「コンプレッサーを使うと下手になる。」
そんな意見を耳にしたことはありませんか?
筆者もかつて先輩ミュージシャンから「コンプレッサーなんか使うと演奏が雑になるぞ」と言われたことがあります。けれど、プロ・アマ問わず多くの優れたギタリストやベーシストが足元にコンプレッサーを置いている姿を見ると、「果たしてこの意見は本当なのか?」と疑問が湧いてきます。
結論から言うと、筆者は「コンプレッサーを使うと下手になる」という説は誤解だと考えています。
この記事では「コンプレッサーを使うと下手になる」と言われる理由やその真偽を深掘りし、コンプレッサーの本質的な魅力や使い方について解説していきます。
コンプレッサーを使うと下手になる理由とは?
まず、「コンプレッサーを使うと下手になる」と言われる背景を考えてみましょう。この説は、コンプレッサーの効果を「音量を均一に揃えるだけのエフェクター」として限定的に理解していることから来ているのではないでしょうか。
確かに、コンプレッサーはダイナミクス(音量差)を調整し、音を一定に整える役割を持つエフェクターです。このため、「演奏のばらつきを補正してしまう=練習不足を隠してしまう」というイメージを持たれることもあります。
音量は技術で揃えるべき?
「音量は演奏技術で揃えるべきで、コンプレッサーを使うのはズルだ」
という意見も一部では聞かれます。
しかし、これは必ずしも現実的な考え方ではありません。
たとえば、
「大きな声で囁くように歌う」
「小さな声で迫力のシャウトをする」
といったことができるでしょうか?
この例え話が示すように、音量を完全に自在に操ることは非常に難しい技術です。
もちろん、演奏の基本技術を磨くことは重要ですが、すべてを演奏技術だけで完璧にすることは非現実的な部分もあります。
コンプレッサーは、そうした難しい場面で演奏者をサポートし、表現力を高めるための重要なツールです。
これを「ズル」と見なすのではなく、むしろ適切に使うことで音楽的な可能性を広げられると考えましょう。
コンプレッサーの効果とは?
コンプレッサーの効果を理解することで、その重要性を再認識できます。以下のような効果があるのです。
ダイナミクスの調整
強すぎる音を抑え、弱すぎる音を持ち上げることで、全体の音のまとまりを良くします。これにより、演奏がより滑らかで聴きやすくなります。
サステインの延長
カッティングやクリーントーンで小さくなる音を持続させ、美しい響きを保つことができます。
ニュアンスの強調
繊細なタッチやニュアンスを強調することで、演奏の表現力が向上します。
これにより、特にソロやアンサンブルでのプレイが際立つようになります。
コンプレッサーは単に「演奏を隠す」道具ではなく、「演奏を引き立てる」ためのものなのです。
コンプレッサーを使わないと勿体ない!
コンプレッサーを効果的に使うことで、以下のようなメリットが得られます。
カッティングやクリーントーンの安定感
カッティングではリズムが揃いやすくなり、クリーントーンでは音が埋もれずに際立ちます。
歪みサウンドでも効果を発揮
歪みトーンでもダイナミクスが活きるため、ソロやリードパートがより表情豊かになります。
多彩な奏法への対応
指弾き、ピック弾き、スラップ、タッピングなど、あらゆる奏法で演奏のニュアンスが引き立ちます。
その他の誤解とその対処法
音が不自然になる?
「コンプレッサーを使うと音が平坦になる」という意見を耳にすることがあります。確かに、コンプレッサーの設定を適切に行わない場合、ダイナミクスが過度に抑えられてしまい、音がのっぺりとして感じられることがあります。しかし、これはコンプレッサー自体の問題ではなく、設定のミスによるものです。
音が不自然になる原因の多くは、アタックタイムやリリースタイムの調整が適切でないことにあります。例えば、アタックタイムを短く設定しすぎると、ピッキングやストロークの立ち上がりが抑えられ、全体的に「圧縮された感」が強調されてしまいます。一方、リリースタイムが長すぎると、音が意図せず引き伸ばされ、不自然な持続音になってしまうこともあります。
対処法としては次のポイントを意識するとよいでしょう
アタックタイムの調整
ピッキングやタッチのニュアンスを活かしたい場合は、アタックタイムをやや長め(10ms以上)に設定すると、演奏の立ち上がりが自然に聞こえます。
リリースタイムの調整
リリースを短く設定することで、音の終わりが急激に切れず、よりナチュラルな持続感を得られます。
レシオとスレッショルドを慎重に設定
極端なレシオ(10:1など)や低すぎるスレッショルドを避け、控えめな設定から始めることで、違和感を減らせます。
さらに、最近のコンプレッサーペダルやプラグインには「ブレンド機能」や「ドライ/ウェット比率」が調整できるものも増えており、これを活用することでエフェクトのかかり具合を自然に保ちながら、ダイナミクスをコントロールできます。
万能ツールと勘違い?
