【悲報】「ほろ酔い練習」は時間の無駄?アルコールが脳の”上書き保存”を破壊する理由

晩酌のほろ酔いは、脳にとって「リラックス」ではなく「セーブ機能の強制シャットダウン」だと思ってください。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
仕事が終わり、風呂上がりに缶ビールをプシュッ。
ほろ酔い気分でギターを爪弾く至福の時間。
「お、今の俺、クラプトンみたいにエモーショナルじゃん…」なんて悦に入り、翌朝起きたら昨日弾いたフレーズを指が一切覚えていない。
そんな「ギター版・ワンナイトラブ」のような経験、ありませんか?
「昨日はあんなに弾けたのに、なんで?」と自分を責めるのはやめましょう。
結論から言います。それはあなたの記憶力が悪いのではなく、アルコールが脳の「上書き保存ボタン」を破壊していたからです。
今回は、なぜ「飲みながら練習」が非効率の極みなのか、脳科学と生理学の視点から、晩酌ギタリストへの処方箋をお出しします。



なぜ「酔うと上手く弾けている」と錯覚するのか?

まず、残酷な現実から直視しましょう。お酒を飲んでギターを弾いている時、「いつもよりノッてる」「指が走る」と感じるのは、事実ではなく脳の錯覚です。
ドーパミンとメタ認知の低下
アルコールを摂取すると、脳内で快楽物質であるドーパミンが分泌されます。これにより気分が高揚し、「楽しい」「気持ちいい」という感覚が増幅されます。
一方で、自分を客観視する「メタ認知」の機能(前頭葉の働き)は低下します。
つまり、「指はいつもより動いていない」のに、「脳は最高に気持ちいい」と判定している状態。
録音して翌日シラフで聴き返すと、「リズムはヨレヨレ、チョーキングは音痴」という地獄の音源が出来上がっているのは、このギャップが原因です。
小脳へのダメージ=運動学習の阻害
ギター演奏のような「指先の細かい動き」を司っているのは、脳の小脳という部分です。
ここは運動の微調整やタイミングの制御を行っていますが、アルコールの影響を真っ先に受ける部位でもあります。
酔っ払いが千鳥足になるのは、小脳が麻痺して平衡感覚や運動制御ができなくなるから。
足元がおぼつかない状態で、指先だけミリ単位のコントロールができるわけがありません。この状態で練習しても、「崩れたフォーム」を反復しているだけになりかねません。
翌日忘れる原因は「睡眠の質」にある

「でも、指のトレーニングくらいにはなるでしょ?」と思うかもしれません。
しかし、ここにも大きな落とし穴があります。記憶の定着、つまり「練習したことを脳に書き込む」プロセスが阻害されるのです。
記憶は「レム睡眠」中に固定される
人間の脳は、起きて練習している間ではなく、寝ている間にその日の情報を整理し、スキルとして定着させます。
特に、楽器演奏のような「手続き記憶(体で覚える記憶)」の固定には、浅い眠りであるレム睡眠が重要だと言われています。
アルコールはレム睡眠をブロックする
寝酒をすると「すぐ眠れる」と感じますが、実はアルコールは睡眠の後半で交感神経を刺激し、眠りを浅く分断させます。さらに悪いことに、記憶の定着に必要なレム睡眠を減少させる作用があります。
つまり、晩酌後の練習はこういうことです。
保存せずに文書を作成する(練習)
いきなり電源コードを抜く(飲酒睡眠)
これでは、翌朝データが消えているのも当然です。


シラフ練習 vs ほろ酔い練習 比較テーブル
ここで一度、科学的見地から両者の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | シラフでの練習 | ほろ酔いでの練習 |
| 小脳の働き | 正常。微細な指の動きを制御可能。 | 機能低下。リズムキープや運指が雑になる。 |
| メタ認知 | 自分のミスに気づき、修正できる。 | ミスを「味」だと勘違いし、修正しない。 |
| 記憶の定着 | 睡眠中に効率よく脳に書き込まれる。 | 睡眠の質低下により、定着率が激減。 |
| モチベーション | やや意志力が必要。 | ドーパミンにより「楽しい」と感じやすい。 |
| 翌日の成果 | 「昨日より弾ける」 | 「昨日何弾いたっけ?」 |
解決策:お酒を「報酬」に変えるルーティン

「じゃあ、ギター上手くなるためには禁酒しなきゃいけないの?」
いえ、そこまでする必要はありません。私も新潟の日本酒が美味しすぎて困っている人間の一人です。
重要なのは「順番」を変えることです。
「練習 → 晩酌」のゴールデンルール
脳科学的に最も効率が良いのは、「シラフで集中して練習し、そのご褒美として飲む」というサイクルです。
帰宅後、まずはギターを触る(15分でOK)。
集中して課題をこなす(クロマチック、スケール、曲の練習)。
練習終了! → プシュッ(乾杯)。
こうすることで、以下のメリットが生まれます。
集中力の確保: 正常な脳で質の高い練習ができる。
ドーパミン報酬: 「練習したから飲める」という報酬系が作られ、練習自体が楽しみになる。
遊び弾きへの移行: 飲んだ後は、練習ではなく「手癖で遊ぶ」「好きな曲を流して適当に合わせる」などの脳を使わないプレイに切り替える。
https://gainfomation.net/5habit/

よくある質問(Q&A)
Q. 缶ビール1本くらいなら大丈夫ですよね?
A. 脳は正直です。
個人差はありますが、少量でもアルコールが入れば小脳の運動制御機能は低下します。「精密な練習」をするならゼロが理想です。ただ、コードをジャカジャカ弾いてストレス発散するだけなら、1本くらいは許容範囲かもしれません(ただし、上達は期待しないでください)。
Q. プロのミュージシャンは酒飲みながらライブしてますよね?
A. 彼らは「無意識で弾けるレベル」まで到達しているからです。
プロがほろ酔いで弾けるのは、膨大な時間の「シラフでの練習」によって、演奏が小脳や脊髄レベルに刷り込まれているからです。彼らは酔っていても、体が勝手に動くのです。発展途上の我々が真似をすると、ただの崩壊した演奏になります。
Q. 飲まないとやる気が出ません。
A. それは「作業興奮」を利用しましょう。
やる気は待っていても来ません。まずはギターを持って、1音鳴らしてください。脳の側坐核が刺激され、後からやる気がついてきます。飲むのはそのあとです。
まとめ
ほろ酔いの「上手くなった感」は、ドーパミンによる脳の錯覚。
アルコールは小脳を麻痺させ、繊細なタッチやリズム感を狂わせる。
最大の弊害は「睡眠の質低下」による「記憶定着の阻害」。練習が無駄になる。
禁酒は不要。「練習 → 晩酌」の順番を守るだけで劇的に変わる。
今夜は、冷蔵庫を開ける前にギターケースを開けてください。
そして、タイマーを15分セットして練習する。ビールはその後の「最高のご褒美」にとっておきましょう。
シラフで積み上げた15分は、酔っ払って弾いた2時間よりも、確実にあなたの血肉になります。
あなたのギターライフが、美味しいお酒と共に、実りあるものになりますように。
筆者の地元の酒です↓







