FUZZは、その荒々しく独特な歪みキャラクターが魅力ですが、使いこなすのが難しいと敬遠するギタリストも少なくありません。
そこで本記事では、FUZZをブースターとして活用するアイデアをご紹介します。
通常のブースターとは異なる質感と弾き心地が得られますので、エフェクターボードの選択肢として取り入れることで、よりオリジナリティのあるサウンドシステムを構築できるでしょう。
FUZZってどんなエフェクター?
FUZZは、ギターの音を極端に歪ませることで、ザラザラとしたファズサウンドを生み出すエフェクターです。
オーバードライブやディストーションよりもノイズや倍音が強調され、ローファイで暴れ回るような独特のトーンが特徴といえます。
クラシックロックやガレージロック、サイケデリックな楽曲で多用され、強烈なインパクトを与えてくれます。
一方で、設定によっては扱いにくさを感じやすい面もあるため、しっかりとした理解が必要です。
FUZZとオーバードライブの違い
オーバードライブは、アンプをプッシュし、自然な歪みを得ることを目指した設計が多いのに対し、FUZZは回路で強引に波形をつぶすように歪ませることで、過激なサチュレーションを生むことがポイントです。
倍音成分が大きく増幅されるため、“ブチブチ”した音質や独特のコンプレッション感が目立ちます。
また、ピッキングの強弱によって音色が急激に変化しやすい点もFUZZならでは。
オーバードライブのようなスムーズさではなく、意図的に粗さを加えるのがFUZZサウンドの醍醐味です。
代表的な三種のFUZZ
ここで抑えておくべき三種のFUZZを紹介します。
市販のFUZZの多くはこの三種類をベースにデザインされているため、それぞれの特徴に関する知識はFUZZを選ぶ上で必須と言っても過言ではありません。
是非ここでベーシックなFUZZ教養を摘まんで今後のサウンドメイクの糧にしてください。
FUZZ FACE
FUZZ FACEは、その円形の筐体も印象的な、ジミ・ヘンドリックスをはじめ数多くのギタリストが愛用したクラシックなFUZZです。
太く温かみのあるミッドレンジを持ちつつ、ピッキングに敏感に反応するため、ギターボリュームの操作次第でクリーントーンから荒々しい歪みまで自在にコントロールできます。
また、シリコントランジスタ仕様とゲルマニウムトランジスタ仕様が存在し、それぞれ音のキャラクターが微妙に異なるのも魅力。
ナチュラルな倍音感と、ウォームなサスティーンが得られることから、多くのギタリストに長く愛され続けています。
TONE BENDER
TONE BENDERは、60年代イギリスで開発され、多様なバリエーションが存在する歴史あるFUZZです。
代表的なモデルにはMkI、MkII、MkIIIなどがあり、それぞれ回路やトランジスタの仕様によって音のキャラクターが変化します。
FUZZ FACEに比べるとより強いコンプレッションとやや鋭利なサウンド傾向があり、ギターの音像を前面に押し出す力強さが特徴です。
シングルコイルと組み合わせると粗さが際立ち、ハムバッカーではさらに厚みのあるファズサウンドを生み出します。
古いロックから、グラムロックやヘヴィなシーンまで幅広く使われる、イギリス発FUZZの代表格です。
BIGMUFF
BIGMUFFは、エレクトロ・ハーモニックス社によって開発されたFUZZ/ディストーション寄りのエフェクターで、非常に分厚いミッドローと長いサスティーンが魅力です。
FUZZ FACEやTONE BENDERに比べると、高ゲインかつより密度の濃い歪みが得られ、ギターソロで存在感を強調したいときにうってつけ。
サイケデリックからオルタナティブロック、シューゲイザーなどでも定番として知られ、ジューシーでファットなリードトーンが得られます。
一方で、低域が強く音抜けが悪くなりがちという面もあるため、他のエフェクターやアンプ設定とのマッチングが重要になるFUZZです。
↓でBIGMUFFの解説をしています。
【轟音】初心者でもわかる!ビッグマフの特徴と使い方を徹底解説
その他のファズ
上記の三種はクラシックかつ多くのコピーモデルが流通していますが、実はファズの世界にはそれ以外にも実験的でカオティックな個性を持つモデルが数多く存在します。
例えば、オクターブ上の倍音を加えて奇妙な倍音効果を生み出すものや、激しいゲート処理によって音がブツブツ途切れるタイプ、さらには制御不能な発振を起こしたりピッチまで変化させてしまうようなものまで登場しています。
まさに「変なエフェクター大喜利」のような状態で、もはや収拾がつかないほどバリエーションが豊富なのです。
こうした一風変わったファズは、サイケデリックやノイズ・ミュージックのようにアバンギャルドなジャンルで大活躍するだけでなく、一般的なスタイルの中に意図的に取り入れることで、独創的なサウンドテクスチャを生み出すことも可能です。
実験的なアプローチを好むプレイヤーは、こうした“怪作系ファズ”を手に取ってみると、新たなクリエイティビティの扉が開かれるかもしれません。
FUZZをブースターとして使うメリット
FUZZをブースターとして使う最大のメリットは、通常のクリーンブースターやオーバードライブ系ブースターとは異なる“味付け”ができる点です。
出力レベルを上げつつ、FUZZ特有の倍音やコンプレッション感を足すことで、アンプの歪みをプッシュしたり、独特のサチュレーションを付与できます。
