ギターを始めようと思った時、多くの社会人が悩むのが「独学で進めるべきか、それとも教室に通った方がいいのか」ということだ。忙しい日々の中、時間とお金は限られている。しかも、「初心者向けの曲をコードストロークで通せるようになる」という目標を3か月以内に設定したとしたら、本当に達成できるのだろうか。
この疑問にズバリ答えると、結論としては「環境と練習の方法が自分に合えば3か月は現実的に達成可能」ということだ。むしろ、人によってはわずか1か月ほどで初心者向けの曲を弾けるようになるケースもある。ただし、成功のポイントは「自分のタイプに合った練習方法」と「適切な投資」を選ぶことに尽きる。
この記事では、3つの典型的なタイプの社会人ギタリストを想定し、「完全独学」と「週1回のギター教室通い」の場合について、コスト・練習時間・達成度を比較シミュレーションしてみた。
シミュレーション条件の整理
項目 | 独学 | 週1教室 |
---|---|---|
必要期間 | 最大3か月 | 同じ |
レッスン方法 | 教本+練習アプリ | 個人レッスン60分×月3回 |
初期費用 | 教本代(約1,500円) | 入会金+教材(約3,000円) |
月額費用 | 練習アプリ(約2,000円/月) | 月謝(約12,000円/月) |
3か月総額 | 約7,500円 | 約39,000円 |
※ピックや弦などの消耗品は除外。
タイプ別シナリオ:自分に近いタイプを見つけよう
【Aタイプ】論理的で仮説検証が好きな分析派
独学の場合(達成確率:約80%)
1日30〜40分、メトロノームと録音を活用して分析的に練習。しかし、自分の演奏を客観的に評価する難しさから「迷走」しやすく、時間が無駄になることも。教室に通った場合(達成確率:約95%)
講師からのフィードバックで迷走を防止し、効果的に目標に向かえる。適切な課題設定によって、場合によっては2か月以内に目標達成も可能。
【Bタイプ】テキストを順守し、コツコツ積み上げる堅実派
独学の場合(達成確率:約60〜70%)
毎日20〜25分、教本の順番通りに進めるが、自己判断で次に進むのが怖くて停滞することがある。教室に通った場合(達成確率:約90%)
講師が出す宿題形式がマッチ。毎週の課題が明確で達成感が得やすく、挫折リスクが低い。
【Cタイプ】気分屋で練習にムラがある飽き性派
独学の場合(達成確率:30%以下)
気分により練習の量や質が乱れるため、3か月経っても基本コードチェンジが安定しないケースが多い。教室に通った場合(達成確率:約75%)
講師が決まった課題を提示し、週1回のレッスンという強制力により練習習慣がつきやすく、安定的に進歩できる。
コストパフォーマンスの比較と最適解
Aタイプ(分析派)
最初の数回だけプロからのレッスンを受け、その後は独学に切り替えるハイブリッド型が最も効果的。
【1コード習得コスト:約1,500円】Bタイプ(堅実派)
安心してコツコツと進めるため、3か月フルで教室を活用する方が効率的。
【1コード習得コスト:約2,100円】Cタイプ(飽き性派)
教室通いに加え、オンラインアプリなどで自己管理を行い、外的な締切を設けることが有効。
【1コード習得コスト:約2,500円】
※主要な基本コード8つ+ストロークの安定が目標達成の基準。
重要ポイントと考察
「時間を買う」発想の有効性
教室通いは独学の約5倍のコストになるが、「迷走」や「やり直し」にかかる時間を減らせる。特にAタイプやBタイプは、この効率性を活かすべきだ。
意思の弱さを課金で補う
Cタイプのように練習をサボりがちな人にとっては、教室通いの「締切」効果が強力なモチベーションとなる。習慣化を目的とした投資だと捉えれば、費用も納得感が高い。
フィードバック環境の構築
独学派の場合、SNSでの演奏動画投稿やオンラインでの個別添削サービス(500〜1,000円程度/回)を活用することで、自分の耳だけでは難しい「客観的評価」を取り入れるのが理想。
「自分のタイプに合わせて」投資を考えよう
Aタイプ(理詰め):スポットレッスン+独学が最短最安
Bタイプ(堅実):教室のフル活用が確実
Cタイプ(気分屋):教室+オンラインサポートで強制力をオンに
「3か月で初心者曲を1曲弾ける」は十分現実的なゴールだ。大切なのは、自分の習慣やタイプに合った練習法を見つけ、適切な「自己投資」をすること。
費用か時間か、自分がどちらを優先したいかを見極めれば、大人から始めるギターは着実に上達する。今この瞬間が、新しいチャレンジへの最初の一歩だ。
楽器店が運営するスクールもおすすめな理由とは?
