「完璧主義」がギターの上達を妨げているかもしれない
ギターを練習していると、ふと「全然上手くなっていない」と感じる瞬間がある。
コードチェンジがもたついたり、リズムがヨレたり、押さえ方が安定しなかったり。
それなのに、SNSではとんでもない速弾きを披露している小学生や、
耳コピでJ-POPを完コピしてしまう中学生の動画が毎日流れてくる。
自分だけが取り残されているような、焦りや恥ずかしさを感じたことはないだろうか?
でも、ちょっと待ってほしい。
「完璧にやらなければ意味がない」と思っていないだろうか?
実は、その“完璧主義”こそが、ギター上達の最大のブレーキになっている。
結論:「不完全主義」でいい。だからこそ続く、だからこそ伸びる
「不完全主義(imperfectionism)」という考え方がある。
これは、無理にすべてをコントロールしようとせず、
「今の自分にできること」「完璧じゃなくても前に進む」ことを肯定するアプローチだ。
これは単なる甘えではない。むしろ、限られた時間や集中力、
変わりゆく感情のなかでギターと長く付き合っていくための“現実的な戦略”でもある。
ギターの上達とは、「100点を取ること」ではない。
「続けた結果、いつの間にかできることが増えていた」と実感することだ。
だからこそ、不完全主義が効く。
「できることには限りがある」からこそ、選んで集中する
まず大前提として、人間の集中力や時間には限りがある。
毎日仕事や学業、家庭のことなどに追われながら、ギターに向き合う時間を確保するのは簡単ではない。
にもかかわらず、「コード練習もやらなきゃ」「速弾きの練習もしなきゃ」「曲も通して弾きたい」と、あれこれ欲張ってしまいがちだ。
でも実際には、全部を完璧にやろうとするより、
「今日はコードチェンジだけ」「今日はストロークだけ」
と1つに絞った方がはるかに効果的だったりする。
限られたリソースを分散させるより、1つの項目に全集中した方が、記憶の定着や手の動きも早い。
これは効率の話ではなく、“持続可能な練習”の話だ。
完璧を待つより、「まず弾く」ことで前に進む
「指が慣れてから始めよう」「もっと理論を理解してから挑戦しよう」
──こうした考え方は、ある意味“真面目さ”ゆえの慎重さかもしれない。
「とりあえずギターを構えてみる」
「チューニングだけやってみる」
「好きな曲の1音だけ鳴らしてみる」
そんな小さな“始まり”こそが、練習を継続させる原動力になる。
ToDoよりDone。完了リストを作る習慣
ギター初心者ほど、やることリストがどんどん増えていく。
やりたい練習が多すぎて、「できていないこと」ばかりが目についてしまう。
そうなるとモチベーションが下がり、ギターから距離ができてしまうこともある。
だからこそ、「今日できたこと」に目を向けてみてほしい。
チューニングを覚えた
初めてFコードの形を作れた(鳴らなくてもOK)
1フレーズだけリズムよく弾けた
小さなことでも、積み上げればそれが実績になる。
「自分は今日、これだけ前に進んだ」と確認できるだけで、気持ちはずいぶん変わる。
上達の秘訣は「量をこなすこと」にもある
質を求めるのは大事だが、それが「動けない理由」になってはいないだろうか?
一つの曲を完璧に仕上げようとするあまり、なかなか手を出せない。
でも、ギターのような身体操作の楽器は、
数をこなしていくことで、自然と身体が覚えていく面が大きい。
例えば「ブルース1曲」「J-POP1曲」「JAZZのテーマを1小節だけ」
というように、“薄く広く触れる”ことで、「わかる・できる」が増えていく。
陶芸の例にならえば、「完璧な作品を1つ」より「たくさん作って失敗して学ぶ」方が、
結果として高品質な作品が生まれる。ギターもまさにそれだ。
情報は取りすぎない方が上手くなることもある
今はYouTubeもSNSも、情報は無限に手に入る。
ギター初心者に向けたハウツー動画も、機材レビューも、奏法解説も山のようにある。
だが、情報収集が目的になってしまって、
「ギターを弾く時間」が削られてはいないだろうか?
「これさえ見れば上手くなる!」というノウハウは存在しない。
情報は“触媒”であって、“解決策”ではない。
だからこそ、学んだら手を動かして試すことが何よりも大切だ。
「まだ起きていない未来の不安」は無視していい
「Fコードが一生押さえられなかったらどうしよう」
「人前で弾いたら笑われたらどうしよう」
そんな不安が浮かんで、ギターが楽しくなくなることがある。
でも、その不安は今のあなたに解決できない。
“未来の自分”に任せておけばいい。
それよりも、「今日はギターに触れたか?」
「昨日より1秒でも長く弾いたか?」の方が大事だ。
未来の不安より、今できる小さな行動に集中すること。
それが、不完全主義の強さだ。
「終わらせる習慣」がギター上達を加速させる
曲を通して弾けないまま途中でやめたり、
コード練習の途中でスマホに手が伸びてしまったり──
こうした“中途半端な終わり方”が積み重なると、練習の質はどんどん下がる。
「今日はここまで」と自分で区切りをつけること。
「この練習は終了!」と決めて、意図的に終えること。
これは“達成感”と“自信”につながる。
完璧じゃなくていい。「やりきる癖」をつけよう。
やる気がない日は「とりあえずギターの前へ」
「今日は気分が乗らないから…」と弾かないでいると、
次の日も、またその次の日も、ギターから遠ざかってしまう。
そうならないためにおすすめなのが、**“物理的に近づく”**という行動。
とりあえず椅子に座る
チューニングする
5分だけ動画を見る
1フレーズだけ爪弾く
「やる気」は“始めてから出てくる”もの。
やる気を待つより、行動で呼び出そう。
自分だけの「ギターをやる意味」を見つけよう
誰かに上手いと言われたい
SNSでバズりたい
ステージに立ちたい
──どれも素敵な目標だけど、それが続かなくなる時もある。
そんな時に効いてくるのが、「自分だけの理由」だ。
この音色が心地よい
弾いてると頭がスッキリする
ギターを触っていると“自分に戻れる”
こういった、外部評価とは関係のない内なるモチベーションこそが、
不完全でもギターを続けられる“燃料”になる。
まとめ|ギターは「完璧じゃない人」が長く続けられる
完璧主義は、ギターを続ける上での大きな障害
不完全主義は、行動を続けるための強力なマインドセット
小さく始めて、小さく褒めて、小さく続けよう
そして気づいた時には、
「そういえば、あの曲が通して弾けるようになってた」
「気づいたらギターを毎日触るようになってた」
という状態になっているはずだ。