「フェイザーって結局どれが正解?」
ギターエフェクターの中でも、ちょっと難しいのが「揺れもの」系。フェイザー、コーラス、フランジャーといった空間系は、効果の違いが分かりづらく、下手すると音が埋もれたり、派手になりすぎたりして扱いづらい印象を持っている人も多いと思う。
そんな中で、迷ったらこれ一択と言われるのが、MXRの「PHASE90」。発売から何十年も経っているにもかかわらず、今も多くのプレイヤーに支持され続けている定番フェイザーだ。
この記事では、趣味でギターを弾いている方──特に、ちょっとした宅録やセッション、将来的にバンドもやってみたいと思っている人に向けて、このPHASE90の魅力や注意点、選び方まで徹底的に解説する。
PHASE90の一番の特徴、それは「迷わなくていいこと」
エフェクターに慣れていない人がまずつまずくのは、「設定の沼」。ノブが多ければ多いほど、選択肢が増えるし、どのツマミがどう作用しているのか分からなくなることも少なくない。
その点、PHASE90はノブがひとつだけ──SPEED(スピード)ノブしかない。
これだけで何ができるのか?と最初は不安になるかもしれないが、むしろこのシンプルさが最大の魅力。エフェクトの「かかり具合」が調整されるだけで、サウンドのキャラクター自体は常に安定している。
BOSSのPH-3などの多機能モデルも確かに面白い。が、音を追い込みすぎて使いどころが難しくなってしまった経験がある人なら、「とりあえず踏めばいい音が出る」PHASE90のシンプルさには心底救われるはずだ。
実際のサウンドはどうか?
PHASE90の音を一言で表現するなら、「まろやかで、存在感のある揺れ」。コーラスのようなキラキラした高域の強調はなく、フランジャーのような暴れるうねり感もない。
そのため、特にオーバードライブやクランチとの相性が抜群。ファンク系のカッティングや、ブルースのリードギターに乗せるだけで、サウンドに立体感とグルーヴが生まれる。
たとえば、クリーン〜軽い歪みに設定したアンプやエフェクターにPHASE90を噛ませると、ぐっと「音楽的」な雰囲気が出る。しかも不自然に主張しすぎることがないので、常時オンで使っても嫌味がない。まさに“バンドサウンドを壊さない”フェイザーだ。
歪みの前がオススメ。センドリターンは推奨しない
多くの人が悩むのが、「エフェクターってどこに繋げばいいの?」という問題。PHASE90は基本的に、歪み系エフェクターより前に置くのが王道のセッティングだ。
センドリターンに入れると揺れが少し控えめになり、あの“フェイズらしさ”が損なわれる印象がある。歪みの前に入れることで、より「前ノリでうねる」ような、象徴的なフェイザーサウンドを得やすい。
この“らしさ”が欲しいなら、アンプや歪みペダルの前段で使うのがベストだ。
ワウが苦手な人こそ、PHASE90
ギタリストなら一度は通るワウペダル。カッコいいけど、操作が難しかったり、踏みながらの表現が苦手な人も少なくない。
そんな人におすすめなのが、PHASE90を「踏むだけワウ」的に使うスタイル。
リードのフレーズやメロウなバッキングに軽くPHASE90をかけるだけで、
グルーヴ感と色気がグッと増す。手元ではなく足元で完結できる手軽さも魅力だ。実際、「ワウより出番多いかも」と感じる人も少なくない。
スクリプトロゴ とブロックロゴ
PHASE90には“ロゴ違い”による音の傾向差がある。知っておくと、より自分に合ったモデル選びができる。
スクリプトロゴ:よりナチュラルで控えめな揺れ。空気感を演出するのに向いている。
ブロックロゴ:フェイズ効果が強めで、エフェクト感がしっかりある。バンドで使っても埋もれにくい。
最近は、両者をスイッチで切り替えられるモデルも登場しており、「PHASE95」や「EVH90」などがその代表格。
兄弟機PHASE45との違いは?
PHASE45は、PHASE90の“薄味版”といった感じ。ステージ数が少なく、より控えめな揺れ方をするため、アコースティックやクリーントーン中心のプレイヤーに好まれている。
ただし、歪みとの組み合わせやバンド内での音の抜け感を考えると、やや地味になりすぎることも。その点PHASE90は汎用性が高く、宅録でもバンドでも安定して使える印象だ。
デメリットも正直に:こんな人には向かないかも?
PHASE90は使いやすく、失敗が少ない反面、こんな人にはやや物足りないかもしれない。
音をとことん作り込みたい人
飛び道具的な派手な揺れを探している人
個性的なサウンドで差別化したい人
要は「味付けは店に任せる」スタイル。自分で細かく味を調整したい人には、可変性のあるモデルのほうが良いだろう。
Q&Aでおさらい|PHASE90、結局どうなの?
Q:初心者でも使える?
A:むしろ初心者にこそ最適。迷いようがない設計で、どこで使ってもハマりやすい。
Q:歪みと合わせても大丈夫?
A:むしろ歪みと組み合わせることで真価を発揮。クランチやODとベストマッチ。
Q:派手なフェイズサウンドを狙うなら?
A:スクリプトロゴよりブロックロゴ期のモデル、またはEVH90のブロックモードがオススメ。
おすすめモデル3選
■ PHASE90(現行ブロックロゴ)
MXR ( エムエックスアール ) / M101 Phase90 フェイザー
初心者〜中級者まで幅広く対応
王道中の王道サウンド
迷ったらまずこれ
■ EVH90
MXR ( エムエックスアール ) / EVH90 Phase-90
ヴァン・ヘイレンファンはもちろん、見た目に惹かれる人にも
スクリプト/ブロック切替スイッチ搭載
映え映えなデザイン
■ PHASE95
MXR ( エムエックスアール ) / M290 PHASE 95 フェイザー
コンパクトな筐体にフル機能
PHASE90/PHASE45切替+スクリプト/ブロック切替も可能
小さいけどパーフェクト
まとめ
MXR PHASE90は、使う人を選ばない。逆に言えば、誰が使っても「気持ちいい音」がすぐに出せる。
エフェクターは迷ったり、迷走したりしやすいものだけど、このPHASE90はそうした悩みから解放してくれる1台。「こういう揺れが欲しかった」が最初から入っていて、しかも足元の操作はノブ1つだけ。
使い勝手、サウンド、信頼性、そして歴史──どれをとっても定番の名にふさわしいエフェクターだ。
気になるなら、もう悩まず一度踏んでみてほしい。それがギターライフをぐっと楽しくしてくれるかもしれない。