ギター教室を探している社会人ギタリストには、ぜひ検討して欲しい選択肢がある。それが、楽器店が運営するスクールだ。意外に感じる人もいるかもしれないが、実は楽器店が運営するスクールは多く、非常に実用的で快適な環境を提供してくれることも多い。
定期的な消耗品の購入が習慣化できる
ギターを継続的に練習する中で、弦やピックなどの消耗品は定期的に交換・補充が必要になる。しかし、初心者や忙しい社会人ほど交換タイミングを逃しがちだ。
その点、楽器店併設のスクールに通えば、「レッスンのついでに消耗品を買って帰る」という行動が習慣化しやすい。結果として常にギターを良い状態で維持できるため、練習効率が上がり、結果的に上達スピードも早まる可能性が高い。
楽器のトラブルや購入相談がしやすい
ギター初心者が頻繁に直面するのが、ギター本体や周辺機材のトラブル、あるいは新しい楽器の購入タイミングだろう。スクールに通っている楽器店であれば、レッスン以外の相談も気軽にできる。
特に楽器購入については、講師だけでなく店舗スタッフからも的確なアドバイスがもらえる可能性が高い。初心者にありがちな「何を買っていいのかわからない」「本当にこのギターで良いのか」という不安を解消できるのは大きなメリットだ。
楽器店がスクール運営に力を入れる理由
少し踏み込んだ話になるが、実は楽器店にとってスクール会員の存在は非常に大きい。楽器店の売り上げの中でもスクール会費は重要な収入源であり、経営的に重要な役割を果たしていることが多いのだ。
例えば、月会費が1万円のギター教室で生徒が100人いるとすると、毎月100万円の安定収益となる。年間では1,200万円というまとまった売上が確保される計算だ。これは楽器本体や機材を売ることに比べても収益の安定性が高く、利益率も良いビジネスモデルだ。
「楽器を売る」よりも「スクールを続けてもらう」方が利益になる?
さらに具体的に言えば、25万円程度のギターを1本販売するよりも、1年間(月1万円×12か月)のスクール会員を継続してもらう方が、楽器店としては利益的に有利になるケースも多い。
なぜなら、スクールの主なコストはスタジオの初期費用や講師への報酬、施設のランニングコストなどに限定されるためだ。いったんスタジオ設備費用を回収してしまえば、それ以降のランニングコストは非常に低く抑えられる。対して、楽器本体の販売は仕入れコストや販売管理費などが高く、利益率がスクール運営ほど高くはないケースも多い。
レッスン会員は「楽器店にとってのVIP」である
こうした理由から、楽器店はスクール会員を非常に大切に扱っていることが多い。安定収益源であるスクール会員に対して、楽器店側が「塩対応」をする可能性は極めて低い。むしろ、「VIP」と言っても過言ではない位置付けだろう。
実際にスクール会員になると、レッスンだけでなく、楽器選びやメンテナンス、ちょっとした質問や困りごとなどでも手厚く親身に対応してくれる可能性が高い。
結論:楽器店運営スクールは「練習+サポート環境」の一石二鳥
こうした経営的な背景があるからこそ、楽器店運営のスクールは社会人ギタリストにとって極めてメリットが大きい選択肢となる。特に初心者や、楽器の扱いにまだ不安がある人ほど、このようなスクールの恩恵を受けやすいだろう。
ギター教室選びで迷ったら、楽器店が運営するスクールもぜひ検討してみてほしい。レッスンだけでなく、ギターライフ全体を安心して任せられる「心強いパートナー」となってくれる可能性が高いからだ。
筆者が所属する「7丁目ギター教室」のご紹介
ここまで「独学」と「教室通い」を比較し楽器店のスクールについて解説してきたが、実際に教室を探すとなると、多くの選択肢があって迷うことも多いだろう。
そこで、筆者が実際に講師として所属している「7丁目ギター教室」を紹介しがてら、レッスン内容や費用感を紹介してみたい。
7丁目ギター教室の特徴とは?
7丁目ギター教室では、生徒さん一人ひとりの目標や好みに合わせた柔軟なレッスンを提供している。
ギターを始める初心者だけでなく、長年ギターを弾いてきて行き詰まりを感じている中級者にもおすすめできるスクールだ。
具体的には、「自分が弾きたい曲を中心に学べる」のが大きな魅力。教室側があらかじめ決めた教材だけを押しつけるのではなく、好きな曲を教材として扱うことで、生徒のモチベーション維持にもつながる。
気になるレッスン料金は?
