ギタリストなら誰しも「BOSSコンパクトの名機をまとめて使えたら…」と思ったことがあるはずだ。
その夢を現実にしたのが、2025年9月13日に発売される BOSS PX-1(Plugout FX) だ。
結論から言えば、PX-1は「BOSSファンのための特別な1台」。
一般的なマルチエフェクターと比べると見劣りする部分もあるが、BOSSの音に慣れ親しんできたユーザーにとっては唯一無二の存在になりそうだ。
BOSS PX-1とは?|アーカイブ化された“BOSSコン”の集大成
PX-1は一言でいうと 「BOSSコンパクトのアーカイブを1台で切り替えて使えるデバイス」。
発売時点で16モデルが使用可能
追加モデルは1つ1,000円で購入できるDLC方式
2026年1月にはOD-2、DM-2、DC-2の3機種が追加予定
すでにプラグインとして展開されていた「BOSS Effects Pedals」をハードウェアに落とし込んだ形であり、これはまさにBOSSが伏線を回収したとも言える。

ステレオ入出力、MIDI、USB-C対応など拡張性も高く、ボードのサブ機としての活用も視野に入る。
初期から使用可能な16モデル
カテゴリ | モデル名 | 説明 |
プリインストールモデル | OD-1 Over Drive | BOSSを象徴するオーバードライブの初号機。偶数次倍音を多く含み、温かみのある歪みを生み出す。スタックアンプのブースターとしても人気。 |
SP-1 Spectrum | 特定の帯域をブーストするエフェクト。音抜け改善やドライブエフェクト前段での歪みキャラクター変更、プリアンプ的な味付け、フィックスドワウのようなサウンドも可能。 | |
PH-1 Phaser | 軽やかなうねり、豊かなローエンドが特徴のフェイザー。2ノブのシンプルな設計で、音楽的な効果をもたらす。 | |
SG-1 Slow Gear | 入力信号のアタックを抑え、音の立ち上がりをなめらかにする。ギターのボリューム操作なしでバイオリン奏法が可能。ディレイやリバーブと組み合わせて幻想的なサウンドも。 | |
CS-1 Compression Sustainer | フォトカプラを用いた光学式コンプレッサー。わずかな遅延が音楽的なコンプレッションサウンドを生み出す。音量バランス調整以上の演奏表現が可能。 | |
TW-1 T Wah | ピッキングの強弱に応じてフィルターが動作し、ワウエフェクトを加える。2ノブで感度と深さを設定。ベースでも使用可能。 | |
SD-1 SUPER OverDrive | 40年以上販売されているロングセラー。OD-1のナチュラルなサウンドを踏襲しつつ、TONEノブで高域を調整可能。幅広いサウンドバリエーションを実現。 | |
DS-1 DISTORTION | 荒々しさとタイトで豊かな倍音を両立し、原音の良さを損なわないディストーション。ハードロック、メタル、パンクなど幅広いジャンルで使用されるクラシックな歪みサウンド。 | |
アプリから追加可能モデル | CE-2 Chorus | 世界初のコーラス・ペダルCE-1に続き開発されたコンパクト。爽やかで広がりのあるコーラスが特徴。豊かな中域と温かみを持ち、幅広い演奏が可能。 |
BF-2 Flanger | 20年以上販売されたフランジャー。BBDを用いたアナログ回路設計によるマイルドなエフェクト。設定次第でコーラス、ショートディレイ、ビブラートのようなサウンドも。 | |
PN-2 Tremolo/Pan | パンニングとトレモロを組み合わせた個性的なエフェクト。ステレオ出力で左右を飛び交う音像が得られる。PX-1ではオリジナルにはないタップテンポやMIDI SYNC機能も使用可能。 | |
OC-2 Octave | オクターブペダルの元祖。原音の位相を反転させる独自手法で滑らかなオクターブサウンドを生成。シンセベースのような分厚い低音が得られ、ベーシストにも人気。 | |
PS-2 Digital Pitch Shifter/Delay | ピッチ変更を実現したピッチシフター。8bitデジタル処理とアナログ回路によるピッチと音量の揺れがLo-Fiトーンとして魅力。最大2秒のディレイペダルとしても使用可能。 | |
VB-2 Vibrato | ピッチに揺らぎを加え、独特な世界観をもたらすエフェクト。揺らぎの立ち上がり時間調整や、踏んでいる時のみオンにするなど、高い表現力を備える。 | |
DD-2 Digital Delay | 世界初のペダル型デジタルディレイ。クリアさの中に温かみを持ち、アンサンブルに自然と馴染む音楽的なサウンドを備える。 | |
DF-2 SUPER Feedbacker & Distortion | ユニークなフィードバック機能を備えたディストーション。DS-1よりも高いゲインとスムーズな歪み。ペダルスイッチを押し続けることで豪快なフィードバックを発生させることができ、ヘッドホン使用時にも機能する。 |
特に型番に「1」の数字を持つ「新しい挑戦をするモデル」が多く含まれている。
ポジティブな評価|「BOSSらしい音を確実に得られる安心感」
Redditをはじめとした海外コミュニティでは、肯定的な意見も目立つ。
多くのBOSSペダルを省スペースで試せる
再現度が非常に高く、オリジナルと聞き分けが難しい
デザインが「妙に愛らしい」と好意的に捉える声も
特に古いモデルを持っているが接触不良や電源規格の違いで使いにくい、というユーザーにとっては朗報だろう。筆者自身も古いBOSSコンの管理には苦労してきたので、この「アーカイブ化」はありがたい。
