【スマホ断ち】ギター練習の効率が3倍に?集中力が戻るデジタルデトックス術

あなたのギター上達を阻む「ラスボス」は、あなたが握っている。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の講師、吉田です。
さて、練習の合間にちょっとスマホでも……とSNSを開いたが最後。
気づけば30分経過し、練習時間が「指の運動」ではなく「スクロール運動」に変わっている。そんな経験、ありませんか? 私はあります。なんなら昨日もやりました。
「意志が弱いからだ」と自分を責めないでください。これはあなたのせいではなく、脳の仕組みのせいです。
スマホは、脳の報酬系をハックして時間を吸い取るように設計された、最強の誘惑マシンだからです。
結論から言います。練習効率を爆上げしたいなら、気合を入れるより、「スマホを別室に置く」。これだけで練習の質は3倍変わります。



なぜスマホが視界にあるだけで「下手」になるのか

「使わなきゃいいんでしょ?」と思って、机の上にスマホを裏返して置いて練習していませんか?
実は、最新の心理学研究によると、スマホは「そこにあるだけ」で脳の認知能力を低下させることがわかっています。
脳のメモリを食う「認知コスト」の正体
人間の脳のキャパシティには限界があります。
スマホが視界に入っていると、たとえ電源がオフでも、脳の無意識下では「通知が来るかもしれない」「気になる情報をチェックしたい」という抑制プロセスが働き続けています。
これを「認知コスト」と呼びます。
PCで言えば、重たいウイルス対策ソフトがバックグラウンドで常に動いているような状態です。そんな状態で、繊細なピッキングニュアンスや、複雑なコード進行を覚える作業ができるでしょうか?
答えはNOです。練習に回すべき脳のメモリが、スマホの存在感に食われているのです。
SNSとギターの「ドーパミン戦争」
脳は「報酬(快感)」を求めます。ここで問題なのが、報酬を得るまでのコストの差です。
SNS: 指を1センチ動かすだけで、新しい情報や「いいね」という快感(ドーパミン)が即座に得られる。
ギター練習: 地味なクロマチック練習を反復し、数週間後にやっと「弾けた!」という快感が得られる。
脳は省エネを好むため、放っておくと**「低コスト・即報酬」のスマホを優先**してしまいます。
ギターという「高コスト・遅延報酬」の活動を勝たせるには、ライバルであるスマホを物理的に排除するしかありません。
「便利だからタブレットで譜面」が危険な理由

最近はiPadなどのタブレットで楽譜(Tab譜)を見る人も増えました。便利ですよね。暗いステージでも見えるし、大量の曲を持ち運べるし。
でも、「練習中」に限っては紙の方が優秀です。
1タップで逃げ出せる環境を作らない
タブレットで練習していて、ちょっと詰まったとき。「このフレーズ、どう弾くんだっけ?」とYouTubeを開く。そこまでは良いのです。
しかし、関連動画に面白そうなサムネが出てきた瞬間、あなたはギターを置いて動画を見始めてしまう。
タブレットは「多機能すぎる」のです。練習に必要なのは、**「それしかできない不便さ」**です。
アナログに戻る手間が、スイッチになる
面倒でも、練習したい曲の譜面はコンビニでプリントアウトするか、ノートに書き写してください。
「紙を用意して、譜面台に置く」という儀式が、脳を練習モードに切り替えます。
あと、新潟の湿気を含んだ紙のちょっとしなっとした感触、嫌いじゃないでしょう?(紙が湿気る前に除湿機はかけましょうね)


練習効率を3倍にする「機内モード練習法」

ここからは、具体的なデジタルデトックス練習の実践編です。
誰でも今日からできる、3ステップの環境づくりを紹介します。
STEP 1:スマホを「別の部屋」か「見えない場所」へ
これが最強です。
自分の部屋で練習するなら、リビングやトイレにスマホを置いてきてください。ワンルームなら、玄関の靴箱の上でもいいし、カバンの奥底にしまってチャックを閉めてください。
**「手に取るまでに20秒以上かかる状態」**を作ることが重要です。人間は面倒くさがりなので、20秒の手間があれば誘惑に勝てます。
STEP 2:機材をアナログ化する
「メトロノームもチューナーもアプリです」という人は多いですが、これはスマホを触る口実になってしまいます。
クリップチューナー(1000円くらいで買えます)
電子メトロノーム(KORGの青いあれとか)
ICレコーダー(録音用)
これらを用意しましょう。「専用機」を使うことで、スマホへの依存度をゼロにできます。
数千円の投資で、一生モノの集中力が手に入ると考えれば安いものです。
STEP 3:退屈を味方につける(DMNの活用)
スマホがないと、練習の合間の休憩中に「手持ち無沙汰」になりますよね。
実はこの「退屈な時間」こそが超重要です。
脳がぼーっとしているとき、脳内ではDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という回路が活発になります。
この時、脳は情報の整理や、記憶の定着、新しいアイデアの結合を行っています。
「あ、このフレーズ、こう弾いたら面白いかも」「次はあのアンプの設定を試してみよう」
そんなクリエイティブな発想は、スマホで情報を詰め込んでいる時には生まれません。退屈な空白の時間にこそ、音楽的な閃きが降りてくるのです。


よくある質問(Q&A)
Q. YouTubeのレッスン動画を見ながら練習したいんですが…
A. 「ダウンロード」か「全画面」で対抗しましょう。
YouTube Premiumなどで動画をオフライン保存し、機内モードで再生するのがベストです。それが無理なら、PCで全画面表示にして、スマホは別室へ。関連動画が見えない状況を作りましょう。動画を見る時間と、弾く時間を分けるのも効果的です。
Q. 練習の録音にスマホを使いたいんですけど。
A. 機内モード + おやすみモードの鉄壁コンボで。
録音中にLINEの通知音が「ピロリン♪」と鳴って、良いテイクが台無しになった経験はありませんか? 私はあります。
どうしてもスマホで録音するなら、全ての通信を遮断してください。でも本音を言えば、Zoomなどのハンディレコーダーを1台持っておくと、音質も良いし集中も途切れないので最強です。
Q. 緊急の連絡が来るかもしれないので不安です。
A. 練習の30分間に起きる緊急事態なんて、人生でそうそうありません。
もし本当に緊急なら、電話が2回連続でかかってくるはずです(おやすみモードの設定で、繰り返しの着信は通知するようにできます)。
「今から1時間練習するから返信遅れる!」とSNSで宣言してから電源を切るのも、自分を追い込む良い方法ですよ。
まとめ:不便さが「没頭」を生む
スマホは視界にあるだけで脳のメモリを消費する(認知コスト)。
SNSの「即ドーパミン」に、ギターの「遅延報酬」は勝てない。
タブレットより紙の譜面。アナログ環境がスイッチになる。
「退屈」な時間にこそ、脳は記憶を整理し、アイデアを生む(DMN)。
現代において、何かに没頭できる時間は何よりも贅沢です。
その贅沢を味わうために、ほんの少しの間だけ、デジタルな世界からログアウトしてみてください。
静寂の中でアンプのノイズだけが聞こえる空間。
そこで鳴らすあなたのギターの音は、いつもより少しだけ、クリアに聴こえるはずです。







