──自己鍛錬と人格形成のための「ギター道」
ギターは単なる趣味や娯楽の一つと思われがちだ。けれども、長年ギターに向き合うとこう感じるようになる。「ギターは道だ」と。
日本語の「道」には特別な意味がある。武道、茶道、華道──いずれも技術だけでなく、心を磨き、自己を鍛え、人格を高めていく生涯の修行としての意味が込められている。
本記事では、「道」としてのギターに向き合うことの価値と、そのための考え方を紹介する。
スポーツと武道の決定的な違い
スポーツは「勝利」を目的とする。技を磨き、肉体を鍛え、競争に勝つために挑戦を続ける。一方で、武道は勝敗を超えた「自己鍛錬」と「人格形成」が目的だ。己と向き合い、技術だけでなく精神を磨くことに価値がある。
だからこそ、スポーツは年齢とともにピークを過ぎるが、武道は生涯にわたって成長できる。ギターも同じだ。
よく「現役の格闘家と武道の達人はどちらが強いのか?」という議論があるが、そもそも勝敗という発想自体がスポーツ的だ。武道は「強い・弱い」を超えて、いかに成長し続けるかを問う。
ギターにおいても同じことがいえる。
他人と比較するのではなく、自分にフォーカスし、昨日の自分より一歩進むことを目指す──それこそが「ギター道」の精神だ。
挫折をどう乗り越えるか
ギターを始めた人の多くが挫折する。それは「勝敗的発想」に引っ張られるからだ。
「全然弾けない自分は才能がない」「友達より上達が遅い」。
そんなふうに自分を責めてしまうと、ギターが苦しみの原因になってしまう。
だが「道」として向き合えば、進むスピードは人それぞれでよく、焦る必要はない。
むしろ、つまずきや停滞こそが人格を鍛える大切な時間だ。
挫折を乗り越えることが、「ギター道」を歩む上での大きな学びになる。
守破離の成長ステップ
「道」の世界でよく使われる言葉に「守破離」がある。
守:型を守る。
基礎練習、名曲コピー、基本のリズムやコード。ここでギターの醍醐味に触れ、まず土台を作る。破:型を破る。
学んだことを応用し、自分なりのスタイルを試す。
だが注意が必要だ。守を経ずに破に進もうとする人は多いが、基礎を固めずに型を破れば「破る型すらない=型無し」になってしまう。離:型から離れる。
他人の影響を離れ、完全に自分だけの音を探求する。
ここにたどり着けるのは、守と破を長い時間かけて積み上げた者だけだ。
守破離の流れは、ギターを通じた自己鍛錬と人格形成のプロセスそのものだ。
年齢とともに深まるギター道
ギターは若さで勝負する楽器ではない。むしろ年齢とともに深みが増す。
若い頃はテクニックや派手さに惹かれるが、年を重ねると一音の表現力、間の使い方、空気感が重要になってくる。
ブルースの巨匠B.B.キングがそうだ。彼はチョーキング一発で人を泣かせた。
ギター道は、人生経験とともに熟成される。
世代を超えて学び合う
ギターの世界では、若手がベテランから学び、やがて自分が次の世代に教える側になる。
コピー文化や動画研究はまさに現代の「型稽古」だ。
ギター道は、周囲と比べて優劣を競うものではない。
昨日より少し前進し、やがて次世代に学びを渡す。そうして続いていく。
謙虚さが育む人格形成
ギター道の魅力の一つは、常に自分より上の存在がいることだ。
ギターの世界には、目上の達人がいるのはもちろん、SNSを覗けば小中学生でも驚くほど巧みにギターを弾きこなす小さな巨人たちがいる。そうした存在を前にすれば、どんな熟練者も「まだまだ自分は学ぶべきことがある」と自然に思わされる。
大切なのは、そうしたプレイヤーに対してリスペクトを持ち、盗めるところは貪欲に盗む姿勢だ。他人の優れた技術や表現に感嘆し、謙虚さを持って吸収し続けることで、技術だけでなく人間としての器も磨かれていく。
ギター道は、ただの練習や上達の道ではない。謙虚さ、リスペクト、学び続ける姿勢といった人格形成の側面が自然に育まれるところに、その奥深さがある。
まとめ
ギターを「道」として捉えることで、上達は単なる技術習得ではなく、
自己鍛錬と人格形成の旅になる。
周りと比べず、己と向き合う。
基礎を馬鹿にせず、守破離を意識して成長を積み重ねる。
挫折を恐れず、壁を超える中で人間としても深まっていく。
最後に、この記事を締めくくる言葉としてアントニオ猪木の詩を引用したい。
この道を行けばどうなるものか。
危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。
踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。
アントニオ猪木 「道」
道に迷ったとき、この言葉を思い出してほしい。
歩み続けることで、必ず見えてくる景色があるはずだ。
Q&Aでこの記事を振り返り
Q:ギターはなぜ「道」として向き合う価値があるのか?
A:単なる勝敗や上達速度ではなく、自己鍛錬と人格形成の機会になるからだ。ギターは年齢やキャリアを問わず、生涯かけて成長し続けられる。
Q:なぜ基礎練習(守)が重要なのか?
A:守を経ずして破に進むと、破るべき型がない=中身のない自己流になってしまう。基礎鍛錬は決して馬鹿にできない重要なステップだ。
Q:周囲と比べる必要はないのか?
A:ギター道では周囲との比較は本質ではない。昨日の自分より一歩前進することが成長であり、そこに価値がある。
Q:挫折しそうなとき、どう考えるべきか?
A:挫折や壁こそが人を鍛える。つまずきは学びの証であり、そこを超えることで人格が深まり、ギター道を歩める。
最後に
このブログでは、今後もさまざまな角度からギターに関する情報を発信していく予定だ。
「技術」「心構え」「機材」「楽しみ方」──幅広いテーマを通じて、ギターライフをより豊かにするヒントを届けていきたい。
これからもぜひ覗きにきてほしい。