エフェクター

ギターの音作りにおけるサグとサチュレーション|効果とおすすめエフェクター解説

ギターの音作りを突き詰めていくと、「サグ」や「サチュレーション」といった専門用語に出会うことがある。

最初は「結局、歪みの一種でしょ?」と流してしまう人も多いが、実際にはプレイフィールやサウンドの質感に大きく影響する重要な概念だ。

結論から言えば──
サグは「アンプのレスポンスの揺らぎ」、サチュレーションは「音に厚みや暖かさを加える控えめな歪み」と言える。
そして、オーバードライブやディストーションといった“王道の歪み”とは明確に役割が異なる。

この記事では、ギタリストにとって知っておくべきサグとサチュレーションの仕組み、そして歪み系との違いについて整理していく。

サグ(Sag)とは?|真空管アンプ特有の“たわみ”感

サグは、主に真空管アンプの電源部で生じる現象だ。
大きな負荷がかかった瞬間に電圧が一時的に下がり、少し遅れて回復する。この「間」が演奏フィールに独特の“コンプレッション感”を与える。

サグがもたらす効果

  • アタックの柔らかさ
     強いピッキングでも角が取れたような反応になる。スポンジのような弾力感を感じる瞬間だ。

  • 演奏の余裕感
     レスポンスがほんの少し遅れることで、タイトすぎない「人間的な揺らぎ」が加わる。ジャズやブルースで心地よいノリを生み出す理由のひとつでもある。

  • 音色の膨らみ
     回復過程で倍音が付与され、音がふくらむように響く。これを「ブルーム(bloom)」と呼ぶ人もいる。

実機の真空管アンプではサグの調整はほぼ不可能だが、近年のデジタルアンプやマルチエフェクターではサグ量をコントロールできるものもある。
これにより「タイトなモダン系」「ジューシーなヴィンテージ系」といった表現の幅が広がった。

サチュレーション(Saturation)とは?|音に“暖かさ”を与える控えめな歪み

サチュレーションは、アナログ機器に大きな入力が入ったときに発生する自然な歪みを指す。
デジタルでは失われやすい「質感」や「暖かみ」を加えるために使われる。

サチュレーションの効果

  • 音のラウドネス向上:ピークを抑えつつ全体を押し出す。小音量でも迫力が出る。

  • 暖かさの付与:デジタル特有の“冷たさ”を和らげる。

  • 存在感アップ:倍音が付加され、ミックスの中で埋もれにくくなる。

  • まとまり感(グルー効果):バスやマスターにかけると音像が一体化する。

サチュレーションの種類

  • テープサチュレーション:太さやLo-Fi感を加えるクラシカルな質感。

  • 真空管サチュレーション:偶数次・奇数次倍音を含み、ナチュラルで音楽的。

  • デジタルサチュレーション:プラグインで多彩にコントロール可能。Lo-Fi系のビットクラッシングも含む。

ギタリストにとっては「単体の歪みエフェクター」としてよりも、音作り全体を底上げする“味付け”としての役割が大きい。

サチュレーションとオーバードライブ、ディストーションの違い

混同されがちだが、この3つは明確に使い分けられる。

  • サチュレーション:音に暖かさや厚みを加える「控えめな味付け」。

  • オーバードライブ:真空管を強くドライブさせたような“ウォームな歪み”。

  • ディストーション:波形を大きく変形させる、攻撃的で劇的な歪み。

例えるなら、

  • サチュレーション=料理の隠し味、味の素的な

  • オーバードライブ=しっかり効かせたスパイス

  • ディストーション=辛さ全開の激辛料理

といったイメージだ。

実際に体感できるエフェクター紹介

理論を理解しただけではなかなかイメージしづらいのが「サグ感」と「サチュレーション」だ。
幸い、近年はそれらを意図的に付与できるペダルが登場しており、自宅練習やライブ環境でも手軽に体感できる。

ここでは代表的な2モデルを紹介しよう。

VOX Smooth Impact|サグ感をコントロールできるコンプレッサー

VOXからリリースされた Smooth Impact は、ただのコンプレッサーではない。
内部回路にNutubeを搭載しているため真空管のリアルな挙動を得る事が出来、プレイフィールとしてのサグ感を再現できるのが最大の特徴だ。

