筆者が心底惚れ込んでいるエフェクターが二つある。
1つはGT-1000COREだ。とりあえずこれがあれば大抵の事を可能にしてくれる上にコンパクト。練習、制作、現場、全てにおいて欠かせない1台となっている。
もう1つがUAFX MAX Preamp&Dual Compressorだ。
これを通すことによってギターを弾くのも音作りも格段に楽しくなる。
単なるコンプレッサーという域を逸脱した演奏とサウンドの要として機能する、知れば知るほど、触れば触るほど面白いそんな1台だ。
そのUAFX MAXを買ってから1年半が過ぎた。
今もボードの先頭にいて(と言ってもGT-1000COREとMAXだけだが)、外す理由が見当たらない。
本記事ではMAXの機能を解説しつつ、筆者が実際どの様に使用しているのか紹介し、本機の魅力に迫っていこうと思う。
今後の機材選びの参考にして欲しい。
UAFX MAXの概要

UAFX MAXは、1176・LA-2A・Dynacompという定番コンプに、UA 610系のプリアンプを抱えた多機能ペダルだ。二基のコンプを選んで切り替えたり、直列で重ねたり、スプリットで別系統に振り分けたりできる。
610プリは各チャンネルに備わり、オンにすると心地よいサチュレーションが加わる。これは単なるレベリングではなく、音色設計の核に触れる装置だ。
本記事ではあくまで実際にどのように使っているかをレビューする内容になっている。
本機の詳しいスペックなどは過去記事で死ぬほど細かく書いてるのでそっちを参考にしてもらいたい。
各コンプのキャラクターと使いどころ
1176

極端に速いアタックで、ピッキングの角を立てて前に押し出す性格だ。通すだけで硬質な煌めきが乗り、リズムの粒立ちがくっきりする。
本機に収録されているのはRev.Aと呼ばれる時期のモデルで歪みやすいのが特徴。
↓単体収録モデルのレビューはこちらから
LA-2A

ゆっくり反応して、全体を包むように整える。弾き心地が柔らかくなり、歌物のバッキングがオケによく馴染む。
dyna comp

dyna compはギター用の王道で、パコっとしたアタックとロングサステインを作る。
クリーンの密度を上げたいときに有効だが、本記事では1176とLA-2A中心の話に絞る。
610プリアンプの使いどころ

610プリは音量をただ上げるだけではなく、倍音の厚みで存在感を出せる。
またアプリの操作で、プリアンプに対し特定の帯域をブーストカットする事もできる。
クリーンで物足りないと感じたときに、プリアンプノブを少し回すとサチュレーション感が増し煌びやかな倍音が加わり太さと抜け感が増す。
ルーティング別の実戦設定と効果

UAFX MAXは2種類のコンプを選択し2chに分けて使用できる。
そしてMAX内でその2種類のコンプをどう接続するかを選択することができるわけで、そこがこのエフェクターの面白い所。
エクスクルーシブ(exclusive)=2種類のコンプを切り替えながら使用できるモード

シリアル(serial)=2種類のコンプを直列で使用するモード

パラレル(parallel)=2種類のコンプを並列で使用するモード

スプリット(split)=2種類のコンプを各I N/OUTで分けて使用するモード

それぞれの個性を活かす使い方を自分なりに考えながら深掘りしていく作業が面白い。
各ルーティングの使い方を筆者なりに解説してみよう。
おおよそのツマミの値も載せておいた。
Outputは出音を確認しながら調整。
エクスクルーシブ(Exclusive):場面で1176/LA-2Aを使い分ける

LA-2AはInputを12時、Ratioを8:1、Releaseを3時。
1176はInputを13時、Ratioを8:1、Attackを10時、Releaseを2時。
これは歌のバッキングでLA-2Aに踏むとオケ馴染みが良くなり、前に出したいフレーズでは1176に踏み替えると、輪郭がカチッと立ち抜け感が増す。
また1176には610プリを必要に応じてオンにする。
個人的にこの使い方が最も使用頻度が高い。
柔らかく音馴染みの良いLA-2Aとパンチと抜け感のある1176をシーンごとに使い分ける。これをMAX1台で出来てしまうのでボードをコンパクトにしたい場合にも有効。
シリーズ(Series):1176×2で飽和させるドライブ

