ギターを練習していると、ふと「自分は何のために弾いているんだろう?」と思うことはないだろうか。
「もっと上手くなりたい」と思う日もあれば、「下手だと思われたくない」と焦る瞬間もある。
これ、どちらも一見“モチベーション”に見えるけれど、実は全く別物。
心理学では前者を「達成動機」、後者を「回避動機」と呼ぶ。
この違いを理解していないと、知らず知らずのうちにギターを「楽しいもの」から「しんどい義務」に変えてしまっている可能性もある。
今回はこの「似て非なるモチベーションの違い」と、ギターとの向き合い方について掘り下げてみよう。
達成動機と回避動機の違いとは?
心理学的にモチベーションは主に2種類に分けられる。
達成動機(Approach Motivation)
→「○○ができるようになりたい」「音作りを極めたい」など、ポジティブな目標に向かう気持ち。回避動機(Avoidance Motivation)
→「下手だと思われたくない」「失敗したくない」など、ネガティブな結果を避けたい気持ち。
どちらも行動のきっかけにはなるが、練習に向かう気持ちの“質”に大きな差が出る。
ギター弾きあるある:動機の具体例
■ 達成動機ベースの人は…
SNSに動画をアップして「できるようになった!」を共有したい
「この音、昨日より良くなったかも?」という気付きが嬉しい
フレーズがつながって「気持ちいい」と感じる瞬間が快感
これはギターが“ごほうび”になっている状態だ。練習自体が楽しくて、没頭しやすい。

■ 回避動機ベースの人は…
間違えた演奏を誰かに見られるのが恥ずかしい
「こんなレベルで動画出すのもどうなの?」と投稿を躊躇する
人前での演奏が近づくほど、練習が義務に感じる
こうなると、ギターを弾くのが“安心するための儀式”になり、楽しさよりも緊張や不安の方が勝ってしまう。
モチベーションタイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
達成動機 | 楽しさや好奇心から継続しやすい、創造性が高い | 理想を追いすぎて落ち込みやすいこともある |
回避動機 | 危機感で行動に火がつく | 不安や完璧主義で自滅しやすい |
自分の“モチベーション傾向”をチェックしよう
以下の質問にYESが多ければ、回避動機寄りになっているかもしれない。
練習のあと、「疲れた」「ダメだった」と思うことが多い
ミスしたとき「自分は向いてない」と思いがち
SNSで他人の演奏を見ると、気後れしてやる気をなくす
「見返してやりたい」気持ちでギターを手に取っている
ギターを続けるうえで「回避動機」が悪いというわけではない。ただ、放っておくとストレスや自己否定につながるリスクがある。
バランスの取り方:回避動機を“うまく使う”コツ
「下手だと思われたくない」気持ちは、裏返せば“真剣に向き合っている証拠”でもある。
だから、無理に捨てる必要はない。
そのエネルギーを“前向きな行動”に変えることができれば、立派なモチベーションになる。
たとえば…
苦手意識のあるフレーズも、**「上手くなったら嬉しいな」**と再定義する
練習は録音して“過去の自分”と比較するだけでもいい
「とりあえず3分だけ弾く」ような習慣をつくって、自信に繋げる

ギターを「達成動機ベース」に切り替えるテクニック
小さな成功体験を記録する
→ 例:「初めてクリーンで気持ちよくコードが鳴った!」でもOKSNSに出さなくてもいい“練習ログ”をつけてみる
→ 撮りっぱなしの動画を振り返るだけでも前進が見える他人ではなく“昨日の自分”と比べる
→ 見るべきはランキングじゃなくて、自分の軌跡
結局、どちらの動機が良いの?
答えは「両方必要」。
ただし、主軸は達成動機に置いておくのがベター。
プレッシャーがきっかけで動き出すこともあるけど、継続には“ポジティブな感情”が必要になるからだ。
たとえば…
「ライブでミスしたくない」=回避動機
→「だからこそ、今から練習して自信つけよう」=達成動機に変換
この変換ができるかどうかで、ギターを続ける楽しさが変わってくる。
まとめ
「上手くなりたい」と「下手だと思われたくない」は似て非なるモチベーション。
回避動機が強いとギターが“義務”になってしまい、挫折につながりやすい。
うまく活かすには、達成動機ベースで「できたら嬉しいこと」に焦点を当てること。
小さな成功や習慣化を重ねて、楽しさで動くギター時間を増やしていこう。
QAで記事の振り返り
Q1. 「上手くなりたい」と「下手だと思われたくない」は、何がどう違うの?
A1. 前者は“達成動機”で、ポジティブな目標に向かって行動する動機。後者は“回避動機”で、ネガティブな結果(失敗・恥)を避けようとする動機。どちらも行動の原動力になるが、楽しさや継続性には大きな差が出る。
Q2. 回避動機って悪いことなの?
A2. 一概に悪いわけではない。危機感や緊張感を行動に繋げる力がある。ただし、強すぎるとストレスや自己否定になりやすく、ギターを「しんどいもの」に変えてしまうリスクがある。
Q3. 自分がどちら寄りかを判断するには?
A3. 練習中や後に感じる気持ちを振り返るのがポイント。「できて嬉しい」なら達成動機、「間違えたらどうしよう」ばかりが頭に浮かぶなら回避動機寄りかもしれない。
Q4. 回避動機ばかりでギターが楽しくない…。どうすればいい?
A4. 回避動機は“変換”できる。「失敗したくない」→「もっと安定して弾けるようになろう」など、達成動機的な目標に置き換えるだけで、気持ちが軽くなりやすい。まずは自分の中の声を聞いて、視点を変えてみよう。
Q5. 結局、どっちの動機が正解なの?
A5. 正解はなく、どちらも必要。ただし、長く楽しく続けたいなら、達成動機をベースにしつつ、回避動機はうまく“使う”ことが理想的。自分のモチベーション傾向に気づくだけでも、ギターとの向き合い方が変わってくる。