エフェクター電圧で音が激変|9V・18V・降圧の違いと安全な使い方

エフェクターのポテンシャルを「電圧」で解放する。それは単なる調整ではなく、音に命を吹き込む扉を開ける儀式だ。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
ギタリストなら誰しも、自分のボードを眺めて「あともう少しだけ、音に芯と艶が欲しい」と悩んだ夜があるはずです。
高級なシールドやパッチケーブルに答えを求めるのも一つですが、実はもっと根本的な「音の蛇口」、つまり電圧(ボルト)の調整が、あなたの理想を叶える鍵かもしれません。
結論から言うと、
エフェクターの駆動電圧を「昇圧(18V)」または「降圧(ボルトを絞る)」させることで、素子の動作点(バイアス)を最適化し、サウンドのキャラクターを劇的に変化させることが可能です。
私はギター歴18年、元楽器店勤務で数多の機材に触れ、現在は講師として日々生徒さんの音作りに向き合っています。
今回は、単なる「魔法」ではなく、「ヘッドルーム」や「サグ感」といった工学的なロジックを用いて、電圧があなたのギターサウンドにどう作用するのかを徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたのエフェクターが「本当はもっといい声で鳴りたかった」という事実に気づけるはずですよ。



そもそもV・A・Wの「音響的関係」を知ろう

エフェクターの電圧を変える前に、基本的な単位を「水の流れ」に例えて整理しておきましょう。
V(ボルト):電圧
エフェクターを動かす「水圧」です。これが高いほど、音が潰れにくい「余裕」が生まれます。
A(アンペア):電流
エフェクターが必要とする「水の量(流量)」です。電圧を上げても、この流量が不足すると電圧がドロップ(低下)し、デジタルノイズや音痩せの原因になります。
W(ワット):電力
電圧 × 電流で求められる、実際にエフェクターがこなす「仕事の総量」です。
機材を壊さないためには、この関係性を正しく理解することが不可欠です。
昇圧(18V駆動)の効果:解像度の向上

9V仕様の歪みエフェクターを18Vで駆動させると、回路の動作点が広がり、サウンドにプロクオリティの質感が加わります。
ヘッドルームの拡大と「トランジェント」
ヘッドルームとは、信号が歪み始めるまでの「許容範囲」のことです。18Vに昇圧すると、この天井が高くなるため、強くピッキングしても音が不用意に潰れなくなります。
結果として、トランジェント(音の立ち上がりの鋭さ)が向上し、以下のような変化が得られます。
低音が締まる:余計な濁りが消え、輪郭がはっきりします。
解像度が上がる:和音の分離感が向上し、複雑なコードでも一音一音がクリアになります。
ダイナミクスの向上:ピッキングの強弱に忠実に反応する「アンプライク」な弾き心地になります。
用語補足:
トランジェント:ピッキングした瞬間の、音の立ち上がりスピード。
降圧(6V〜7V)の美学:ヴィンテージの「色気」を足す

逆に、あえて電圧を落とすことで生まれる「サグ感」こそ、ギタリストを虜にする隠し味です。
意図的な「サグ(Sag)感」の演出
サグ感とは、大きな入力が入った際に電圧が一時的にドロップし、音が一度「ムギュッ」と潰れてからゆっくり回復する現象です。これを人工的に作り出すと、以下のメリットが得られます。
自然なコンプレッション:音が太く粘り、サステインが伸びます。
偶数次倍音の付与:サチュレーション(飽和感)が増し、耳当たりの良いウォームな歪みになります。ざっくり言うと“耳に優しい成分”が増えるイメージです。
エディの「ブラウンサウンド」:Variac(可変電圧トランス)による降圧、アンプの仕様、スピーカー特性など複数の要素が絡み合った結果ですが、降圧された電圧とパワー管の飽和(サチュレーション)が核となる役割を果たしていました。

