BOSS FZ-1W 1年使用レビュー Vモードは「醍醐味」Mモードは「補助輪」

ファズとは、不自由さを愛する倒錯的な遊びである。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
新潟の夜空のように、どんよりと重く、しかしどこか幻想的な歪み…それがファズです。
さて、ファズペダルというのは、ギタリストにとって最も「沼」が深いカテゴリーではないでしょうか。「ジミヘンに憧れて買ったけど、音が抜けない」「家で弾くと気持ちいいけど、バンドで使うと埋もれる」。そんな経験、ありますよね。
結論から言うと、BOSS FZ-1Wは、そんな「ファズのジレンマ」を論理的に解決しつつ、ヴィンテージ特有の“危うい魅力”も残した、現代における最適解の一つです。
購入から1年、様々な現場で使い倒した結果見えてきた「VモードとMモードの決定的な違い」や「電圧操作による裏技」について、忖度なしで語り尽くします。



1年使って分かった「2つの顔」の決定的違い

私はこれまで、MXR Classic 108、Jim Dunlop JHF1、エレハモのBig Muff(USA/Russian/Wicker)、ロジャーメイヤーなど、数々の名機と呼ばれるファズを渡り歩いてきました。
それらと比較しても、FZ-1Wは非常にユニークな立ち位置にいます。特に、搭載されている2つのモード(VINTAGE / MODERN)は、単なるEQの違いではなく、「弾き手へのアシスト量」がまるで違うのです。
VINTAGEモード:良い意味での「チープさ」と「不自由」
V(ヴィンテージ)モードは、往年のFuzz Faceなどを彷彿とさせるサウンドです。
ここで重要なのは、あえて残された「チープさ」です。
低域が少し暴れ、高域には「ジリジリ」としたゲート感(音が途切れる寸前の質感)が残ります。
これは、シリコントランジスタのバイアス調整を絶妙にコントロールすることで、入力信号に対してクリッピング(波形の切り取り)が急激に起こるように設計されているからでしょう。
ギターのボリュームを絞った時の「鈴鳴り」も、このモードの方が有機的です。弾き手のニュアンスが露骨に出るため、ミスも目立ちますが、ハマった時の爆発力は「これぞファズ!」という快感があります。
また、ブースター的に使った際もVモードの方が変に盛られる感じが無く使いやすい印象です。
FUZZを0にした上でLEVELを上げてから適宜FUZZを上げてLo-fi感で装飾。
トーンを回して抜け感を調整するような凝った使い方もおすすめです。
MODERNモード:まるで「補助輪」付きのハイゲイン
一方、M(モダン)モードに切り替えると、世界が変わります。
中低域がグッと持ち上がり、サステイン(音の伸び)が劇的に向上します。感覚としては、「ファズの皮を被ったハイゲイン・ディストーション」に近いです。
この手のディストーション寄りの魅力を兼ね備えたファズ。
これを私は「補助輪付きファズ」と呼んでいます。
ピッキングが多少甘くても、ペダル側が音を太く、長く補正してくれるのです。
コンプレッション(圧縮)感が強まることで、音が前に飛び出しやすくなり、現代的なバンドアンサンブルでも埋もれません。
ファズに慣れていない人が弾くなら、間違いなくこちらの方が「弾きやすい」と感じるはずです。
筆者的にはそのちょっとおまけしてくれる感じが上手く馴染めずVモードを使用することが多かったですね。
モード別の特性比較
| 特徴 | VINTAGE (V) モード | MODERN (M) モード |
| 音の傾向 | 暴れる、ジリジリする、枯れている | 太い、滑らか、密度が高い |
| 弾き心地 | ダイレクトで誤魔化しが効かない | コンプ感が強く、弾き手を助ける |
| ギターVol追従 | 鈴鳴り~クランチへの移行が美しい | 歪みが残りやすく、クリーンになりにくい |
| 向いている人 | ファズの泥臭さを愛する玄人 | 初めてファズに触れる人、リード弾き |


