「コーティング弦は上達の妨げになる」「音が悪い」「甘えだ」──そんな意見をSNSや経験者から聞いたことがあるかもしれない。
確かにそう言われると「ノンコーティングの方がいいのかな…」と迷ってしまうのが初心者の正直なところだろう。
だが、筆者の結論は明確だ。
初心者こそ、迷わずコーティング弦を選ぶべきだ。
そしてこれは「楽をしたいから」ではなく、ギターを続けるために必要な選択だと考えている。
その理由を、実際のメリット・デメリット両面から丁寧に掘り下げていこう。
「コーティング弦=下手になる」説の正体
まずは一部の経験者が語る「コーティング弦は上達に向かない」という主張。その根拠とされるのは以下のようなものだ。
張りが強くてチョーキングがしづらい
弦アースが落ちにくくノイズが出やすい
張り立ての音が落ち着いていて変化に乏しい
価格が高く、コスパが悪い
たしかに、これらのポイントは一理ある。
ただし、これはプロユースや録音現場での極めてシビアな感覚に基づいたものであって、ギターを始めたばかりの人にとってはほとんど気にしなくていい範囲だ。
たとえば「チョーキングで半音上がらない」と言われても、まだチョーキングすらまともにできない段階でそのニュアンスを語られても、実感がないのは当然だろう。
初心者が感じる“弦のストレス”とは
それよりも深刻なのは、**弦が錆びることで「弾きたくなくなる」**という状況だ。
筆者もギターを始めた頃、湿気の多い新潟の自宅で練習していたら、わずか数日で弦が錆びてギシギシになった経験がある。滑りも悪く、指にも錆がついて、結果的にギターに触る頻度が落ちていった。
これは初心者にとっては致命的だ。
弾きたくない状態が続く=練習しなくなる=上達が止まる
この流れこそ、本当の意味で「下手になる」原因ではないだろうか。
コーティング弦の圧倒的メリット
コーティング弦の最大の魅力は「状態が長持ちすること」に尽きる。
錆びにくい
滑りが良く、指に優しい
毎回“弾きたくなる”コンディションを保てる
練習が中断しづらい
週に2〜3回しかギターに触れない人でも、1ヶ月以上快適に使い続けられる。これはノンコーティングではまず無理な話だ。
しかも最近のコーティング弦(特にElixirのOPTIWEB)は、ノンコーティングにかなり近い音質と弾き心地を実現している。もう「違和感がある」という時代ではなくなりつつある。
音質は気にしすぎなくてOK
「コーティング弦は音が悪い」という意見も根強いが、そもそもギターの音は弾き手のテンションやセッティングでガラッと変わる。初心者レベルでの音質差は、正直誤差の範囲だ。
それよりも、**「気持ちよく弾けるかどうか」**の方が大事。
ギターは練習を続けた者だけが上達できる楽器なのだから、「また弾きたくなる」状態を維持することが何よりの練習法なのだ。
経験者にとっても便利なコーティング弦
実は、コーティング弦のメリットは初心者だけに限らない。
スタジオレックやDTMでも大活躍するのがコーティング弦だ。
録音では1日中同じギターを使い続けることもあるが、ノンコーティング弦だと途中で音が変化したり、錆びで音質が劣化することがある。
その点、コーティング弦は張りたてから状態が安定しているため、1日中録り音が変わらずにキープできる。これ、意外と重要だ。
録音後に「前半と後半で音が違う…」と気づいた時のショックは計り知れない。
そうならないために、筆者も宅録や制作作業では必ずコーティング弦を選んでいる。
まとめ|弦選びは“環境作り”の一部と考える
ギターを始めたばかりの頃は、機材選びがよくわからないのも当然。だからこそ、まずは練習を続けやすい環境を作ることに全振りするのが正解だ。
コーティング弦はそのための強力な助けになる。
弦が死なないから、触りたくなる
滑りが良いから、運指が気持ちいい
錆びないから、ギターも傷まない
そしてなにより──
「ギターが楽しい」と感じられる時間が増える。
それだけで、十分すぎるほど使う価値がある。
「初心者にはまだ早い」なんてことはない。むしろ初心者にこそ最もメリットがある弦が、コーティング弦なのだ。
迷っているなら、ぜひ一度試してみてほしい。
Q&Aで記事の振り返り
Q1:コーティング弦って初心者向け?それとも経験者向け?
A1:どちらにもメリットがあるが、初心者こそ最も恩恵を受けやすい。
弦が錆びにくく、指にも優しく、練習を続けやすい環境が作れるからだ。録音現場では音の安定性から経験者にも重宝されている。
Q2:コーティング弦はチョーキングがしづらいって本当?
A2:若干テンションが強めな傾向はあるが、極端な違いではない。
初心者が演奏を楽しむ上では誤差レベルで、気にする必要はない。慣れてきてから自分に合う弦を探せばOK。
Q3:ノンコーティング弦の方が音がいいんじゃないの?
A3:音質に差があるのは事実だが、練習段階ではほとんど気にならない。
音よりも「弾きたくなるかどうか」の方が継続には重要。エリクサーなどは音質劣化も最小限に抑えられている。
Q4:練習頻度が低い人でもコーティング弦の方がいいの?
A4:むしろ頻度が低い人ほどコーティング弦がおすすめ。
数日空いても弦が死なないので、「久しぶりに弾いたら弦がサビてた」というストレスがない。
Q5:最初の1セットで試すならどのコーティング弦がいい?
A5:エリクサーのOPTIWEB(エレキ)またはNANOWEB(アコギ)が定番。
クセが少なくノンコーティングに近い弾き心地。迷ったらまずこの2つを試すのが安心。