「譜面通りに弾いてるのに、なんかノリが合ってない気がする…」
ギターをある程度弾けるようになってきた頃、こういった違和感を感じたことはないだろうか。特に「跳ねたリズム」が出てくる曲では、このギャップが顕著に出ることがある。
結論から言えば、その違和感はリズムの“跳ね具合”――つまり「シャッフル」や「スウィング」に関わる感覚のズレからくる可能性が高い。
しかもこの“跳ね感”は、譜面だけではなかなか表現しきれないうえに、プレイヤーによって微妙に解釈が違ってくるというやっかいな代物。
この記事では、シャッフルとは何か、跳ねたリズムをどう解釈すべきか、そしてそれをどうコントロールすればいいのかを解説する。
シャッフルとは?跳ねたリズムの代表格
シャッフルとは、八分音符2つが並ぶフレーズに対し、その2つを等間隔ではなく、「長→短」の割合で弾くことで跳ねたノリを生み出すリズムパターンである。
「タッカ・タッカ…」というような、反復するノリが特徴的だ。
譜面での代表的な書き方は以下の通り:
①付点八分音符+16分音符
②三連符の中間を休符にした形(三連中抜き)
③三連符の1つ目と2つ目をタイでつなげた形
いずれも「跳ねたリズムを演奏してほしい」という意図を表しているが、それぞれニュアンスが微妙に違う。
記事後半にサウンドサンプルを用意しているのでそちらを聞いて確認してみてほしい。
跳ねすぎ注意!やりがちなミスとその結果
跳ね感を表現しようとするあまり、よくあるミスが「跳ねすぎてしまう」ことだ。
たとえば、「三連中抜き」で演奏すべきところを、付点八分+16分で強く引っ張ってしまうと、ノリがモタった印象になり、テンポ感やグルーヴが崩れてしまう。
テンポが速くなるほど、跳ね方は少し控えめにしないと、全体が重く聴こえてしまう。
このように、「跳ねてるつもり」が逆に全体のバランスを壊してしまうことは意外と多い。
じゃあスウィングは?筆者の解釈
シャッフルについて語った上で、「じゃあスウィングって何なの?」と疑問を持つ人は少なくないと思う。
正直なところ、スウィングの習得は非常に難しいと言われており、筆者のような非ジャズ系プレイヤーがその本質を語るのは立場的にどうなんだろう…という気持ちもある。
とはいえ、シャッフルとの違いや関連性を説明する以上、スウィングについても触れずにはいられない。
というわけで、あくまでも筆者個人の解釈として、スウィングというリズム感について紹介させてもらう。
スウィングはジャズプレイヤーが用いることで知られているノリのことで、譜面上では単に八分音符が並んでいても、演奏時には自然と「長→短」の比率で跳ねているという特徴がある。
ただし、この跳ね方は三連符のように固定されているわけではなく、テンポやプレイヤーによって流動的だ。
言い換えると、正確な数値や譜面では規定できない“揺らぎ”の中に存在するフィールだと思っている。
実際に自分の演奏経験やリスニングの中でも、「これはスウィング的なノリだな」と感じる瞬間がある。
米津玄師さんのLemon
たとえば、米津玄師さんの『Lemon』なんかがその好例だ。
この曲、譜面上では三連中抜きでリズムが指示されているのを見かけることがある。
でも実際に演奏されている跳ね方はもっとイーブン寄りというか、「やや跳ねている」くらいの感覚に聴こえる。
もしこれを譜面通りキッチリ三連中抜きで演奏してしまうと、逆に曲全体に漂うあの哀愁感――“ブルージーな悲しみ”のような空気が、どこか機械的になって薄れてしまう。
一方で、イーブン寄りの跳ね感で演奏すると、ちょっとした「揺れ」や「ため」が生まれ、それが絶妙なニュアンスとして表現される。
この微妙な差こそ、筆者が考えるスウィング的な感覚に近いのではないかと思っている。
こういう跳ね方は、「三連ではないけど、ストレートでもない」という曖昧な領域にあって、楽譜には書ききれない。だからこそ、耳で聴いて、体で感じて、経験的に覚えていくしかないと思う。
つまり筆者にとってスウィングとは、「感覚的に跳ね具合を調整するリズム感」であり、シャッフルのように固定された比率ではなく、“楽曲が求めている自然なノリ”なのだと考えている。
厳密にジャズ的スウィングを理解しているわけではないが、ポップスやロックの中にもそうした感覚が存在するのだと実感している。
サウンドサンプル:跳ね方の違いを耳で感じる
ここまで読んでも、「文章ではなんとなく分かったけど、結局どれくらい跳ねてるのか実感が湧かない…」という人も多いと思う。
それもそのはずで、跳ね感というのは言葉よりも音で体感した方が圧倒的に理解しやすい。
ちょっとした動画を用意してみた。
演奏順
- ストレート(イーブン)八分
- 付点八分音符+16分音符
- 三連中抜き(その1:中を休符)
- 三連中抜き(その2:1拍目+2拍目をタイ)
- スウィング(筆者解釈による“やや跳ねた”自然なフィール)
それぞれのリズムパターンを、テンポは同じ、フレーズも同じで演奏しているので、跳ね方だけの違いがよく分かるはずだ。
言葉で説明していた「シャッフルとスウィングの違い」や、「跳ねすぎ問題」、「イーブン寄りの跳ね感」なども、実際の音を聴くことでより明確に理解できると思う。
跳ね感を養う練習法:メトロノームの打点をずらせ
筆者が実際に効果を感じた練習法としておすすめなのが、「メトロノームのテンポを半分にして打点を2拍、4拍に置く」方法である。
例)テンポ120の曲を、メトロノーム60に設定
2拍目と4拍目にだけクリックが鳴るように感じながら演奏する
この練習では、1拍目と3拍目は自分の感覚で取らなければならず、自然とリズム感と跳ね感のズレを体感できる。
さらにステップアップとして、「三連符の3つ目にクリックを合わせる」「八分裏に鳴るように意識する」など、やり込み要素もある。
慣れてくると、「あ、今ノリがちょっと前に寄ったな」とか「ここはもっと引っ張ってもいいな」といった調整が感覚的にできるようになる。これができると、演奏の説得力が一段上がる。
※クリック位置ずらしは、電子メトロノームだと一拍目にアクセントが鳴ってしまうため、アクセントをOFFにするか、1/4拍子等に設定を変更する必要がある。
跳ね感はひと言で片付けられない深みがある
シャッフルは“跳ねた”リズムだが、書き方や解釈に幅がある
跳ねすぎるとモタるし、跳ねなさすぎるとノリが薄れることも
跳ね感の微調整は、実はスウィングに近い行為でもあるのかも
つまり、演奏時の“自然な揺れ”や“リズムの解釈”が重要
練習ではメトロノームの打点を変えて“ズレ”を体感するのが効果的
ノリや跳ね感というのは、理屈だけでは身につかない。
耳で聴いて、身体で感じて、何度も試行錯誤する中で少しずつ育っていくものだ。
跳ねたリズムの楽曲に出会った時には是非、そのノリに注目してみてほしい。
