「コンパクトでハイスペックなマルチエフェクターを使ってみたい」──そんな人に人気なのが Line 6 HXシリーズ だ。
コンパクトな筐体にプロ仕様の音質と機能を詰め込み、宅録からライブまで幅広く使える。
ただし、HXシリーズには複数のモデルがあり「どれを選ぶべきか」で迷う人も多い。
まずは初心者目線でのおすすめ度を比較してみよう。
初心者向けHXシリーズ比較まとめ

モデル | 特徴 | 向いている人 | 初心者へのおすすめ度 |
---|---|---|---|
HX Stomp | アンプ+エフェクト+キャビを凝縮した万能機 | まだエフェクターを揃えていない/1台で宅録〜ライブまでやりたい人 | ★★★★★ |
HX One | 1種類ずつ高品質エフェクトを試せる“エフェクター図鑑” | 自分の好きな音を探しながらボードを育てたい人/サブ機としても便利 | ★★★★☆ |
HX Stomp XL | Stompを拡張。スイッチが多くライブ向け | ライブ前提で、操作性を重視したい人 | ★★★☆☆ |
HX Effects | エフェクト専用。アンプ直派向けの司令塔 | 生アンプを愛用していて、ペダルボードを整理したい人 | ★★☆☆☆ |
価格は決して安くない。だが、このクオリティを他の機材で揃えることを考えると、むしろ堅実な選択肢と言える。
ここからは各モデルの特徴を詳しく見ていこう。
HX STOMP|万能で柔軟、ボードの軸にもなる小型マルチ
HXシリーズの定番モデルであり、最も人気のある1台。
手のひらサイズの筐体にアンプ・キャビ・エフェクトを凝縮し、宅録からライブまで幅広く対応できる。
HX Stompの大きな強みは、エフェクトとアンプシミュレーターの両方を担える柔軟性 にある。
宅録時 → アンプシミュレーターとして活躍
ライブ時 → 空間系や補助的なエフェクトを担当
既存のペダルボードに → 「隙間を埋める万能役」として組み込み可能
つまり「どんなボードにも入る余地がある」ほどの適応力を持っている。
ただし懸念点もある。同時使用可能なエフェクト数は最大8ブロック と制限があり、大規模な音作りを単体で完結させるのは難しい。
もちろん1台で完結できなくはないが、実際には “HX Stompを軸にボードを育てていく” という使い方がしっくりくる。
初心者へのおすすめ度:★★★★★
最初の1台としても、既存ボードの拡張としても活躍できる万能選手。初心者から上級者まで幅広くおすすめできる。

HX One|メタモン的万能さを持つシンプルな相棒
2023年登場の最新モデル。
250種類以上の高品質エフェクトを収録しながら、同時に使えるのは1種類だけ という割り切った仕様が特徴だ。
言うなれば、HX Oneは あらゆるコンパクトエフェクターに化けられる“メタモン”のような1台。
しかもHelix譲りのクオリティを持っているため、どのエフェクトも実戦で使えるレベルだ。
この「1種類しか使えない」という制約はデメリットにも見えるが、逆に シンプルで分かりやすい という利点にもつながる。
マルチエフェクターを買ったものの「操作が複雑で使いこなせなかった」という失敗をしにくいのだ。
また、HX Oneなら次のような堅実な楽しみ方ができる。
まずHX Oneを買って気になるエフェクトを試す
気に入ったモデルを実機で買い足す
再びHX Oneと組み合わせながら理想のボードを育てていく
これはHX Stompとは違ったアプローチで、「ミニマルで丁寧な暮らし」的なボード構築 を楽しめるのが魅力だ。
ただし注意点として、HX Oneには アンプシミュレーターが搭載されていない。
ライン出しで使う場合には、別途アンプシミュレーターを用意する必要がある。
初心者へのおすすめ度:★★★★☆
マルチに苦手意識がある人や、じっくり堅実にボードを育てたい人に最適。Stompとは違った方向性で長く楽しめる選択肢。
筆者が最も注目しているモデルでもある。

