「もっと上手くなりたい」「どう練習すれば効率が良いのか分からない」
ギターを続けていく中で、誰もが一度はこの悩みにぶつかる。
情報は溢れているし、SNSを見れば超絶テクニックの人もたくさんいる。
でも結局、どんなに知識を得ても上達にはつながらない。
ではどうすれば良いか?結論はシンプルだ。
最高に効果の高い練習法、それは「コピー」である。
これは初心者に限らず、上級者にも当てはまる。
基礎練習や理論書よりも、圧倒的に効果的で、しかも音楽的なセンスまで鍛えられる。
この記事では、その理由や具体的な方法について、経験に基づいて解説していく。
コピー練習には2つのアプローチがある
「コピー」と聞くと、なんとなく“譜面を見て弾く”イメージがあるかもしれない。
しかし実際には、コピーには主に以下の2つの方法がある。
譜面を見て再現する「譜面コピー」
音源を聴いて真似る「耳コピ」
それぞれに異なるメリットがあり、組み合わせて取り組むことで相乗効果が期待できる。
初心者はまず譜面コピーから始めよう
ギター初心者が最初に取り組むべきは譜面を使ったコピー。
これは、曲を覚えるだけでなく、リズム感や読譜力(どくふりょく)を身につけるための基礎となる。
ここで重要なのが、「タブ譜の数字だけを追わないこと」。
リズム譜をしっかり読んで、休符やタイミングを正確に把握することで、実際の演奏が格段に良くなる。
特にギター初心者の場合、譜面に慣れるだけで一気に世界が広がる。
単純な曲でも、譜面を丁寧に読み解く習慣をつけておくと、後々の応用力に大きな差が出る。
耳コピは音楽的表現を学ぶ最高のトレーニング
ある程度譜面コピーに慣れてきたら、次は耳コピに挑戦しよう。
これは単なる“耳のいい人向け”ではない。むしろ、すべてのギタリストに必要な感覚を養う大事な練習だ。
耳コピの基本的な手順は次の通り:
まず譜面を参考にして一通り弾けるようにする
音源を聴いて音のニュアンス、アーティキュレーション、ピッキングの強さなどを細かく分析する
譜面に書かれていない部分や違和感のある箇所を自分の耳で修正する
ここで大事なのは、「正解が1つではない」という視点。
同じフレーズでも、プロの演奏にはニュアンスや空気感があり、それをコピーすることで、より深い表現力が身につく。
コピーが上達に直結する3つの理由
「でもオリジナルじゃないし…」と思うかもしれない。
しかし、コピーは決して受け身の作業ではない。もっとも実践的な練習法なのだ。
① 曲ごとに異なる“ルール”に対応する経験値が貯まる
曲にはそれぞれキー、テンポ、構成、コード進行などの固有ルールがある。
コピー練習は、その都度違うルールに対応する訓練になる。
これを繰り返すことで、実戦での対応力が自然と高まっていく。
② リズムやグルーヴ感を体得できる
どれだけ理論を学んでも、体で感じるリズム感やノリはコピーからしか得られない。
原曲のドラマーやベーシストのノリに合わせてギターを弾くことで、アンサンブルの感覚も養える。
③ 音作りや機材の扱いにも強くなる
「この音どうやって作ってるんだろう?」と考えることで、機材の知識も自然に身につく。
EQやエフェクター、ピックアップの切り替えなど、実際に触れながら覚えることができる。
コピーは実戦形式のトレーニング
基礎練習も大切だが、それはあくまで“準備運動”に過ぎない。
本当の意味での演奏力は、曲という“実戦の場”で磨かれる。
野球で例えるなら、素振りやランニングも大事だが、やっぱり練習試合でしか得られない経験がある。
格闘技なら、ミット打ちではなくスパーリング。
それと同じで、コピーは実戦を想定したトレーニングのようなものなのだ。
失敗を恐れず、どんどんコピーしよう
コピー練習で大切なのは「完璧に弾こうとしすぎないこと」。
原曲に近づける姿勢は大切だが、多少の違いを恐れずに繰り返すことの方が大事。
録音して比較してみたり、違和感があれば耳で確かめて修正するという“試行錯誤”が、最大の学びになる。
行き詰ったら、潔く「次の曲」へ
コピーを続けていると、どうしても弾けない箇所にぶつかる瞬間がやってくる。
指が届かない、リズムが取れない、どうしても原曲のニュアンスが再現できない…。
そんなときにありがちなのが、ひたすらその曲にこだわってしまい、練習がつまらなくなることだ。
ここで一つ提案したい。
「できなければ、いったん次の曲へ行く」という選択肢を持っておくこと。
これは決して逃げではなく、むしろ効率的で合理的な方法だ。
経験値を広げるコピーの“回転練習法”
ひとつの曲に固執せず、どんどん別の曲にも挑戦していくことで、自分の中の「演奏データベース」がどんどん広がっていく。
Key(調性)、テンポ、フレーズの癖、リズムの取り方、ジャンル特有の奏法…。
コピーするたびに、新しい課題に直面し、それを少しずつ自分の中に取り込める。
これを繰り返していると、ある日ふと、以前は弾けなかったあの曲がスルッと弾けるようになっていたりする。
スキルは“直線的”には伸びない。積み上げた経験が、あるとき一気に形になるのだ。
弾けなかった曲に「戻る」のも大事なプロセス
一度行き詰まった曲も、しばらく経ってからもう一度挑戦すると、驚くほどすんなり弾ける場合がある。
これは、知らないうちに実力がついていた証拠。
「まだ自分には早い」と思った曲に、何度でも戻ってきていい。
むしろ、そのリベンジが上達の楽しさを感じられる瞬間にもなる。
練習できる曲は無限にある
世の中には、コピーできる曲が無数に存在している。
アーティストの数だけ、ジャンルの数だけ、名曲の数だけ、練習のチャンスがある。
「この曲が弾けなきゃ終わり」ということは一切ない。
選択肢は無限にあるから、心の余裕を持って練習に取り組んでほしい。
「粘り」と「割り切り」のバランスがカギ
一つのフレーズを徹底的に練習する“粘り強さ”は確かに重要だ。
しかし、コピー練習においては、割り切って次へ進む柔軟さも同じくらい大切。
うまくいかない時期は、「今はそういうフェーズなんだ」と割り切って、別の曲で経験値を増やしておく。
そうすることで、結果的に弾けなかった曲にも自然と再チャレンジできるタイミングがやってくる。
コピーは最も地味で、最も効果的な練習法
今、何を練習しようか悩んでいるなら、まず1曲コピーしてみよう。
どんなジャンルでも構わない。難易度も問わない。
大切なのは、その曲の中で何が起きているかを読み解き、体感すること。
コピーは、単なる「モノマネ」ではなく、演奏を深く理解するための入口。
そしてそれは、どんなプレイヤーであっても、ずっと続けていく価値のある習慣だ。