コードトーンの練習を自動化するブラウザツールを作った話

どうも、吉田です。
今回は、当ブログGAINMAGのオリジナルツール「SOMETHIN’ ELSE」をリリースしたので、その紹介と開発の経緯を書きます。
ツール紹介だけでなく「なぜコードトーンの練習がここまで難しいのか」という話もしたいので、少々お付き合いください。
結論から言うと、コード進行に対して指定した度数のコードトーンを弾くと、リアルタイムで正誤判定してくれるブラウザツールです。
インストール不要、アカウント登録不要、無料。
ブラウザ(Google chrome推奨)とマイク(できればオーディオインターフェース)があればどの楽器でもすぐ使えます。
▶ SOMETHIN’ ELSE|CHORD TONE TRAINER by GAINMAG
そもそもコードトーン練習の何が難しいのか
ジャズのアドリブにおいて「コードトーンを把握する」ことが基本中の基本だというのは、教則本にも書いてあるしYouTubeでもよく言われる話です。
まずはR・3rd・5th・7thをコードごとに弾けるようにしましょう、と。
理屈は分かる。分かるんだけど、実際にやろうとすると手が止まる。
たとえばCM7のコードトーンはC・E・G・B。これは覚えられる。
でもその次にDm7が来たら? Am7が来たら?
コード進行の中で「次のコードのコードトーンは何で、指板のどこにあるか」を瞬時に判断する──この接続の部分が圧倒的に難しい。
しかもこの練習、一人でやるとフィードバックがない。
「今弾いた音が本当に合っているのか」を確認するには、いちいち鍵盤やコード表と照合するか、自分の耳を信じるしかない。
耳を鍛えるための練習なのに、耳を信じるしかないという矛盾。
ここで多くの人が止まります。
きっかけはBOSS GX-1だった
BOSS GX-1というマルチエフェクターを触ったとき、「これは面白いものが作れそうだ」と思いました。
USB Type-Cケーブル1本でスマートフォンに直結できて、バスパワーで動く。
つまりギターの信号をブラウザにそのまま送り込める環境が、コンパクトな機材1つで手に入る。
最初は音作りをサポートするツールをいくつか考えました。
でも、音作り系のツールやアプリはすでに世の中にたくさんあるし技術的に出来る事にも限界がある。
それよりも「上達をサポートするツール」の方が絶対数として少ないし、だからこそやる価値が高い。
いくつかアイデアを並べた中で、まず形にできそうだったのがコードトーントレーナーでした。
海外にはSOLOというコードトーン練習アプリがあって、コンセプトとして参考にしています。
ただ、アプリではなくブラウザツールにしたのは意図的で、インストールもアカウント登録も不要という利便性を優先したかった。技術的にもその方が早く形にできるという判断です。
半分は自分のために作った、というのが正直なところ。
ジャズに対する苦手意識をどうにかしたくて、まず練習の仕組みを整えたかった。公開しつつ随時アップデートしていく前提で、ゆるく運営していく予定です。
SOMETHIN’ ELSEでできること
ツールの全機能を細かく書くと長くなるので、ここでは「何ができるか」をざっくり説明します。
コード進行を設定する
3つの方法があります。
PRESETはAutumn LeavesやFly Me to the Moonなど、ジャムセッション定番曲20曲をプリセットで収録。

黒本(ジャズ・スタンダード・バイブル)ベースの選曲です。
全12キーにトランスポーズできます。
CUSTOMは自分でコードを1つずつ組み立てる方式。

RANDOMはランダムなルートとコードタイプが毎回出題されるモードです。

弾く度数を設定する
R・3rd・5th・7thの基本4音だけでなく、9th・11th・13thのテンションノートやオンコードのベース音まで設定できます。

度数はタップした順番に並ぶので、たとえば「R→3→5→3→R」のような往復パターンも作れます。
3つのトレーニングモードとタイムアタック

NORMALは設定した順番通りに弾くモード。まずはこれで「コードごとのコードトーンの位置」を指に覚えさせる。
FREEは順不同で全部弾くモード。順番というガイドがなくなるので、自分で位置を判断する力が求められます。
RANDOMは度数がランダムに1つずつ出題されるモード。反射的にコードトーンへ手が伸びるかどうかが試される。
タイムアタックは90秒のカウントダウンで、時間内に何音正解できるかを測定します。どのモード・どのコード進行とも組み合わせ可能。
スコアが出ると「もう1回」と思ってしまう仕組みです。
使い方の流れ
ツールは当ブログのサイドメニューに設置されたバナーからアクセスできます。

実際の操作はシンプルです。
まず、ページ上部の電源ボタンをタップしてマイクを起動します。

オーディオインターフェース経由がベストですが、内蔵マイクでも動作します(ただし検出精度は下がります)。
入力レベルメーターが表示されるので、「OK」の範囲に入るようゲインを調整。
次にコード進行を設定。プリセットを選ぶなら曲名をタップするだけ。

度数を設定して、モードを選んで、STARTを押す。

画面に「今のコード」と「弾くべき度数」が表示されるので、該当するコードトーンを楽器で弾く。

正しい音が検出されると自動で次に進みます。進行の最後まで到達するとループするので、何周でも繰り返せます。
名前の由来
SOMETHIN’ ELSEという名前は、キャノンボール・アダレイの1958年のアルバム『Somethin’ Else』(Blue Note)から勝手に拝借しています。
このアルバム、クレジット上はキャノンボール・アダレイのリーダー作なんですが、実質的な主役はマイルス・デイヴィス。
当時Columbia専属だったマイルスが、レーベルの垣根を越えてBlue Noteに参加するための「表向きはキャノンボールの作品」という体裁だったと言われています。
ジャズ史に残る名盤の裏にある、面白いエピソード。
そして、このアルバムの1曲目が「Autumn Leaves (枯葉)」です。
ジャズを始める人が最初に通る定番曲も、たいていAutumn Leaves。
名盤『Somethin’ Else』もAutumn Leavesから始まるし、ジャズの道もAutumn Leavesから始まる。
さらに「somethin’ else」という言葉自体、英語で「何か格別なもの」「別格」という意味を持ちます。
つまり──
名盤のオープニングはAutumn Leaves
ジャズ入門もAutumn Leavesから
そしてコードトーンの先に待っているのは、きっと「somethin’ else」=何か格別なもの
この三重の意味を込めて、ツール名として拝借しました。
正直に言うと、まだ完成形ではない
このツールはリリースしたばかりで、まだ誰にも試してもらっていません。
これから生徒さんや周りのプレイヤーに触ってもらいながら、フィードバックをもらって改善していくつもりです。
UIの使い勝手、プリセットの選曲、判定の精度──直すべきところはきっとたくさんある。
筆者自身も、このツールで改めてコードトーンを学び直している最中です。
ジャズはずっと苦手意識があって、正直今もうまく弾けない。
でも「うまく弾けない自分のために練習環境を整える」ということ自体が、苦手意識を崩す最初の一歩だと思っています。
触ってみて気になる点があれば、コメントなどで教えてください。随時アップデートしていきます。
推奨環境
オーディオインターフェース経由での使用を推奨します。内蔵マイクでも動きますが、周囲の音を拾って検出がブレやすくなります。
BOSS GX-1なら、USB Type-Cケーブル1本でPCやスマートフォンに直結できてバスパワー駆動。
GX-1で動作チェックをしているので当然このツールとの相性は抜群です。
▶ SOMETHIN’ ELSE|CHORD TONE TRAINER by GAINMAG




















