【BOSS MT-2 】メタルゾーンは積極的な音作りができる激歪みイコライザー!

「メタルゾーン? ああ、あの音がこもるやつでしょ?」 「初心者御用達のネタ機材だよね」
ネットやSNSでそんな評判を目にして、MT-2 Metal Zoneを敬遠している人は多いかもしれません。
確かに、適当につまみを回してアンプのインプットに繋ぐだけでは、「ジージー」といやな歪み方をしたり、バンドの中で音が埋もれてしまったりしやすいペダルです。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
冒頭から少し激しい意見を紹介しましたが、正直なところ、ネットの評判だけでこの機材を判断するのは、そのポテンシャルを半分も引き出せていない可能性があります。
結論から言えば、MT-2は単なるディストーションで片付けていいペダルではありません。
「強力すぎるイコライザーを搭載したプリアンプ」として扱うことで、その真価を発揮する機材なんです。
もしあなたが「アンプのインプット」にこれを繋いで音作りに悩んでいるなら、使い方が間違っているかもしれません。
自分も昔はこれの音作りに苦戦した口ですが、今回はメタルゾーンの正しい評価と、本来の実力を引き出すための「プリアンプ的運用法」について、講師目線で解説していきます。
MT-2 Metal Zone|歴史を変えたハイゲイン

1991年の発売以来、全世界で累計100万台以上を売り上げているBOSSのベストセラーです。 「史上最強の歪み」を生み出すべく開発されたこのペダルは、その圧倒的なゲイン量と、当時としては画期的だった2軸ポット(スタックノブ)による3バンドEQを搭載して登場しました。
多くのプロギタリストの足元にも置かれ、メタルの歴史を支えてきた名機であることは疑いようがありません。 しかし同時に、その「効きすぎるEQ」と「深すぎる歪み」ゆえに、初心者には扱いが難しく、ネット上ではネタ扱いされることも増えてしまった悲運のペダルでもあります。
筆者としても、「とりあえず歪ませたい!」という初心者の生徒さんには、正直扱いが難しいので最初はおすすめしないこともあります。
というのもメタルゾーンってかなり論理性を要求されるエフェクターなんですよね。
最強のゲインが生む“ギターを選ばない”強さ
MT-2の最大の特徴は、BOSS史上最強クラスのゲイン量です。 とにかく歪む。とことん歪む。
そのため、出力の弱いシングルコイルのギターであっても、MT-2を通せば凶悪なメタルサウンドに変貌します。
メタルゾーンの領域内では「どんなギターでもメタルの音になる」という点において、これほど頼もしいペダルはありません。
もちろん、ハムバッカーとの相性は抜群で、壁のような厚みのあるサウンドを簡単に作ることができます。
サステイン(音の伸び)も強烈にかかるので、タッピング奏法やレガートなど、テクニカルなプレイが驚くほど楽になるのも特徴ですね。
これは「めちゃくちゃ歪むイコライザー」である

MT-2を語る上で外せないのが、強力な3バンド・イコライザーです。 HIGH、LOW、MIDDLEに加え、MIDDLEの周波数帯域を変更できる「MID FREQ」を搭載しているのが最大の肝です。
このイコライザーこそが、MT-2の本体と言ってもいいでしょう。
MID FREQの可変幅:200Hz〜5kHz
同社のグラフィックイコライザーGE-7の操作範囲が100Hz〜6.4kHzであることを考えると、MT-2のミッドコントロールがいかに広範囲をカバーしているかがわかります。これはワウペダルを半止めにしたような効果から、ドンシャリまで自由自在ということを意味します。
トレブルとベースも強烈に効くため、以下のような積極的な音作りが可能です。
「不要なローをバッサリ切る」
「ハイを削ってマイルドにする」
「ミッドをえぐってドンシャリにする」
つまり、MT-2は「ディストーション」というより、「歪み回路付きの高性能イコライザー」と捉えたほうが、その性格を正しく理解できる、ってな感じですね。
実はこのイコライザー部のみを抜き取ったPQ-4というパライコも過去にラインナップされていました。
結構なレアモノなので中古を見かけたら是非試奏してみて下さい。結構面白いですよ。
なぜ「音が悪い」「使いにくい」と言われるのか?
これだけ高機能なのに、なぜ「音がこもる」「変な音になる」と言われるのか。 その原因は、ズバリアンプとの相性にあります。
MT-2は、ペダル自体が強烈なキャラクター(EQと歪み)を持っています。 それを、さらにキャラクターの強いギターアンプの「インプット(INPUT)」に繋ぐとどうなるか?
「クセの強い歪み」×「アンプのプリアンプ回路」= 大渋滞
音が喧嘩してしまい、特定の帯域がブーストされすぎて抜けが悪くなったり、逆にスカスカになったりしてしまうのです。
いわば、「濃厚な豚骨ラーメンに、さらに特濃ソースをかけて食べているようなもの」。これでは素材の魅力が死んでしまいますよね。
正解は「リターン挿し」|プリアンプとして運用せよ

