指先のひび割れは、ギタリストにとって「音が出なくなる」呪いのようなものだ。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
冬場のギター練習、指先がカサカサして弦が滑ったり、最悪の場合「パックリ割れ」を起こして激痛に耐えながら弾いていたりしませんか? かといって、ハンドクリームをたっぷり塗ると弦やネックがベタベタになってしまう。 この「保湿したいけど、楽器は汚したくない」というジレンマは、全ギタリスト共通の悩みと言っても過言ではありません。
結論から言うと、ギタリストのハンドケア最適解は「内側からの水分補給」と「非油性(グリセリン系)クリーム」の併用にあります。
なぜなら、指先の乾燥は単なる肌トラブルではなく、ノイズの原因にもなるからです。 そして、一般的な油分たっぷりのクリームは弦の寿命を縮める恐れもありますが、選び方ひとつでそのリスクは回避できるからです。
雪国・新潟県でギター講師をしている筆者が、過酷な冬を乗り切るための「ベタつかない」指先管理術について解説していきます。
なぜ冬の指先はボロボロになるのか?

雪国の過酷な環境と「乾燥」の正体
筆者の住む新潟など、冬場に暖房が必須となる地域では、室内の乾燥が極限まで進みます。ギターにとっても湿度は40〜60%が理想とされていますが、暖房をガンガンに効かせた室内では、湿度はあっという間に30%以下に落ち込みます。
この環境下では、木材であるギターから水分が抜けていくのと同様に、我々の指先からも水分が奪われています。
指先の水分が不足すると、肌が硬化し、柔軟性が失われます。
その状態で金属の弦を強く押さえたり擦ったりするわけですから、ひび割れ(亀裂)が起きるのは物理的に当然の結果なのです。
乾燥した指は「ノイズ」発生装置
実は、乾燥は痛いだけではありません。音質にも悪影響を及ぼします。
体の水分が不足して指先が乾燥すると、静電気が逃げにくくなります。
ギターは弦アースによってノイズを逃がす構造になっていますが、指が乾燥しているとアースが効きづらくなるため、「パチパチ」「ジー」といった余計なノイズが発生しやすくなるのです。
つまり、ハンドケアをサボることは、そのまま演奏クオリティの低下に直結します。
ギタリストが選ぶべき保湿剤の基準

「油分」ではなく「水分」を補う
多くの人がやりがちな失敗が、ドラッグストアで「一番保湿力が高そうなクリーム(ワセリンや尿素入りのこってり系)」を選んでしまうことです。
日常生活ならそれで正解ですが、ギター演奏においては「油分」は大敵です。
油分が弦に付着すると、巻き弦の溝に汚れが溜まりやすくなり、倍音が失われ、音がこもる原因になります。
狙い目は「グリセリン」ベース
演奏の合間や直前にもケアしたい場合、選ぶべきは「非油性」や「オイルフリー」を謳った保湿剤です。
成分表示を見て「グリセリン」が主成分で、油分(ワセリン、シアバター、ミネラルオイル等)が少なめのものを選びましょう。
これらはサラッとしていて浸透が早く、表面に油膜を残しにくいため、塗って数分でギターに触れることができます。
練習前・中: サラッとしたローションタイプ
練習後・寝る前: 油分を含んだ強力なクリームで蓋をする(この時はギターに触らない)。
このように使い分けるのが鉄則です。
最強のケアは「水を飲む」こと

内側からの保湿がノイズを消す
外から塗るだけでなく、内側から潤すことも非常に重要です。
私たちの体の約60%は水分でできており、水分不足は指先の乾燥に直結します。
意識的に水を飲むだけで、体内の水分量が上がり、指先の静電気も起きにくくなります。
結果として、ノイズ対策にもなるのです。
練習時の水分補給ルーティン
練習中はこまめに水分を摂りましょう。
カフェインを含むコーヒーやお茶には利尿作用があるため、純粋な「水」や「麦茶」がおすすめです。
ウォーターサーバーなどを導入して、練習環境のすぐそばに水を置いておくと、無意識に水分補給ができるので効果的です。
すでに割れてしまった時の緊急処置

瞬間接着剤は最終手段
プロの現場では、パックリ割れた指先を瞬間接着剤(アロンアルファ等)で固めて強行突破することもあります。
しかし、これはあくまで応急処置であり、皮膚への負担も大きいため推奨はしません。
液体絆創膏を活用する
ドラッグストアで売っている「液体絆創膏(コロスキンやサカムケアなど)」は、ギタリストの強い味方です。
傷口をコーティングして固めるため、チョーキング時の激痛を物理的に防げます。 乾くとカチカチになりますが、ピックを持つ感覚や押弦の感覚への影響は、普通の絆創膏を貼るよりはずっとマシです。
ただ消毒効果もあるため傷口に塗ってしばらくはメチャクチャ痛いので覚悟は必要。
よくある質問(Q&A)
Q. 練習前にハンドクリームを塗ってもいいですか?
A. 一般的な油性のものは避けましょう。弦がベタつき、音が死ぬ原因になります。塗るなら「完全オイルフリー」のものか、塗った後にしっかり手を拭いてから弾くようにしてください。
Q. 指先が硬くなるのは悪いことですか?
A. ギターを弾き込んで指先が硬くなること(タコができること)自体は、弦を押さえやすくなるので悪いことではありません。問題なのは、その硬くなった皮膚が乾燥して「割れる」ことです。硬い皮膚ほど保湿して柔軟性を持たせないと、ある日突然パックリいきます。
Q. 湿度管理はどうすればいいですか?
A. 部屋の湿度は40〜60%を目指しましょう。加湿器を使うのがベストですが、ない場合は濡れたタオルを部屋に干すだけでも効果があります。これはギターのネックトラブル防止にもなり一石二鳥です。
まとめ
冬場のハンドケアは、快適な演奏と良い音を守るための重要な「機材メンテナンス」の一部です。
乾燥はノイズの元: 水分不足は静電気ノイズを招く。
クリームの使い分け: 練習前は非油性、寝る前は高保湿。
内側から潤す: 水を飲んで身体の水分量をキープする。
環境を整える: 加湿器でギターと肌を守る。
指先のコンディションが良ければ、練習のストレスも減り、結果として上達も早くなります。 「痛いから弾きたくない」となる前に、今日から指先のケアを始めてみてください。 水を一杯飲むだけでも、立派なハンドケアの第一歩です。
おまけ












