ギターを弾いていて、「どんなヘッドホンを使えばいいの?」と悩んだことはないだろうか。
宅録、オンラインレッスン、マルチエフェクターでの音作り。こうした現代のギター環境において、ヘッドホンやイヤホンの存在は、スピーカーに代わる「音を聴く基準」として非常に重要になっている。
特に自宅練習が中心のギタリストにとって、聴く環境の整備は避けて通れないテーマだ。
結論から言えば、3種類のヘッドホン/イヤホンを用途別に揃えるのが理想的。
この記事では、その理由と使い分け、モデル選びのポイントまで解説する。
① モニターヘッドホン|練習・音作り・DTM用のスタンダード
役割と重要性
モニターヘッドホンは、ギターの音を「フラットに、正確に」聴きたいときの必需品。
たとえるなら「音のルーペ」だ。
アンプシミュレーター、EQ、プラグインの微調整や、ギター本体のトーンチェック、耳で判断する必要のある場面ではこれ一択になる。
フラットな周波数特性を持ち、原音に忠実。長時間装着にも耐えられるモデルが多いのも特徴。
密閉型 vs 開放型
密閉型:遮音性が高く、録音や深夜練習向き。
開放型:音の広がりが自然で、長時間使用した際の疲労感は比較的軽め。
どちらが優れているというよりは、使用環境と音の好みによって選ぶのがベター。
おすすめモデル
個人的にaudio technicaのモニターヘッドホンは音質、耐久性、装着感が良く高額過ぎない価格設定でおススメだ。
コストを抑えつつも、練習には十分な性能。
8,000円前後で購入可能。入門機として超おススメ。
20,000円程度の予算をかけれるならこっち。
M20Xよりも再生レンジが広く、音作り・制作にも最適。
低域の再生力にも定評があるためベーシストにもおすすめ。
M20Xよりも再生レンジが広くM50Xに比べややスッキリとしたキャラクター
聴き比べたらこっちの方が好きという人はいると思う。
価格は15,000円前後
リスニング用とモニター用の違いとは?
そもそも「モニターヘッドホンって普通のヘッドホンと何が違うの?」と思った人もいるかもしれない。
ざっくり言えば、リスニングヘッドホン=気持ちよく聴くためのもの
モニターヘッドホン=正しく聴くためのものという違いがある。
特徴 | リスニングヘッドホン | モニターヘッドホン |
---|---|---|
音のチューニング | モデルによってさまざま | フラット傾向(原音重視) |
使用目的 | 音楽鑑賞・映画・ゲームなど | レコーディング・ミックス・練習など |
長時間使用の快適さ | 装着感やサウンド重視 | 装着感+「聴き取りやすさ」重視 |
音の見え方(解像度) | 良くも悪くも“加工された心地よさ” | 細部まで聴き取れる“リアルな音” |
つまり、音楽を“楽しむため”に作られているのがリスニング用、
音楽を“見るため”に作られているのがモニター用、というわけだ。
ギターの音作りや練習では、どうしても「音の正しさ」が必要になる。
そのため、ギタリストにとってはリスニング用よりモニター用の方が圧倒的に向いている。
たとえば、低音が強調されたリスニング用ヘッドホンで音作りをしてしまうと、
実際にアンプから出したときに「なんかスカスカに感じる…」というズレが生じてしまう。
だからこそ、自分が出している音を“客観的に”聴ける環境として、
まずはモニターヘッドホンを1本用意するのが定石になる。
② SONY MDR-CD900ST|クリックと録り音がよく見える
スタジオ標準の理由
MDR-CD900STは、日本国内のスタジオにおける定番ヘッドホン。
ファーストテイクなどでもよく見かける、おそらく日本一有名なヘッドホンだ。
30年以上の歴史があるヘッドホンだが、それでも未だにプロが愛用し続ける理由がある。
クリック(メトロノーム)がよりタイトに聴こえる
中高域が強調されており、ピッチやリズムの乱れが露骨に分かる
音がよく見えるため、耳コピにも最適。
レコーディングや採譜との相性が抜群に良い。
注意点と使い分け
音質は現代のモニターに比べて癖があり、低域が薄く高域が鋭い。
※J-POPを聴くには最高のバランス計量だが長時間の使用は耳が疲れやすい音
録音時に使い、普段の練習では現代的なモニターを使用するというのが現実的な使い分け。
SONY MDR-7506(青帯)との違い
MDR-CD900STの話になると、よく比較対象に挙がるのがSONY MDR-7506だ。どちらも見た目がそっくりで、価格帯も近く、迷う人も多い。
ハウジングのデザインでそれぞれ赤帯、青帯という愛称で呼ばれる事もある。
しかし、両者は用途や音の傾向がまったく違う。
比較項目 | MDR-CD900ST | MDR-7506 |