VOX ( ヴォックス ) / Valvenergy SMOOTH IMPACT
VOX ( ヴォックス ) / Valvenergy SMOOTH IMPACT

  • 特徴

    • ピッキング時にふわっとした“コンプレッション+膨らみ”が得られる

    • トランジスタアンプやマルチエフェクターにも、真空管アンプに近い弾き心地を付与

    • 単なる音圧調整ではなく、“ノリ”を生み出すウォームなコンプ

筆者も試奏した際に感じたのは、アタック柔らかくなりつつ音が前に出てくる心地よさだ。
「硬すぎるデジタルアンプの反応をもう少し自然にしたい」と感じている人には、非常におすすめできる一台だ。

VOX SMOOTH IMPACT レビュー|Nutube搭載の真空管コンプレッサーVOX Valvenergy SMOOTH IMPACTはNutube搭載のコンプレッサー。自然なチューブ感と3モード切替で、初心者から上級者までギターサウンドを底上げできる...

BOSS BP-1W|自然なサチュレーションを付与するブースター

サチュレーションを体感するなら、BOSSの BP-1W(Waza Craft Booster/Preamp) が手堅い選択肢だ。

BOSS ( ボス ) / BP-1W
BOSS ( ボス ) / BP-1W

  • 特徴

    • BOSS,Rolandのビンテージプリアンプを再現

    • 音を歪ませるというより「前に押し出す」ニュアンス

    • クリーンでも歪みでも、サウンド全体を一段引き上げてくれる

特に宅録や小型アンプでの練習では、「音が細い」「存在感が足りない」と感じることがある。
BP-1Wを挟むだけで、アナログ的なサチュレーションが加わり、音がぐっと立体的になる。
CEモードでは腰高で硬質な質感に、REモードでは太くどっしりとした質感に
GAINを回す事でサチュレーションを付与する事が出来る。

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サグとサチュレーションをペダルで取り入れるメリット

  1. 実機アンプでは調整できない要素をコントロール可能
     サグ感はアンプの設計や状態に依存するため、本来は自由に扱えない。ペダルで補えるのは大きな利点だ。

  2. 宅録・ライン録音でもアナログ的なニュアンスを再現
     デジタル直結の“硬さ”を和らげることができ、弾いていて気持ちいい音に近づく。

  3. 演奏フィールが変わる
     単に音色が変わるだけでなく、「弾きやすい/ノれる」という感覚に直結する。これは練習のモチベーションにも繋がる。

ペダルを活用して“プロっぽい音の奥行き”を手に入れよう

  • サグ=アンプのレスポンスのたわみ → VOX Smooth Impact で再現可能

  • サチュレーション=暖かみや厚みを加える控えめな歪み → BOSS BP-1W が手軽に導入可能

プロの音は必ずしも「派手な歪み」だけで作られているわけではない。
むしろ、こうした細やかなニュアンスをどう扱うかが、“説得力あるサウンド”を生み出すカギになる。

まずは1台、自分のボードに取り入れてみてほしい。
「思った以上に弾きやすい」「音が気持ちいい」という小さな発見が、次のステップへの大きな突破口になるはずだ。

まとめ|“歪みの種類”を理解すれば音作りが一段深くなる

  • サグ=アンプのレスポンスのたわみ

  • サチュレーション=暖かみや厚みを加える歪み

  • オーバードライブ/ディストーション=積極的にキャラクターを変える歪み

音作りに悩んだときは、「もっと歪ませるか」だけでなく「サグやサチュレーションをどう扱うか」に目を向けてみるといい。
そのこだわりが個性となることだろう。

ABOUT ME
吉田寛定
新潟市在住のギターインストラクター。 趣味ギタリストに向けた“ちょうどいい温度感”の発信を心がけています。 新潟市江南区のギター教室|7丁目ギター教室にて無料体験レッスン受付中。亀田・横越エリアの方はぜひどうぞ。