「ギターを弾く意味って、自分にとって何だろう?」
ふとそんな疑問を持ったことはないだろうか。たとえば練習が続かないとき、演奏に行き詰まったとき、あるいはそもそも続けるモチベーションが見つからないとき。
多くのギター初心者や中級者が、一度は直面する問いだ。
結論から言えば、「ギターを弾くことに意味を感じられるかどうか」は、その人の人生全体の充実度に大きな影響を与える可能性がある。
これは感情論ではなく、近年の心理学的研究でも示唆されている確かな知見だ。
自分の行動に対して意味を感じられると、自己肯定感が高まり、ストレスへの耐性が上がり、日常に一貫性が生まれる。
そしてその感覚は、ギターという楽器を通して、日々の中で自然に育てることができるのだ。
続かない人と続く人の違いとは
よく言われる話に、「ギター初心者の8〜9割は1年以内に辞める」というデータがある。
一見するとショッキングな数字だが、これはギターに限った話ではない。何かを始めるとき、最初の情熱が続かずに挫折してしまうのは、多くの趣味や習慣で共通する現象だ。
しかしその中で継続できている人たちは、共通して「ギターを弾くことが自分にとって意味のある行為だ」と感じていることが多い。
「楽しいから」「癒されるから」という感覚的な理由でも良いし、「あの曲を完璧に弾きたい」「誰かに聴かせたい」といった明確な目的でも構わない。
意味があると感じられるからこそ、日々の練習にも納得感が生まれるし、多少の壁にも粘り強く取り組めるようになる。
ギターと人生の「意味」の関係
心理学では、人生の意味(Meaning in Life)は以下の3つの構成要素に分けて理解されている。
1. 目的(Purpose)
自分の人生にどんな方向性があるのかを明確に持っていること。
ギターにおいても、「発表会に出たい」「あの曲を完コピしたい」「趣味を通じて仲間を増やしたい」などの目標が、日々の行動に明確な軸を与えてくれる。
目的があることで、時間の使い方が主体的になる。
漠然と練習するのではなく、明確な方向性を持った取り組みができるため、達成感を得やすくなるのだ。
2. 実存的重要性(Existential Significance)
「自分が生きていることには価値がある」と実感できる感覚。
ギターを弾くことで誰かが喜んでくれたとき、自分の存在が誰かの心に作用していると感じられる。
たとえちょっとした演奏でも、誰かに「良い音だったね」と言われたその一言が、実存的な意味の感覚を生み出す。
こうした体験は、自己否定感を和らげ、ポジティブな自己認識を支える大きな要素になる。
3. 首尾一貫性(Coherence)
自分の人生が一つのストーリーとしてつながっているという感覚。
ギターに関しても、「あの時の挫折が今の自分を作っている」と振り返ることができたり、「初めて弾けたコードから始まった旅が今も続いている」と思えると、それが自分の人生の物語の一部として意味を持ち始める。
成長の実感や、自分なりのペースでの継続こそが、この一貫性の源になる。
「意味」は外部評価ではなく、自分の感覚で決まる
ここで特に重要なのが、「意味」とは主観的な感覚であるということ。
たとえ他人から見て些細に思える行動でも、本人が「自分にとって大切なこと」と感じていれば、それは十分に意味がある。
例えば、毎日ギターを10分だけ練習している人がいるとしよう。周囲からは「それだけで意味あるの?」と問われるかもしれない。
しかしその人にとっては、その10分が「自分を保つための時間」「一日の中で唯一の集中できる瞬間」かもしれないのだ。
逆に、どれほど社会的に立派とされる活動をしていても、本人がそれを意味あると感じていなければ、内面的な充実感にはつながらない。
小さな感覚の積み重ねが、人生を肯定できる土台になる
ギターを通して「意味の感覚」を育てるために大切なのは、何も大きな目標を持つことだけではない。
・自分が好きなギターを使うこと
・音色にこだわってエフェクターを試すこと
・少しずつ弾けるフレーズが増えること
・演奏後に「ああ、今日も気持ちよかった」と思えること
こうした日々の小さな積み重ねが、やがて「自分はギターを通して生きている」と感じられるようになる。
その感覚が、人生全体の充実感につながっていく。
まとめ:ギターは、人生の意味を感じる装置になりうる
「ギターを弾く意味がわからなくなった」と感じたときこそ、自分にとっての“意味”の再確認のチャンスだ。
その意味とは、上達や成果だけではなく、「自分が自分でいられる時間を持つこと」「小さな達成に喜べること」「自分の感覚を信じること」にこそある。
・目的を持つ
・価値を実感する
・一貫したストーリーを感じる
この3つの視点を通じて、ギターは単なる趣味を超えた“人生のコンパス”となる。
上手くなることだけが正解ではない。意味を感じることができた時点で、あなたのギターはもう十分に価値を持っているのだ。