コンプレッサーを「万能ツール」と誤解しているケースも見られます。
たしかにコンプレッサーは非常に便利なエフェクターですが、音作りのすべてを解決してくれる魔法の道具ではありません。
コンプレッサーは基本的に「音量やダイナミクスを調整するためのツール」であり、音そのものの質を変えるものではありません。
たとえば、音が薄く感じる場合や、高音域が埋もれてしまう場合には、コンプレッサーだけでは解決できず、EQ(イコライザー)やブースター、リバーブなど他のエフェクターとの組み合わせが必要です。
また、コンプレッサーさえかければ音が聴きやすくなる」という過信も問題です。
過剰にコンプレッションをかけることで、結果的に音の個性が損なわれたり、演奏者のタッチやニュアンスが埋もれてしまうこともあります。
ポイント
コンプレッサーはあくまで「調整ツール」であり、「音のキャラクター作り」は別のエフェクターや奏法が担います。
複数のエフェクターをバランスよく使うことが、最終的な音作りの鍵となります。
コンプレッサーを使うべきでない場面はある?
コンプレッサーは非常に便利なツールですが、すべての場面で最適というわけではありません。
以下に、コンプレッサーの使用を控えた方が良い場合を解説します。
表現力を重視したい場面
アコースティックギターやクラシックギターのように、演奏者のタッチやダイナミクスそのものが音楽表現の一部である場合、コンプレッサーを使わない方が良いことがあります。コンプレッサーはダイナミクスを整える効果があるため、演奏者が意図的につけた強弱のニュアンスが失われる可能性があります。
例えば、アコースティックソロ演奏では、静かな部分と力強い部分のコントラストが楽曲の魅力を生むことがあります。こうした場合、コンプレッサーの使用を控えた方が自然な表現力を維持できます。
ビンテージ感を求める音作り
ローファイサウンドやガレージロックなど、あえて荒削りな音を魅力とするジャンルでは、コンプレッサーが不要もしくは逆効果になる場合があります。コンプレッサーが音を整えすぎてしまうと、ビンテージ感やアナログ感が薄れてしまい、ジャンルの特性が損なわれる可能性があるからです。
例えば、60年代のガレージバンドを模倣する場合、録音の粗さや演奏のばらつきも音楽の一部として捉えられます。この場合、コンプレッサーは必要最低限に抑えた方がよいでしょう。
ダイナミクスが必要な場面
ライブパフォーマンスやジャムセッションのような、大音量かつ感情的なダイナミクスが求められる場面では、コンプレッサーの使用を控える方が効果的なことがあります。コンプレッサーをかけすぎると、演奏者のピッキングの強弱や感情表現が失われ、全体的に「平坦な音」に聞こえてしまう可能性があるためです。
ライブの際には、あえてコンプレッサーを使わずにダイナミクスを活かした演奏を行うことで、迫力や臨場感が生まれます。
まずは使ってみよう
偏見を持っている方もそうでない方も、まずはコンプレッサーを試してみることをおすすめします。
特に近年では、多機能で扱いやすく、自然なサウンドを提供するコンプレッサーが数多く登場しています。
初めての方でも使いやすいモデルを選べば、設定に戸惑うことなくその効果を体感できるでしょう。
おすすめモデル
ここで、ナチュラル系のコンプレッサーの中からおすすめモデルをいくつかピックアップして紹介していきます。
FENDER ( フェンダー ) / THE BENDS COMPRESSOR PEDAL
FENDER ( フェンダー ) / THE BENDS COMPRESSOR PEDAL
お馴染みFenderからリリースされているコンプレッサーです。
エフェクトをかけたサウンドの音量と原音の音量をBLENDノブでミックス出来ます。
強めにコンプレッションさせた際も原音を加えることで違和感の少ないサウンドに仕上げる事が出来ます。
BOSS CP-1X/BC-1X
BOSS ( ボス ) / BC-1X Bass Comp ベース用コンプレッサー
最新デジタル技術の恩恵で驚くほどに自然なかかり方をするのが特徴です。
弾いている本人もかけていることを忘れるほど自然かつしっかりと音を整える役割も果たす極めてサポーティブなコンプレッサー。
コンプに表現を邪魔されたくないこだわり派プレイヤーにおすすめです。
Effects Bakery ( エフェクツベーカリー ) / Plain Bread Compressor
Effects Bakery ( エフェクツベーカリー ) / Plain Bread Compressor
可愛いキャラクターが目印の低価格が嬉しいナチュラルコンプです。
手っ取り早く今時のコンプを試すならこの食パンくんが良いのではないでしょうか。
この価格帯でシンプルなデザイン、TONEノブで出音の補正が出来るのが特徴的かつかなり気が利いています。
音楽の表現力を広げるために、ぜひ一度コンプレッサーを試してみてください。それが、あなたの音楽人生を変える第一歩になるかもしれません!
まとめ
「コンプレッサーを使うと下手になる」という意見は、コンプレッサーの本質を誤解したものに過ぎません。
コンプレッサーは演奏技術を補うだけでなく、表現力を高め、音楽的な可能性を広げる重要なツールです。
適切に使うことで、より深い音楽表現が可能になり、演奏に自信が持てるようになるはずです。ぜひ、あなた自身の演奏にコンプレッサーを取り入れて、その魅力を体験してみてください。それが新たな音楽の一歩になるかもしれません!
また、過去記事にてギタリスト向けのコンプレッサーに関する解説をしています。
コンプレッサーに興味はあるけどよく理解できないなーと感じている方は是非併せてご覧いただけたらと思います。
【初心者向け】ギターコンプレッサー徹底解説|具体的な使い方と用語紹介