「電圧降下」で覚醒するVモードの魔力

ここからは少しマニアックな、しかし効果絶大な使いこなし術を紹介します。
私がFZ-1Wを使う際、特にVモードにおいて多用するのが「電圧降下(ボルテージ・サグ)」です。
なぜ電圧を下げるのか?
ヴィンテージファズ愛好家の間では、「マンガン電池が切れかけた時の音が最高」というのは常識です。
これは、電圧が下がることで回路内のバイアスポイントがずれ、ゲート感(音がブツブツ切れる感じ)が強まり、コンプレッションが極端にかかるためです。
FZ-1WはBOSSの安定した電源回路を持っていますが、あえて外部のパワーサプライ(電圧調整機能付きのもの)や、電圧を下げるアダプターを使用して6V~7V付近まで電圧を落としてみてください。
ただし電圧の操作は自己責任ですからね!
実際に起きる変化
アタックの潰れ: ピッキングした瞬間に「ジュワッ」と音が潰れる独特のサグ感が生まれます。
ゲートファズ化: 音の減衰際で「ブチッ」と音が切れるようになり、シンセサイザーのような無機質な響きが得られます。
Mモードでやると音が単にショボくなることが多いですが、Vモードでこれをやると、60年代のガレージロックのような「壊れかけの美学」が再現できます。
JC-120対策:アンプとのインピーダンスマッチング

ファズを使う上で避けて通れないのが、「JC-120(ジャズコーラス)だと音が痛い問題」です。
FZ-1Wも例外ではありません。
JC-120に直で繋ぐと、高域の奇数次倍音が強調されすぎて、「バリバリ」「チリチリ」とした耳障りな成分が目立ちます。ギターの旨味である中域がスポイルされてしまうのです。
解決策:クッションを挟む
基本的には真空管アンプ(MarshallやFender)で鳴らすのがベストですが、日本のスタジオ事情ではそうもいきません。
JC-120で使う場合は、FZ-1Wの後段に「チューブシミュレーター」や「プリアンプ」的な役割のペダルを挟むことを強く推奨します。
BOSS SD-1 / BD-2: ゲイン0でかけっぱなしにし、フィルターとして使う。
エミュレーター系: 真空管のような丸みを付与するペダル。
これにより、ファズ特有の角の立った矩形波が、アンプに届く前に適度に丸められ(ソフトクリッピング)、多少音楽的な響きに変換されます。※気休め程度だと考えてください。

音色補正におすすめのエフェクター

BOSS ( ボス ) / BP-1W
2種類のプリアンプとブースターを搭載
暖かく太さのあるREモードと硬質で腰高なCEモード
ピュアブーストができるNATモード
Q&A:FZ-1Wは買いか?
FZ-1Wは初心者にもおすすめできますか?
Mモードがあるおかげで、自信を持っておすすめできます。
いきなりヴィンテージのFuzz Faceを買うと、温度変化で音が変わったり、バッファとの相性で音が細くなったりとトラブル続きで挫折しがちです。FZ-1WはBOSS品質のバッファを搭載しており、ワウの後ろに繋いでも音が死にません。「ファズの入り口」としてこれほど優秀な機材はありません。
BIG MUFFを持っていますが、使い分けできますか?
完全に別物として共存できます。
BIG MUFFは「音の壁」を作るような轟音が特徴ですが、FZ-1W(特にVモード)はもっと歯切れが良く、カッティングや鈴鳴りクリーンなど、手元の操作で表情を変えるプレイに向いています。
ボリューム奏法はできますか?
できます。
シリコントランジスタ搭載ですが、ギターのボリュームを絞った時のクリーンへの移行(クリーンアップ)は非常にスムーズで美しいです。ここはBOSSのチューニング技術の高さが光る部分です。
まとめ:優等生が演じる「不良」の魅力
BOSS FZ-1Wを1年間使い倒して感じたのは、「計算され尽くした暴れっぷり」です。
本物のヴィンテージファズのような「今日は機嫌が悪いから音が出ない」といった理不尽さはありません。いつでも安定して、最高の「汚い音」が出せます。
Vモード: ファズ本来の野性味と、電圧操作による実験的なサウンドメイクが可能。
Mモード: 現代のアンサンブルに馴染む、太くサステイン豊かなリードトーン。
注意点: JC-120対策(後段でのトーン補正)は必須レベル。
「ファズなんてノイズだろ?」と敬遠していた食わず嫌いな方にこそ、このペダルを踏んでみてほしい。
そこには、ただのノイズではない、あなたの感情を増幅する「音楽的な歪み」が待っています。
あなたのギターライフが、より歪んだ(充実した)ものになりますように!
関連記事