ネガティブな反応|「割高感」と「DLCモデル」への違和感
一方で批判的な声も少なくない。
価格:38,500円は、HX ONE(約35,000円 / 250種以上のエフェクト収録)やPlethora X1(約20,000円)と比較すると高価に映る
機能制限:一度に1つのエフェクトしか使えない
追加課金モデル:1モデルごとに購入するDLC方式に賛否がある
「BOSSファン向けのアイテムに過ぎない」「もったいぶったアーカイブ開放」という冷めた見方もある。

筆者の視点|“マルチ”ではなく“BOSS体験”に価値を置くべき
正直、PX-1を「マルチエフェクター」として見れば割高感は否めない。
しかしここで大事なのは、BOSSが 「エフェクトを数で競うのではなく、質と歴史で勝負している」 という点だ。
結局のところ、どんなマルチを持っていても実際に使うエフェクトは数パターンに絞られる。
ならば最初から「BOSSコンのDNAだけを詰め込んだ1台」と割り切ったPX-1の思想は、むしろ潔いとも言える。
海外からの評価
海外のギターコミュニティ、とくにRedditのr/guitarpedalsでは、PX-1に対して熱い議論が交わされている。
印象的なのは「徹底的に分かれる評価」だ。
肯定的な意見
多くのBOSSペダルをコンパクトな1台で試せるのがクール
普段は出番の少ないOC-2やトレモロ、コンプなどのニッチ系をまとめられる便利さ
サウンド再現度が非常に高く、「オリジナルと聞き分けが難しい」というレビューも
デザインについて「奇妙に愛らしい」と好意的に受け止めるユーザーも存在
批判的な意見
外観に対しては「Photoshopモックのよう」「おもちゃっぽい」「ソウルレス」と辛辣な声も
一度に1エフェクトしか使えない仕様や、16エフェクトという上限に不満
追加エフェクトが有料DLC形式なのは特に批判の的。「将来的にサブスク化するのでは」と懸念する声まである
チューナーがない・パッチリコール非対応など、実用面での不足を指摘する意見も
価格面では、HX OneやPlethora X1と比べて「割高」との評価が多数
長期的なファームウェアサポートへの不安、将来的に「文鎮化」する可能性を危惧する声も
このように、PX-1は海外でも「愛されるか、突き放されるか」の両極端な反応を引き起こしている。
筆者としては、この賛否両論そのものがBOSSの存在感を物語っていると感じる。
もし無難で当たり障りのない製品だったなら、これほど議論は盛り上がらなかったはずだ。
まとめ|BOSS PX-1は「ファンのためのロマンと実用の中間点」
PX-1は万人向けのマルチではなく、BOSSに思い入れのあるギタリストのためのプロダクトだ。
価格や機能だけで比較すれば競合に劣る
しかし「BOSSの音を確実に得られる」という安心感は唯一無二
DLC方式は賛否あるが、必要なエフェクトだけを選べる合理性もある
筆者としては、PX-1を「追加の1台」として迎えるのが理想だと感じる。
結局のところPX-1は、“スペック競争から降りたBOSSの新しい挑戦”だ。
ギタリストそれぞれの「BOSSとの付き合い方」を問い直す存在になるだろう。
主な仕様
サンプリング周波数:48kHz
AD変換:24ビット+AF方式
DA変換:32ビット
バイパス:バッファード・バイパス
ディスプレイ:グラフィックLCD 128 × 48ドット
接続端子:
INPUT A(MONO)、INPUT B、OUTPUT A(MONO)、OUTPUT B端子(標準タイプ)
CTL1,2/EXP端子(TRS標準タイプ)
DC IN端子
MIDI IN端子(ステレオ・ミニ・タイプ)
USB COMPUTER端子(USB Type-C®)
Bluetooth:GATT(MIDI over Bluetooth Low Energy)対応
電源:ACアダプター、USB端子から取得
消費電流:260mA(ACアダプター)、420mA(USB)
外形寸法:73(幅)×125(奥行)×56(高さ)mm
質量:400g(ACアダプターを除く)
付属品:ACアダプター、保証書、チラシ、Roland Cloudアクティベーション・カード
競合モデルとの比較
モデル 価格帯(税込) 収録エフェクト数 特徴 向いているユーザー BOSS PX-1 約38,500円 16(追加DLCあり) BOSSコンパクトのアーカイブを1台に集約。圧倒的な再現度。 BOSSサウンドに馴染んだユーザー、ボードのサブ機として使いたい人 Line 6 HX ONE 約35,000円 250以上 Line 6伝統のHXモデリング。幅広いエフェクトを網羅。 とにかく多機能・コスパ重視派、1台で何でも済ませたい人 TC Electronic Plethora X1 約20,000円 75以上(TonePrint対応) TonePrintで自由にカスタマイズ可能。コスパ抜群。 初めてのマルチに挑戦する人、価格重視派 ZOOM MS-50G+ 約16,000円 100以上 小型マルチの定番。多彩なエフェクトを省スペースで使用可能。 コスパ重視派、ペダルボードに「おまけ1台」を足したい人 筆者コメント
PX-1 → 歴代BOSSサウンドを“完璧に”再現したい人向け
HX ONE → とにかく多機能で、音作りを無限に楽しみたい人向け
Plethora X1 → 初マルチにおすすめ。価格と機能のバランスが良い
MS-50G+ → 圧倒的コスパ。小型マルチで済ませたい人の鉄板