【音楽理論入門】メジャーとマイナーの違いは1フレットだけ?「3和音」の正体

明るい響きと悲しい響きの差は、たったの「1センチ」。
その正体は、脳がバグるほどの微細な指のズレに過ぎない。
どうも、7丁目ギター教室新潟江南校の吉田です。
さて、普段なんとなく弾いているメジャーコードやマイナーコードですが押さえ方が似ているのになんでこんなにも響きに差があるのか…と、気になったことはありませんか?
その疑問と気づきこそ「音楽理論」の入り口と言っても過言ではありません。
「音楽理論」と聞いただけで、学生時代の数学の時間を思い出して蕁麻疹が出る……なんて方も居るんじゃないかなーとは思いますが一旦落ち着いてください。
理論は決してあなたを苦しめるための公式ではありません。
むしろ、暗闇の中で「どの指を動かせば、どんな感情が生まれるか」を教えてくれる、最高に便利なGoogleマップのようなものです。
結論から言うと、メジャーコード(明るい)とマイナーコード(悲しい)の差は、たった「1フレット」という極小の距離感に隠されています。



コードの性格を決める「1フレット」の魔法
多くの人が最初期に覚える「A」というコード。
5本の弦をジャラーンと鳴らしていますが、実は出ている音の種類はたったの3つだけです。
具体的には「A、C#(ド#)、E(ミ)」という3つの音が、重なり合ってあの明るい響きを作っています。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | C# | |||
| 3弦 | A | |||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | A | |||
| 6弦 | × |
では、次にそこから指を1本だけ動かして「Am」を弾いてみましょう。
すると、構成音は「A、C(ド)、E」に変わります。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | C | |||
| 3弦 | A | |||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | A | |||
| 6弦 | × |
お気づきでしょうか。変わったのは「C#」が「C」になっただけ。つまり、ギターの指板上でいうと、たったの「1フレット分」だけ音が下がっただけなんです。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | C(Am時) | C#(A時) | ||
| 3弦 | A | |||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | A | |||
| 6弦 | × |
この「ほんの少しの差」が、人間の脳には「希望に満ちた光」から「絶望的な影」へとガラリと表情を変えて届くのです。
これはEコードとEmコードでも全く同じことが言えます。
EとEmの「わずかな差」を確認する
Eコードを分析してみると、構成音は「E(ミ)、G#(ソ#)、B(シ)」です。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | B | |||
| 3弦 | G# | |||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | B | |||
| 6弦 | E |
これをEmにすると「E(ミ)、G(ソ)、B(シ)」になります。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | B | |||
| 3弦 | G | |||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | B | |||
| 6弦 | E |
ここでも「G#」が「G」へと、1フレット分だけ移動しています。コード全体の響きを支配しているのは、実はこうした「特定の1音の立ち位置」なのです。
| 弦 | 0 (開放弦) | 1フレット | 2フレット | 3フレット |
| 1弦 | E | |||
| 2弦 | B | |||
| 3弦 | G(Em時) | G#(E時) | ||
| 4弦 | E | |||
| 5弦 | B | |||
| 6弦 | E |
この「1フレットのズレ」が、曲全体のストーリーを決定づけると言っても過言ではありません。
「3和音」の仕組みを音の距離で理解する
AやAmのように、3つの音で構成される和音を「3和音(トライアド)」と呼びます。
科学的な観点(聴覚心理学)から見ると、脳は音と音の「距離感」によって、それが安定しているか不安定かを判断しています。
難しい用語を抜きにして、その「距離」のルールを整理してみましょう。
メジャーコードとマイナーコードの距離表
| コードの種類 | ルート(最低音)からの距離 | 特徴 |
| メジャー (Aなど) | 「2音」高い音 + そこから「1音半」高い音 | 明るい、安定、ポジティブ |
| マイナー (Amなど) | 「1音半」高い音 + そこから「2音」高い音 | 悲しい、哀愁、ネガティブ |
例えばAコードなら、最低音であるAの音から2音高い(4フレット分離れた)「C#」を鳴らし、そこから1音半高い(3フレット分離れた)「E」を同時に鳴らしている、というわけです。



音が重複しても「役割」は変わらない
ギターの場合、6本の弦があるため、先ほどの3つの音(A、C#、E)を重複させて弾いています。
例えば低い方から「A(5弦)→E(4弦)→A(3弦)→C#(2弦)→E(1弦)」と鳴らしても、含まれている音がこの3種類だけなら、それは立派な「Aコード」として機能します。
どれだけ音が重なっても、どれだけ順番が入れ替わっても、そのコードの「性格」は変わりません。
AとAmを押さえ1音ずつ音を出し、3つの構成音が綺麗に混ざり合うのを聴いてみてください。
よくある質問 (Q&A)
Q:コードの理屈を知ることに、どんなメリットがあるのですか?
A: 最も大きなメリットは「上達のショートカット」ができることです 。
理屈を知っていれば、知らない曲に出会ったときも「ここを1フレット下げればいいんだな」と予測がつくようになります 。辞書を使わずに英語を話そうとするより、単語の仕組みを知っている方が早く話せるようになるのと同じです 。
Q:理論を勉強すると、自由な感性が死んでしまいそうで怖いです。
A: むしろ逆です。
理論は「感性を形にするための道具」です 。自分の内側にある「切ない気持ち」をどう音に出せばいいか迷ったとき、理論という地図があれば、迷わずその音に辿り着けます 。自由奔放に見えるレジェンドたちも、実は緻密な構造を理解して、その上で遊んでいることが多いのです 。
まとめ
コードの正体は、たった「3種類の音」の組み合わせ。
明るいか悲しいかは、その中の「1音」が1フレット動くだけで決まる。
音が重なったり順番が変わったりしても、コードの役割は不変。
理論は「音の地図」。迷った時に使えば、上達の近道になる。
今日のワンステップ
「今すぐギターを持って、Aコードを弾いた後に、2弦(ド#)を1フレット下げてAmにしてみよう!」
たったこれだけで、あなたは「音を自分の意志でコントロールする」という、ギタリストとしての大きな一歩を踏み出したことになります。
あなたのギターライフが、1フレットの差を楽しむ余裕とともに、
もっともっと色鮮やかになりますように!
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