HX Stomp XL|ライブ前提だが価格面は要検討
HX Stompを横長に拡張し、フットスイッチが8基 に増えたモデル。
音質やDSPはStompと同じだが、スイッチ数が多いため ライブでの操作性が格段にアップ している。
しかし懸念点として、価格が10〜11万円前後と高め。
このレンジになると、より本格的なマルチである Helix LT も選択肢に入ってくる。
そのため、HXシリーズの中では最も「割高感が強い」モデルと見られやすい。
HX Stomp XLを選ぶなら、HXシリーズとしての機動力やボード拡張性を活かしたいかどうか を見極める必要がある。
フットスイッチ数が多いことに価値を見出せるなら有力な選択だが、そうでなければHelix LTとの比較を避けて通れない。
初心者へのおすすめ度:★★★☆☆
ライブでの直感操作を重視する人には便利だが、価格と用途のバランスを取れるかどうかがポイント。どちらかといえば中〜上級者の選択肢だ。
HX Effects|アンプ直派に最適な“エフェクト司令塔”
HX Effectsは、Helixシリーズの中でも エフェクト専用機 に特化したモデル。アンプやキャビのモデリングは省かれているが、200種類以上の高品位エフェクトを搭載し、最大9ブロック同時使用が可能だ。
特に強みを発揮するのが 4ケーブルメソッド。
これは「ギター → HX(前段エフェクト)→ アンプのプリ → HX(空間系)→ アンプのパワー → キャビ」という接続方式で、アンプとエフェクトの両方を自在に制御できる。
生のアンプを中心に音作りをしたい人にとって、HX Effectsは強力な司令塔になる。
真価を発揮する場面
アンプ直派で、自分のアンプのサウンドを活かしたい
でも複雑なエフェクターボードは組みたくない
1台で“必要十分なエフェクトボード”として機能してほしい
初心者にとっても「これ1台でエフェクターボードの代わりになる」のは大きな魅力だ。
ただし、アンプやキャビのモデリングが無いぶん、HX Stompのようなオールインワン型と比べると使い勝手に物足りなさを感じる場合がある。
初心者へのおすすめ度:★★☆☆☆
生アンプを使い続けたい人にはハマるが、そうでなければStompやStomp XLのほうが柔軟に対応できる。
初心者への結論|HX StompかHX One、どちらから始める?
HXシリーズの中で、初心者が最初に選ぶとしたら次の2つの方向性がある。
HX Stomp → 1台でアンプもエフェクトも完結。宅録もライブも一気にレベルアップできる。
HX One → 高品質なエフェクトを1つずつ試しながら、自分の理想のボードを育てていける。
どちらを選んでも、音質はプロレベル。
HXシリーズは「当面買い替える必要がない」ほど完成度が高いので、安心して導入できる。
ライブ前提なら Stomp XL
アンプ直派なら HX Effects
用途に合わせて、このような選び分けも可能だ。
筆者の視点|GT-1000COREユーザーから見たHXシリーズ
筆者は現在、BOSSの GT-1000CORE をメインに使用している。
HX Stompと同じ“スーパー・ストンプボックス系”に分類され、単体で宅録もライブもこなせる万能機だ。
ただ、GT-1000COREは完成度が高く洗練されている反面、個性的なサウンドを追求するのは難しい。
どのジャンルにも対応できる優秀さは魅力だが、表現の幅や個性を主張したい人には物足りない部分もある。
その点、HXシリーズはエフェクターボードに組み込んだり、生アンプと組み合わせたりすることで真価を発揮する。
つまり「表現の幅を広げつつ、自分の個性も主張できる」のが大きな特徴だ。
GT-1000CORE → 1台完結型。洗練された万能サウンド
HXシリーズ → ボードやアンプと組み合わせて幅を広げ、個性を活かせる
技術進歩で音質はさらに向上していくだろうが、HXシリーズのクオリティはすでにアナログと遜色ない。
今買っても、当面は“相棒”として活躍してくれるはずだ。
まとめ|HXシリーズの選び方
Line 6 HXシリーズは、どのモデルもHelix譲りの高音質と柔軟な機能を持ち、長く使えるマルチエフェクターだ。
ただし、それぞれ性格がはっきりしているため、選び方の指針を整理すると以下のようになる。
アンプもエフェクトも両方こなせる万能型
ボードの中心にも、隙間を埋める補助役にもなれる柔軟さ
同時使用数の制限はあるが、Stompを軸にボードを育てていく楽しみ方ができる
→ 「一気にレベルアップしたい」派におすすめ
あらゆるコンパクトエフェクターに化けられる“メタモン”的存在
1種類しか同時に使えないシンプル設計で、初心者でも迷いにくい
気に入ったエフェクトを実機で買い足していく「堅実なボード育成」が楽しめる
→ 「地道に積み上げたい」派におすすめ
Stompを拡張し、ライブでの直感操作を強化
ただし価格的にHelix LTとも競合するため、HXシリーズの機動力を活かす前提で選びたい
→ ライブ特化型。中級者以上向け
エフェクト専用機。特に4ケーブルメソッドでアンプと組み合わせると真価を発揮
生アンプを軸に音作りしたいが、複雑なボードは避けたい人にフィット
アンプやキャビのモデリングがないため、Stomp系に比べると用途は限定的
→ アンプ直派向けの専門機
結論
初心者がまず意識すべきは、
Stompで一気にレベルアップするか
Oneで堅実に積み上げていくか
この2択だ。
その上で、ライブ特化ならStomp XL、生アンプ直派ならHX Effectsを検討するのが堅実な流れとなる。
どのモデルを選んでも音質はすでにアナログに迫る水準にあり、当面の間は安心して“相棒”として使い続けられるだろう。