仕事終わりのギター練習が続かないのは「脳のHP切れ」が原因。

「気合でケースから出す」のをやめれば、練習は勝手に始まる。脳の『HP切れ』をハックせよ。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
新潟の冬は、暖房の効いた部屋から一歩出るだけで「極寒の地へ遠征」みたいな覚悟がいりますよね。
それと同じくらい、仕事終わりのクタクタな状態で「ギターケースのチャックを開ける」のは、もはやエベレスト登頂並みのハードルに感じませんか?
「今日も練習できなかった…」と自分を責めて、ソファーでスマホを見ながら寝落ちする。
わかります。でもそれ、あなたが怠け者だからじゃありません。
脳の仕組み上、夜に「練習しよう」と決断するのは、生理学的にほぼ不可能なんです。
結論から言うと、必要なのは根性ではなく「20秒ルール」という行動経済学のテクニックです。
意思の力を使わずに、気づいたらギターを弾いている状態を作る。今日はその具体的な「環境ハック術」をお伝えします。



なぜ夜になるとギターが触れなくなるのか?「決断疲れ」の正体

仕事や学校から帰ってきた夜、あなたの脳はすでに「ガス欠」を起こしています。
心理学には「自我消耗(Ego Depletion)」という概念があります。
人間が1日に使える「意志力(ウィルパワー)」の総量は決まっていて、まるでスマホのバッテリーのように、朝が満タンで夜に向かって減っていきます。
朝起きる
服を選ぶ
満員電車を我慢する
仕事でメールを返す
晩御飯の献立を考える
これらすべての行動で、脳は「決断」と「我慢」を繰り返し、ウィルパワーを消費しています。
夜、帰宅した時点でバッテリー残量は数%。この状態で「よし、ギターケースを開けて、チューニングして、練習するぞ!」という新たな決断を脳に強いるのは、充電切れのスマホで動画編集をしようとするようなものです。
だからこそ、「やろうと思っているのに動けない」のは当然なのです。
脳を騙して行動させる「20秒ルール」とは?

では、意志力が残っていない状態でどうやって練習を始めるか?
ここで登場するのが、ハーバード大学のショーン・エイカー氏が提唱した「20秒ルール」です。
これは非常にシンプルで、「やりたい習慣を始めるまでの手間を20秒減らす」というものです。
人間の脳は「面倒くさい」を極端に嫌います。行動経済学ではこれを「摩擦(フリクション)」と呼びますが、この摩擦が少しでもあると、疲れた脳は「やらない」という楽な選択肢を即座に選びます。
逆に言えば、ギターを弾き始めるまでの手間を極限までゼロに近づければ、意志力を使わずにオートモードで練習に入ることができるのです。
「ケースにしまう」は練習の墓場
多くの人がやってしまう最大のミスは、ギターを毎回ハードケースやギグバッグにしまってしまうことです。
| 状態 | 弾くまでのステップ | 脳の負担(摩擦) |
| ケースの中 | ①ケースを引っ張り出す
②チャックを開ける
③ギターを取り出す
④ピックを探す
⑤構える | 激重(エベレスト級)
「あぁ面倒くさい…明日でいいか」 |
| スタンド | ①ギターを手に取る
②構える | ほぼゼロ(散歩級)
「とりあえず触るか」 |
この「チャックを開ける」という数秒の動作が、疲れた脳にとっては巨大な壁になります。
「20秒ルール」を適用するなら、ギターは出しっぱなしが正解です。
https://gainfomation.net/5habit/



今日からできる「自動化」のための3ステップ

意思の力に頼らず、環境をハックして練習を自動化するための具体的な手順を紹介します。
1. ギタースタンドを「生活動線」に置く
ギター専用の部屋に置くのではなく、リビングのソファーのすぐ横や、ベッドの枕元に置いてください。
視界に入り、手を伸ばせば届く距離(アフォーダンス効果)にあることが重要です。テレビのリモコンと同じレベルの「手に取りやすさ」を目指しましょう。
2. シールドは挿しっぱなし、チューナーはヘッドにつけっぱなし
アンプを使える環境なら、シールドは挿したままでOKです(アクティブ回路のギターは電池消耗に注意)。クリップチューナーもヘッドにつけたままにしておきましょう。
「探す」という行為が発生した瞬間、脳は「やめる理由」を見つけてしまいます。
3. 「3分弾けば勝ち」と決める
「1時間練習しなきゃ」と思うと、脳はそれを「重労働」と認識して拒絶します。
「CMの間だけ」「お湯が沸くまでの3分だけ」と決めてください。
脳科学的には「作業興奮」といって、一度始めてしまえば脳の側坐核が刺激され、やる気物質(ドーパミン)が出てきます。気づいたら30分弾いていた、という現象はこれで起きます。
https://gainfomation.net/guitar-motivation-tips/
よくある質問(Q&A)
Q. ギターを出しっぱなしにすると、ネックが反りませんか?
A. 可能性はゼロではありませんが、毎日弾いて状態をチェックできるメリットの方が大きいです。
ケースに入れっぱなしで1ヶ月放置する方が、異変に気づけず重症化します。特に初心者のうちは「劣化」より「放置」のリスクを恐れましょう。
Q. どうしても夜は眠くて無理です…。
A. それなら「朝」に切り替えるのも手です。
朝はウィルパワーが満タンの状態。誰にも邪魔されないゴールデンタイムです。夜の20秒ルールが効かない場合は、朝の15分を試してみてください。
https://gainfomation.net/morning-routine/
Q. 家族に「邪魔だ」と言われます…。
A. 壁掛けハンガー(ハーキュレスなど)を導入しましょう。
床のスペースを奪わず、インテリアとして飾ることで家族の理解を得やすくなります。「これはアートだ」と言い張りましょう。
まとめ
ギターが続かないのは、あなたの意志が弱いからではありません。「弾くまでの手順」が多すぎるだけです。
意志力は消耗品。 夜の自分に「決断」させてはいけない。
20秒ルール。 手間を20秒減らすだけで、行動率は劇的に上がる。
ケースは封印。 ギターはスタンドに立てて、常に「スタンバイ状態」にする。



おまけ











