子どもがギターを始めるなら、単音プレイから入るべき理由
ギターを始めたばかりの子どもに、最初に何を教えるべきか──。これは意外と難しい問題である。
多くの教則本やレッスン動画では「コードストローク」からのスタートが主流だ。しかし、それは本当に子どもにとって最適な入口なのだろうか。
実は近年、「コードよりも速弾きのような単音プレイの方が、子どもには習得しやすいのではないか」という声が徐々に広がっている。これは単なる奇をてらった意見ではない。子どもの身体的・認知的な特性、そして何より“楽しさ”という観点から見ると、非常に理にかなっているのだ。
メロディは“理解できる音楽”、コードは“理解しづらい構造”
まず前提として、子どもにとって「伴奏」という概念はやや抽象的である。一方で「メロディ」は、日々耳にしている音楽の“主役”であり、感覚的にも非常に馴染み深い。
たとえば、テレビから流れるアニメの主題歌や、ゲームの効果音、あるいは友達と歌う童謡──これらはすべて単音で構成されたメロディである。だからこそ、子どもはメロディを聴いて「これ、知ってる!」と反応できる。再現しようとする意欲も湧く。
対して、コードはどうだろうか。押さえる指の形は複雑で、視覚的に真似しづらい。しかも、握力や手の大きさといった身体的条件も強く求められるため、見よう見まねでやってみても、きれいに音が鳴らず挫折しやすい。
単純に「楽しい」「できた」と感じられるのは、やはりメロディ、つまり単音プレイなのだ。
子どもにとって単音は“まねやすい”、“鳴らしやすい”
子どもの脳は、模倣と反復に優れている。ミラーニューロンと呼ばれる神経細胞が活発で、大人よりも直感的に動きを真似しやすい。そのため、目の前で演奏された単音のフレーズであれば、比較的すぐに指を動かして再現できる。
しかも、歪ませたエレキギターであれば、多少ピッキングが甘くても、それらしく音が鳴ってくれる。この“誤魔化しが効く”点も、単音プレイの大きなメリットである。
コードの場合、どれか1本の弦でも指が少しでもズレていれば音はビビり、成功体験どころか「変な音しか出ない」という挫折感ばかりが残る。
「音が出る」「かっこよく聴こえる」──この2つの条件がそろっていれば、子どもは自ら進んでギターを触るようになる。遊びとして自然に取り組むようになるのだ。
SNSで見る“ギターキッズ”の多くは、速弾きが得意
実際、SNSなどでよく見かけるギターキッズの投稿を見ても、その多くがコードストロークではなく、速弾きやリフ、単音のメロディプレイであることに気づく。中には、小学生にもかかわらずYngwie Malmsteenばりの速弾きを披露している子どもすらいる。
それは単なる才能ではない。指が小さく柔らかいうちから、音の出るフレーズを「遊び」として弾いてきた積み重ねの結果なのだ。
成功体験が練習を継続させる
ギターを継続する上で重要なのは、「うまく弾けた!」という成功体験である。この成功体験をどれだけ早く、どれだけ多く得られるかが、習慣化に直結する。
単音フレーズなら、1〜2小節だけでも音として成立する。しかも、聴いている周囲の人にも「おっ、弾けてるね!」と言ってもらいやすい。
コード練習は…残念ながらその真逆だ。弦が鳴らなかったり、濁った音しか出なかったりと、練習の初期段階では「できない感覚」ばかりが積み重なる。
もちろん、コードがまったく不要という話ではない。だが、スタート地点としては、単音のほうが圧倒的に報われやすいのだ。
コードで挫折するのは子どもだけではない
「昔、Fコードでつまずいてギターをやめた」
そんな声を一度は耳にしたことがあるだろう。これは子どもに限らず、大人にも多く見られるケースである。
つまり、ギターの“脱落ポイント”は共通しており、その多くがコードにあるという事実から目を背けてはいけない。
本来、ギターはもっと自由な楽器であるべきだ。音楽を楽しむ手段として、「まずは単音から」という選択は、決して邪道ではない。
親子での“役割分担”も新しい楽しみ方に
単音プレイから入るもうひとつの利点として、「親子で一緒に演奏できる」という点がある。
たとえば、子どもがメロディを弾き、親がコードで伴奏をする──それだけで立派な“セッション”になる。単音とコードは役割こそ違えど、音楽としては対等な関係だ。
親が少しギターを弾けるなら、この“役割分担”によって自然な形で音楽が家庭に根付いていく。親子間のコミュニケーションのきっかけにもなるだろう。
まとめ:コードは“壁”であり、単音は“入り口”である
ギターは楽しい。だが、それを知るには“最初の一歩”がとても重要だ。
その一歩がコードストロークである必要はない。むしろ、コードという壁にぶつかって心が折れてしまうくらいなら、単音という“やさしい入り口”から始めたほうがいい。
最初は“それっぽく”で十分である。歪んだ音で少しだけ速く弾ければ、それだけで気分はロックスターだ。
そして、何より重要なのは「自分の音が鳴る楽しさ」を知ること。それがあってこそ、ギターとの付き合いは長く深く続いていく。
すべての子どもに、ギターの楽しさを知ってもらうために。
最初の一音を「単音」から始めてみてはいかがだろうか。
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