HISTORYのコスパは冷静に考えてヤバい|暴力的なスケールメリット

「国産ギターは高い」という新常識を、
全国180店舗の“暴力的なスケールメリット”が破壊する。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
昨今の円安や物価高の影響で、かつて10万円台で買えた国産ギターが今や20万円、30万円という異次元の価格設定になっています。「一生モノの国産」がどんどん遠い存在になる中で、冷静にスペックと価格を突き合わせていくと、ある一つの答えに辿り着きます。
結論から言うと、島村楽器のプライベートブランド「HISTORY(ヒストリー)」のコストパフォーマンスは、現在、国内市場において完全に「バグっている」状態です。
有名ブランドのロゴ代を払う余裕があるなら、その分を「木材」と「精度」に全振りした方が、プレイヤーとしての幸せに直結する。今回はそのロジックを解剖していきましょう。



全国180店舗がもたらす「スケールメリット」の暴力

HISTORYがなぜこれほど高いスペックを維持しながら、他社より数万円安い価格設定ができるのか。その最大の理由は、島村楽器が全国に180店舗以上を展開する巨大チェーンだからです。
広告費と中間マージンの徹底排除
通常、FenderやGibsonなどの海外ブランドを日本で売る場合、「ブランド使用料」「輸入代理店の手数料」「広告宣伝費」が重なり、価格の多くが“音に関係ない部分”に消えていきます。
しかし、HISTORYは島村楽器が企画し、直接工場へ発注し、自社店舗のみで販売するSPA(製造小売)モデルです。宣伝も店頭と自社サイトが中心。この「余計なコストを削り、その分を素材と組み込みに還元する」仕組みこそが、コスパの正体です。
圧倒的な発注数による「良い材」の確保
工場側からすれば、年間数本しか注文しない個人工房よりも、一度に数百本単位で発注してくれる島村楽器は最大の顧客です。そのため、木材の選定においても優先的に良質な材を回してもらえる立場にあります。
製造元は「フジゲン」と「ダイナ楽器」。その信頼性

HISTORYの製造を担当しているのは、日本が世界に誇るトップファクトリーです。
フジゲン(FUJIGEN)製の精密さ
上位モデルを担当するフジゲンは、かつてFender JapanやIbanezの最高級ラインを支えてきた「国産の雄」です。木材の乾燥管理からフレットの仕上げまで、その精度は世界一と言っても過言ではありません。
特にフジゲン製HISTORYに採用される**サークル・フレッティング・システム(C.F.S.)**は、弦とフレットが直角に交わることで、ピッチ(音程)の安定感とコードの分離感を飛躍的に向上させます。
ダイナ楽器製のワイルドな味付け
ミドルクラスのStandardシリーズなどは、現在Fenderの日本製品を製造しているダイナ楽器が担当しています。
実際に触ってみると、フジゲン製が「完璧な優等生」なのに対し、ダイナ製はフェンダーらしい適度な“荒々しさ”や“いなせな鳴り”を内包しており、これがロックなニュアンスとして非常に心地よいのです。
他社競合モデルとの徹底比較

「コスパが良い」と言われる他社モデルと、具体的に何が違うのかを表にまとめました。
| 比較項目 | HISTORY HST-Standard/VC | Fender Made in Japan | YAMAHA Pacifica 612 |
| 実売価格 | 約10.9万円 | 約14~25万円 | 約8~9万円 |
| 主な製造地 | 日本(ダイナ楽器、フジゲン) | 日本(ダイナ楽器) | インドネシア |
| ネック仕上げ | サテン(滑らか) | ポリッシュ/サテン | ポリ(モデルによる) |
| フレット処理 | 球面エリートフィニッシュ | 標準的 | 標準的 |
| 独自技術 | ソフトVUネック | Fenderパーツ | 汎用パーツの豪華さ |
| コスパ評価 | 神(国内最高峰) | 普通(しかしリセールバリューは高い) | 高(海外製としての完成度) |
YAMAHAのPacificaも素晴らしいギターですが、国産に絞って考えると20万円を超えるモデルが中心になります。約10万円で「本気で使える国産ストラト」を手に入れるなら、HISTORY以外に選択肢がほとんどないのが現状です。


中古市場に眠る「湖底の古木」のロマン
HISTORYを語る上で外せないのが、中古市場における異常なまでのお買い得感です。
「名前がダサい」という偏見が作る安値
ブランドイメージを気にする層が手放すため、中古のHISTORYは驚くほど安く流通しています。しかし、中身は高品質な国産。リセールバリューを気にせず、「一生使い倒す道具」として探すならこれほど美味しい獲物はありません。
ヘリテイジ・ウッド(Heritage Wood)の奇跡
ヘッド裏に刻印がある古いモデルの中には、北米の湖底に数百年眠っていた**「タイムレス・ティンバー(ヘリテイジ・ウッド)」**を使用しているものがあります。
この材は、現代の木材では不可能なほど細胞が結晶化しており、ビンテージギターのような芳醇な倍音を生み出します。中古で10万円前後のモデルにこの材が使われていたら、それは実質「時価数十万円の価値」があると言っても過言ではありません。
どんな人におすすめか?
A派:実用性と精度を重視する「現場主義」
「ライブでチューニングが狂うのがストレス」
「最初の一本だけど、絶対に外れを引きたくない」
- 「ブランド名より、実際に弾いた時の手触りの良さが全て」そんな方には、HST-Standard2やAdvancedシリーズが最適です。
B派:ブランドステータスを重視する「王道主義」
「ヘッドにFenderのロゴがないとテンションが上がらない」
- 「いつか売る時の価格(リセール)が大事」このタイプの方は、素直にFenderやGibsonを買いましょう。機材選びにおいて「モチベーション」も立派なスペックですから。いくらで手放せるかという点も含めるとコスパの評価も逆転することも大いにあり得ます。

まとめ:HISTORYは「賢者の選択」である
SPAモデルの強み: 中間マージンを排除し、販売価格の限界まで品質を向上。
最強の製造背景: 日本が誇るフジゲン・ダイナ楽器による精密な組み込み。
独自の演奏性: C.F.S.や球面フレット処理など、弾き手を助ける工夫が満載。
中古の穴場: 偏見のおかげで、ハイエンド級の個体が安価に手に入る。
「HISTORYってどうなの?」と疑っている方は、一度最寄りの島村楽器で、先入観を捨ててプラグインしてみてください。その瞬間に感じる「指に吸い付くような感覚」こそが、冷静な数字とロジックが導き出した真実です。
あなたのギターライフが、確かな品質の相棒と共に、より豊かなものになりますように!








