【バンド解散】「音楽性の違い」は嘘?本当の理由は人間関係とマネジメント不足

「音楽性の違い」という言葉は、大抵の場合
「お前の遅刻癖とLINEの返信の遅さにもう耐えられない」
という言葉の丁寧語です。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の講師、吉田です。
さて、ニュースでバンドの解散や脱退が発表されるたびに、判で押したように出てくるのが「音楽性の違い」というフレーズ。
これを額面通りに受け取っている人は、どれくらいいるでしょうか?
正直なところ、プロアマ問わず、バンド解散の理由で最もポピュラーなのは「人間関係のもつれ」です。
バンドというのは、運命共同体であり、会社であり、恋人同士のような面倒くささを併せ持った特殊な組織。
結論から言うと、バンドを長く続けるために必要なのは、音楽の才能よりも「社会人としてのマナー」と「経営者的なマネジメント能力」だったりします。
今日はそんなバンド運営のリアルな裏側についてお話ししましょう。



「音楽性の違い」の裏にある本当の翻訳

バンドマンなら誰もが一度は経験する、あのギスギスした空気。表向きは「やりたい曲の方向性が合わない」と言っていても、その根底には積もり積もった生活レベルのストレスがあります。
遅刻・金銭感覚・連絡無精の「三大疾病」
バンドを解散に追い込む三大要因は、音楽理論の不一致でもテクニックの差でもありません。「時間」「金」「連絡」のルーズさです。
時間: 毎回リハに5分遅れてくるメンバーがいるとします。「たかが5分」と思うかもしれませんが、待たされる側からすれば「俺たちの時間を軽視している」というメッセージに受け取られます。
金: スタジオ代の支払いで「今細かいのないから立て替えといて」が常習化する。これが続くと、信頼関係は崩壊します。バンドマンは夢を買うためにただでさえ赤字を出している生き物ですから、金銭トラブルは致命傷です。
連絡: グループLINEでの日程調整に、一人だけ既読スルーで2日返信がない。これだけでバンドの運営スピードはガタ落ちします。
これらが積み重なった結果、「あいつの顔を見るとイライラする」→「あいつの持ってくる曲も気に入らない」→「音楽性の違い」という図式が出来上がります。
つまり、生理的な嫌悪感をオブラートに包んだのが「音楽性」という言葉なのです。
バンドは「結婚」に似ている
バンドを組むというのは、恋人同士が同棲、あるいは結婚するのと似ています。
付き合いたての頃(結成当初)は、相手の欠点も「個性」として許せます。「あいつ、ルーズだけどギター持たせたら最高だしな」と思えるのです。
しかし、長く一緒にいればいるほど、脱ぎ散らかした靴下(遅刻や練習不足)が許せなくなってくる。
「愛(音楽への情熱)」だけで乗り越えられるほど、共同生活(バンド活動)は甘くありません。生活習慣の不一致は、いずれ愛を冷めさせます。
バンドとは「給料の出ないベンチャー企業」である

バンド活動を趣味のサークル活動の延長で考えていると、必ず破綻します。バンドは本質的に「利益(売れることや感動)を追求するベンチャー企業」です。ただし、売れるまでは給料が出ないという、ブラック企業も真っ青な環境です。
「熱量」という名の残業代
会社であれば、嫌な上司や使えない同僚がいても、毎月給料が振り込まれれば我慢できます。しかし、バンドには給料がありません。
では、何が報酬なのか? それは「楽しさ」や「夢への熱量」です。
メンバー間でこの「熱量」に差が出た時、バンドは終わります。
例えば、リーダーが「武道館に行くぞ!」と死ぬ気でプロモーション戦略を練っている横で、他のメンバーが「次のライブの打ち上げどこにする?」としか考えていなかったらどうでしょう。
リーダーは「俺だけがタダ働きで残業している」と感じ、メンバーは「リーダーだけが空回りして暑苦しい」と感じます。これが「温度差」による解散の正体です。
友情とビジネスの境界線
学生バンドが卒業と同時に解散しやすいのは、「友達関係」がベースにあるからです。しかし、長く続くプロのバンドや、社会人バンドを見てください。彼らは「友達」である以上に「ビジネスパートナー」としての側面を強く持っています。
お互いのスキルを認め合い、リスペクトし合っているからこそ、プライベートでベタベタしなくてもステージ上で最高の結果を出せるのです。
長く続くバンドの共通点は「適度な距離感」と「役割分担」

では、解散せずに長く活動を続けるにはどうすればいいのか。それは、バンドを「組織」としてマネジメントすることです。
「全員で仲良く」という幻想を捨てる
The Rolling StonesやB’z、Mr.Childrenなど、長寿バンドの多くは、メンバー同士が常に一緒に遊んでいるわけではありません。むしろ、オフの日は連絡を取らないというバンドも多いです。
「適度な距離感」こそが、長続きの秘訣です。
スタジオやライブの現場では最高のパフォーマンスをするけれど、終わったらサッと帰る。それくらいドライな関係の方が、余計な感情のもつれを生まずに済みます。
役割分担を明確にする(CEO、CFO、広報)
全員が曲作り担当である必要はありませんし、全員がリーダーである必要もありません。会社のように役割を決めましょう。
リーダー(CEO): バンドの方針決定、スケジュールの管理。
会計(CFO): スタジオ代、チケットノルマ、売上の管理。金銭感覚がしっかりしている人がやるべきです。
広報(PR): SNSの更新、フライヤー作成、対バンとの交渉。マメな人が適任。
ムードメーカー(人事): 煮詰まった時に空気を変える、メンバーの愚痴を聞く。
このように役割を与えると、メンバーに「自分のバンドだ」という当事者意識(オーナーシップ)が芽生えます。「お客さん状態」のメンバーを減らすことが、解散を防ぐ特効薬です。
Q&A|バンド運営の悩み相談室
Q:メンバーとモチベーションの差があります。どうすればいいですか?
A: 一度、腹を割って「このバンドのゴール」を共有しましょう。趣味で楽しくやりたいのか、プロを目指したいのか。ここがズレているなら、残念ながら別の道を歩むのがお互いのためです。無理に合わせても、どちらかが疲弊するだけです。
Q:バンド内での喧嘩が絶えません。
A: 喧嘩の内容が「音作りやアレンジ」に関することなら健全です。それはクリエイティブな衝突ですから。でも「遅刻」や「態度」での喧嘩なら末期症状です。ルール(遅刻したら罰金、など)を明文化して、感情ではなくシステムで解決しましょう。
Q:本当に「音楽性の違い」で解散することはないんですか?
A: あります。でもそれは、お互いがミュージシャンとして成熟しきった後に訪れるものです。ビートルズの後期のように、個々の才能がバンドという枠に収まらなくなった時に初めて、本当の意味での「音楽性の違い(発展的解消)」が訪れます。アマチュアレベルでは、ほぼ人間関係だと思って間違いありません。
まとめ
「音楽性の違い」の正体は、遅刻・金銭・連絡のルーズさによる人間関係の破綻。
バンドは「給料の出ない会社」。熱量の差が埋まらないと継続は不可能。
長続きの秘訣は、友達ごっこをやめて「ビジネスパートナー」としての距離感を保つこと。
明確な役割分担で、メンバー全員に当事者意識を持たせよう。
バンド活動は、楽器の練習以上に「人間関係の修行」の側面が強いです。でも、だからこそ、その面倒くささを乗り越えて一つの音を出した瞬間の快感は、何物にも代えがたいものがあります。
あなたのバンドが、単なる仲良しグループを超えて、最高のチームになれることを願っています。
それでは、また。
おまけ







