「最近なんかギター弾く気にならない…」
ギターを始めたときはあんなに楽しかったのに、気づけばケースを開けるのも面倒に感じる。
そんな感覚、きっとあなただけじゃない。誰にでもある。
実際、ギターを始めた人の8〜9割は1年以内にやめてしまうと言われている。
でもこれは、ギターだけに限った話ではない。
筋トレ、英会話、読書、ランニング──何か新しいことを始めても、長く続けるのは本当に難しい。
「最初は楽しかったのに…」
その“やる気の消失”こそ、最初の挫折ポイントになる。
結論から言えば、ギターの上達に必要なのは「やる気」ではない。
大事なのは「自分が前に進んでいる」と実感できることだ。
“前に進んでいる”と感じるだけで、人は自然とモチベーションが上がる。
逆に、「成長していない」「足踏みしてる」と感じると、一気にやる気は失われていく。
この記事では、そうした「モチベーションが続かない理由」と「続ける人の考え方」の違いを、最新の心理学的研究や実例を交えて紹介する。
読み終えるころには、やる気が無くてもギターを続けられる“仕組み”が分かるはずだ。
「1万時間の法則」はもう信じなくていい
一時期、「1万時間練習すれば天才になれる」という言葉が話題になった。
このフレーズを信じて、ひたすらストイックに練習してきた人も少なくないだろう。
だが最近の研究では、それが誤解だったことが明らかになってきている。
たとえば、プリンストン大学が行ったメタ解析では、「練習の重要性」は全体のわずか12%ほどという結果だった。
音楽分野でも21%。つまり、残りの8割以上は別の要因によって上達が左右されているということになる。
練習時間が長い=成果が出る、という単純な方程式は成り立たない。
この現実は、多くのギタリストにとってショックかもしれない。
つまり、たくさん練習すれば必ず上手くなる──そんな“わかりやすい理屈”だけでは、上達は保証されないのだ。
要するに、“時間をかけただけでは報われない”こともあるというわけだ。
とはいえ、ここで「練習してもムダ」と早合点するのは禁物。
あくまで「他人との能力差は練習だけでは埋まらない」という意味であって、練習自体には確実な効果がある。
自分の中に「手応え」や「理解」が蓄積されることは間違いない。
スポーツの世界でも「努力」だけでは届かない
この傾向は、音楽だけにとどまらない。スポーツの世界でも同様のことが言われている。
ある研究によると、プロアスリート同士の成績差において「練習が占める割合」は、なんと1%。
残酷なようだが、これは“才能や環境の違い”が極めて大きな要因になっていることを意味している。
つまり、「自分よりうまい人がいるのは、自分がサボっているからだ」と思い込む必要はない。
そもそも勝負のスタート地点から、違う条件が与えられている場合があるのだ。
とはいえ、それでも練習は必要だ。
大切なのは、“他人と比べるため”ではなく、“昨日の自分より前に進むため”に練習をするという意識を持つこと。
上達している実感が持てるかどうかは、練習の「質」と「目的意識」によって大きく変わる。
自分が納得しながら練習を積み重ねることで、ギターを続けることができるようになる。
やる気は「前進感」から生まれる
「どうすればやる気が続くのか?」
この問いに対する科学的な答えが、ハーバード大学の研究から見えてきた。
テレサ・アマビール教授が提唱した「前進の法則」によれば、
人は「自分の行動が前に進んでいる」と実感したときに、最もモチベーションが高まるという。
逆に、「足踏みしている」「停滞している」と感じた瞬間に、人のやる気は急速にしぼんでしまう。
これは仕事でも勉強でも、そしてギターの練習でも、例外ではない。
たとえば──
昨日は押さえられなかったコードが今日はできた
指の動きが少し滑らかになった
1小節だけどノーミスで弾けた
こうした小さな“進歩”を感じるだけで、人は自然と「もうちょっと続けてみようかな」という気持ちになる。
「小さな勝利」を毎日積み重ねる
やる気に頼らず、ギターを継続するための最強の方法がある。
それは「小さな勝利」を毎日積み重ねていくことだ。
いきなり1曲完コピしようとするのではなく、
「今日は20分だけギターを触る」「1つだけコードを覚える」など、ハードルの低い目標を設定する。
重要なのは、「できた」「進んだ」と思える瞬間を日々つくること。
これが、次の行動につながるポジティブなサイクルを生み出す。
さらに、ちょっとした記録をつけるのも効果的だ。
スマホのメモに「今日はB7コードが押さえられた」「Fコードがちょっと鳴った」と書くだけでも良い。
それだけで自分の前進が“見える化”される。
この「小さな達成感」が積み重なると、やがて「振り返ったら、結構上達してた」という感覚につながる。
ギター上達の本質は、こうした“静かな継続”の中にある。
「やる気に頼らない」練習の仕組み化
やる気というのは、とても不安定なものだ。
最初のうちは勢いでギターを弾けても、少し疲れたり、忙しかったり、気が乗らない日が続くだけであっという間に習慣は途切れてしまう。
だからこそ、「やる気があってもなくても、自然とギターに触れる仕組み」を作ることが大切になる。
それが練習を“当たり前の習慣”に変えてくれる。
たとえば以下のような工夫がある。
練習時間を固定する
朝の10分、寝る前の15分など、ライフスタイルに組み込むと習慣になりやすい。ギターを常に目に入る場所に置いておく
スタンドに立てかけておくだけで、ふとしたタイミングで手が伸びやすくなる。SNSに「ギター◯日目」と記録を投稿する
リアクションをもらうと承認欲求が刺激され、継続しやすくなる。ThreadsやInstagramのストーリーなども活用できる。練習記録を簡単につける
スマホのメモでも、手帳でもいい。「何を弾いたか」ではなく「練習した」という事実が記録されていれば十分。仲間をつくる
オンラインでもオフラインでもいい。励まし合える人の存在は、モチベーションに直結する。
このように、あらかじめ“仕組み”を整えておけば、やる気がなくても自然とギターを手に取れるようになる。
大切なのは、「やる気が必要ない環境」をつくることだ。
成長のカギは「昨日の自分に勝つこと」
ここまでの内容を振り返ろう。
「1万時間の法則」は完全な真実ではない。練習だけでは他人との差を埋めることはできない。
スポーツでも音楽でも、才能や環境が大きく影響する。だが、自分の成長には練習が必要不可欠。
「やる気」は行動の原因ではなく結果。前に進んでいると感じると自然と湧いてくる。
小さな達成を毎日記録しよう。それが“続ける力”になる。
やる気に頼らず続けるための環境づくりが重要。
つまり、ギターの練習で最も大事なのは「昨日の自分より一歩前進しているかどうか」だ。
他人と比較して落ち込むのではなく、自分の中に小さな進歩を見つけよう。
その積み重ねこそが、やがて大きな成長となり、自信や楽しさへと変わっていく。
そしてなにより──
ギターは本来、楽しいものであるべきだ。
練習が義務になって苦しくなった時は、あえて思い切って休むのもアリ。
音楽の楽しさを忘れないように、あなた自身のペースでギターと向き合っていこう。