楽器コラム

SSHストラトの最大の弱点とは? 〜万能ギターが抱える“致命的”な落とし穴〜

SSHストラトって便利らしいけど、実際どうなの?

じつは、とんでもない“欠点”を抱えているギターかもしれない。

プロの現場でも定番だし、SNSではギター系インフルエンサーがこぞって勧めている。
「一本で全部こなせる」とか、「迷ったらSSH」とか。
そう言われると気になるし、実際、一本持っておいて損はないという声も多い。

けれど、それだけ便利なギターだからこそ、落とし穴がある
結論から言ってしまうと、あまりに便利すぎることが最大の弱点なのだ。

どんなジャンルでも、どんな奏法でも、そつなくこなす。
だけどそれって、“可愛げのあるクセ”すら存在しないということでもある。

そして何よりの問題は——
一度その便利さに慣れてしまうと、もう他のギターに戻れなくなる。

SSHストラトとは?

ピックアップ構成:シングル×2+ハム×1

SSHとは「Single-Single-Humbucker」の略称で、その名のとおり、ストラトキャスターのフロントとミドルにシングルコイル、リアにハムバッカーを搭載した構成だ。

このレイアウトは、伝統的なストラトの繊細さと、ハムバッカーの力強さの“いいとこ取り”とも言える仕様で、ギタリストの多くが「これ1本で事足りる」と口を揃える。

たとえば、フロントでは温かくメロウなクリーンが出せ、センターではファンキーなカッティング、リアでは歪ませても潰れないパワフルなトーンが得られる。スイッチひとつでこれほどの音色を切り替えられる構成は、ライブやレコーディングで柔軟な対応が求められるプレイヤーにとっては非常に心強い存在だ。

スティーヴ・ルカサー

SSHといえば外せないのが、TOTOのスティーヴ・ルカサーだ。
彼のプレイスタイルを支えるのは、まさにこのSSH構成のギターだ。アルペジオの繊細さと、ソロでの粘り強く滑らかなトーンの両立。まるで複数のギターを持ち替えながら演奏しているかのような表現力。それを実現しているのがSSHストラトである。

ルカサーのように、スタジオワークからステージまで「一切の妥協を許さない」現場主義者にとって、SSHは最適解のひとつなのだ。

最大の弱点:他のギターが霞んでしまう

筆者の実体験:すべてのギターを手放した理由

SSHに出会ってからというもの、自分の中でギターという存在の位置づけが大きく変わってしまった。
これまでに愛用してきたレスポール、テレキャスター、ノーマルなストラト…。それぞれに愛着があり、音にも個性があり、場面に応じて使い分けてきたつもりだった。

だが、SSHをメインに据えてからは違った。すべてが「SSHで事足りる」ようになってしまったのだ
バンドリハでも宅録でも、迷わず手に取るのはいつも同じSSH。結局、他のギターはケースから出されることすらなくなっていった。

そのとき思ったのは、「弾かれないままにしておくのは、あまりに不憫だ」ということ。音を鳴らさないギターに対する、ある種の罪悪感のような感情だった。

そして筆者は、思い切って他のギターを手放した

快適さの代償:選択肢を失う怖さ

この体験を通して痛感したのは、「SSHを選ぶ」ということは、「他の選択肢を捨てる」ことにも繋がりかねないという事実だ。
どんなジャンルにも対応できる=どんなジャンルにも特化しないということ。これは逆説的だが、真実でもある。

ギターを“使いやすさ”だけで選ぶようになると、「このギターでしか出せない音」に価値を感じにくくなる
そして、その価値観の変化は、音楽の感じ方や表現そのものにも影響してくる。

他にもあるSSHのデメリット

個性が出づらい

SSHの特徴は「どのポジションでも破綻がない」ことだ。だがそれは裏を返せば、強烈な個性を放つ“クセ”がないということでもある。

シングルコイルのシャリつきや、ハムバッカーの暴れ馬のようなレンジの広さ。そういった“暴れ”がない分、どこか無難にまとまった印象を受けることがある。

弾いていて「ああ、これは俺の音だ」と感じられる瞬間。SSHはその感覚を得にくいギターかもしれない。

逆に言えばどんなギターでも自分の音が出てしまうようなギタリストにとっては、便利なSSHは最適解になりうる。

ルックスがジャンルレスすぎる

ビジュアル面もSSHの課題のひとつだ。

オールジャンル対応の見た目は、言ってしまえば「没個性」だ。派手すぎず、地味すぎず。スタジオミュージシャン的な立ち位置には似合うが、ロックやブルースの持つ“泥臭さ”にはどこかそぐわない。

