「あの曲のコード、なんだっけ?」そのド忘れ、鼻を使えば治るかもしれません。
【リード文】 どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の講師、吉田です。
「さっき覚えたはずのフレーズが、翌日には綺麗サッパリ消えている」
「ライブ本番で歌詞が飛んで頭が真っ白になった」 そんな経験、誰にでもあるはずです。
年のせい? いえいえ、それは脳への「タグ付け」が足りていないだけかもしれません。
結論から言います。 曲を覚えるなら、鼻を使え。
今回は、脳科学的現象「プルースト効果」を利用した、最も優雅で効率的な暗記ハックを紹介します。
なぜ「香り」で曲が覚えられるのか? 脳科学が示すプルースト効果

「カレーの匂いを嗅いだ瞬間、実家の夕暮れ時を思い出した」
「特定の香水の香りで、昔の恋人の顔がフラッシュバックした」
あなたにもこんな経験はないでしょうか。
これを心理学用語で「プルースト効果」と呼びます。
実はこれ、ギタリストが曲を覚える上で強力な武器になるのです。
嗅覚だけが持つ「特権」
人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち、嗅覚だけが脳のルートが特殊です。 視覚や聴覚は一度「視床」という理性のフィルターを通してから処理されますが、嗅覚だけは「海馬(記憶)」と「扁桃体(感情)」にダイレクトに直結しています。
つまり、理屈抜きで「香り=記憶」として脳に焼き付ける力が、他の感覚より圧倒的に強いのです。
ギター練習に応用する「条件付け」
この仕組みを練習に応用します。 やり方はシンプル。「この曲を練習するときは、この香りを嗅ぐ」と決めるだけ。
難解なジャズコードの曲 = ローズマリーの香り
激しいロックのリフ = ペパーミントの香り
こうやって脳に「この香りがしている時は、この指の動きをする」というタグ付け(条件付け)を行います。すると、次回その香りを嗅いだ瞬間、脳の海馬が刺激され、フレーズの記憶が呼び起こされやすくなるのです。
実践! 無印良品で始める「暗記アロマ」活用術

「アロマなんて焚いたことないし、面倒くさそう」
そう思う男性ギタリストにこそおすすめしたいのが、無印良品のアロマストーンです。
火も電気も水も使いません。この石にオイルを垂らすだけ。安価に始められます。
シーン別・おすすめの香り選び
香りの種類によって、脳への作用(集中かリラックスか)が変わります。練習内容に合わせて使い分けるのがポイントです。
1. 複雑なフレーズ・速弾き練習には「レモン・ローズマリー」
交感神経を刺激し、集中力を高める効果があります。 「ここぞ!」という集中力が必要なメカニカルな練習や、譜面を暗記するフェーズに最適です。脳がシャキッとして、情報の入力スピードが上がります。
2. バラード・表現力の練習には「ラベンダー・ベルガモット」
副交感神経を優位にし、リラックスさせます。 身体の余計な力が抜けやすくなるため、チョーキングのニュアンスや、感情を込めた演奏を練習する時に向いています。
3. 煮詰まった時のリセットには「ひのき・ユーカリ」
特に冬場の閉め切った部屋で練習していると、二酸化炭素濃度が上がり、脳が疲れてきます。
そんな時は森の香りでリフレッシュ。まるで露天風呂に入ったような感覚で、脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)を整えることができます。
ライブ本番で「ど忘れ」を防ぐ最強のトリック

このハックの真骨頂は、実は「ライブ本番」にあります。
家で練習していた時と同じ香りを、本番のステージにも持ち込むのです。 アロマオイルを染み込ませたハンカチをポケットに入れるか、リストバンドに少しだけつけておく。
本番前、緊張で心臓がバクバクしている時にその香りを嗅ぐとどうなるか?
脳は「あ、これはいつもの部屋で練習している時と同じ状況だ」と錯覚します。
記憶の呼び出し(リコール):練習したフレーズが自然と出てきやすくなる。
リラックス効果:パブロフの犬のように、条件反射で身体の緊張がほぐれる。
プロのアスリートも使うこの手法。 「緊張して頭が真っ白になる」タイプの人には、どんな精神論よりも効く「化学的なお守り」になります。
注意! ギターとアロマの付き合い方
ただし、いくつか注意点もあります。
ギター本体にオイルをつけない
「指板にレモンオイル塗るから、アロマオイルも塗っていいでしょ?」は絶対にNGです。 アロマオイル(精油)は高濃度に濃縮されており、塗装を溶かしたり、木材に変なシミを作る可能性があります。あくまで「空気」や「自分の手首・布」で楽しんでください。
ペット(特に猫)がいる部屋では使わない
これは命に関わる話です。猫などの動物は、特定の精油成分を分解できず、中毒を起こすことがあります(特にティーツリーや柑橘系など)。 ペットがいる環境では、使用を控えるか、獣医師の指導に従ってください。
よくある質問(Q&A)
Q. 毎日同じ香りじゃダメなんですか?
A. ダメではありませんが、「暗記」を目的にするなら変えたほうが効果的です。「この香りはあの曲!」という強い結びつきを作るためには、曲や練習メニューごとに香りを変えるのがコツです。
Q. ディフューザー(霧が出る機械)を買う必要がありますか?
A. 必須ではありません。買っても良いですが、アロマストーンか、お皿の上にティッシュを置き、そこに1滴垂らしてデスクに置くだけで十分香ります。
Q. 匂いに敏感で、酔いそうです。
A. 天然の精油(エッセンシャルオイル)を選んでください。100均などの「アロマオイル」と書かれた合成香料は、長時間嗅ぐと頭痛がすることがあります。まずはオレンジやグレープフルーツなど、馴染みのある香りから少量で試しましょう。
まとめ
嗅覚は「海馬」直結。 脳への記憶定着に最強のルートを持っている。
「曲×香り」でタグ付けする。 練習時に特定の香りを嗅ぐことで、フレーズをセットで記憶させる。
本番で再現する。 同じ香りを身につけることで、緊張緩和と記憶の呼び起こしを行う。
無印のアロマストーンでOK。 大掛かりな機械は不要。
暗譜が苦手なのは、あなたの記憶力が悪いからではありません。
脳への「検索ワード」が登録されていないだけです。
楽譜とメトロノームの横に、小さなアロマオイルを一本。 これだけで、あなたの練習部屋が「覚えられない独房」から「記憶の実験室」に変わります。
今日のチャレンジ
無印良品かドラッグストアに行って、サンプルで「いい匂いだな」と思うオイルを一つ探してみよう!(まずは嗅ぐだけでOK!)
おまけ













