楽器コラム

「売る前提」でギターを買うのはアリ?リセールバリューで選ぶ賢い楽器購入術

「一生モノ」という言葉の呪縛から、そろそろ解き放たれてもいい頃です。

どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。

新しいギターやエフェクターを買うとき、ふと頭をよぎることはありませんか?

「これ、もし気に入らなくて売ることになったら、いくらになるんだろう?」

デジマートやメルカリで相場を調べて、「お、これなら最悪8割で売れるな」と安心してポチる。

……でも、心のどこかで少し罪悪感を感じてしまう。

「まだ手に入れてもいないのに、手放すことを考えるなんて、楽器に対する愛がないんじゃないか?」と。

結論から言うと、リセールバリュー(再販価値)を考えて楽器を選ぶのは「非常に賢明な戦略」です。決して邪道ではありません。

なぜなら、楽器は実際に自分の環境で長く弾いてみないと、本当に合うかどうかが分からないからです。
リセールバリューを意識することは、経済的なダメージを最小限に抑えながら、自分に合う「運命の一本」に出会うための試行回数を増やす手段になるからです。

ゲイン・アゲ美
ゲイン・アゲ美
買う前から売ること考えるなんて、ちょっとドライな気もするけどね〜。でも失敗したくない気持ちはわかるなぁ。

アド・リブ代
アド・リブ代
ええっ、私は信じられないわ! 楽器との出会いは運命よ? 最初からお別れの準備をするなんて、恋愛で言えば付き合う前から別れ話をするようなものじゃない!

モダン・テク子
モダン・テク子
甘いな。機材は道具だぞ。合わなければ即入れ替え、常に最適解を探す。それが現代の効率的なシステム構築ってもんだ。

あなたはどのタイプ? 楽器選びの3つの流派

楽器との付き合い方や選び方は、大きく3つのタイプに分けられます。どれが良い悪いではなく、それぞれの価値観に基づいた「正解」があります。

自分がどこに当てはまるか考えてみましょう。

1. リセール乗り継ぎ型(わらしべ長者タイプ)

今回のテーマの主役です。Fender、Gibson、Martinといった「値崩れしにくいブランド」や、市場価値の安定した定番モデルを選びます。

合わなければすぐに売却し、その資金を元手に次の楽器へ乗り換えていくスタイルです。

  • メリット: 実質的な出費(差額)を抑えながら、多くの高級機材を経験できる。

  • デメリット: 傷をつけることに過敏になりがちで、改造などはしにくい。

  • 特徴: 「レンタル料だと思えば安い」と考え、常に市場相場をチェックしている。

2. 一生モノ型(一途なロマンチストタイプ)

「この一本と心中する」という覚悟で、憧れのハイエンドギターやヴィンテージ、あるいはオーダーメイドを購入するタイプです。売ることは想定していません。

  • メリット: 圧倒的な愛着が湧き、楽器と共に成長できる。傷も歴史として愛せる。

  • デメリット: 初期投資が大きい。もし音楽性が変わったり飽きたりしても、手放す際の心理的ハードルが高い。

  • 特徴: 「リセール? 関係ないね」と断言し、ボロボロになるまで使い込む美学を持つ。

3. コスパ弾き潰し型(現場主義の実務家タイプ)

YAMAHAやIbanez、Bacchusなど、価格以上の性能を持つ「コスパ機」を選び、徹底的に使い倒すタイプです。元値が安いためリセール額は期待できませんが、そもそも売るつもりもなく、改造したりステッカーを貼ったりと自由に扱います。

  • メリット: 気軽に扱える。現場での取り回しや改造の実験台としても優秀。

  • デメリット: ブランドステータスや資産価値は低い。

  • 特徴: 楽器を純粋な「道具」として割り切っており、機能性を最優先する

リセールバリューで選ぶことが「賢明」な理由

なぜ今、リセールバリューを意識することが肯定されるのでしょうか。

「試奏」だけでは分からない相性がある

 

楽器屋で数分試奏しただけでは、バンドアンサンブルでの抜け感や、長時間弾いた時の疲労感、自宅のアンプとの相性までは分かりません

買ってから「あれ、なんか違うな」となるのはよくある話です。

そんな時、リセールバリューが高い楽器なら、購入額に近い価格で手放せるため、「授業料」を安く抑えることができます。

資産としての側面

 

近年、ジャパンヴィンテージや海外製ギターの価格が高騰しています

「楽器を買う」という行為が、単なる消費ではなく「資産運用」に近い側面を持ち始めています。

銀行に預けておくより、Fenderのギターを買っておいた方が価値が上がる……なんてことも実際に起きています。

「飽きたら売ればいい」という気楽さは、高額な楽器購入への心理的ハードルを下げ、結果として良い機材に触れるチャンスを広げてくれます。

ただし注意! リセール思考の落とし穴

一方で、リセールばかり気にすることの弊害もあります。

「傷」を恐れて本気で弾けない

 

「高く売るためには綺麗に使わなきゃ」という意識が強すぎると、ライブで暴れたり、ガシガシ弾き込んだりすることが躊躇われます。

楽器は本来、音を鳴らすための道具です

傷を恐れてケースにしまいっぱなしでは本末転倒です。

「自分の音」より「市場の評価」を優先してしまう

 

「これは人気モデルだから」という理由だけで選び、自分の好み(ネックの太さや音のクセ)を後回しにしてしまうと、結局愛着が湧かずにすぐ手放すことになります。

重要なのは「世間で人気があるか」ではなく「自分が弾いていて気持ちいいか」という主観的な感覚です

Q&A:リセール選びの疑問

 

Q:リセールバリューが高いギターって具体的にどれ?
A:基本的にはGibson(Les Paul Standard等)、Fender(USA American Vintage等)の王道モデルです。
マニアックな仕様や奇抜なカラー、マイナーなブランドは値崩れしやすい傾向にあります。

Q:傷がついたら価値は下がる?
A:下がります。ですが、プレイヤーとして使うなら傷は勲章です。
リセールを気にするあまり演奏に集中できないなら、それはあなたにとって「高すぎる楽器」かもしれません。
適度に割り切るか、傷すら味になるラッカー塗装のモデルなどを選ぶのも手です

Q:改造(Mod)はしない方がいい?
A:リセールを重視するなら、改造はNGです。
フルオリジナルが最も価値が高いからです。
改造を楽しみたいなら、中古で安く手に入れた個体や、コスパ重視のモデル(タイプ3)で行うのがおすすめです。

まとめ:自分のフェーズに合わせて使い分けよう

 

リセールバリューで選ぶことは、決して楽器への冒涜ではありません。むしろ、自分に本当に合う楽器に出会うための「探索コストを下げるための知恵」です。

  • 自分の好みが定まりきっていない初心者~中級者リセール重視で定番モデルを買い、合わなければ入れ替えて経験値を積むのがおすすめ。

  • 自分のスタイルが確立した上級者 → リセール度外視で一生モノのオーダー品や、改造前提の現場機を選ぶのが幸せ。

大切なのは、「今の自分」が楽器に何を求めているかです。

売る時のことを考えてもいい。

使い潰すつもりで買ってもいい。

どんな選び方であれ、あなたがそのギターを手に取って「楽しい」と思える時間が少しでも増えるなら、それが正解です。

さあ、恐れずに「ポチる」勇気を持ちましょう。
もしダメでも、そのギターは次の誰かの元で輝き、あなたには新しい資金を残してくれるはずですから。

おまけ

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ABOUT ME
吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。

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