では、どうすればいいのか。 答えはシンプルで、アンプのプリアンプを通さなければいいんです。
スタジオやライブハウスにあるアンプ(JC-120やMarshallなど)の裏側にある「RETURN(リターン)」端子に、MT-2を直接繋いでみてください。
※注意:リターンに繋ぐときは音量が爆音になりがちなので、MT-2のLEVELは下げてから繋ぎましょう!
この接続法(リターン挿し)をすることで、アンプ側のプリアンプ回路(音色を作る部分)をスキップし、MT-2で作った音をそのままパワーアンプ(音を増幅する部分)に送ることができます。
こうすると、MT-2は「エフェクター」ではなく「プリアンプ」として機能します。
EQの効きが素直になり、意図した通りの音になる
ノイズや変なコンプレッション感が減る
どのアンプを使っても“自分の音”が出せる
特に、どこのスタジオにもあるRoland JC-120との相性は最高です。
普段はクリーンなJCが、凶悪なハイゲインアンプに化けます。
MT-2の強力なイコライザーは、プリアンプとして使うために設計されたのではないかと思えるほど、この使い方がハマります。
「メタルゾーンはリターンに挿せ」。これが現代における最適解です。
技CRAFT「MT-2W」で現代的にアップデート

2018年、BOSSの職人魂が込められた「技CRAFT」シリーズから、MT-2Wが登場しました。 これには驚いた人も多いでしょう。「あのメタルゾーンが技クラフトに!?」と自分も思いました。
MT-2Wには2つのモードが搭載されています。
スタンダード・モード
オリジナルのMT-2を継承しつつ、ディスクリート回路で再設計。ノイズが減り、音の解像度が上がっています。
カスタム・モード
よりレンジが広く、ピッキングニュアンスへの追従性が高い現代的なハイゲインサウンド。
特にカスタム・モードは、「メタルゾーン特有の鼻詰まり感(中域のクセ)」が解消されており、モダンなメタルやジェント(Djent)系にも対応できる切れ味を持っています。 今から買うなら、少し値段は上がりますが断然MT-2Wがおすすめです。
BOSS ( ボス ) / MT-2W Metal Zone
ベースで使っても意外とハマる
余談ですが、MT-2はベース用としても優秀です。 強力なイコライザーのおかげで、歪ませても低域を盛って補正できるため、音がスカスカになりにくいんです。
ミッドフリーケンシーをいじれば、バキバキのドンシャリサウンドから、ミッドを強調したブーミーな音まで自由自在。
原音を混ぜるブレンダー系のペダル(LS-2など)と併用すれば、さらに実用的なベースディストーションとして活躍します。 「BASS METAL ZONE」が存在しないのが不思議なくらい、相性がいい、ってな感じですね。
まとめ|メタルゾーンは使い手次第で化けるガチ機材
MT-2 Metal Zoneは、ただ繋ぐだけでいい音がする「お手軽ペダル」ではありません。 しかし、その特性を理解して使いこなせば、これほど強力な武器はないんです。
インプットではなく「リターン」に繋いでプリアンプとして使う
強力なEQを駆使して、積極的に音を作り込む
技CRAFT版ならモダンなジャンルにも対応可能
「音が悪い」と敬遠するのはもったいないです。 メタルゾーンは、音作りの知識と工夫がある人に応えてくれる、玄人好みの“激歪みイコライザー”なのだと再認識してあげてください。
Q&Aで記事の振り返り
Q:メタルゾーンは初心者には難しい? A: EQの効きが良すぎるため、適当にいじると変な音になりやすいです。ですが、「どの帯域を削るとどうなるか」というEQの仕組みを学ぶ教材としては最適です。音作りの耳が鍛えられますよ。
Q:ジャズコーラス(JC-120)でも良い音が出る? A: インプットに繋ぐと相性が悪いことが多いですが、背面の「RETURN」端子に繋げば、JC-120が凶悪なメタルアンプに化けます。ぜひ試してみてください。
Q:MT-2とMT-2W、どっちを買うべき? A: 予算が許すならMT-2Wがおすすめ。ノイズが少なく、モダンな音も出せるため、長く使えます。中古で安く済ませたいならオリジナルのMT-2も十分アリです。
Q:ブースターとしては使える? A: ゲインを下げてEQで補正する使い方も可能ですが、基本的にはメインの歪み(プリアンプ)として使うのが最も輝きます。ブースターとして使うには少々クセが強すぎますが挑戦する価値はあります。
おまけ

要約ソング(モダンプログレメタル風)









