アンプ直でそこそこ良い音が出せてる。
エフェクターも一通り揃っている。
でも、「あとちょっと音が前に出てほしい」「なんか音に芯がない」──そんな経験、ギタリストなら一度はあるはずだ。
その“あとちょっと”を埋めてくれるのが、BOSS BP-1W。
単なるブースターではなく、名機CE-1やRE-201のプリアンプ部を完全アナログで再現した、非常に濃厚な一台だ。
しかも、現代の高精度な設計と、BOSSの信頼性。
ギター歴が浅くても、「これ音がいいかも」と自然に感じられるはず。
「トーンに味が欲しい」「今っぽさにちょっと飽きてきた」という人には特に刺さる内容だ。
BP-1Wの基本情報|どんなペダルなのか?
BOSSのハイエンド・ライン「技 WAZA CRAFT」シリーズから登場したBP-1Wは、ブースト、プリアンプ、音作りの芯として多用途に使えるコンパクトペダル。
特徴を一言でまとめると、3つの音色と2つのバッファ、そして温かく密度あるアナログトーンが魅力。
CE-1とRE-201の伝説的プリアンプを1台に凝縮
BOSS BP-1Wの最大の特徴は、歴史的名機
「CE-1 Chorus Ensemble」
と
「RE-201 Space Echo」
に搭載されていたプリアンプ・サウンドを1台で再現しているという点にある。
どちらも70年代から80年代にかけて、多くのプロギタリストに愛用されてきた名機で、その内部回路に内蔵されたプリアンプ部がもたらす独特の音色は、単なる“エフェクト”の枠を超えた存在感を放っていた。
BP-1Wでは以下の3モードを切り替えることで、それぞれのプリアンプのキャラクターを再現している。
● CEモード(CE-1のプリアンプを再現)
CE-1は世界初のコンパクト・コーラスとして有名だが、その内蔵プリアンプの“ブライトで鈴鳴り感のあるトーン”は別格だった。特にシングルコイル搭載ギターに使用すると、パキっとした抜け感とコシを両立したトーンが得られる。
BP-1Wでは、ゲインを上げることで非対称クリッピングを伴うアグレッシブな歪みも得られ、アンプや他の歪みペダルの前に置くことでクランチ~ミドルゲインの質感をプッシュできる。オリジナルCE-1がキーボード向けに設計されていたこともあり、ギターとの相性が独特で、ジョン・フルシアンテのようにチープでジャリっとした“クセのあるトーン”を求めるプレイヤーに刺さる仕様となっている。
● REモード(RE-201のプリアンプを再現)
RE-201 Space Echoは、ディレイ/リバーブ機能が注目されがちだが、実はそのプリアンプ部も極めて高い評価を受けていた。REモードでは、中低域が太く、温かみのあるトーンを再現。ゲインを上げると、ハーモニックで複雑な倍音とコンプレッション感が加わり、まさに“ベルベットのようなサチュレーション”を得られる。
このサウンドは、特にシングルコイルのギターに重心と深みを加えたり、ハムバッカーの厚みを活かして音の存在感を高めるのに最適。トップエンドは丸く、トランジェントはやや抑えめのため、前に出過ぎず奥行きを出したい場面で効果的だ。
● NATモード(フラットなクリーンブースター)
NATモードは、CE/REのようなサウンドの色付けが一切無い、完全にフラットなブーストモード。アンプのキャラクターをそのまま活かしながら、信号を強化したいときに使える。クリーンなボリュームアップ、ペダルの前段でのゲインアップ、ソロ時の音抜け確保など、幅広い用途に対応する。

バッファ切り替え機能も音作りの鍵
さらにBP-1Wは、背面に「STANDARD」「VINTAGE」の2種バッファ切り替えスイッチを搭載。STDはピュアで忠実なトーンを維持、VTGでは入力インピーダンスが100kΩと下がり、角の取れた滑らかで温かみのあるサウンドが得られる。パッシブPUとの相性が良く、丸みのある質感やダイナミックレスポンスを重視する人に特におすすめだ。
筆者の使用感と評価|単なるブースターじゃない
まず結論から言うと、BP-1Wは“音を持ち上げる”のではなく、“音の質感を整える”ためのペダルだと感じた。
たしかにクリーンブースターとしても使えるけれど、それだけで終わらせるのはもったいない。
筆者が最も驚いたのは、GAINノブの効き方。
一般的な歪みペダルのように、ガツンと歪みを増やすというよりは、サチュレーション感を足すタイプ。
いわば、倍音を加えて音に厚みと密度を与えるような動作。
この感覚は、DTMの世界で使われるテープシミュレーターや真空管プリアンプ的なアプローチに近い。
それがギター用ペダルで実現できてしまうのは、かなり珍しい。
「最近のエフェクターってキレイすぎるな…」と感じている人には、間違いなく響く音。
CEモードはジャリっとした抜けの良さ、REモードは丸くファットなサウンド、どちらも“耳に残る質感”があるのが魅力。
具体的な使い方|こんなシチュエーションで活躍する
使い方 | 設定・モード | 効果 |
---|---|---|
常時オンのトーン補正 | NAT + VTG | 音に丸みと深みを加える。シングルコイルが太くなる。 |
ギターソロのブースト | CE + GAIN中程度 | ブライトで前に出る音に。バンドアンサンブルでも埋もれない。 |
オーバードライブの前段 | RE + GAIN高め | 歪みが濃くなり、タイトなハイゲインにも対応。 |
EQのないシステムで色付け | CE/REの各モード | それぞれ異なる周波数キャラでEQ代わりに使える。 |
パッシブPU使用時の強化 | VTGバッファ | 滑らかで粘りのある中域に。コードプレイにも◎ |
※VTG=ビンテージバッファーモード
特に筆者が気に入ったのは、「歪みの後段で使ってトーンの輪郭を整える」使い方。
音が飽和しがちなボードの最後に置くと、全体のまとまり感が格段に上がる。
EQでは得られない「空気感の補正」ができるのがポイント。
モードの音質キャラクター解説
NAT(STD):原音忠実。EQや音作りは他の機材に任せたい人向け。
CE:高域が持ち上がり、明るくパリッとした質感に。バンドで埋もれやすい時に効果的。
RE:中低域が前に出て、音が前に押し出される。コード弾きやジャズ系にも◎。
VTGバッファ:落ち着いたトーンで、ハイのキツさを抑えたい人に最適。
注意点|EQがない=工夫が必要
BP-1WにはトーンやEQコントロールが一切ない。
そのため、周波数の細かい調整をしたい場合は、後段にグラフィックEQやトーンペダルを接続する必要がある。
とはいえ、CE・REモード自体が“プリセットEQ”のようなキャラを持っているので、それを活用して音を作っていく方向性で考えると良いかもしれない。
総評|BP-1Wは“今の音”に“過去の温度”を足せる数少ないペダル
BOSS BP-1Wは、単なるブースターやプリアンプの枠を超えている。
現代的なシステムに、「過去の機材の空気感や質感」を与えてくれる存在だ。
「音の芯が欲しい」「温かみのある音が好き」「最近の機材が冷たく感じる」
──そんなギタリストにとって、まさに“魔法の箱”。
エフェクトの効きが派手ではない分、微細な変化に敏感な中~上級者にも刺さる。
初心者にとっても、「良い音とは何か?」を改めて考えるきっかけになるかもしれない。