フェンダーアンプに学ぶ「電圧とキャラクター」

電圧とサウンドの関係は、フェンダーの代表的な2つのアンプを比較すると非常に明確です。
| 特徴 | Twin Reverb (ツイン) | Deluxe Reverb (デラリバ) |
| 設計・出力 | 100W (高出力・高ヘッドルーム) | 22W (中出力・早めに歪む) |
| 音の特性 | 突き抜けるようなクリーン | ファットなドライブサウンド |
| ヘッドルーム | 圧倒的に広い | 低く、ボリュームを上げると歪み始める |
| サグ感 | 弱く、反応が速い | 強く、粘りのある弾き心地 |
エフェクターもこれと同様、設計思想に合わせて「最適な電圧」を見つけることが重要です。
運用時のリスク管理と注意点

電圧操作は強力ですが、一歩間違えると大切な機材を壊す「深刻な故障を招く恐れがある使い方」にもなり得ます。
昇圧・降圧のセーフティガイド
| 項目 | リスク | 対策 |
| 耐圧確認 | 9V専用機に18Vを流すと、コンデンサが破損する。 | メーカー仕様書で「18V対応」を必ず確認。 |
| 電流容量 | 電流量(mA)が足りないとデジタルノイズの原因に。 | 消費電流を把握し、余裕のあるサプライを選ぶ。 |
| デジタル機材 | CPUが不安定になり、フリーズや故障を招く。 | 電圧操作は基本的に「アナログの歪み系」に限定する。 |

昇圧・降圧を自在に操る「革新的パワーサプライ」
「昇圧だけ、降圧だけ」というサプライは多いですが、その両方を無段階で調整できる機材こそ、音作りの新兵器となります。
K.E.S ( ケーイーエス ) / KIP-V.A.C.9
キクタニミュージックが開発したこのモデルは、まさにギタリストの夢を実現した一台です。
9口フルアイソレート:デジタル/アナログの混在ノイズを遮断。
無段階昇降圧:18Vから6.8Vまで、3つのポートで「動作点」を微調整可能。
マッチョな出力:残り6口の基本出力も9.4V〜9.8Vとやや高めに設定され、音が活き活きします。
公式製品ページ:
https://www.kikutani.co.jp/items/kip-v-a-c-9/
よくある質問(Q&A)
Q. ケンタウロスを18Vで動かすといいって本当?
A. 推奨しません。 Klon Centaurは内部でチャージポンプ回路により約18Vに昇圧して動作しています。外部からさらに18Vを供給すると、内部素子に過負荷がかかり、深刻な故障を招く恐れがあります。
Q. 18Vで動かせば歪みは減るの?
A. 直接的に歪みが減るわけではありませんが、天井(ヘッドルーム)が高くなり波形が潰れにくくなるため、聴感上はクリーンでパンチのある音に感じられます。
Q. マンガン電池の音が良いと言われるのはなぜ?
A. マンガン電池は電圧がドロップしやすく、その不安定さが「サグ感」を生みます。これが耳に心地よい倍音(サチュレーション)を付与するため、ヴィンテージ愛好家に好まれるのです。
まとめ
エフェクターの電圧操作は、単なる機能設定ではなく、あなたのギターサウンドの「解像度」と「色気」をデザインする行為です。
昇圧(18V):ヘッドルームを広げ、トランジェントを最大化する「現代の解法」。
降圧(6V〜7V):サグ感とサチュレーションを操り、ヴィンテージの色気を引き出す「伝統の隠し味」。
電流量(A)の重要性:電圧ばかりに気を取られず、十分な電流量を確保することがノイズ対策の鉄則。
デジタル機材への禁忌:故障リスクを避けるため、電圧変更はアナログ歪みペダルを主役にする。
「9Vが当たり前」という固定観念を脱ぎ捨てて、電圧の扉を開けてみませんか?きっと、今まで聴き逃していた「ギター本来の輝き」に出会えるはずです。
まずは一台、お気に入りの歪みエフェクターで昇圧・降圧を試して見てください。
もちろん自己責任で。
おまけ