---|---|---|
目的 | レコーディング(プロ用途) | リスニング兼業のモニター(海外向け) |
音の傾向 | 中高域が前に出る・硬め | 低域~高域までバランス良く柔らかめ |
音の分離感 | 解像度高めでシビアな判断ができる | 全体的に聴きやすく丸みがある |
装着感・疲労感 | 耳がやや疲れやすい | 長時間使用に向いている |
ケーブル | ストレート | カールコード |
ざっくり言えば、
MDR-CD900STは“タイトに聴ける録音向き”
MDR-7506は“快適に作業するための道具”
という位置づけになる。
自宅でのミックスチェックや長時間の練習では7506の方が快適だが、録音時のタイミングやクリックのシビアな判断にはCD900STが向いている。
なお、7506は海外で非常に人気が高く、CD900STは日本国内でのプロユースに特化している点もポイント。
両者とも優秀なヘッドホンだが、録音はCD900STのか、練習や制作は7506と役割を分けて使うと見た目も統一されて良いかも。
SONY / MDR-CD900ST

③ カナル型イヤホン|アコギ等マイク録音に最適
イヤモニ的な使い方もできる万能選手
スタジオでコンデンサーマイクを使ったアコギ録音時、ヘッドホンからの音漏れは致命的。
せっかくスタジオを借りて録った素材にクリック音やオケの音が入り込んでいたら台無しだ。
そんな時に活躍するのがカナル型イヤホン。
耳に密着し、クリックやオケが外に漏れない
高遮音性で演奏に没入できる
夜間の練習やライブのイヤモニにも使える
ヘッドホンに比べケーブルが短い事が多いので別途延長用のケーブルも用意しておくと盤石だ。
おすすめブランド
イヤホンをメインで使うのは危険?そのリスクとは
カナル型イヤホンは、アコースティック録音や夜間の練習など、特定の用途では非常に便利だが、「メインのモニター機材」として使い続けるには注意が必要だ。以下に代表的なリスクを挙げておく。
① 耳の負担が大きい
カナル型イヤホンは、耳の奥に密着する構造上、音圧がダイレクトに鼓膜へ届く。
一見、音がよく聴こえるように感じるが、これは耳への負担が大きい証拠でもある。
音量のコントロールを誤ると、難聴や耳鳴りの原因になるリスクもある。
特にギターやDTMでは、音の変化に集中するあまり音量を上げがちになるので要注意だ。
② ヘッドホンに比べて疲労感が強い
カナル型イヤホンは遮音性に優れる反面、“音場の狭さ”や“密閉感”による聴覚疲労が起こりやすい。
長時間の練習やミックス作業では、耳の中が圧迫される感覚が不快に感じることもある。
ヘッドホンなら空間的な音の広がりを感じながらモニターできるため、精神的な疲れ方も段違いだ。
③ 衛生管理コストがかかる
耳に直接触れる構造上、イヤーチップは汚れやすく、定期的な交換や洗浄が必要になる。
特に夏場や運動後、長時間装着した後などは雑菌が繁殖しやすく、耳の中で炎症が起きるリスクもある。
消耗品コストも無視できず、複数のイヤーチップを清潔に保つ手間と費用がかかるのは、ヘッドホンにはない負担と言える。
結論|イヤホンは“サブ機”として使うのが理想
カナル型イヤホンは、音漏れ対策や録音用の補助モニターとしては非常に優秀だが、
耳の健康や長期的な快適性を考えると、常用には不向きだと言える。
練習や制作のメイン:モニターヘッドホン
マイク録音や外音遮断が必要な場面:カナル型イヤホン
というふうに、役割を分けて使うのが最も安全で快適なスタイルだ。
ギタリストにとって耳は“商売道具”のようなもの。
長く健康に演奏を楽しむためにも、聴く環境の負担には十分配慮しておきたい。
用途別まとめ|必要なのは“正しい聴き方を選べること”
用途 | 推奨タイプ | 理由 |
---|---|---|
練習・音作り・DTM | モニターヘッドホン(M50Xなど) | 原音が正確に確認でき、長時間使用にも耐える |
録音本番 | MDR-CD900ST | タイミングのズレや演奏の精度を確認しやすく、クリックが明瞭 |
アコギ録音など | カナル型イヤホン(SE215 / IEなど) | 音漏れせず、繊細なマイキングでも安心して使用できる |
“聴く道具”の精度が、演奏の精度を決める
音作りや録音において、「どのヘッドホンを使うか」は、思っている以上に結果を左右する。
筆者も練習や製作では、M50Xを常に使用し、900STとSE215を録音用で使用している。
音質の良し悪しで上達のスピード、録り音の精度も変わってくると実感している。
シーンによってリスニング環境を整えるだけで、演奏のクオリティは確実に上がる。
まずは1つ、普段の練習用にしっくりくるモニターヘッドホンを選ぶところから始めてみてほしい。