【BOSS DS-1Wレビュー】名機DS-1を進化させた技クラフトの新たな定番ディストーション!

定番のオレンジ色は、ギタリストにとって「実家」のような安心感がある。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
ギタリストなら誰しも一度は陥る「歪み探しの旅」。
最新のブティックペダルを試しては「高解像度すぎる…」と悩み、ヴィンテージを試しては「ノイズが…」と嘆く。この無限ループ、心当たりがありませんか?
そうやって一周回って帰ってくる場所、それがBOSS DS-1です。
結論から言うと、BOSS DS-1W(技 WAZA CRAFT)は、「思い出補正」を「現代の即戦力」へと物理的に昇華させた、歪みペダルの最適解のひとつです。

おいおい、今更DS-1か? 1978年発売の骨董品だぞ。ペトルーシのような緻密なハイゲインを作るには、レンジが狭すぎるんじゃないか?

あらテク子ちゃん、分かってないわね。あの粗削りな「ジャリッ」とした歪みこそが、ロックの初期衝動なのよ。ジョー・サトリアーニやスティーブ・ヴァイが愛した音、魂(ソウル)が震えない?

まあまあ二人とも。今回のテーマは「技クラフト版」だよ。オリジナルの良さを残しつつ、回路を再構築して現代的なアンサンブルでも埋もれないチューニングがされてるらしいね。スタジオワークでも使えるなら、私は歓迎だよ。
そもそもDS-1とは何者なのか?

BOSS初のディストーションとして1978年に登場したDS-1。
世界中のギタリストの足元を支え続けてきたこのペダルは、単なる「古いエフェクター」ではありません。「ギターヒーローのアイコン」です。
ヴァン・ヘイレン、ジョー・サトリアーニ、スティーブ・ヴァイ、カート・コバーン、ジョン・フルシアンテ…。
彼らの共通点は、スタイルは違えど「その時代の音を作った」ということ。
DS-1のサウンド特性を工学的に見ると、「低域(ロー)をバッサリ削ぎ落とし、高域(ハイ)のエッジを立てる」という大胆な設計になっています。
自宅で一人で弾くと「低音がスカスカで音が軽い」と感じるかもしれません。
しかし、これこそがバンドアンサンブルにおける正義なのです。
ベースやドラムのキックと帯域が被らないため、混雑したミックスの中でもギターの音が「抜けてくる」。
この周波数特性こそが、DS-1が長年愛される理由です。
「技 WAZA CRAFT」による回路の再構築

「技クラフト」シリーズは、単なる復刻やモディファイではありません。
BOSSのエンジニアがディスクリート回路で再構築した、いわば「フルチューンナップ版」です。

ディスクリート回路ってのが肝だな。汎用的なオペアンプ(ICチップ)に頼らず、トランジスタやダイオードなどの個別パーツを組み合わせて回路を設計する手法だ。手間もコストもかかるが、設計の自由度が高く、ノイズレスで解像度の高い音を作り込めるぞ。
DS-1Wにおける進化のポイントは以下の通りです。
| 特徴 | オリジナル DS-1 | 技クラフト DS-1W |
| 回路構成 | オペアンプ中心の設計 | フル・ディスクリート回路 |
| ノイズ | ゲインを上げると目立つ | 大幅に低減されクリア |
| レスポンス | ややコンプ感が強い | ピッキングへの追従性が向上 |
| モード | 切り替え無し | スタンダード / カスタム の2モード |
2つのモードが描くサウンドスケープ

DS-1Wの最大の特徴は、スイッチ一つで切り替えられる2つのサウンドモードです。
それぞれの特性を理解することで、このペダルの真価を引き出せます。
スタンダード・モード:伝統の継承と洗練
オリジナルのDS-1サウンドを忠実に再現したモードです。
あの特有の「鋭いエッジ感」と「深いコンプレッション」はそのままに、ディスクリート回路の恩恵で音の解像度が向上しています。
往年のハードロックリフを刻むなら、迷わずこのモードでしょう。
カスタム・モード:現代的ミッドブースト
ここがDS-1Wの真骨頂です。
スタンダードモードに比べ、中域(ミッドレンジ)が太く押し出され、出力レベルも最大+6dBアップしています。
DS-1の弱点とされた「線の細さ」や「音量不足」を完全に克服しており、現代的なハイゲインアンプや、モダンなPOPSのバッキングにもマッチします。

このカスタムモード、すごく使いやすいね。クランチ気味のアンプをプッシュした時に、音がペラペラにならずに「グッ」と前に出てくる感じ。これなら歌モノのバックでも邪魔せず、かつ存在感を出せるよ。

そうね。ゲインを下げ目にしてボリュームを上げれば、極上のブースターにもなるわ。チョーキングした時の音が痩せずに伸びていく感じ…泣けるわね。
実践!DS-1Wのおすすめセッティング
ただ繋ぐだけではもったいない。DS-1Wのポテンシャルを引き出すためのセッティング例を紹介します。
1. 王道ハードロック(スタンダード・モード)
GAIN: 14時
TONE: 10時~11時
LEVEL: 適宜
アンプ: マーシャル系(クランチ設定)
ポイント: TONEを上げすぎないのがコツ。DS-1は高域が強いため、12時より上げると耳に痛い音になりがちです。少し絞ることで、ジューシーな倍音が際立ちます。
2. 現代的リードサウンド(カスタム・モード)
GAIN: 12時
TONE: 12時
LEVEL: 14時(ブースト気味)
アンプ: 歪み系アンプ or クリーンアンプ
ポイント: カスタムモードの中域の太さを活かし、アンプをプッシュします。JC-120(ジャズコーラス)対策としても有効。従来のDS-1では相性が悪いとされたジャズコでも、カスタムモードなら太いドライブサウンドが作れます。

JC-120対策として使えるのは大きいな。本来、真空管アンプの歪みありきだったDS-1が、単体でアンプライクな挙動を見せるようになったのは、回路設計の勝利と言えるだろう。
よくある質問(どっちの音が好き?)
あなたが求めるサウンドはどちらのタイプですか?
Q. 80年代ハードロックや、ニルヴァーナのような「荒々しさ」が欲しい!
A. スタンダード・モード
鋭いアタックとジャリッとした質感。
Smells Like Teen Spirit のあのイントロのリフに最適。
Q. 現代的なテクニカルソロや、太いバッキングが欲しい!
A. カスタム・モード
豊かな中低域とピッキングニュアンスへの追従性。
スティーブ・ヴァイのような、レガートで歌うソロに最適。
まとめ:DS-1Wは「過去」と「現在」を繋ぐ架け橋
BOSS DS-1Wの魅力を整理します。
完全ディスクリート回路により、ノイズレスで高解像度なサウンドを実現。
スタンダードモードは、往年の名盤で聴ける「あの音」を完全再現。
カスタムモードは、中域の太さと音圧を強化し、現代的なアンサンブルに対応。
ブースターとしての適性も高く、アンプのキャラクターを活かした音作りが可能。
DS-1Wは、単なる懐古趣味のアイテムではありません。
歴史的なトーンを継承しつつ、現代のギタリストが求めるスペックを満たした、実用性の塊です。
「昔使ってたな」というベテランの方も、「定番ってどうなの?」という初心者の方も。
改めてこのオレンジ色のペダルを踏んでみてください。あなたのギターライフに、新しい発見と「安心感」をもたらしてくれるはずです。