7丁目ギター教室では、「月のレッスン回数」や「自分のスケジュールの自由度」によって料金が変わる仕組みになっている。
コース | 料金(1レッスンあたり) | 内容・特徴 |
---|---|---|
フレックスコース | 4,200円 | 都合の良い日時に自由予約 |
月3回コース | 3,900円 | 固定のペースで月3回 |
月4回コース | 3,800円 | 固定のペースで月4回 |
月8回コース | 3,600円 | 頻繁に通いたい人向け |
特におすすめなのは「フレックスコース」。社会人なら仕事の忙しさに応じて通いやすい柔軟な仕組みだ。
ただ、安定的に通える人であれば、月4回、回数が多いほど割安になる月8回コースもコスパ的には魅力的になる。
大手スクールとの料金比較
参考までに、大手の音楽教室や楽器店のスクールでは、「月3回(1レッスン30分)」の料金が約3,850円前後だ。
一方、7丁目ギター教室では「月3回(1レッスン60分)」が3,900円なので、ほぼ同じ料金でレッスン時間は倍になる。
筆者の経験から言っても、ギターのレッスンで30分という時間は非常に短く感じられる。
教える側としても時間が短いと余裕がなくなり、伝えたいポイントを十分に伝えられないことが多い。
その点、1時間レッスンなら質問や演奏チェックにも余裕があり、より充実した内容を提供できる。
レッスンの進め方について
7丁目ギター教室では、初心者の基礎練習だけではなく、生徒が希望するジャンルや曲をベースにカリキュラムを組み立てている。講師と相談しながら、自分が好きな曲を少しずつ完成させるというスタイルは、ギターの楽しさを感じやすく、自然と上達につながるだろう。
もちろん、「とりあえず1曲弾けるようになりたい」という短期的な目標設定も可能。具体的な目標があれば、その達成に向けて最適な練習法を提案してくれる。
「まずは試してみる」ことが大切
独学も魅力的だが、自分に合った教室を見つけることがギターを楽しみながら継続する最大のポイントとなる。もし教室を探している段階であれば、一度7丁目ギター教室の無料体験レッスンを受けてみるのも良いだろう。
全国100か所以上に教室があるため、通いやすいエリアにあればぜひ検討してみて欲しい。
講師陣(もちろん筆者も含め)は、初心者にとってのハードルを下げ、楽しみながら着実に上達するためのサポートを心掛けている。
ギターの上達には、何より継続的に楽器に触る事が重要。
定期的なレッスンの受講は継続の一助になるはずだ。
教室選びは結局「通いやすさ」が一番大事
これまで独学か教室か、筆者が所属するスクール、楽器店運営のスクールなど、さまざまな選択肢を挙げてきた。しかし、どんなに優れたスクールでも、最終的に大切なのは「通いやすさ」だ。
通いやすさが「継続のカギ」
社会人がギター教室に通うとなると、仕事やプライベートとの兼ね合いを考えなくてはいけない。もし通うのが大変な場所や不便な時間帯だったら、レッスンそのものがストレスになってしまう可能性もある。
例えば、月3回、毎回片道1時間かかる教室と、自宅や職場から15分で通える教室を比べたらどうだろうか。確かに遠くても優秀な講師がいるスクールもあるだろう。しかし、日々忙しい社会人にとっては、往復の移動時間だけでも負担になり、やがて教室に行くこと自体が億劫になるケースも多い。
ギター上達は「続けること」が最大のポイント
ギター上達の秘訣は、特別な才能やテクニックよりも「継続すること」だ。教室の質や講師のレベル、価格設定など、もちろん重要ではあるが、何より「続けられる環境」が一番の成功要因となる。
初心者がギターを諦める最も多い原因は、「練習を継続できないこと」。その点をクリアできれば、自動的に上達はついてくる。
近くて無理なく通える教室が理想
無理なく通える距離や、自分の生活スタイルに合った時間帯に開講している教室を選ぶことを最優先にしよう。その上で、自分に合ったレッスンスタイルや料金、雰囲気を検討すればいい。
また、最近ではオンラインレッスンも充実しているため、近隣に希望通りの教室がない場合はオンラインを活用するのもひとつの選択肢だ。ただし、対面レッスンのメリットである細やかなフィードバックやモチベーション維持の強制力は、やはり捨てがたい魅力だ。
「続けるための教室選び」が成功への道
まとめると、最終的な教室選びの決定打は「通いやすさ」にある。自宅や職場から近い、交通アクセスが良い、営業時間が自分に合う、雰囲気が合うなど、負担なく通える条件が整っている教室を選ぶことが、長期的なギターライフを充実させる最大のポイントだ。
どんなに素晴らしいレッスンでも、続けられなければ意味がない。
逆に言えば、続けさえすれば必ずギターは弾けるようになる。
「自分にとって続けられる教室はどこか?」という観点で、ぜひあなたに合ったギター教室を選んでほしい。
その選択が、あなたのギター人生を大きく左右することになるだろう。