST-2の歪みの量によって変わります。GE-7は音色の補正というより、ソロ用のプリセットを足元で呼び出すスイッチとして置きます。
フットスイッチ1台でJB-2とDD-3Tをまとめる
JB-2を選ぶなら、BOSSのデュアルフットスイッチFS-6を1台足すと、JB-2とDD-3Tの両方を足元で操作できます。FS-6はAとBのスイッチを別々にLATCHとMOMENTARYに設定できるので、この組み方に向いています。
- A → JB-2のREMOTE端子:BOSS側(ブースト)のON/OFF。AのMODEはLATCH
- B → DD-3TのTEMPO端子:タップテンポ。BのMODEはMOMENTARY
接続はTSケーブル2本です。FS-6は9V乾電池で動き、ACアダプターの端子はありません。同じBOSSのFS-7は小型ですが、LATCHとMOMENTARYの設定がA・B共通のため、この組み方には使えません。
DD-3T側でFS-6から操作できるのはタップテンポで、ディレイのON/OFFは本体のスイッチで行います。
スラッシュ風の使い方なら、ディレイを常時オンにする必要はありません。基本はオフにしておき、ソロやディレイが必要なフレーズだけDD-3Tをオンにします。FS-6のBは、オンにしたディレイのテンポを曲に合わせるためのスイッチとして使います。
基本的なソロなら、トグルをフロントに倒してFS-6のAを踏み、JB-2のブーストを追加します。ディレイが欲しい場面だけDD-3Tもオン。ワウを使う区間では95Qを踏み込みます。
FS-7はよりコンパクトですが、今回のようにスイッチの設定をAとBとで別にしなくてはならない場合では対応できないため、FS-6をお勧めしています。
ソロ用EQ+ブースト
フロントピックアップの高域を整えつつ、中域とLEVELを持ち上げてソロ用の音を作る補助役。
JB-2とDD-3Tを操作
A側をJB-2のブースト、B側をDD-3Tのタップテンポへ割り当てる今回の構成に合うデュアルフットスイッチ。
マルチエフェクターでの音作り|GX-1で実践

マルチエフェクターでスラッシュ風の音を作る場合も、考え方はペダルボードと同じです。今回はBOSS GX-1を例にします。
GX-1にはMarshall 1959をモデリングしたBRIT STACKと、MXR Distortion+をモデリングしたDIST+が収録されています。つまり、ここまで紹介してきた「マーシャルを土台にして、ソロでは前段からブーストする」という組み方を1台の中で作れます。
今回用意するメモリーは2つです。
- 基本メモリー:バッキング、通常ソロ、ワウソロまで担当
- ディレイ強調メモリー:「Welcome to the Jungle」のイントロのように、ディレイそのものを聴かせる場面用
普段使う音は1つのメモリーにまとめ、特殊なディレイサウンドだけ別にします。
基本メモリーのエフェクト・チェイン
基本となるチェインは、
CRY WAH → DIST+ → GEQ → STANDARD DELAY → BRIT STACK → AMBIENCE
から始めます。
ポイントは、STANDARD DELAYをBRIT STACKより前へ置くことです。
現代的な音作りではアンプモデルの後ろへディレイを置く方法も一般的ですが、今回はスラッシュがライブでDD-3をアンプ前段に組み込んできた考え方に寄せます。
ディレイ音もBRIT STACKへ入力されるため、リピート音だけがきれいに浮くのではなく、マーシャル系の歪みと少し一体化した音になります。
アンプはBRIT STACKを土台にする
AMP/CABはBRIT STACK。GX-1ではMarshall 1959をモデリングしたアンプです。まずは、
- GAIN:50〜60
- BASS:45前後
- MIDDLE:60〜70
- TREBLE:50〜60
- SP TYPE:4×12″
- MIC TYPE:DYN57またはBLEND系
あたりから始めます。
GAINは上げすぎません。モダンなハイゲインを作るのではなく、ピッキングの強弱が残る程度にしておく方が、ペンタトニック、チョーキング、ビブラートといったスラッシュらしい弾き方が前に出ます。
GX-1では4×12″キャビネットのほか、SM57をモデリングしたDYN57や、SM57とR-121を組み合わせたBLEND系も選べます。
CTL1を「通常ソロ」のスイッチにする
このメモリーの中心になるのがCTL1です。
通常時は、リアピックアップ+CTL1 OFFでバッキング。ソロへ入るときはギターをフロントピックアップへ切り替え、CTL1を1回踏みます。
CTL1には、
- DIST+:ON
- GEQ:ON
- STANDARD DELAY:ON
- 必要ならAMP SOLO:ON
をまとめて割り当てます。
GX-1ではCTL1をASSIGNのSOURCEとして複数のパラメーターを同時に操作でき、1メモリーにつき8つまでASSIGNを設定できます。つまり、
- リアPU+CTL1 OFF → バッキング
- フロントPU+CTL1 ON → ブースト+EQ補正+薄いディレイの通常ソロ
という2つの完成形を作ります。この記事で紹介してきた「リアをバッキング、フロントをソロとして事前に作っておく」という考え方を、そのままGX-1へ落とし込む形です。
DIST+は通常ソロでオンにする
OD/DSにはDIST+を選びます。MXR Distortion+をモデリングしたタイプです。設定は、
- DRIVE:10〜20
- TONE:0前後
- LEVEL:高め
から始めます。
DIST+そのものでメインの歪みを作るのではありません。DRIVEを抑えてLEVELを上げ、後ろのBRIT STACKを前から押します。これをCTL1で通常ソロに入ったときにオンにすることで、フロントピックアップの甘い音+マーシャル系アンプ+前段ブーストという、この記事で狙ってきたリードトーンを作ります。
