「エレキギターって、なんでこんなに面白いんだろう?」
気がつけば通販サイトでギターの画像を眺め、SNSで見つけた他人のボードを研究し、練習時間よりも“音作り”に夢中になっていたりする。そんな経験がある人は、間違いなくエレキギターの沼にハマっている証拠だ。
この記事では、趣味でギターを弾いている人や、これからエレキを始めようとしている人に向けて、「なぜエレキギターはここまで面白いのか?」という疑問にしっかり答えていく。
結論から言えば、エレキギターは“常識に収まらない自由な楽器”だということ。その面白さは、音色、ルックス、演奏方法、コミュニティ、そして文化性に至るまで多岐にわたる。
まだ100年経っていない、進化し続けるカルチャー
ギターという楽器が登場したのは18世紀ごろとされており、クラシックやアコースティックギターを含めれば約300年近い歴史がある。一方で、エレキギターの誕生は20世紀前半。まだ100年も経っていない“新しい楽器”だ。
その上で、ここまで多様なスタイルとシーンを生み出してきたのは、テクノロジーとの相性が良かったからだ。
ピックアップやアンプ、エフェクター、録音機材、さらには最近ではAIによる音作り支援まで。エレキギターは技術の発展とともに進化を続ける“未完成の楽器”とも言える。
アコースティック楽器が“完成された伝統”を持っているのに対し、エレキギターは常に“変化し続ける文化”を内包している。そこにこそ、飽きの来ない魅力がある。
楽器の中で最もファッショナブルな存在
エレキギターの魅力は、まず何より「見た目」にある。
ボディシェイプ、木材、カラーリング、ピックガード、ペグやブリッジの種類……どれを取っても“無限の組み合わせ”がある。これほどルックスが多様化している楽器は、他にはまず存在しない。
代表的なモデルであるテレキャスター、ストラトキャスター、レスポール。この3つを見比べるだけでも、まるで別ジャンルの楽器かと思うほど雰囲気が違う。そしてそこからさらに派生モデル、改造、ビルダー系、ヴィンテージ、モダンなど、選択肢は無限に広がる。
ギタリストが通販サイトを見ながら「これ欲しいな~」と考えてしまうのは、ルックスの時点で既に感情を刺激されているからだ。
“所有欲”と“創作欲”が同時に刺激される、まさにギタリスト特有の心理だろう。
音色の幅が、他の楽器の常識を逸脱している
エレキギターの音色バリエーションは、もはや“別の楽器”レベルだ。
1本のギターに複数のピックアップが搭載され、それぞれに異なる音色のキャラクターがある。加えてボリュームやトーンの微調整でニュアンスが変わり、ピッキングの強さや角度、右手の位置でも音が大きく変化する。
さらにアンプやエフェクター、ケーブルや電源環境、さらには録音環境まで含めてサウンドが決定される。
例えばストラトのフロントピックアップを、軽くピッキングしてクリーンアンプに通しただけで、ジャズにもR&Bにもなる。一方でリアピックアップを激しく弾いて、ファズを通せばハードロックやシューゲイザーの世界にも行ける。
「これ1本で何でもできるじゃん」と思える反面、「だからこそ無限に悩める」楽器でもある。
ギターの音作りに正解はない。だからこそ、沼が深い。
奏法の自由度が“スポーツ”レベルに多彩
エレキギターの演奏方法は、他の楽器と比べても異常なほど自由度が高い。
右手はピックでも指でもOK。ピックの持ち方すら多様で、アングル、当て方、力加減で音が変わる。左手はコードを押さえるだけでなく、スライド、チョーキング、ハンマリング、プリング、ビブラート、ミュートなど多彩な技術が要求される。
また、アーム奏法、ハーモニクス、タッピング、ピックスクラッチなど、演奏方法そのものが「エフェクト」のような役割を果たすケースも多い。
スポーツに例えるなら、1人でサッカーもバスケもやっているような感覚だ。
身体をどう使うか、どんなフォームで弾くか、それ自体が音に反映される──まさに“プレイヤーの個性が音に直結する”楽器なのだ。
「上手い人が多すぎる」世界だからこそ、燃える
エレキギターの面白さを語る上で外せないのが、「上には上がいる」という現実だ。
SNSを開けば、小学生の速弾き、大学生の超絶タッピング、プロ顔負けのアマチュア演奏者がゴロゴロいる。しかも全員、自分よりも上手い。
一見、絶望的に思えるこの状況。でも実は、モチベーションが途切れにくい要素でもある。
「自分はまだまだだな」と思えるうちは、練習の意味がある。目標が常に現れるという意味では、ある種の“幸運な世界”だ。
そして、ライバルが多いというより、「刺激をくれる存在が多い」と捉えるだけで、エレキギターを続ける理由がまた一つ増える。
おわりに|エレキギターは人生を“拡張”してくれる楽器
エレキギターは、音が鳴るだけの道具じゃない。
・見た目に惹かれ
・音作りに悩み
・身体で表現し
・仲間とつながる
というように、人生のいろんな要素を“拡張”してくれる楽器だ。
初心者でも、ちょっとコードが鳴っただけで楽しいし、何年やっても「こんな音あったのか」と驚ける。
「上手い」「下手」を超えた、“続けた人にだけ見える景色”がそこにある。
エレキギターは、面白すぎる。だから、やめられない。