音楽の話

音楽理論は必要?不要?ギタリストの視点で理論の本当の価値を考える

「音楽理論って結局、必要なの?」
ギターを弾いていると、一度は誰でも考えるテーマだと思う。SNSやYouTubeでもよく議論になっていて、
「感覚だけで十分」「理論がないと詰む」など、極端な意見も多く見かける。

ただ、実際のところ理論が必要かどうかは、プレイスタイルや目的によって全く違う
結論から言えば、“理論を知らなくても音楽はできる”。けれど、“理論を知っていた方が圧倒的に便利な場面が増える”というのも事実だ。

そしてもう一歩踏み込んで言えば、自己完結で楽しむ趣味のギターが、誰かとの共演や共有に発展した瞬間、理論や譜面の価値は一気に跳ね上がる。それが現場のリアルだ。

理論がなくてもギターは楽しめる。

まず前提として、音楽理論がなくてもギターは弾けるし、曲も作れる。それは間違いない。
実際、名だたるアーティストの中にも「理論はわからない」という人はたくさんいる。
耳と感覚で弾いて、コードやメロディを探りながら音楽を作る──それも立派な表現方法だ。

ただし、それは“個人プレイ”として楽しむ場合に限る。
バンドをやってみたい、他の人と合わせて演奏したい、自分の曲を誰かに伝えたいという段階に進んだ瞬間、
「理論知らないとちょっと不便かも」と感じる場面が確実に出てくる。

読譜力は「練習効率」を大幅にアップさせる武器になる

「譜面って読めたほうがいいの?」という疑問に対して、答えは明確に「YES」だ。
特に独学で練習している人ほど、読譜力の有無で上達スピードに差が出る。

たとえば次のようなシーンを想像してほしい。

  • TAB譜だけだとリズムがわからず、動画頼りの練習になる

  • ちょっとテンポが複雑なフレーズになると耳コピで限界がくる

  • コピーしたい曲が五線譜のみで提供されていて、手が出せない

こうした問題は、簡単な読譜スキルがあるだけで一気に解消される
特にリズム譜と構成譜が追えるようになると、1曲仕上げるまでの時間も労力もグッと減る。

“譜面が読める”ということは、“音楽の地図が読める”ということ。
道に迷わずに目的地に辿り着けるようになるのだ。

耳コピ=かっこいい?それは少し誤解かもしれない

「耳コピこそ正義」「譜面なんて見ない方が音感が鍛えられる」
そんな風潮も一部にはある。もちろん耳コピは大事なスキルだし、鍛えて損はない。

でも、それが“譜面を使うのは甘え”という意見になるとしたら、ちょっともったいない**。

実際のところ、耳コピと読譜は補完し合う関係にある。
譜面があれば耳コピの確認ができるし、耳で感じた違和感を譜面で修正できる。

何より、耳コピで済むような曲ばかりじゃないというのが現実だ。
微妙なリズムのニュアンスや、構成の細かい変化、拍子のズレなどは、譜面なしでは確認しにくい。

耳も、目も、両方使える状態が一番強い。
「耳コピor読譜」ではなく「耳コピ×読譜」の発想が、練習効率のカギになる。

曲は理論なしでも作れる。でも共有するなら“譜面”が必要になる

これもよくある誤解のひとつが、
「理論なんてなくても名曲は作れる」という話。これは確かにそう。名曲は理論からではなく感情やアイデアから生まれる。

でも──
その“名曲”を誰かに伝えるとき、理論や譜面がないと苦労する。

たとえばバンドでこういうやり取りをしたとしよう。

「AメロはC→G→Am→Fで、サビはちょっとテンポ上がるけど、構成は…んーと、えっと…」

…伝わらない。伝えたいのに、伝えきれない。これは地味にしんどい。

でも譜面があれば、

  • コード進行

  • 構成

  • 小節数

  • リズムの位置

がひと目で共有できる。デモ音源+譜面が揃っているだけで、リハーサルは激的にスムーズになる。

つまり、理論や譜面は“共有のための道具”でもある。
「自分だけで作って完結」で終わるか、「人に伝わって初めて完成」なのか──
それによって必要なスキルは変わってくる。

アンサンブルをするなら最低限の“共通言語”は必要

音楽は言語であり、譜面はその文法だ。
アンサンブルは“会話”と同じだから、共通言語がなければ伝達が難しくなる。

特にバンド練やセッションで多いのが、次のような場面:

  • 「4小節目でブレイクして、6拍子に戻るからね」

  • 「Cメロの頭、2拍裏から入るから意識して」

  • 「キー変わるから転調のとこマークしておいて」

これ、譜面が読めれば一瞬で済むやりとりだ。
逆に、読めないと感覚と口頭説明だけで延々とやり取りする羽目になる。

バンドでギターを弾く=音楽的なコミュニケーション能力が求められる
と言い換えてもいい。それを支えるのが、譜面力と最低限の理論知識だ。

「プロでも譜面読めない」って本当?実はレベルが違うだけ

よく「有名ミュージシャンも譜面読めないって言ってた!」という話を耳にする。
確かにそういうインタビューも存在する。

でも注意したいのは、“読めない”の基準が我々とは違うということ。

プロが言う“読めない”は、「クラシック並みの初見は無理」とか「完璧に書き起こしはできない」というレベルの話だったりする。
実際には、構成譜や簡単なリズム譜は普通に扱っていることが多い。

「プロでも読めないんだから、自分も読めなくてOK」と安心するのはちょっと早い。
最低限の譜面力は、むしろ“プロじゃない人”こそ必要な道具だったりする。

結論|理論と譜面力は“義務”じゃない。でも“無いと困る時が必ず来る”

  • ギターは感覚だけでも楽しめる

  • でも読譜力があると練習も効率化できる

  • 耳コピは大事。でも譜面も大事

  • 曲作りは自由。でも共有には理論や譜面があると便利

  • 自己完結で満足できなくなった瞬間、譜面力の価値が跳ね上がる

音楽理論や譜面力は、知っていると“選べる道具”が増える
義務じゃない。けれど、持っていることで行動の自由度が一気に広がる

今すぐガチで学ぶ必要はない。
でも、「いずれ必要になるかも」と思って、ちょっとずつでも取り入れておくと、未来の自分がラクになる。

とりあえず、構成譜が読めるようになることから始めてみよう
バンドをやってみたい、曲を共有したい、もっと上達したい──そんな気持ちが出てきたとき、
あなたを助けてくれる“共通言語”になるはずだ。

ABOUT ME
吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。