AMP SOLOは必須ではありません。DIST+とGEQだけで十分前へ出るなら使わず、音量だけもう一段欲しい場合に追加する程度で構いません。
GEQでフロントの甘さを補正する
GEQもCTL1と同時にオンにします。GX-1のGEQは、125Hz / 250Hz / 500Hz / 1kHz / 2kHz / 4kHzの6バンドです。例えば、
- 1kHz:少し上げる
- 2kHz:少し上げる
- 4kHz:少し下げる
- LEVEL:必要なら少し上げる
くらいから。
1Volume・1Toneのギターでも、フロントに切り替えたときだけGEQをオンにすることで、レスポールのフロントでToneを少し絞ったような甘い方向へ寄せられます。レスポールを使っていてギター側だけで十分作れる場合は、GEQを使わなくても構いません。
通常ソロには薄いディレイを足す
STANDARD DELAYもCTL1と一緒にオンにします。GX-1のSTANDARD DELAYではTIME、FEEDBACK、LEVELを個別に設定できます。まずは、
- TIME:300〜400ms
- FEEDBACK:低め
- LEVEL:低め
から。
ここではディレイそのものを聞かせる必要はありません。オフにすると少し寂しいけれど、オンにしていてもディレイ自体はあまり気にならない、くらいが目安です。
これでCTL1を踏むだけで、DIST+、GEQ、薄いディレイがまとめて加わり、バッキングから通常ソロへ切り替わります。
EXPペダルはワウ専用にする
通常ソロからさらにワウを使いたい場合は、EXPペダルを踏み込みます。
PEDAL FXをWAHにして、WAH TYPEにはCRY WAHを選びます。GX-1のCRY WAHは70年代のCry Babyをモデリングしたタイプです。EXP1にはPEDAL FXを割り当て、EXP SWでPEDAL FXをON/OFFできるようにします。
ここではDIST+やディレイまでEXP SWに連動させる必要はありません。それらはすでにCTL1で通常ソロへ切り替えた段階でオンになっているからです。操作は、
- バッキング:リアPU+CTL1 OFF
- 通常ソロ:フロントPU+CTL1 ON → DIST+、GEQ、薄いディレイ
- ワウソロ:その状態からEXP SWを踏み込む → CRY WAHを追加
となります。足元で何台ものペダルを踏み替える必要がなく、かなりシンプルです。
2つ目はディレイ強調専用メモリー
もう1つ用意するのが、ディレイを強調する専用メモリーです。
基本メモリーをコピーして、BRIT STACKや基本EQはできるだけそのままにします。大きく変更するのはSTANDARD DELAYです。
- DELAY:最初からON
- TIME:曲に合わせる
- FEEDBACK:通常ソロより増やす
- LEVEL:通常ソロより上げる
「Welcome to the Jungle」のイントロのような音では、ディレイは単なる奥行きではなくフレーズを構成する要素です。そのため通常ソロ用の薄いディレイとは別メモリーにしてしまった方が扱いやすくなります。
CTL1の役割は基本メモリーと同じままで構いません。ディレイ強調メモリーでも、CTL1 OFFで基本音+強いディレイ、CTL1 ONでDIST+やGEQを追加、という操作にしておけば、覚える操作を増やさずに済みます。
GX-1には、同じエフェクトの並びであればメモリー切り替え時にエフェクト音を残せるCARRYOVERも用意されています。2つのメモリーでチェインを揃えておくと、この機能も使いやすくなります。
GX-1では2メモリーで十分
整理すると、GX-1では次の2つを作ります。
メモリー1:基本サウンド
- 通常 → リアPU+BRIT STACK
- CTL1 ON → フロントPU+DIST+、GEQ、薄いディレイ(必要ならAMP SOLOも追加)
- EXP SW ON → さらにCRY WAHを追加
メモリー2:ディレイ強調サウンド
- BRIT STACKなどの基本音は同じ
- STANDARD DELAYを最初からオン
- TIME・FEEDBACK・LEVELを大きく変更
スラッシュ風だからといって、大量のエフェクトやメモリーを作る必要はありません。マーシャル系の基本音を作り、CTL1で通常ソロへ切り替え、ワウが欲しいときだけEXPペダルを踏む。ディレイそのものを聞かせる特殊な音だけ別メモリーに分ける。GX-1なら、この2メモリー構成でかなり分かりやすくまとめられます。
1台でまとめる
BRIT STACK、DIST+、GEQ、ディレイ、CRY WAHを1台にまとめられ、本文の2メモリー構成をそのまま実践しやすいマルチです。
まとめ
この記事のポイント
- 土台はハムバッカー、マーシャル系の歪み、ピックアップの使い分け
- マーシャルのアンプがなければ、マーシャル系ペダルをアンプの代わりとして置く
- リアをバッキング、フロントをソロに割り当て、完成形を2つ用意して切り替える
- ブースト、ワウ、ディレイはソロで足す仕上げ
まずは手持ちのギターのリアとフロントで、バッキング用とソロ用の2つの音を作るところから始めてみてください。
エフェクターは、その2つの音を完成させるために足していくものです。
低予算で土台を作る
まずマーシャル系の基本音を手軽に作りたい場合。GE-7と組み合わせるとソロまで対応しやすい。
バランス重視
マーシャル系の歪みと前段ブーストを1台でまとめたい場合。今回の記事内容と特に噛み合わせやすい構成です。
音の質感を優先
価格よりもアンプらしい反応や質感を重視して、ヴィンテージ・マーシャル系を作り込みたい場合。




































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