機材購入は「経験値」の前払いである。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
「新しいギターが欲しいけど、今の自分にはまだ早すぎるかな……」
「エフェクターを買いたいけど、腕前が追いついていないのに道具に頼るのは恥ずかしい」
そんなふうに考えて、楽器屋のサイトを行ったり来たりしていませんか?
その気持ち、痛いほどよくわかります。「弘法筆を選ばず」という言葉があるように、上手い人は何を使っても上手い。だからこそ「下手な自分が良い機材を使うのは『逃げ』なんじゃないか」という罪悪感が生まれてしまうんですよね。
結論から言います。
欲しい機材があるなら、今すぐ買ってください。それは「逃げ」ではなく、上達のための「最強の環境投資」です。
なぜなら、新しい音に出会うことは、あなたの脳に新しい刺激を与え、「まだ弾いたことのないフレーズ」を引き出すためのトリガーになるからです。
機材を買うことは、単なる消費ではありません。「モチベーションへの課金」であり、「未来の経験値の前払い」なのです。
「弘法筆を選ばず」の呪いを解け

日本人は特に「道具に頼らず、腕を磨くべき」という精神論を好む傾向があります。しかし、ギターの上達において、この考え方はしばしば足かせになります。
「良い機材」は補正機能付きの筆である
弘法(空海)レベルの達人であれば、ボロボロの筆でも素晴らしい字が書けるでしょう。しかし、字を習い始めたばかりの子供に、毛先が割れた筆を持たせたらどうなるでしょうか?
うまく書けずにイライラし、書くこと自体が嫌いになってしまうはずです。ギターも全く同じです。
悪い機材が引き起こす弊害
弾きにくいギター: 弦高が高すぎてFコードで挫折する。
レンジの狭いアンプ: ピッキングの強弱が反映されず、ニュアンス練習にならない。
ノイズの多いエフェクター: 音作りが嫌いになる。
これらは「上達の妨げ」以外の何物でもありません。
逆に良い機材は、あなたの演奏の下手な部分をクリアに映し出し、良い部分は極上のトーンで返してくれます。「もっと弾きたい」という欲求を生むための補正機能なのです。
機材を「自分の実力を測る定規」にする
「自分が下手だから良い音が出ない」と思い込んでいる人の一部は、実は機材のポテンシャル不足が原因であることも多いのです。
良い機材を使うことは、言い訳をなくすことでもあります。
「機材は最高だ。なのに音が悪いなら、犯人は自分だ」
こうやって自分の実力を正しく測るための「定規」を手に入れること。それが上達への第一歩です。
GAS(機材欲しい病)は脳科学的に正しい

「Gear Acquisition Syndrome(機材欲しい病)」、通称GAS。
次から次へと機材が欲しくなるこの現象は、しばしば「散財」としてネガティブに捉えられますが、上達の観点からは非常に理にかなっています。
「新しいおもちゃの興奮」を練習量に変換する
新しい機材が届いた日を思い出してください。箱を開け、シールドを繋ぎ、最初の音を出した瞬間。脳内には快楽物質であるドーパミンが溢れています。
「これを使ってあの曲を弾いてみたい!」
「こんな設定にしたらどうなるだろう?」
このワクワク感こそが、練習を継続させる最強の燃料です。人間のやる気は「気合」では続きません。「環境変化(ナッジ)」を利用して、ギターに触る頻度を強制的に上げる。 これは非常に賢い戦略です。
「高かったから弾かなきゃ損」という心理を利用する
行動経済学に**「サンクコスト(埋没費用)」**という概念があります。「これだけお金をかけたんだから、元を取らないともったいない」という心理です。
通常は損切りの遅れなどに繋がるネガティブな心理ですが、ギター練習においては強力な味方になります。
「5万円のペダルを買ったんだから、使いこなさないと損だ」という心理が働き、結果的に練習時間が増えるなら、その5万円は**「サボり防止の保険料」**として十分に元が取れています。
「音」がプレイスタイルを教育する

機材を買う最大のメリットは、「その機材がないと弾けないフレーズ」に出会えることです。手持ちの機材だけで練習していると、手癖や発想がマンネリ化します。
機材が「次に弾くべきフレーズ」を教えてくれる
機材の特性は、あなたの指の動きを自然と誘導します。
| 導入した機材 | 誘導されるプレイスタイル | 上達するポイント |
| 深いリバーブ/ディレイ | 音数を減らし、一音を長く伸ばす | 「間」の取り方、ロングトーンの表現 |
| コンプレッサー | 細かいリズムを刻みたくなる | カッティング、右手のミュート技術 |
| ファズ | 単音リフやパワーコード | 音の太さ、ボリューム操作への意識 |
「正解の音」を知ることで、耳の解像度を上げる
憧れのギタリストと同じ機材を使うことにも大きな意味があります。
「あのCDの音は、こういうセッティングで出していたのか!」という気づきは、実際にその機材を使ってみないと得られません。
正解の音(ゴール)を知っている状態で練習するのと、手探りで似せようとするのでは、上達のスピードが段違いです。良い機材は、あなたの「耳」を育ててくれます。
賢い機材の買い方・選び方
とはいえ、無尽蔵にお金があるわけではありません。上達に繋がる賢い買い方を意識しましょう。
弱点を「金で解決する」機材選び

今の自分に足りない要素を補う、あるいは矯正する機材を選びましょう。
リズム感が悪い → デジタルディレイ(リズムのズレが明確になる)
ピッキングが安定しない → クリーンブースター(ごまかしが効かなくなる)
モチベーションがない → 見た目が最高にかっこいいギター(触りたくなる)
リセールバリューの高い「実質レンタル」運用

「失敗したらどうしよう」と悩むなら、リセールバリュー(再販価格)の高い定番機種を選びましょう。
有名ブランドの機材は、中古市場でも値崩れしにくいです。
買って試して、合わなければ売る。
その差額は「レンタル料」と考えれば、数百円〜数千円で貴重な経験ができたことになります。機材を所有して試した経験は、あなたの耳と知識として一生残ります。
よくある質問(Q&A)
Q1:初心者がいきなりハイエンド(高級)ギターを買ってもいいですか?
A: 大歓迎です。高いギターは弾きやすく調整されており、挫折率を大幅に下げてくれます。「高いから辞められない」という覚悟も決まります。
Q2:マルチエフェクターとコンパクト、上達にはどっちがいいですか?
A: 音作りの仕組みを学びたいなら「コンパクト」を1つずつ集めるのがおすすめです。つまみを回してどう音が変わるかを直感的に学べるからです。ただ、いろいろな音を手っ取り早く知りたいならマルチも優秀です。
Q3:買っただけで満足してしまいそうです……。
A: 届いたらすぐに「SNSに写真を上げて、音を出した感想を一言添える」までをセットにしてください。誰かに見せることで「使う理由」が生まれます。
まとめ
機材を買うことは、決して「実力不足からの逃げ」ではありません。
それは、あなたのギターライフを停滞から救い出し、新しい表現の扉を開くための**「攻めの投資」**です。
良い機材は、下手な自分を助けてくれる「良きパートナー」。
新しい音は、脳を刺激し練習時間を増やす「ドーパミン源」。
機材がプレイスタイルを導き、引き出しを増やしてくれる。
「もっと上手くなってから」と我慢しているその時間こそが、一番もったいないコストです。
欲しい機材があるなら、迷わず手に入れてください。その新しい相棒が、あなたを次のステージへと連れて行ってくれるはずです。
さあ、カートに入れたその機材、決済ボタンを押してしまいましょう!
おまけ