結果として、ミドル帯がグッと前に出る独自の質感が得られ、ピッキングのニュアンスを活かしつつ存在感あるリードトーンやバッキングが狙えるようになります。
サウンドに個性を加えたい場合には非常に有効な手段です。
セッティングのコツ
FUZZをブースター的に運用するときは、まず“歪み量ではなく出力レベルを重視する”ことがポイントです。
FUZZ側のゲインを控えめに設定して、ボリュームを上げ、アンプに入力されるシグナルを強めるイメージを持ちましょう。
そこに適度な歪み量を加えることで、FUZZ特有の倍音や荒々しさを活かしつつ、音をブーストできます。
これはアンプを自然にオーバードライブさせるというより、サチュレーション感を上乗せするイメージに近いです。
ブースター向けのFUZZ
ブースター用途としてもっとも扱いやすいのは「FUZZ FACE系」です。
ゲインを抑えても十分に幅広い音作りが可能で、ボリューム操作で音色を変化させやすい特徴がブースターとしても好都合です。
次点としては、コンプレッション感や攻撃的なニュアンスが強い「TONE BENDER系」が挙げられます。
一方、BIGMUFFは強い歪みと低域の存在感から、ブースターとして使うにはやや癖が強い傾向がありますが、モデルやシチュエーションによっては面白い効果が得られる場合もあるので、試してみる価値はあるでしょう。
さらに深く知るためのトピック
FUZZを上手く扱えるようになる近道はとにかくFUZZについて知る事だと筆者は考えています。
ここではより上手にFUZZをブースターとして活用するためのトピックをいくつか紹介していきます。
ギターのボリュームコントロールとの連動
FUZZの大きな特徴として、ギターのボリューム操作に非常に敏感である点が挙げられます。
ギターボリュームを少し絞るだけで、歪みをかなり抑えたクリーン寄りのトーンに近づいたり、上げれば一気にファズ特有の暴れ具合が加わるといった、ダイナミックな変化を得ることができます。
ブースター的な使い方をするなら、FUZZペダル側のゲインは抑えめにしつつ、ギターのボリュームで音量と歪みのバランスをコントロールする方法がおすすめです。
曲中のフレーズに合わせて微調整できるため、ライブやセッションでの表現力が大きく向上します。
ブースターとして使う場合の接続順
FUZZをどの位置に接続するかは、サウンドメイクにおいて重要な要素です。一般的には、ギター → FUZZ → オーバードライブ/ディストーション → アンプ という順番が基本とされていますが、ブースターとして使う場合は以下のような考え方もあります。
FUZZを前段に置く
ギターからの信号をFUZZでブーストしつつ荒々しさをプラスし、後段のオーバードライブで音をまとめる方法。
FUZZの個性が強く出ます。
FUZZを後段に置く
先に軽くオーバードライブなどで歪ませた音をFUZZでさらにブーストする。
歪みのトータルゲインが高くなり、音圧重視のサウンドに向きます。
使いたいトーンやバンドの編成、プレイスタイルによっても最適解は異なるので、ぜひ色々と試行錯誤してみてください。
トランジスタの種類(シリコン/ゲルマニウム)による違い
FUZZのサウンドや挙動は、採用されているトランジスタの種類によって大きく変わります。
特にクラシックなFUZZ FACEでは、ゲルマニウムとシリコンが代表的です。
ゲルマニウム
比較的ウォームで柔らかい音が特徴。
温度に弱く不安定な面がある一方、独特の甘いサウンドを好んで愛用するギタリストも多いです。
シリコン
安定性が高く、より高いゲインとシャープな歪み傾向。
音の輪郭がはっきりしていて、現代的な音作りにもなじみやすいです。
ブースター用途で使う場合、シリコンのほうがしっかりと出力が稼げる傾向がありますが、ゲルマニウム特有の温かみやヴィンテージ感も捨てがたい魅力。
好みやバンドサウンドに合わせて選択するとよいでしょう。
EQやノイズ対策のヒント
FUZZをブースターとして使うと、高出力でアンプや他のエフェクターを押し込むため、思わぬノイズや低域・高域の暴れが気になることがあります。
そこで、以下の対策が有効です。
EQの活用
ミドルを少し強調し、余分な低域や高域をカットしてやると、バンドアンサンブルで埋もれにくくなります。
ゲインのバランス
FUZZペダル側のゲインを上げすぎるとノイズが増幅されがち。
適正なレベルにとどめ、アンプや他のペダルとの兼ね合いを調整するとスムーズです。
電源やケーブルの品質
アナログ回路であるFUZZは電源の質やケーブルのノイズにシビアです。
ノイズが気になる場合はアイソレートされた電源や高品質なケーブルの導入を検討しましょう。
まとめ
FUZZは“ファズサウンド”と呼ばれる独特な歪みで知られる一方、ブースターとして使うことで新たなサウンドメイクの扉を開いてくれます。
従来のクリーンブースターやオーバードライブペダルにはない倍音感やサチュレーションを活かし、アンプをプッシュしながらオリジナリティあふれるトーンを狙うことができるのです。
特にFUZZ FACE系などの扱いやすいモデルから試してみると、FUZZの新たな一面を発見できるはずです。
また、ギターのボリュームコントロールや接続順、トランジスタの種類、EQ・ノイズ対策などを工夫することで、より自由度の高いサウンド設計が可能となります。
ぜひ、あなたのエフェクトボードにFUZZを加えて、バリエーション豊かなサウンドを追求してみてください。