ヘッドの形状やカラーリングによって印象は変わるが、基本的には“実用性重視”の印象が強い。

お仕事ギターのような存在

SSHは、プロの現場で重宝されるギターだ。つまりそれは、“仕事道具”としての性質が強いということだ。

情熱やロマンを追いかけるというよりも、「ミスなく正確に、どんな現場でも対応する」ための信頼性が第一に設計されている。

そこに魅力を感じる人もいれば、「ギターを趣味として楽しみたい」派の人にはやや味気なく映る可能性もある。

それでもSSHを選ぶ理由

音作りの自由度が高すぎる

シングルのきらびやかさと、ハムの太さを持ち合わせたSSHは、サウンド面での自由度が圧倒的に高い。
しかもそれが、スイッチひとつで切り替えられるというのが最大の魅力だ。

あらゆる音楽シーンにおいて、「音が出ない」「使えない」という失敗がほとんど起こらない。
その安定感は、一度味わうと他のギターでは物足りなくなる。

奏法への柔軟な対応

SSHはジャンルだけでなく、奏法の幅にも応えてくれる。

  • 指弾きの繊細なアタック

  • ハイブリッドピッキングの立体感

  • スウィープやレガートの滑らかさ

  • ファンキーなカッティングのキレ味

いずれにも破綻なく対応できるギターは多くない。SSHはその数少ない一本だ。

カスタムの楽しさ

SSHはカスタムベースとしても申し分ない。ブレンダー配線やトーンの独立制御、コイルタップの組み込みなど、工夫次第で音のバリエーションをどこまでも広げられる

弄って育てる楽しさがあり、それによってさらに「自分だけの一本」に近づいていく。
SSHは、ただ便利なだけのギターではない。「便利さの上に、自分の色を乗せていける」余地を持った器でもあるのだ。

メインか?サブか?SSHが突きつける選択

圧倒的メインギターとして据えるか

1本で音楽人生を支える。SSHにはそれだけのポテンシャルがある。

どんなジャンルのバンドに入っても、どんな現場に呼ばれても、
「とりあえずSSHを持って行けばなんとかなる」という確信がある。

最強のサブギターとして構えるか

SSHをあえて“サブ”に置く選択もある。個性派ギターをメインに据えつつ、「ここぞ」という場面で登板する万能型の控え

困ったときの保険としての信頼性。それがあるだけで精神的にもプレイ的にも余裕が生まれる。

どちらを選んでも後戻りはできない

一度SSHの便利さに慣れてしまうと、他のギターに戻るのが難しくなる。

そのときあなたは問われる。

便利を取るか、個性を取るか。

サブで使うはずだったけど気が付けば最近SSHしか弾いてない

なんて事はよくある話だ。

大事なメインギターをホコリまみれにしたくなければ気軽に手を出すべきではない。

相応の覚悟が必要だ。

まとめ:SSHの罪と、それでも選ばれる理由

SSHストラトは、利便性という名の快楽を与えてくれる。
しかしその快楽は、ときにギタリストとしての冒険心や個性までも奪ってしまう。

  • 音作りの安心感

  • 奏法への柔軟さ

  • カスタムの可能性

そのすべてが魅力的だ。
だがその裏で、他のギターが色褪せて見えてしまう“代償”があることも、忘れてはならない。

壁にかけたギターたちを横目に、今日もまた、SSHを手に取る自分がいる。

SSHに手を出すという事はそういう事だ。

ABOUT ME
吉田寛定
新潟在住のギターインストラクター、MBTIはINTP(論理学者) 時々インスタに演奏動画を上げたりしている。 だいたいどんな話を振られてもある程度語れる位常に知識をむさぼって生きています。