COMP2の1176はInputを12時、Ratioを4:1、Attackを10時、Releaseを2時で常時かけにする。
COMP1の1176はブースト用で、Inputを4時、RatioをALL、AttackとReleaseを12時にし、Preampは1時。
これはCOMP2で輪郭を整え、COMP1でCOMP2を一気に押し潰して色気を作る考え方だ。
アンプの歪みとは別の質感のオーバードライブが作れる。
所感として、宅録のライン取りでも粒が崩れにくく、ギターの太さも出しやすい。
パラレル(Parallel):1176とL A-2Aで輪郭と伸びを

COMP1の1176はInputを12時、Ratioを4:1、Attackを10時、Releaseを2時。
COMP2のL A-2Aはインプットを2時、Ratioを8:1、Releaseを12時。
COMP1の1176で輪郭を保ちつつ、COMP2のLA-2Aを強めにかけることで輪郭を保ちながらサステインを確保する。
その上で各chの音量を調整する事で音色を調整。
クリーンでのソロプレイや、スライドギター、ナチュラルハーモニクスの減衰を遅らせるなどアタック感を維持しながらも聴かせるフレーズをしっかり伝える。
スプリット(Split):前段1176+センド後段LA-2A

ギター直後の1176はInput10時、Ratio8:1、Attack10時、Release2時。
アンプやプロセッサーのセンドリターン側に置くLA-2AはInput12時、Ratio8:1、Release3時。
前段でピッキングの勢いを作って、後段で全体のピークを軽く抑えると、音の背筋が伸びるようなまとまり方になる。
最も複雑なルーティングが可能なモードで、本当の意味で1台で2台のエフェクトが使える。
1年半使って感じた強みと課題

実際に長期で使ってみて感じたのは、MAXは一般的なコンプレッサーの枠を飛び越えた音作りの可能性を秘めたエフェクターだった。
二系統のコンプとプリアンプ、4種のルーテングによってペダル一台で出来る事が物凄く多い。
2種類のコンプを切り替えたり、掛け合わせたり、別々のポイントで使ったりと
音作りと演奏を強力にサポートしてくれる。
課題
その上で課題ははっきりある。
まず電源が9Vで400mAとまあまあ要求が高い。
フルアイソレートで500mA口のあるサプライは選択肢が限られ、価格もそれなりだ。
さらにCOMP1とCOMP2で同じつまみを使う設計なので、片方を触っているうちにもう片方の値を忘れがちだ。ミニスイッチで操作対象を切り替える作法に慣れる必要がある。その課題を解消する専用エディターが用意されていないので、現場での微調整は最初の目印作りが勝負になる。
こんな人におすすめ

魅力と課題を踏まえて、MAXがどんな人にフィットするコンプなのか考えてみた。
- スタジオクラスのエフェクトを使いたい人
- コンプで積極的な音作りがしたい人
- 他人と差別化を図りたい人
ただでさえ分かりにくいカテゴリーであるコンプの中でもMAXは使いやすいコンプではないし、複雑な操作とロジックが試される機材ではあるためどちらかというと玄人向けだ。
ただ、だからこそ自分ならではの使い方を探るのが楽しいエフェクターでもある。
他にも高品位な競合コンプはあるがこれほど個性的なコンプは他には無いだろう。
使いやすさと分かりやすさを重視する人には積極的にお勧めはできないが、ツマミを全て12時に設定した場合でも何となくサウンドがパワーアップした様な体験が出来るだろう。
また実機再現系で色付けがあるタイプでもあるため、コンプとして細かく作り込みたい人も別のニュートラルなモデルを検討した方がいいかも知れない。
まとめ
これは「買って踏むだけ」のコンプではない。
切替・直列・並列・スプリットという4つのルーティングを押さえる事でコンプの域を超えた音作りができ、まさにサウンドの軸を決める程重要な存在になるだろう。
良いコンプを探している人には是非試して欲しいと思いつつ、長い時間をかけてじっくり音を作っていくタイプのエフェクターだから思い切って入手して使い込んでほしい。
勿論コンプ初心者の人にも是非チャレンジして欲しい。
正直MAXよりも使いやすいコンプはいくらでもあるけど、こんなに奥の深いコンプはほとんど無いと思う。
安い投資ではないが伝説的なスタジオ機材を様々な切り口で楽しめるMAXは間違いなく最高のコンプレッサーのひとつだろう。
https://gainfomation.net/uafx-max-review/





